◆ことばの話1065「ドクハラ」

2月13日の朝日新聞「くらし」欄に、
「ドクハラ」
という言葉が出てきました。これは略語で、正式には、
「ドクター・ハラスメント」
というそうです。つまり、医療現場で、医者が心ない言葉で患者の心を傷付ける行為を言うそうです。会社の後輩で「ドイハラ」とか「ハギハラ」とかいうヤツはいるのですが。「サハラ」だと砂漠ですし、なんとなく「カタハラ」痛い。
「セクハラ」定着以降、「アカハラ」(アカデミック・ハラスメント)とか「アルハラ」(アルコール・ハラスメント)とか「○○ハラ」という略語で示される
「○○○○ハラスメント
という言葉がすっかり定着しましたね。
翌2月14日の朝刊では、今度は患者側から医者へのハラスメントである、
「逆ドクハラ」
なる言葉まで出てきて!ビックリ。
また、今朝(2月27日)の毎日新聞「紙面研究会から」の記事で、大阪府立大学総合科学部教授の堀江珠喜さんというが、
「2月4日夕刊誌面で使われていた『パワハラ』という言葉は始めて聞いたものだった。新聞が見出しに使うと言葉が独り歩きしてしまう。新聞は新しいカタカナ語については注意して欲しい」
というようなことを話してらっしゃいました。「パワハラ」なんてのもあるようですね。
「パワハラ」というのは、上司が職権(立場)を利用して、部下を怒鳴りつけたりいじめたりすることだそうです。去年の12月16日の朝日新聞にも載っているようです。Google検索で76件出てきました。
今や何でもかんでも「ハラ」をつければ「差別だ!」と呼べるような気がします。でも、そう安易に「○○ハラ」を増やしていいのでしょうか?「○○ハラ」と名づけることで、何となくわかったような気になってしまっていないでしょうか?
そうもこういった言葉を目にするたびに、文字どおり「ハラハラ」するのです。

2003/2/27

(追記)

2003年5月2日の読売新聞の「今日のノート」というコラムで「パワハラ」が取り上げられていました。それによると、上司や先輩からの嫌がらせを「パワーハラスメント(パワハラ)」と名づけたカウンセリング会社が、電話やインターネットでの相談と意識調査をしたそうです。その330の事例の内9割が「パワハラがある」と答えた、と言うのですが、そりゃ、そうだから相談してくるのだと思いますが。で、相談に来る人は30代の正社員が多いのだそうです。その結果4割が「体の不調」を訴え、8割が「勤めを辞めたい」と思っていて、「社内に相談窓口がある」のは3割だそうです。
良好な人間関係を築くのは、かくも難しい、ということでしょうか。はあ〜。
2003/6/13

(追記2)

6月30日の日経新聞朝刊の特集「サラリーマン第534話」では、

「パワハラー中高年も的」

として、パワーハラスメントの実例を紹介していました。

2003/7/3
(追記3)

先日出た、梅花女子大学・米川明彦先生の『日本俗語大辞典』(東京堂出版)の中にも「ドクハラ」はじめ「セクハラ」「アカハラ「アルハラ」「パワハラ」が収録されています。拙著『「ことばの雑学」放送局』(PHP文庫)からも「べつばら」「きてる」など5語が、用例として採用されています。是非、ご購入の上探してみてください!!6800円と、結構いい値、しますが。

2003/12/25
(追記4)

毎日新聞朝刊に連載中の4コママンガ「アサッテ君」の10868回は、会社の上司(男性)が部下の女性社員に「お茶を買ってきて」と頼んで買ってきたのが、頼んだものと違うお茶だったことに対して、ネチネチ文句を行っているというもの。
上司「買ってきてってたのんだのは120円のお茶だよ。なのにこれ130円のお茶じゃないか。こないだだって・・・」
と、クドクドクドクド女性の部下にお小言している姿を遠くからみたアサッテ君が、
「またセコハラしてる。セコイハラスメント。」
と言うのがオチ。Google検索(7月13日)では
「セコハラ」=55件
でした。
2006/7/13


◆ことばの話1064「ひとり旅」

先週行われた「泉州マラソン」・・・ではなく「大阪シティーハーフマラソン」、その放送の中で気になった言葉が、
「ひとり旅」
です。女子のダイハツ・田鍋久美選手が途中から独走状態となって優勝したのですが、先頭のランナーがこういった独走状態になった時に最近よく使われるのが、この「ひとり旅」。
しかし私はこの表現に違和感があります。というのは「ひとり旅」に対して私が持つイメージは、
「自由気まま」「あてがない」「のんびり」
といったものだからです。ところが、こういったレースでの「ひとり旅」は、単に「独走状態」を指しているだけであって、「自由気まま」「あてがない」「のんびり」といったイメージからは程遠いからです。だって、コースは決められていて、できるだけ早くゴールに飛び込まなくちゃならないし、「のんびりなんて、とんでもない!」のがレースのはずです。あえて言うならば、「ひとり旅」の「ひとり」は「独走」とイメージが重なるかもしれませんが、「旅」はどう考えても「レースにおける独走状態」とは相容れません。でも、
「最近の『旅』はスケジュールに追われてまったくのんびりできないものだから、レースのようなものだ」
と言うのならば、それはしょうがないかなとも思うのですが。
ちなみにGoogleで検索してみました。



「ひとり旅・マラソン」・・・545件
「一人旅・マラソン」・・・2940件
「独り旅・マラソン」・・・・121件




「ひとり旅・独走」・・・・・529件
「一人旅・独走」・・・・・・・80件
「独り旅・独走」・・・・・・・64件




「マラソン・一人旅」の組み合わせは、結構、多いようです。
でも「ひとり旅」と相性が良いのは、やっぱり「みちのく」でしょう。
「みちのく・ひとり旅」・・・2200件
「みちのく・一人旅」・・・・2480件
「みちのく・独り旅」・・・・・・69件




ほらね!あ、でも一番多いのは「一人旅・マラソン」の2940件かぁ。でも表記にはこだわらずにトータルだと「みちのく・ひとり旅」が多いな。
「旅」の形も変わりつつあるということで。

2003/2/26


(追記)

「独走」のことを「ひとり旅」というケース、また見つけました。
「朝青龍5連勝ひとり旅」(産経新聞2005年1月14日)
大相撲など、トーナメント戦ではない形式のスポーツでは、勝ち星がダントツで積み上げられている場合などに使えそうです。野球のホームラン王争いや勝ち投手で勝利数なども。また、競馬でも「ひとり旅」は使われるそうです。

2005/1/15


◆ことばの話1063「ですよねー」

入社2年目のSアナウンサー、先輩方と話している時の相づちの一つに、
「・・・ですよねー!」
があります。先日、この4月に入社する予定のKさん(アナウンサーのタマゴ)と一緒に、お酒を飲む機会があり、話をしていると、このKさんも、先輩アナの話しの合間に、
「・・・ですよねー!」
を連発しているではありませんか!
この「・・・ですよね」は、相手の話を受けて、
「いや、ごもっとも、そのとおり、私もそう思います。」
という意思表示で、
「こいつ、ういやつじゃ」
と相手(先輩)に思い込ませてきたようなので、ここに来て疑問が。
「ほんまに、こいつはそう、思っているのだろうか?自分の考えとはまったく違うのに、先輩のご機嫌を損なうのがイヤで、調子を合わせているだけではないのか?」



そう考え出すと、「・・・ですよねー」と言われるたびに、ちょっとムカッと来るような。
「ですよね」って、ちょっと丁寧語だけど、普通の言葉に戻すと「だよね」ではありませんか。つまり「『だよね』の丁寧語」として「ですよね」は使われているということです。「だよね」は、ラップの曲にもなったくらいで、テンポの良い相づちの言葉。それを目上に対して使っているのが、この「ですよね」なのですね!
SアナもKさんも、同じC大学の出身。もしかして、C大学で流行っているのか?と聞くと、「そんなことはありません」とのこと。
この話を会社に戻ってからすると、入社7年目Nアナウンサー(T大学出身)が、
「そう言えば僕もこのあいだ、『高級中華料理店Rはうまいけど値段も高いですから、まあ、あんなもんじゃないですか。』と言った後に、先輩のSさんに『でもおれは、今まで食った中華料理店の中では、Rが一番うまかったなあ・・。』と言ったのを受けて、思わず『・・・ですよねえー。』と言ってしまいました。」
と言ってましたから、今の若い人の目上に対する「敬語」「上下関係語」の一つとして、かなりこの「ですよねー」は広まっているような気がするな。
(どこからともなく)「・・・ですよねー!」

2003/2/17


(追記)

その後、缶コーヒーのコマーシャルでも、所ジョージさんが若い会社員に向かって、

「君の頭はいつも冬眠してるけどねえ」

というふうなことを言ったのを受けて、この若い男性会社員が、一拍おいて

「・・・ですよねえー」

というシーンが出てきました。やっぱり流行ってるんだ!
また、週刊誌「週刊SPA!」(2003、3月11日号)の特集でも、
「対応に戸惑う『若者トーク』に負けない7つの技術」
という特集の中で、「パート1・会社ので飛び交う若者コトバやタメ口への対処法」として

「ありえない」「っていうか」「敬語ができない」「ですよねー」

という4つの言葉が取り上げられています。
コメンテーターは石原荘一郎(1963年生まれ)、井上史雄(1942年生まれ)、宮台真司(1959年)、内藤誼人(1974年生まれ)の4人。「ですよねー」に関しては、

「隣の席の後輩(24歳・女性)は、どんな話をふっても、どんな質問をしても、いつでも『ですよねー』と同意してくれる。本当にそう思っているのかどうかもわかりません。なんだか手応えのなさを超えて、不気味な気すらします。(31歳・メーカー)」

という質問に対して、「深層真理」の分析として、

「口先だけの同意は世代かかわらず誰しも経験しているが、『ですよねー』には開き直りが感じられる。不満が相手に伝わっても気にする気配がない」「『っていうか』に比べると、『ですよねー』のほうが、社会人として最後の一線を守っていると見ることもできます。少なくとも、敬意を見せるフリだけはしている。あくまで"フリ"でしかないというところは問題ですが。」

と記しています。そして、「同意しているとは到底思えない『ですよねー』への対抗術」は、「相手が困惑するほど大喜びする」

ことだそうで、

「見せかけの同意をアピールしたい若者にとって、"本当に同意した"と周囲から思われるのはかなりのダメージになりはず」


だというのですが、結構これはイジワルな対処法ですね。
そもそもこの『SPA!』という雑誌、もとは『週刊サンケイ』で、読者層の若返りを狙ってリニューアルし誌名もスパッと変えたので、けっこう若者向けのはずなのです。それなのに、「若者撃退法」とも思える内容の記事を特集するとは、一体どういうこと?と考えて、わかりました!リニューアルからもう10年近く経って、その時以来の「若者」の読者が「高齢化」(といっても30歳代前半)してきて、ターゲットの年齢が上がってきていることを示しているのではないでしょうかね?
いや、話が逸れてしまいましたね。
「ですよねー!」

2003/3/12
(追記2)
2004年12月19日にNHKが放送した、一連の不祥事に関する例の釈明番組に出演していた鳥越俊太郎さんが経営委員会について、
「ですよね。」
と相槌を打っていました。お歴々の中で、鳥越さんの意識としては少し下手に出ていたということでしょうか。

2005/2/18



◆ことばの話1062「『財布、出せや』と脅し」

大阪の強盗事件などのニュースでは、よく強盗のセリフが、関西弁のまま使われます。
「金、出せや」
「金、出さんかい!」

というふうに。
また、毎年12月13日の「事始め」の時に、京都の京舞・家元の井上八千代さんのところに挨拶に行く舞妓さんのニュースだと、
「おめでとうさんどす」
という舞妓さんのセリフの部分を京都弁ぽく読んだりします。
東京出身のアナウンサーがこれを読むと、「どす」だけ取ってつけたような感じで、ものすごく不自然になります。
さて。今、ふと疑問に思ったのは、
「他の地方のテレビ局では、地元の強盗のニュースで、『方言での脅し文句』をそのまま使っているのだろうか?」
ということです。
静岡では、
「金、出すずら」「金、出すだよ」
と脅し、福岡で、
「金、出さんと」
とか、東京・下町だと、
「金、出しちゃいなよ」
広島は、
「金、出しんしゃい」
新潟では、
「金、出すっちゃ」

というふうになっているのでしょうか?カギカッコで、直接話法での引用をニュースの中で、そういうふうにしているのかどうかということです。
よく分りませんが、どうも、そうはなっていないように感じます。
今度いっぺん、各地方の局に聞いてみたいと思います。

2003/2/4



◆ことばの話1061「アメホ」

「ニューススクランブル」の項目会議に出ていた時のこと、会議室にある、音を消したテレビに、あるコマーシャルが映りました。その画面にはこんな文字が・・・。 「アメホでチェック」



なんじゃ、アメホって?「アメマ」なら、間寛平さんのギャグで知ってるけど。
そのあとも音のしない画面を見ていると、



「アメリカンホームダイレクトの自動車保険」



の文字が。あ、そうなのか、つまり「アメリカンホームダイレクト」を略して「アメホ」なのか!ちょっとそれは略しすぎでは・・・・。
でも「アメホ」の「ホ」は「ホームダイレクト」の略でもあるけれど、「ホケン(保険)」の「ホ」でもあるわけで、その意味では上手く略しているなあと、ちょっと感心。
でも、「アメホ」という3文字の略し方は、関西風ですよね。「マクドナルド」を略して「マクド」、「ロイヤルホスト」を略して「ロイホ」のような感じ。関東だと4文字で略しそうな感じですが。アメリカン・スタイルは、関西に近いのですかね。アクセントは「中高」なんでしょうか?「平板」なんでしょうか? 音を消していたから分からなかったなあ。
でも、くれぐれも間違って
「アホメ」
と読まないようにご注意くださいね。間違うと、同じ言葉を返されますよ。

2003/2/21


(追記)

「アメホでチェック」
今度は音声を聞きました。「アメホ(LHH)」と平板アクセントでしたよ!

2003/2/21