◆ことばの話1085「わかいカウント」

3月9日、オープン戦初の3塁打を放ったヤンキースの松井秀喜選手。インタビューに答えて、こんなことを言っていました。

「やはり、わかいカウントから打っていかないとね・・・。」

え?わかいカウント?つまり「若い」という字を宛てるんですかね?普通、こういう時には、

「早いカウントから打っていかないとね」

と「早い」を使うと思ったのですが。意味は十分、わかりますけどね。松井選手特有の表現なんでしょうか?Googleでいつものようにインターネット検索。

若いカウント・・・・・61件
わかいカウント・・・・・3件
早いカウント・・・・733件
はやいカウント・・・・14件


ということで、やはり「早いカウント」が主流のようです。しかし「若いカウント」もわずかではありますが、使われています。意味は通じますしね。野球のほかに、ホームページ訪問のカウントの数字にも使われているようですね。ということは、「若い」は「数字」にかかるのではないでしょうか?もう一度今度は「若い数字」で検索です。

若い数字・・・・・327件
わかい数字・・・・・・1件
早い数字・・・・・・69件
はやい数字・・・・・・1件


おお!これはおもしろい!さっきの「カウント」と逆転して、今度は「若い」の方がよく使われていますね。
なぜ数字に「若い」を使うのか? これはやはり「年齢」の「数字」をイメージしているからなのではないでしょうか。
つまり「年齢」に使う表現の「若い」が、「年齢」=「数字」という考えから、

「若い数字」

というふうに「数字」にも使われるようになり、数字で表わされる野球のカウントにも「数字」=「カウント」と考えて、

「若いカウント」


と使われるようになってきているのではないかと。まるで「わらしべ長者」のように、あるいは「連想ゲーム」のように、言葉って変わってくるのですねえ。
それにしても、さすが、メジャーリーガー松井選手。言葉の変化でも最先端を行っているのですね!?

2003/3/10



◆ことばの話1084「とげとそげ」

子どもが、保育園の柱に手をついた時に、
「木の『とげ』」が刺さった」
と言って帰ってきました。連絡ノートを見ると、担任の先生がそのことについて記してありましたが、その中で先生は「木のとげ」のことを、

「そげ」

と表現していたのです。
私は、生まれは三重県で、育ちは大阪ですが、実はこの「そげ」という表現を知ったのは、つい最近のことです。つまりバラの茎にあるのは「とげ」で、木がささくれだっているようなものは大阪弁では「そげ」という使い分けをするようなのです。
Google(日本語のサイトのみ)で検索してみました。



「トゲ」・・・・・3万8800件
「棘」・・・・・・7万2200件
「ソゲ」・・・・・・・2270件(方言で「ひらめ」のことを指す地域もあるようです。)
「トゲ・ソゲ」・・・・・・20件




「とげ」「そげ」でも検索しましたが、平仮名2文字は「おとげえ」とか「そげなこと」みたいに、全然関係ない言葉まで拾ってしまったので、「とげ・刺さる」「そげ・刺さる」で検索してみました。



「とげ・刺さる」・・・618件
「そげ・刺さる」・・・189件




「とげ:そげ」=「4:1」くらいの割合ですね。結構「そげ」が使われているんだなあというのが実感です。「そげ」は大阪だけではなくて、どうやら西日本全般で使われているようです。だから件数が多いんですね

どの本で読んだか忘れましたが、「最近は若い人が『そげ』と言わなくなってきている」というようなことを、グロットグラムでの調査だったかな、読んだことがある気がします。また思い出したら書きますが、せっかく覚えた「そげ」ですから、今後は使うようにしましょうか。

2003/3/7


(追記)

上で「どの本で読んだか忘れた」としていた「本」を思い出しました。明治書院の『大阪府のことば』(1997年)の243ページに「そげ」が載っていました。アクセントは「HL」の頭高アクセントです。

「そげ」=「とげ。指先などに刺さる木や竹の小さい破片。『削げる』から。『ソゲささった』『ソゲがささることを、ソゲがたつとも言います』(中略)近畿のほか四国、鳥取、福井、岐阜、宮崎、鹿児島で見られるが、(中略)近畿では大阪北部、京都、滋賀、兵庫といった北部のみに分布していることが分かる。(中略)河内調査では老年75%、壮年65%、若年41%で漸減しているが、ふつうに使われている言い方と言ってよいだろう。男女差はあまりないが、女性の方にやや使用が多い。」

ということだそうです。「削げる」で「そげ」なのかあ。なるほど。



2003/3/10




◆ことばの話1083「日本海と東海3」

この「平成ことば事情」の793と1041で、「日本海と東海」と題して、「日本海を東海と呼ぶべきだ」「いや、日本海は日本海だ」という論争について書いてきました。
その中で、「日本海は、『緑海』と呼ぶべきである」と以前から主張してきたという新潟大学の古厩(ふるまや)忠夫教授のことを覚えていらっしゃいますか?
実は、この前の日曜日(3月2日)、何気なく目をやった新聞の訃報欄に、古厩教授のお名前が!
2月28日、胸膜炎でお亡くなりになっていたのです。まだ61歳・・・。お会いしたこともありませんが、謹んでご冥福をお祈りいたします。

日経新聞によると専門は「東洋史」、読売新聞によると、もう少し詳しくて「中国現代史、環日本海地域史の研究で知られ、著書に『裏日本』 などがある。」なっています。
それにしても、これを記すにあたって見直していて気づいたのですが、私、「ことば事情793」でご紹介した時に、古厩教授のお名前の読み方と、ファーストネームの字を間違えておりました。申し訳ありませんでした。この場を借りて訂正し、お詫びいたします。

(誤)古厩(ふるうま)忠男
(正)古厩(ふるまや)忠夫


さて、この古厩教授の死去に時を合わすかのように、今朝(3月7日)の産経新聞にこんな記事が。

「『日本海』表記を非難」
朝鮮中央通信によると、北朝鮮の労働党機関紙の労働新聞は六日付で、日本海の呼称問題に関する連載を開始し、「わが先祖らはだれよりも早く東海(日本海)を開拓し、海を『朝鮮海』『東海』」と呼んできた」と主張。「朝鮮東海を『日本海』と表記する日本の主張はゆがんだ歴史観、不純な野心の表れだ」と非難した。

こう、ソウル支局の名村隆寛さんが伝えています。
なんか、ここまで来るとなあ。日本と朝鮮のところを入れ替えると、どちらが出しても通じるような気がしませんか?
結局、「歴史」というものは、自分の国が関わっている部分に関しては、なかなか客観的に語ることの出来ないものなのですね。ある一面の事実に過ぎないという意識が必要でしょう。
はあ、難しい。

2003/3/7
(追記)

お久しぶりです。2004年2月20日の産経新聞にこんな記事が載っていました(黒田勝弘記者)。ソウルの在韓日本大使館がインターネットの広報資料(韓国語)で、
「東海(トンヘ)」
の表記を使っていたというのです。大使館の高野紀元大使は「ホームページ作成を委託している韓国業者の翻訳文を十分に点検しなかったのが原因。まことに申し訳ない。」と話しているとのこと。問題の箇所は、「北西太平洋(東海および黄海)」や、新潟県の資料で「西に東海をながめ・・・」など、昨年までの資料6か所で「日本海」が「東海」になっていたそうです。
これを受けて、さっそく2月21日の産経新聞『産経抄』がこの問題を取り上げ、
「韓国は反日・愛国運動として『東海』を主張し、官庁機関やマスコミもそう先導してきた。その反日キャンペーンを、こともあろうに日本大使館が広報で”支援”したのである。あいた口がふさがらぬとはこのことか。(中略)この重大な責任はきちんととってもらいたい」
と記しています。忘れた頃にこの「東海」問題は、また湧き上がってきますね・・・。

2004/2/26

(追記2)

4月23日の読売新聞に「国連文書では『日本海』だ」という見出しの記事が出ていました。 それによると、国連本部で21日に開かれた「地名専門家グループ会合」で韓国の外交団が「『日本海』の名称は日本の植民地時代の世界に広められた」として、韓国で使われる「東海(トンヘ)」への変更や「日本海」との併記を要求し、日本側が押し返す一幕があったそうです。日本側は、国連事務局が3月「国連があらゆる公文書で用いるのは『日本海』だ」と事実確認した日本政府あての文書などで反論して、(1)国連の慣用的な呼称は「日本海」である(2)日韓併合以前の18世紀ごろから「日本海」の名が世界地図で使われた歴史的事実がある。(3)国家主権の及ばない公海の名称を一方的に変更できないなどと主張したそうです。この会合は名称の決定機関ではないために、両国の主張を報告書に記録するだけで決着はつきませんが、日本側の角茂樹・外務省総合外交政策国際社会協力部参事官は、「韓国は早く歴史的事実を受け入れるべきだ」と困惑しているとのこと。 かえって現在こうした(韓国のような)主張をすることは、拡大主義的なイメージがあるのですが、どうなのでしょうかね。

2003/4/25
(追記3)

2005年7月31日の読売新聞によりますと、外務省はアメリカ議会図書館所蔵の14〜19世紀の地図を対象に、日本海海域の名称がどのように表記されているか調査した結果、19世紀の地図の1285枚のうち82%が「日本海」、「朝鮮海」は7%だったということです。そして「東洋海」はたったの2枚、「東海」は1枚だけだったとのことです。
これによって外務省は、「19世紀初頭からヨーロッパで日本海の呼称が定着していた」という日本政府の主張が裏付けられたとしています。
調査対象は1730枚で、このうちの1435枚は日本海海域に何らかの呼称を掲載していて、内訳は、
「日本海」が77%
「朝鮮海」が13%
「中国海」は 2%
「東洋海」が 1%
「東海」は0、1%

だったということです。
これについての韓国側の反応は、記事には書かれていませんでした。

2005/8/3
(追記4)

ぼんやりテレビを見ていたら、五木ひろしが歌を歌っていました。「横浜たそがれ」。懐かしいなあ。この歌って、単語を並べただけで歌詞になってるんやなあ。などと思っていたら、最後にこんな曲を歌っていました。
「ふりむけば日本海」
これももし、日本海が「東海」と呼ばれるようになったら、「ふりむけば東海」になるのかなあ・・・などとアホなことを考えているうちに、眠ってしまいました。

2005/9/18
(追記5)
2007年1月9日の朝日新聞朝刊に、
「日本海の呼称『平和の海』打診」
という見出しが出ていました。記事によると、去年11月にベトナムのハノイで行なわれた安倍総理との会談の中で、韓国の盧武鉉大統領は、
「東海(日本海)の呼称を『平和の海』や『友情の海』『和解の海』にすれば、韓日対話の土台になる」
と非公式に打診したのですが、安倍総理は取り合わず、盧大統領も、
「アイデアの例示で、正式提案ではない」
と付け加えたそうです。これは1月8日、韓国大統領府が明らかにしたものですが、韓国国内では、「国益を無視した発言」と批判の声が上がっているそうです。
2007/1/9

(追記6)
2007年5月31日の読売新聞に、
「『日本海』『東海』使わず〜鳥取・琴浦町 日韓友好碑」
という見出しが出ていました。記事によると、鳥取県の琴浦町が日韓友好記念碑の説明文に記された「日本海(東海・トンヘ)」のうち、韓国での呼称「東海」の部分を削除した問題で、日本語で「日本海」、ハングルで「東海」と記した文章に作り直すとしていた琴浦町は30日、いずれの呼称も使わない文章にすると発表したそうです。これに対し在日大韓民国鳥取県地方本部のソル・ヘンプ団長は「東海を使わないのは、交流を後退させるもので、強い憤りを感じている」と話しているそうです。
2007/6/1

(追記7)
2007年8月28日の産経新聞・夕刊(大阪は、産経の夕刊があるのです)に、
「日本海呼称問題進展せず〜南北の変更案に日本反論・・・国連地名標準化会議」
という記事の見出しが載っていました。現在、第9回国連地名標準化会議がニューヨークの国連本部で開かれており、 8月27日に韓国と北朝鮮は、「東海」の併記や「朝鮮海」への表記変更を主張する提案を行ったが、日本側の「特定の地名問題を議論する会議ではなく、決定する権限もない」という反論に賛同が集まり、議論は進展しなかったそうです。
韓国と北朝鮮は、国連に同時加盟した翌年の1992年から同様の主張を繰り返しているそうですが、日本は問題提起事態に「大きな失望」を表明。19世紀はじめに欧米の地図で「日本海」の呼称が確立しているとして、植民地問題とは無関係だと反論。さらに、国連や国際水路機関(IHO)でも日本海の呼称が支持・使用されていることや、2005年の外務省の調査でも世界67カ国の教材や地図の約9割が日本海だけの表記だったことを指摘したそうです。< br/> それにしてもこの「国連地名標準化会議」って、原則5年ごとに開催なんですね。ということは、 私がこの問題について書き始めたのは、5年前ってこと?「平成ことば事情793日本海と東海」を見ると、確かにそれを書いたのはちょうど5年前の8月26日でした。
ふーむ、月日が経つのは早いなあ・・・・。
2007/8/29



◆ことばの話1082「赤鬼と青鬼」

今日(3月6日)もう二十四節気の一つ「啓蟄」。虫が這い出してくる頃です。そんな時に、すみません、節分の時の話を書きます・・・。
2月3日の節分の日、5歳の息子の通う保育所には「鬼」が来たそうです。その当日の朝の会話。

「今日な、ホンモノの鬼が来(く)んねんで!」
「フーン、その鬼は、どのくらい大きいの?」


と聞くと、息子は鼻から大きく息を吸い込んで、

「あんなぁ、1メートル!」

・・・まだ、大きさの単位はわかっていないようです。
さて、その鬼ですが、2匹来るとのこと。
「何色の鬼?」と聞くと、

「赤とブルー」

という答え。「赤鬼」と「ブルー鬼」かあ・・・。

「でもなあ、ブルー言うても、緑やねん。」

ふーん、「青鬼」は「緑鬼」か。
そう言えば、昔は「緑」も、「青」と呼ばれる色の中に含まれていましたよね。その名残りが、今で言う緑色の信号が「青信号」、緑の葉っぱを「青葉」というような形で残っています。すると「青鬼」も本当は「青」ではなくて「緑」だったのではないか?という気がしてきました。つまりこの項の本当のタイトルは、「青鬼は何色か?」です。実は、私はずっと「青鬼は青」だと思っていたので、ちょっと「目からウロコ」状態です。
そうすると、「朝青龍」はホントウは「緑」なのか?弟分の「朝赤龍(あさせきりゅう)」は?「朝○龍」が5人揃うと「ゴレンジャー」みたいでカッコイイですね。何を言ってるんだか。
え!?これで終わり?

2003/3/6



◆ことばの話1081「アルミホイールでクッキング?」

NHK放送文化研究所の原田邦博さんからメールが来ました。

「アルミホイルとアルミホイールを取り違えた人がいたのですが、こういったことについては、もう書きましたか?」

いいえ、書いていません。実際にそんな間違いがあるのでしょうか?

「アルミホイルを使った料理を、北海道のジンギスカンのように、車のアルミホイールの上で何かするものと思ったようです。foilとwheelですから、『アルミホイル』は、むしろ『アルミフォイル』と言うべきかもしれません。」

と原田さん。いつものようにGoogleでネット検索。
「アルミホイール・クッキング」・・・268件
「アルミホイール・料理」・・・・・1340件

(2月18日しらべ)

けっこう「アルミホイール」で料理をしている方、多いようですね。あわてんぼうさん。
「アルミホイル」や「アルミフォイル」で料理をしている方はどのくらいいるのでしょうか?

「アルミホイル・クッキング」・・・・2020件
「アルミホイル・料理」・・・・・・・9290件
「アルミフォイル・クッキング」・・・・・53件
「アルムフォイル・料理」・・・・・・・286件
「アルミフォイル」・・・・・・・・・・1140件


ついでに

「アルミホイル」・・・・・・・・・3万5400件

(3月4日しらべ)

といったところでした。最後に原田さんのメールには、
「勘違いをしたのは一般の人で、NHKの職員ではありませんので。念のため。」
と書いてありました。

2003/3/4