◆ことばの話1235「スクラップの言葉から」

えー、スクラップというと、普段使う言葉では2種類あると思います。
一つは「新聞のスクラップ」、切り抜き記事のこと、そしてもう一つは、「もうあの車は、20年も乗ったからスクラップやな」という、用済みの金属で出来たものを廃棄してグシャっとやってもらうことですね。
今回、机の上(と下)の整理をしていたら、なんとここ半年の新聞の切り抜きやらなんやらが出てきました・・・もう「スクラップ」した方がいいものがたくさんあるのですが、せっかく出てきたスクラップやし、最近は廃物利用・リサイクルもブームですので、最近のケータイで送った「気づいたこと」とあわせて、まとめてここでご紹介してきます。

(2002年)

*7月2日NTV:「きょうの出来事」。セネガル人「サバル」という太鼓の中に大麻を隠して密輸入して逮捕。自宅から40個以上の太鼓が見つかった。捕まったのは、「ンガニュ・ドラメ容疑者」。アフリカ出身の人には、「ン」で始まる名前の人がいる。ナイジェリアのサッカー選手で「ンケケ選手」とか、現在Jリーグ・東京ヴェルディにいるナイジェリア代表の「エムボマ選手」も、本当に原音に近い発音ならば「ンボマ」だろう。

*11月30日TBS:韓国大統領選挙で。「ノ・ムヒョン候補」「イ・フェチャン候補」ともに漢字なしのカタカナのみの字幕スーパー表記。

*12月1日NHK:早明ラグビー中継実況、竹林宏アナウンサー(副音声だったのかも。)「そのプレー(HLL)を始めた時点」。「プレー」が頭高アクセントだった。

*12月4日YTV:「ニューススクランブル」植村アナウンサー。「幼女(ようじょ)が殺害された事件で」という原稿。「養女」と聞き間違うかも。「幼い女の子」とした方がよくないか。

*12月4日NHK:中村俊輔選手に関して。「右足ふくらはぎに違和感を抱えながらも」。違和感は「覚える」ではないか。

(2003年)

*3月23日NHK:「爆笑オンエアーバトル」に出て来る若手お笑い芸人おネタに、商品名や民放の番組の名前が頻出。<ブラザーズ>=「ティモテ」<ハリガネロック>=「リーブ21」「マネーの虎」「一休さん」<ビッキーズ>「パラマウントベッド」

*3月23日NHK:ドラマ「ER」でグリーン先生が「やけどで発赤」というセリフ。「発赤」は「ほっせき」と言っていた。

*3月22日NHK:軍事評論家の江畑謙介さん。「この地域にアメリカ、クルド人、トルコ人の三つ巴にイラクも入って四つ巴になると大変。」「四つ巴」という表現。

*3月25日NHKラジオ第一:お葉書を読んでの感想を男性アナが「鴨川のきれいさが、手に取れるようですね。」それも言うなら「鴨川のきれいさが、手に取るようにわかる」ではないか。
*3月25日NHK衛星ニュース:イラク戦争を英語で言うと、イギリスBBCは「IRAQ WAR」、アメリカABCは「WAR WITH IRAQ」。表記の違いは、当然のことながら、アメリカの方が当事者意識が高いことの表われだろうか。

*4月15日NHK:「ラジオ深夜便」で岸田アナウンサー。「三宅島の住民がキトウできるように」「住民のキトウに備えることにしています」。「キトウ」は「帰島」だが、耳で聞くとわかりにくい。「祈祷」かと思ってしまう。何か工夫はないものか。

*5月30日朝日新聞:「SARS実験材料、日本に1株だけ」。ウイルスの数え方は「1株、2株」ということがわかった。

*5月30日NHK:南極で、昼間にまったく太陽が出ない日を「極夜(きょくや)」と呼ぶ44日間続く。ちなみに「白夜(びゃくや)」は、太陽が沈みそうで沈まない。

*6月7日日本テレビ:「恋のから騒ぎ」、ゲストの川原亜矢子。ヒールを履くと185センチにもなる長身。街ですれ違いざまに「でかー!」とか言われることもありそういう時は、「傷つきますよお。」

*6月8日TBS:「スーパーサッカー」のナレーション、「守備は至上命題」。それも言うなら「守備の強化が至上命令(もしくは「課題」)」。「至上命題」は混交表現で誤用。

*6月9日日経新聞:サッカー「日本対アルゼンチン戦」の記事で、「FW大久保はゴールに正対してどん欲に得点をねらう粋の良さを発揮した。」「粋の良さ」→「生きの良さ」ではないか。

*6月10日テレビ朝日:「ニュースステーション」渡辺真理さん。「STOP THE WAR」を「ストップ・ザ・ワー」と読んでいた。わあー。

*6月11日フジテレビ:「とくダネ!」で、「驚いた馬が死亡する事故」と、馬に「死亡」を使っていた。わあー。

*6月14日NHK総合テレビ:午後1時のニュースで「過労死、過労自殺110番」。「過労死」=「カローシ」は英語やドイツ語にもなったが「過労自殺」というのは初めて聞いた。

*6月14日NHK総合テレビ:海外ドラマ「ER」で「リバーサイドのアフリカ系アメリカ人の夫婦よ」というセリフ。「アフリカ系アメリカ人」とは「黒人」のこと。

*6月16日NHK総合テレビ:夜中のニュースで泉アナウンサー(男)。「身体に障害が"ある"人たちの野球大会」。「障害を持つ」ではなく、「障害がある」。その大会の会場は神戸の「ヤフーBBスタジアム」だが、字幕は「ヤフースタジアム」。「BB」はどこへ行った?

日々、いろいろ気になる言葉は生まれています。

2003/6/21



◆ことばの話1234「日本人女性」

元アナウンス部の先輩Kさんが話しかけてきました。

「沖縄の金武町で、アメリカ兵が起こした婦女暴行事件のニュースでさあ、日本テレビは被害者の女性のことを『日本人女性』と原稿に書いてて、うちもそれでやったんだけど、沖縄は日本なんだから、わざわざ『日本』って付けなくていいんじゃないのかなあ。」

全然、気付きませんでしたが、言われてみればその通りです。国内のニュースにわざわざ「日本人女性」とか「日本人男性」などと「日本」を付けることはありません。海外のニュースでは、
「日本人乗客はいない模様です。」
のように「日本人」を付けますが。
各新聞の表記を調べてみました。

(読売)「日本人女性(20)に対する婦女暴行致傷事件」
(朝日)「女性が米兵に殴られて暴行されたと訴えていた事件」
(毎日)「女性暴行事件」
(産経)「十代の女性が米海兵隊上等兵ホゼ・トーレズ容疑者(二一)に暴行を受けたとされる事件」
(日経)「女性に対する性的暴行致傷事件」


ということで、「日本人女性」としていたのは、読売新聞だけでした。
「沖縄」は、言うまでもなく「日本」ですが、アメリカから日本に返還されたのは1972年、つまり返還されてから30年です。そして、日本にある米軍基地の75%が集中し、県の面積の11%がアメリカの基地という沖縄の事情から、ついつい海外のように扱って「日本人」を付けてしまったのでしょうか。
少なくとも新聞では、読売以外「日本人」は付けていません。放送でも「日本人」を付けなくてはならない理由は、見当たりません。

2003/6/19



◆ことばの話1233「ホニャララとチョメチョメ」

お昼のニュースの前の番組で、クイズをやっていました。その中で、「○○」の空欄を埋める問題をやっていました。その「○○」の部分を、

「ホニャララ」


と女性タレントは言っていました。毎日放送の「明石家電視台」の中で出される空欄を埋めるクイズでも、女性アナウンサーが「ホニャララ」と言っているのをよく耳にします。なんとなく、赤塚不二夫を思い浮かべてしまうこの表現、いつ頃から使われているのでしょうかね。そんな疑問を呈したところ、萩原アナウンサーが、

「『ホニャララ』の元祖は『ぴったしカン・カン』の久米宏じゃないですか?」

そうだったのか。だとすればもう25年くらいの歴史があることになります。
Googleで「ホニャララ」を検索したところ、2210件出てきました。そして、最近(2003年4月)の記事として「ホニャララ復活」というのがありました。やはり「ぴったしカン・カン」でした。その番組が17年ぶりに復活する、というものでした。そう言えばそんな記事を見た覚えがありました。

空欄を埋める言葉の言い方としては、

「チョメチョメ」

というのもあります。この場合の空欄は「○○」ではなく「××」のような気もしますが。使い分けは行われているのでしょうかね?この「チョメチョメ」を言い始めたのは、私の記憶だと俳優の山城新伍さんだと思います。
Googleで検索すると2960件。「ホニャララ」より750件も多い。こちらの方が歴史があるのかな?さらに「チョメチョメ・山城新伍」で検索すると、45件出てきました。その中に、

「チョメチョメは日曜夜10時からの『アイアイゲーム』で山城新伍さんが使っていました」という証言が。そうそう、あったよね、『アイアイゲーム』(フジテレビ)。記憶の彼方に、かすかに残っていました。やっぱり山城新伍だったか。
「ホニャララ」も「チョメチョメ」も、発案者の「口」を離れて、一般的な言葉になってしまったようですね。辞書には載っていないけど。(余談ですが、「チョメチョメ」の代わりに「チョムスキー」は載っていました、『日本国語大辞典』)

2003/6/19



◆ことばの話1232「もみ返し」
Mアナウンサーが、朝からしんどそうです。

「昨日クイックマッサージに行ったら、なんか身体がだるくなって頭も痛いし・・・もみ返しです。」

マッサージに縁のない私は、この「もみ返し」という言葉を初めて聞きました。『日本国語大辞典』にも載っていません。当のMアナウンサーに「もみ返しってどういう意味?」と聞くと、

「マッサージをしたあとに患部が熱を持ったり、痛くなったりすることです。」


と、とてもしんどそうに答えてくれました。
Google検索で「もみ返し」を検索したところ、787件と思ったほど多くはありませんでした。ただ、鍼灸師の方やマッサージ師の方は普通に使うようですので、専門用語のようです。
街中には「20分2000円」「15分1500円」とかいう、お手軽なクイック・マッサージのお店がぞくぞくと出来ていますから、専門用語の「もみ返し」が、普通の言葉になる日が来るのは近いかもしれませんね。

なお、Mアナの「もみ返し」がどんな状態だったかを知りたい方は、読売テレビのホームページの「アナウンサー道場」の中の「森若のu.t.a.t.a.n.e.日記」をお読みください。「アナウンサー同情」になったりして・・・。

2003/6/19




◆ことばの話1231「丸カブリ」

平成ことば事情840「カブる」で紹介した「カブる」。2003年6月18日の「あさリラ」で週刊誌ネタを紹介していた海原やすよ・ともこさんが、プラダのパーティーに浅田美代子と長谷川理恵が、まったく同じ洋服(古いね、どうも)を来て登場したことをさして、「カブる」を連発していました。さらに、「まったく同じ服」ということを指して、

「丸カブリ」

と言っていました。本来の「丸かぶり」は、ガブッと口でかぶる(齧る)状態を指していたのではないでしょうか。「痛快!丸カブリ」なんてコマーシャルもあったような。
こちらの「(衣装が)まったく同じ」という意味の「丸カブリ」は、新しい意味の「まる カブリ」ですね。
別にこれは衣装(服)だけではなく、落語家でネタが「まったく同じ」時も「丸カブリ」は使えるでしょうね。
そうこうしていたら、来月の勤務希望表を出す時期になりました。隣の席のHアナが、

「あのう、日曜日から火曜日まで、ここんところで家族旅行に行きたいんですけど、大丈夫ですかね?」

と聞いてきました。マズイ!我が家の夏の旅行と「丸カブリ」や!
どないしまひょ???聞かなかったことにして「ほっかぶり」しましょか?困った、困った・・・。

2003/6/13