◆ことばの話1060「ないものはない」

ある商品を探してある店に行った時に、
「ないものはない」
と言われたら、あなたはその商品は「ある」と思いますか?それとも「ない」と思いますか?
じつはこれ、どちらも正解なんですよね。
まずは「ある」が正解と考えると、この文章は「二重否定」の文になります。つまり、
『「ないもの」はない』
で、「ない」をもう一度「ない」で否定しているので、ひっくり返って「ある」ということですよね。
逆に「ない」が正解の文にすると、
「何度言われても、実際に『ない』ものは、ここにはあくまでも『ない』」
という、二度にわたって言うことで「『ない』ことを強調した文」になります。
このパターンの言葉としては、「裏の裏」がありますね。
「きょうは、芸能界の『裏の裏』までリポートします!」
といった場合の「裏の裏」は、「「裏」の「裏返し」」=「表」ということではなくて、
「『裏』のさらに奥深い『裏の世界』」
という意味で「強め」の効果を発揮しています。
毎日新聞大阪版で、金曜日の「あっと おおさか」というページで、
「ないもんはない〜大阪舶来マート物語」
という連載があるのですが、(2月21日で17回目)、この「ないもんはない」はイコール「すべてある」ということで、「二重否定」ですね。「二重否定」は、「ある」という存在を強調する効果を醸し出しているのです。
嗚呼!日本語って、ホントに難しいですねえ・・・。

2003/2/28


◆ことばの話1059「まとめて最近目についた言葉」

「お!これはおもしろいな」
というふうに目に付いた言葉は、すぐにメモしたりその記事を切り取ったりするようにしています。最近は町で目にしたり耳にしたおもしろい言葉は、ケータイメールで会社のパソコンに送るようにしています。会社のパソコンはほぼ毎日見るので、忘れることなくチェックする事が出来ます。我ながら名案!
しかしその量が、私の書く能力をはるかに越えて多いので、どんどん溜まっていくうちに、言葉が古くなってきます。多少古くなってもパワーを持っている言葉もあれば、そうでない言葉もあります。
とりあえず忘れないためにそういった「目に付いた言葉」を、ここで書きとめておきましょう。
*「親学(しんがく)」9月13日朝日新聞
「親業」は「親業(おやぎょう)」なのに。
*9月19日読売(と思う)「蓄養」インドマグロの話。



とここまで書いてほうっておいたら、なんと5か月も経ってしまいました・・・。
一応、今の時点(2003年2月20日)でのGoogle検索の件数だけ記しておいて、この話はおしまいにします。もう、何を欠こうとしておいたのか、あまり思い出せないので・・・すみません。



「親学」:2490件
「親業」:3620件
「蓄養」:2590件




2000件から3000件くらいって、専門家には定着しているけど、一般にはまだまだ・・・といったレベルのように思います。まあ、「業界用語」の域ですかね。

2003/2/20

(追記)

2006年9月11日(月)発売の『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)に連載されている「美味しんぼ」(作・雁屋、画・花咲アキラ)第576話「恵の貝・後編」で、三重県は桑名のハマグリを取り上げていました。その中で「蓄養」という言葉が出てきました。

「このシナハマグリも、輸入してから日本の海域で蓄養すると、国内産とされます。」

という文。「蓄養」は、欄外に注意書きで説明してありました。

「蓄養」=別の場所で漁獲された魚介類を、一定期間生けすなどで飼育してから出荷する漁法。また生けすで飼育する事。


とありました。マグロもハマグリも「蓄養」されているんですね。
2006/9/12



◆ことばの話1058「準急と区間急行の英語」

いつものように会社からの帰路、京橋駅で京阪電車を待っているときに、電光掲示板が目に留まりました。そこには、次に来る電車とその次に来る電車が表示されていました。それは何秒かおきに日本語から英語(ローマ字)に変わっていました。その英語の「準急」と「区間急行」の表記が気になりました。
準急はSUB−EXP
区間急行はSEMI−EXP

だったのです。EXPは「エキスプレス」で「急行」なのは、わかるのですが、この「SEMI」と「SUB」はどう違うのでしょうか?本当にアメリカやイギリスなど海外でもこういった区別がなされているのでしょうか?ちなみに、京阪電車でのスピードの速さの順番は、
特急>急行>準急>区間急行>普通(各駅停車)
です。つまり、京阪においては「SUB―EXP」>「SEMI−EXP」ということです。
アメリカ西海岸に詳しい脇浜アナに聞いたところ、
「あのねえ、ロスには電車ないんですよねー」
と言われてしまいました。そうなのか。
そうすると、日本人が勝手にいろんな種類の(いろんな速さの)電車を作って、それに勝手に英訳を付けているだけなのか。そんな気もしてきましたね。
「準決勝」のこと 「セミ・ファイナル」と言いますから、「準急」の方が「SEMI−EXP」のような気もするけど。そういえば、新幹線の「ひかり」や「のぞみ」は「超特急」ですが、これはいつも新幹線の車内での英語の放送では、
「SUPER EXPRESS」
と言っていると思います。つまり「特別急行」。でも「超特急」だから、
「ULTRA SUPER EXPRESS」
くらいにして欲しいな。
話が逸れましたが、「SEMI」と「SUB」の比較は、「部次長と副部長はどっちが偉いか?」「部長代理と部長補佐はどっちが偉いか?」のようなものに似ているかもしれません。つまり各会社によって基準は異なると。ハッキリしているのは、
「部長代理も部長補佐も部次長も副部長も、部長よりは下」
ということ。電車で言うと、
「準急も区間急行も、急行よりは遅い」
ということでしょう。
すっきりしたような、しないような・・・。

2003/2/20


(追記)

イギリスの電車について質問メールを出しておいた、NNNのロンドン支局員の小島美穂記者から返事のメールが来ました。

「イギリスでは準急、区間急行等の細かな区別はありません。各駅停車より早い列車は『ファスト・トレイン(Fast Train)』、終着駅までほとんど止まらない列車は『エキスプレス(Express)』と呼んで区別する程度です。旅客部門だけでも25社にも分割・民営化され、それが別の会社が運営する線路を共有しているわけですから、細かなダイヤ編成は、到底望めません。運営会社によって呼び方はまちまちではありますが、

Euro City(国際特急)>Inter City(国内特急)>Express>Fast Train>Local>Commuter Train

大体こんな感じです。ちなみにイギリスには特急料金がなく鈍行で安く行けるという感覚は存在しません。代わりに2週間前までに予約すれば半額程度で買えるというシステムです。」


小島記者、ありがとうございました!

2003/2/28


◆ことばの話1057「縮減」

出張で東京に行った際に乗った地下鉄の社内の広告ポスター。こんな「文句」が書いてありました。
「営団地下鉄は路上工事の縮減に努めております。」
その文字を目にした時に、無性にハラが立ちました。
「『縮減』って何よ!このお役所言葉!大阪やったら絶対に使わへん言葉やで!!ほんまに利用者のことを考えているなら、そういった社内言葉・お役所言葉から離れて、それこそ生活者の目線で、モノを伝えようとせんかい!」
と思ったのでした。さらに言うなら、
「おります」
という語尾も、慇懃無礼な感じが致しておりますことよ
私は「縮減」という言葉を、(おそらく)生まれてから40年、使ったことはありません。一応このワープロソフトでは1発で変換できましたが。『三省堂国語辞典』によると、
「縮減」=(規模を)へらし、ちぢめること。(例)「予算の縮減」
やっぱりお役所コトバだ。
Googleで検索しました。「すべてのページを対象」に「縮減」を検索したら、
9万7500件もありました!で、「日本語のページだけ」に絞ったら、
4万8200件になりました。ということは、半分以上は中国語のホームページで使われていた、と推測できますね。日本語のさいとはやはり「公共工事」とか「予算」とかいう言葉ともに使われているようです。



ここはひとつ、ハッキリ申しましょう。カタカナ語も問題だけど、難しい漢語も問題です。
「お役所は『縮減』という言葉そのものを、縮減すべし!!」
失礼しました。

2003/2/20


◆ことばの話1056「SHOGAKUKAN」

子どもの保育園の「雪遊び」で、スキー場に向かう貸し切りバスの中で見せられたビデオは、発売元が「小学館」でした。その「小学館」がローマ字表記で画面に出てきました。

「SHOGAKUKAN」

これを見て、ハッとしました。ふだん私は「小学館」を、

「ショーガッカン」

と発音しているのですが、このローマ字表記だと、

「ショーガクカン」

と発音しなくてはならないのではないか?ということです。
「ショーガクカン」の「ク」は無声化するので、普通に耳で聞くと両者はほぼ同じように聞こえると思うのですが。言いやすいのはもちろん「ショーガッカン」と促音便にした方です。
これと同じような例で、促音便にならないケースでは、

「熱気球」(○ネツキキュー ×ネッキキュー)
「カムチャツカ」(○カムチャツカ ×カムチャッカ)


があります。ちゃんとしたアナウンサーはみんな「ネツキキュー」「カムチャツカ」と読みます。
逆に、促音便になるものには、

「別世界」(○ベッセカイ ×ベツセカイ)
「鉄製」(○テッセイ ×テツセイ) (『NHKアクセント辞典』による)


などがあります。
なぜなんだろうか?
そうそう、タレントでCM女王と言われる

「菊川 玲」

さんの「菊川」も、「きくかわ」の「く」を無声化したら「きっかわ」とほとんど区別がつきませんよね。ただ、今ワープロで打ち込む時に、「きっかわ」と打って変換したら、

「吉川」「橘川」


という漢字しか出ませんでした。「きくかわ」なら一発で「菊川」と変換されました。
耳で聞こえる音はほとんど同じでも、一応表記上は区別すると言うことでしょうか。
いや、「もとの音が違うのだから、表記が違うのがあたり前」ということでしょうね。

2003/2/14


(追記)

『明鏡国語辞典』で、「菊花」を「きっか」で引くと、その意味の中に「きくか」という表記も書いてありました。

2003/3/12


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