◆ことばの話1020「山口もえ」

山口もえという女優をご存知でしょうか。今、読売テレビで月曜日の夜10時から放送している『メッセージ〜言葉が裏切っていく』に、暴露雑誌の女性記者役で出演しています。その『メッセージ』の番組宣伝を、今日(2月3日)の夕方の広報番組の枠で紹介しました。といっても45秒という短い「生・宣伝枠」なんですが。そのリハーサルをしていた時に、次のような原稿を読もうとして、トチってしまいました。

「一方、山口もえさん演じる歩(あゆみ)は、高級官僚である父に、勝手に退職届を出されて困惑」

という原稿だったのですが、この「山口もえ」のところで私は、「も」を2回言いそうになったのでした。そう、

「山口ももえ」

と言いかけたのです。山口百恵。おお!そうだったのか、「山口もえ」と「山口百恵」は、たった1字違いだったのです!気付かなかったあ。山口百恵さんが引退してから既に23年も経ちますが、山口百恵の名前を知らない人はいないでしょう?(とっても若い人は別にして。)やっぱりこれだけ長い年月が経っても伝えられるというのは、カリスマ性と言いますか、人気のピークで引退したからと言うべきか。引退した時には、百恵さんは21歳だったはず。既に山口もえさんはその年齢を超えていると思います。(インターネットで調べてみると、山口もえさんは、1977年6月11日生まれの現在25歳だそうです。)当時の百恵さんの方が「年上」に思えるのは、イメージによるんでしょうかねぇ。ちなみにこれもインターネットで調べると、百恵さんは、1959年1月17日生まれの現在44歳。(!)1973年5月にデビューして1980年10月に引退。実働(?)7年。引退当時は、やっぱり21歳でしたね。山口もえさんも、バラエティ番組などでは頼りなさそうに見えますが、番組の広報活動でご一緒させてもらったWアナウンサーによると、

「意外にもメインキャスト3人の中で、 一番しっかりしている印象だった。」

とのこと。山口百恵さんは見られませんが、山口もえさんは見られる『メッセージ』は、月曜午後10時の放送です。是非、ご覧ください。(へんなPR!)

2003/2/3
(追記)

代理出産で名を馳せた、
「向井亜紀」
さんと、女性宇宙飛行士の、
「向井千秋」
さんも、1字違いですね。向井亜紀さんの公式HPを見てみたら、「ぜひ会ってみたい人物」として、
「植村直巳さん、向井千秋さん、養老孟司さん、故人でいいなら宮沢賢治」
と、ちゃんと「向井千秋」さんが入っていました。やっぱり一字違いで気になるんですね!私が気になったのは、「故人でいいなら宮沢賢治」と書いていますが、「植村直巳」さんも故人では?それとも「行方不明」なので「故人」とは認められない、いつかは戻ってくるということなのでしょうか?法的には失踪から7年で死亡と認定されると思うのですが・・・微妙な線引きなんだな、これが。
2007/11/6


◆ことばの話1019「流感」

インフルエンザが流行っています。わがアナウンス部でも年明けからバタバタと人が倒れ、「自己管理がなっていない!」
と叱り倒したいところなのですが、「明日は我が身・・・」と思うと、叱ることよりも、
「ゆっくり休んで、早く治しや。」
と、やさしい声の一つもかけてしまう今日このごろ。うがい・手洗い、励行しましょう。
そのインフルエンザ。カタカナで書くと7文字です。それに関して朝日新聞のSさんからメールをもらいました。
「7文字は多いので、なんとか短くしたいのですが・・・。例えば『流行性感冒』の略語の『流感』なんて言葉は2文字で好都合なのですが、あまり使われていないようです。使っちゃまずいですかね?」

確かに最近あまり「流感」って言いませんね。漢字っぽくて敬遠されたのでしょうか。言っちゃダメということもないと思うのですが。ネットのGoogleでまた検索しました。

「流行性感冒」・・・・・・2万8500件
「流感」・・・・・・・・14万8000件
「インフルエンザ」・・・18万7000件

(1月17日しらべ)

やっぱり「インフルエンザ」が多いけれど、「流感」も相当数使われています。
しかし「流感」のサイトは私が見た最初の100ぐらいほとんどすべて「中国語のサイト」でした。ということは日本語ではあまり使われてないのか・・・。
中国語に詳しいT先輩に聞くと、中国ではインフルエンザのことを、
「感冒」(ガンモウ)
と言うそうです。でもネットでは中国語らしき漢字の洪水の中に「流感」がありました。どうなのかな。
朝日のSさんの期待する2文字の「流感」が、人の口の端に再びのぼって流行するよりは、今の「インフルエンザ」が流行る方が確率としては高そうですね。
あ、言うまでもなく、早くこの「インフルエンザ」の流行が終息して欲しいと思っています。

(追伸)

「インフルエンザ」を略して「インフル」とか言うのはどうでしょうか?
ダメ?
そうですか。サントリーの「グレフル」「ピングレ」と間違いそうになりますもんね・・・。

2003/1/30

(追記)

これをホームページにアップした翌日、2月1日の読売新聞夕刊「よみうり寸評」でも「流感」が取り上げられていて、ビックリ!
「言葉には盛衰がある。<流感>という言葉を御存知なら、ある程度の年配の方だろう。正式には<流行性感冒>だが、最近は、ほとんど聞かなくなった。代わって<インフルエンザ>がすっかり定着した。」
という書き出しで、最近のインフルエンザの猛威について書いていました。
「流感」、流行語だったのでしょうね。
今日は節分、「鬼は外!」とともに「インフルエンザも外!!」

2003/2/3

(追記2)

NHK放送文化研究所の塩田さんからメールをいただきました。
「『流感』をGoogle検索したら、中国語のホームページばかりが出たそうですが、Googleは日本のサイトだけを選ぶこともできますよ。」
おお、そうであった!ふだん使っていなかったので、忘れておりました。さっそくそのアドバイスにしたがって検索をし直したところ、 全サイトから「流感」検索・・・・・・・10万4000件
日本語サイトから「流感」検索・・・・・・・・4290件


となりました。日本語で使われている「流感」は、4000件あまり、けっこうまだ使われていますよ。
それにしてもインフルエンザの流行と関係があるかないか、全サイトでの「流感」の使用件数は、1月17日は14万8000件だったのに、今日、2月4日は10万4000件。4万4000件、率にしてちょうど30%も減っています。どうしてかなあ。

2003/2/4

(追記3)

アメリカはボストン在住のIさんからメールをいただきました。

「『流感』という言葉がもうはやらないとは知りませんでした。アメリカでも『インフルエンザ(Influenza)』って言葉は長すぎるからか、日常的には短縮して、

『flu(フルー)』


と言います。」
とのことでした。「フルー」かあ。果たして日本で定着するかなあ。頭とお尻を省略して真ん中だけですねえ。流行んないんじゃないかなあ。

2003/2/8

(追記4)

『ビッグコミック』に連載中の「総務部総務課山口六平太」(原作・林律雄、作画・高井研一郎)の第402話「ある体験学習」の中で、50代後半と思しき総務課長の発言として、
「流感で休んでる者も多くて他の課員たちも忙しく、それで、総務に助っ人要請がかかってね。」
というものがありました。この年配の人であれば「流感」という「語感」も、うなずけました。

2003/3/4

(追記5)

2004年、鳥インフルエンザに感染したニワトリが山口県で見つかり、ベトナムやタイでは死者も出ているということで、牛のBSEに続いてニワトリまで・・・と、もう肉は食べられへんなというふうなイヤな雰囲気が漂っている今日この頃、2月12日の新聞で、 アメリカのデラウエア州で、2例目の鳥インフルエンザが見つかったという1段16行ほどの小さな記事が朝日新聞に載っていました。ワシントンの村山知博記者の署名があります。この記事の見出しが、
「鳥インフル 2例目確認」
「鳥インフルエンザ」では長いから、1段しかない記事の見出しに入らない、そこで短くしちゃいました。「鳥インフル」。「カンフル」みたいですね。「鳥流感」にはしなかったのですね。 そして同じ日の読売新聞の「とれおおど」というコラムでは論説委員の五阿弥宏安氏が、
「史上最悪の『エンザ』」
という見出しの記事を書いています。それによると、1918年にスペイン風邪=スパニッシュ・インフルエンザが世界中で大流行した時、アメリカの少女たちが、 ♪私のかわいい小鳥 その名はエンザ 私が窓を開けた時 エンザは家に飛び込んできたの・・・という歌を口ずさんでいたといいます。「エンザ」とはインフルエンザのことである、と五阿弥氏は書いています。
そして、このスパニッシュ・インフルエンザの惨禍を克明に記述した歴史学者、アルフレッド・クロスビー博士の『史上最悪のインフルエンザ』を読むと「大規模感染症が単に医療の問題ではなく、国家の危機管理の問題であることがよくわかる」とも書いています。 なるほど。このコラムいろいろなことを教えてくれますね。 それにしても「インフル」と略したり、「エンザ」と略したり。「ヤン坊マー坊天気予報」じゃないんだから・・・。

2004/2/13
(追記6)

2004年9月28日の産経新聞の外電の記事にも、
「鳥インフル新たな感染」
という見出しが出ていました。「鳥インフルエンザ」を省略して「鳥インフル」です。下を省略しています。見出しとしては使いやすいでしょうね。

2005/4/1


◆ことばの話1018「ながすぱ」

「ズームイン!SUPER」担当のMアナウンサーが、ジェットコースターに乗るロケに行く直前に、こんなことを言いました。

「実は今まで誰にも言わなかったんですけど、僕ジェットコースターって、だいっキライなんですよね。」

それを聞いたアナウンス部アルバイトのN嬢が、

「ウソー!私、だいっ好きなんですよ。だって楽しいじゃないですか!よく行きますよ、『ながすぱ』とか。」

それを聞いた私、

「ああ、長いスパゲッティね。」
「違います!」
「じゃあ、長いスパナ。」
「そんなわけ、ないやろっ!。」


よく話を聞いてみると、三重県にある遊園地長島スパーランド」のことを略して、

「ながスパ」

と言うらしいのです。

「それって、枚方(ひらかた)パークを『ひらパー』と言うようなもの?」
「そうですね。」
「『ながスパ』なんてそんなこと、誰が言うねん!君だけやろ!?」


というと、

「そんな事はないです、みんな言ってますよ。パンフレットに出て来てもおかしくないくらいですよ、『連休は、ながスパにGO!』とか。」
「若者ぶっちゃって・・・」

「違いますっ!」


と言いながら、すぐにN嬢はインターネットのYAHOO検索で「長スパ」を引きました。すると!
なんと221件も出て来たではないですか!OH MY GOD!!

Googleで検索してもやっぱり221件。ちなみに「ひらパー」は1990件。
「長スパ」ねえ。これって4文字ですから、どっちかって言うと、関東風の略し方ですかね。関西は3文字で省略する傾向がありますから。でも音の響きから言うと、「ズームインサタデー」を略して「ズムサタ」、TVゲームの「ドラゴンクエスト」を略して「ドラクエ」というのに、ちょっと似ているような気がして、関東風とも関西風とも言えない味わいがありますな。どうりで、三重県中京圏にあるわけだ。

2003/1/30


◆ことばの話1017「とらまえる」

「道浦さん、『とらまえる』って、大阪弁ですか?」

とUアナウンサーが聞いてきました。「どうして?」と聞くと、

「知り合いがこの言葉をよく使うのですけど、大阪弁かどうかが話題に上って、私は標準語ではないと思うのですが、その人は標準語だと言い張るので・・・。」


とのこと。
この言葉に関しては以前、妻に聞かれたことがあったので、私はすぐに、

「うん、大阪弁!」

と答えました。念のため、牧村史陽『大阪ことば事典』を引いてみました。あった、あった。すぐに見つかりました。

「トラマエル」=「捕える。つかまえる。」

として用例も2つのっていました。そしてさらに、

「『全国方言辞典』に「とらまえる。静岡、愛知県中島郡、岐阜県大垣、富山、三重県阿山郡、和歌山県東牟婁郡、大阪、愛媛、山口。とらまゆる。京都(片言)・丹波(丹波通辞)」

とありました。静岡、富山より西の関西圏で、かなり広く使われているようです。上にも書いてあるように「とらえる」と「つかまえる」が合体したような言葉ですね。私がこの言葉を初めて耳にしたのは、今を去ること29年前、中学1年生の頃。担任の数学の教師が(この先生は京都出身だったと思います。)、よくこの「とらまえて」を使っていました。「つかまえる」と「とらえる」を間違えて使っているのかと思いました。

そして現在、実は私が木・金曜を担当している「あさイチ」のチーフ・プロデューサーのN氏も、よくこの「とらまえて」を使うのです。奈良在住です。やはり近畿一円で使われているようです。

でも、どちらの人も40〜50歳代。Uアナウンサーが「よく使う」といっている人もそのぐらいの年輩のようです。若い人はもしかしたら使わなくなってきているのかもしれません。
ネットでGoogle検索してみました。

261件

「とらまえる」がありました。思ったより少ないような気がします。年代はわかりませんが、使われている地域は、名古屋、静岡・掛川、岐阜、石川、名古屋、大阪、滋賀、岡山、富山、奈良、和歌山、愛媛(順不同)といったところで、やはり西日本の、広い範囲に分布しているようです。『旺文社国語辞典』にも載っているという記述もありました。

この「とらまえる」、私はどちらかというと、もったいをつけて「とらえる」「つかまえる」と言うような意味の時に使われるような気がしますが、ネット上での記述では、そうとばかりは言えないようです。

まあ、皆さんもよく意味を「とらまえて」使ってくださいね。

2003/1/30
(追記)
10年ぶりの追記です。
きょう、2013年5月19日、日本維新の会の松井幹事長(大阪府知事)が、一連の橋下発言や、みんなの党の渡辺喜美代表の発言について聞かれた際に、
「とらまえ方」
という言葉を使っていました。あらためて、これは関西弁だなあと思いました。

2013/5/19



◆ことばの話1016「ダミー」

1月8日の朝刊各紙に、大阪府豊中市内で引ったくりをした16歳の少年がつかまったという記事が出ました。各紙の見出しは、

読売「スーパー防犯灯は見た!」

朝日「スーパー防犯灯は見た!」

産経「『スーパー防犯灯』は見た」

毎日「スーパー防犯灯が目撃者」

日経「スーパー防犯灯使い初逮捕」

なんと、読・朝・産の3紙がまったく同じ見出し。

この「スーパー防犯灯」というのは、大阪府警が、一昨年10月から府内に58台設置した、24時間録画できるビデオカメラが付いた街灯だそうです。この映像がきっかけで引ったくり犯人が捕まったのは初めてだそうです。で、記事になっているわけ。でも、3紙がそろった見出しって、

「家政婦は見た!」

のパクリというか、パロディですよね。ま、遊び精神とはいえ、みんなおんなじ事考えるのね。プププ・・・。

で、つかまった16歳の引ったくり少年の供述を見てみましょう。

「防犯灯はダミーだと思っていた」(読売)

「被害者には顔を見られていないと思っていたが、まさかカメラで取られていたとは・・・。」(朝日)

「防犯灯があるとは思っていたが、カメラは脅しだと思った」(産経)

「(防犯灯のビデオカメラは)ダミーだと思った」(毎日)

日経は記事が短く、少年の供述内容は載っていませんでした。

少年の話の表現が各紙で微妙に違いますが、読売と毎日が同じ「ダミー」という言葉が使われているので、一番「警察発表」に近い形なのではないでしょうかね。カムフラージュ用の、本物ではないカメラ(のような形をしたもの)を「ダミー」と呼んでいるのでしょう。産経は「ダミー」にあたるところを「脅し」という言葉で置き換えています。

でも「ダミー」ってホントウはどんな意味なんだろうか、と思って辞書(『新明解国語辞典』)を引いて驚きました。

「ダミー(dummy=もと、唖オシの意)」

(1)(裁縫で)人台(ジンダイ)(狭義では、替え玉(の人形)や、身代わり(の会社)を指す。例、「ダミー会社」

(2)(ラグビーで)パスをするとみせかけて、相手をだますこと。

「ダミー」って「おし」だったのか・・・。知らずに使っていました。使っていいのかしら。

それにしても裁縫の「人台(ジンダイ)」って何?・・・調べてみると、確かに見たことがある、あの首から下、腰くらいまでの人形の形をしたマネキンのようなの、あれを「人台」と言うそうです。確かにあれは口をきけませんが、あまりにも直接的なネーミングに、こちらが唖然(あぜん)、です。

とにかく、少年の「ダミー」を「脅し」とした産経新聞は「意訳」ですね。

2003/1/20


(追記)

アメリカ・ボストン在住のIさんからメールをいただきました。

「『Dummy(ダミー)』というのは『dumb(ダム)』のことで、『唖=オシ』ですが、俗語では『バカ』という意味で使うことが多いです。ところで、ボディビルで使う『亜鈴』、英語では『dumbbell(ダンベル)』ですけど、これは『形がベル(鈴)にしているのに音がしない(=唖)』から、そう言うそうです。日本語でも昔は『唖鈴』と表記していたそうです。直訳ですね。」

ひえー、知らなかった!「ダンベル」は「ダム+ベル」だったのですか!
でも「亜鈴」の「亜」は「似ているけど違う」という意味もあるので、直訳の「唖鈴」よりは現在の「亜鈴」の方が良いでしょうね。

2003/2/8


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