◆ことばの話1190「1周忌」

兵庫県明石市の人工の海岸で、砂が陥没して女の子が亡くなってから、1年が経ちました。
それを伝える読売テレビのニュースの字幕に
「1周忌」
と出ました。
数を表す表記の場合、漢数字と洋数字(アラビア数字)があります。洋数字での表記が増えている昨今ではありますが、「一周忌」とか「七回忌(しちかいき)」とか、あるいは「二人三脚」「七転八倒」といった「数字を含む言葉」の場合は、その数字は順番を表すものではなくて、「熟語のうちの一つ」と考えて漢数字を用いるのが普通ではないでしょうか。
同じニュース、関西テレビでもやはり「1周忌」という表記でした。毎日放送は、「一周忌」「1周忌」という表記に関する論議を避けるためか(?)、字幕にそういった文字は出てきませんでした。(他の局は見逃しました・・・。)
それにしても「一周忌」だけが「周忌」で、2年目以降は「三回忌」「四回忌」・・・「七回忌」・・・と「○回忌」となります。「周」は1回だけ、そのあとは「回」です。「周回」という言葉があるくらいですから、ともに「まわる」という意味ですが、なぜか使い分けられています。やはりなくなって一年というのは重要な節目なんでしょうね。それと、なんで丸2年で「三回忌」で「二回忌」っ言わないんだろう?



あ!わかった!



「回忌」は、その人が亡くなった時からまず「一回目」の「忌」が始まって、丸1年は本当は「二回忌」になるのではないでしょうか?だから丸2年=3年目は「三回忌」。「数え年」と同じ数の数え方なのではないでしょうか。でも、亡くなってから1年という節目は、日本古来の「数え」ではなく、「満」で数える「一周忌」の方がなじみがあったのではないか。いまや「満年齢」ですからね、普通数える時は。それでその両方が組み合わさった形が、現在の「一周忌」「三回忌」・・・「七回忌」というふうなものなのではないでしょうか。
いずれにせよ、「一周忌」に洋数字の「1」は似合いませんね。

2003/5/29




◆ことばの話「犬の人形」

ニューススクランブルのSプロデューサーが、質問してきました。
「道浦さん、犬とか猫とかのぬいぐるみみたいなヤツって、"人形"って言うていいんですか?」
はあ、なるほど、「人形(にんぎょう)」は「ひとがた」と書きます。だから、
「人形=人間でなければいけない」
のかどうかということですね。
まあ、一般的に言えば、クマでもイヌでも「クマのぬいぐるみ」とか「イヌのぬいぐるみ」とか言いますし、「クマの人形」「イヌの人形」で、まったく問題はないと思うのですが、そのSプロデューサーは、
「いや、人形は『人』にしか使ってはならない」
と、いつになく強硬です。何か、人形に思い入れがあるのでしょうかね?
Sプロデューサーの意見に、みな押されるような形で、「イヌの人形」という表現はやめました。かわりに、どうしたかというと、
「イヌのフィギュア」
うーん、こっちの方がわかりにくいような気がします。困った時のカタカナ語、という感じで。
語源はヒトでも、その後、適用範囲が広げられて動物にも使われるようになっているというのが、現状だと思いました。

2003/5/30




◆ことばの話1188「ハリセンボン」

夕方の「ニューススクランブル」のナレーションで、各地で「ハリセンボン」が獲れて困っているという原稿を読みました。食べるところがほとんどなくて、しかも調理しにくい(針があるから)ので、食用にもならないとのこと。私たちも困ってしまいました。何に困ったかというと、
「ハリセンボン」のアクセントです。一体どう読めば言いのか。NHKのアクセント辞典にも載っていませんし、三省堂の『新明解国語辞典』にも載っていません。可能性としては、
「ハリセンボン」
(1)HLLLLL(頭高アクセント)
(2)HL・HLLL(二つに分ける)
(3)LHHLLL(中高アクセント)

の3通りが考えられます(Lは低く、Hは高く発音)。一体どれなのか?
最初、私は(1)の頭高アクセントで読みました。なんとなく標準語ぽかったので。でも不安になって、担当の記者に聞いてみると、
「リポーターと、現地(三重県)の人は、(3)の中高アクセントだったと思います。」
とのこと。そこで、現地発音に従うことにして、ナレーションは(3)の中高アクセントで録音しました。でも「針」と「千本」という二つの言葉がくっついて出来た「複合語」として考えると、(2)のアクセントも捨て難い。
アナウンス部に戻って、実際にスキューバで海に潜って「ハリセンボン」にも遭遇したことのあるWアナが、
「ダイバーの世界では(1)のハリセンボン(HL・HLLL)ですよ!けっこうハリセンボンは人気者ですよ。」
いやー、そうだったのか。ほんとに難しいなあ。こういう言葉のアクセントって。
ところでWアナは、そのアクセントのことよりも、内容に怒っていました。
「ハリセンボンは、沖縄では『アバサー』って言って、味噌汁に入れた『アバサー汁』はおいしいんで、みんな食べてますよ。食べられへんなんておかしい!!」
うーん、聞いてみるものですねえ。
でもWさん、本当におしいしいの?ウソついたらハリセンボン、飲ーます!

2003/5/30


◆ことばの話1187「kiyorken」

妻が、東京出張の帰りに羽田空港でシューマイを買ってきました。有名な「崎陽軒(きようけん)」の「シウマイ」です。その包み紙を見ておや?っと思いました。海の波を思わせる波線の上に大きなカモメらしきものが2羽飛んでいる様子が赤で印刷されていて、波線と波線の間にローマ字でこう記されていたのです。

「kiyorken」

おや?このローマ字、長音を「r」で記しているぞ。普通、ローマ字の表記で長音を表す場合は、

(1)「kiyoken」

と、「O」の上に線を引っ張って示すか、あるいは英語の発音で長音で読んでもらうために

(2)「kiyohken」

と「h」を入れるか、あるいは、そのまま

(3)「kiyoken」

とするか、この3通りが考えられると思うのですが、「r」は意表を突かれましたね。なんで「r」なんだろうか?ホームぺージで電話番号を調べて電話してみました。そうそう、そのホームぺージのURLは、

「kiyoken」

と、「r」は入っていませんでした。電話にはマーケティング担当の女性の方が出ました。

「あのう、羽田空港で買ったシウマイの包装紙に、ローマ字でですね、KIYORKENと、長音のところに"R"が入っていたんですが、これはどういった表記法なんでしょうか?」


そう尋ねると、崎陽軒の方は少し言いにくそうに、

「えーと、それはですね・・・昔、包装紙のデザインを考える時に、『ニューヨーク(New York)』の『ヨーク』の部分の『ヨー』が『Yor』となっているのを真似て、『キヨーケン』の『ヨー』のところを『Yor』としたみたいなんです。」
「え!そうなんですか、ニューヨーク・・・」


意外な事実が判明しました。

「そういうふうに決めたのは、昔、というと何年くらい前なんですかね?」
「えーっと・・・調べてお電話します。」

ということで、あとで調べて教えてもらったところによると、15年ほど前に、「ニューヨーク」の真似をして「r」の入った「キヨーケン」が誕生したのだそうです。

「で、今も使っているんですよね。」
「はい。でも、さすがにこれは読みづらいということで、今年度あたりから"r"の入らないkiyokenに統一しようとしてるんですが。ただ"r"の入った"kiyorken"の包装紙も、まだ在庫がかなりあるので、それは使い切ってしまおうと・・・。」
「新しく印刷している包装紙は、"r"は入っていないんですね。」
「はい、そうです。」
「すると、この"r"入りの包装紙は、今後、貴重になるかもしれませんね。」


すると係りの方は少し笑いながら、

「そうですね。」

と答えてくれました。
シウマイの包装紙一枚でこれだけ遊べたら、十分もとは取ったと言えるでしょう・・・って、そもそも「おみやげ」だから、私は一円も払っていませんが。

2003/5/29


(おまけ)

最初、「キヨーケン」のことをネット検索した時に、「城陽軒」と打ち込んだために、ほとんど出てきませんでした。よく漢字を見てみると「城」ではなく「崎」なんですね、「崎陽軒」は。


2003/5/30


(追記)

5月30日に大リーグのゲームを見ていたら、エキスポスの大家(おおか)投手が出ていました。背中の名前のローマ字表記は、

「OHKA」

でした。「ORKA」ではなかったよ。

2003/6/13



◆ことばの話1186「なにわのゴン」

先日のニュージーランド戦、22歳以下の日本代表で活躍した、ガンバ大阪のフォワード・中山悟志選手。彼は、 「なにわのゴン」


と呼ばれているそうです。「ゴン」というのは、言わずと知れた、ジュビロ磐田の中山雅史選手のニックネームです。それで、所属チームが「ガンバ大阪」だから「なにわの」をくっつけています。

以前、「白いペレ」で、ニックネームについて考えました。現・日本代表監督のジーコが、現役時代にそう呼ばれていたのですが、それの意味するところは「ペレに匹敵するものの、ペレ未満」だという意味ではないか、と考察しました。それから考えると、「なにわのゴン」も「ジュビロのゴンに匹敵するけれど、ジュビロのゴン未満」ということになります。この場合、現時点においては、まあ、そう言われても、まだ仕方がないでしょう。
それよりも私が問題に思うのは、ガンバの中山選手が「なにわのゴン」と呼ばれる一番大きな理由は、

「名字が同じ(中山)だから」

という点にあるのではないか、ということです。もちろん、フォワードというポジション、点取り屋(ゴールゲッター)という特徴が同じではありますが、それより何より、名字が同じだから、あだなも同じ「ゴン」を流用しているのではないかと思うのです。それって、ガンバの中山選手にとっては、もしかしたら、不満が残るニックネームではないのでしょうかね?
技や力を見せることが仕事のプロスポーツ選手にとって、「名字が同じ」ということで付いたニックネームは、その選手がまだまだこれから伸び盛り(つまりは、今はまだ未熟)ということの表われだと思います。今後もっともっとガンバの中山選手には頑張ってもらって、他のチームの選手が、「ガンバの中山」のニックネームを真似て付けられるぐらいになってもらいたいものですね。
あれ?でももしそうなった時に、東京のチームの選手が、ガンバの中山選手を真似てネーミングされたら、

「お江戸の"なにわのゴン"」

とかなんとかなるんだろうか?それも、なんだかなあ。


2003/5/29