◆ことばの話965「ことわざは難しい」

アナウンス部の忘年会が都内某所で・・・ではなく大阪市内某所で開かれ、たいへん盛り上がりました。中でも、若手アナの「常識レベルアップ」を目指して行った「常識クイズ」は、異様な盛り上がりを見せました。その中での珍答をいくつかご紹介しましょう。



(問)価値のないものでも何もないよりまし、ということを
「"何"も山の 賑わい」?
(珍答)「雑草も山の賑わい」「祭りも山の賑わい」
(正解)枯れ木



(問) ベートーベンの交響曲第五番のタイトル名は?
(珍答)「第九」
(正解)運命



(問題)「ボロは着てても心は・・・」"何"?
(珍答)「リッチ」「汚(よご)さず」
(正解)錦



もう、「ボロは着てても心は錦」を知らなきゃ、水前寺清子が怒るよ!と言ったら、
「道浦さん、そもそも水前寺清子を知らないんじゃないですか?」
と言われて、さもありなんと。もう10年ほど前、新人の女の子に、
「水前寺清子の『365歩のマーチ』を知っているか?」
と聞いたら、
「もちろん知ってますよ!『3歩下がって2歩下がる』でしょ!」
と言われたことがありましたが、事態はさらに下がっていますね。あとずさり・・・。



クイズをやってみての感想は、「若者はことわざを知らない」ということでした。結果から見ると、若手でも10問中8問正解した人もいたので、みんながみんな、ことわざなどを知らないというわけでもなかったのですが、やはり、



「え!?なんでそんなこと、知らないの?」



というケースは、まま見受けられました。
日頃からそういったことに関心を持たせるように、さらにわれわれ先輩も努力しなくちゃなあ・・・と考えた夜でした。
あ、10問中2問しか答えられなかったのは誰かって?ま、「言わぬが○」でしょう。



「○」に入る言葉は、さて、なんでしょうね?シミケン!



2002/12/19


◆ことばの話964「99年」

12月12日、お昼のニュースを見ていると、東京女子医大病院の医療過誤関連のニュースをやっていました。その中で、アナウンサーが、



「問題が起きたのはキュージュークネン・・・」



と年号を読んでいました。「1999年」の省略形としての「99年」の読み方です。
私はふだん、



「キュージューキューネン」



と読んでいるので、この「キュージュークネン」という読み方には違和感を覚えました。なぜなら、最初の「9」は「キュー」と読んでいるのに、二つ目の「9」は「ク」と読んでいるから、整合性がないのではないかと思うのです。「クジュークネン」なら、整合性はあるのですが。



今回はせわしない師走なので、本当にせわしなく短かったですね。



2002/12/12


◆ことばの話963「最東端の灯台」

NNN24でテレビ岩手からのニュースを伝えていました。その中で、今年建築から100年を迎える灯台を紹介していたのですが、その原稿が、



「本州最東端にあるこの灯台」



という表現だったのです。「最東端」=「さいとうたん」というのは、西日本に住む私などにとっては、あまり耳慣れない言葉です。まるで、斎藤という人の名前を甘えて呼んでいるような感じです。「さいとーたぁーん」。
「最南端」は、本州最南端の「潮岬」が、近く(でもないけど)の和歌山県串本町にあるので馴染んでいるし、行ったことがあります。また、北海道で聞く「最北端」(宗谷岬)もよく耳にしますし、行ったことがあります。バスの停留所が淋しそうでした。
それに比べると「最東端」と「最西端」はあまり聞いたことがありません。ユーラシア大陸の最西端はポルトガルのロカ岬で、ここには行ったことがあります。宮本輝の小説「ここに地終わり海始まる」でも取り上げられているので有名です。ここは、「日本ではない最西端」「大陸の最西端」ですが、日本の最東端と最西端の岬はどこなんでしょうか?インターネットで調べてみましょう。
(しばし、あって)



あれ?本州最東端の灯台が2つ出てくるぞ!岩手県宮古市のトドヶ崎(トドは魚偏に毛と書くようです。)と千葉県銚子市の犬吠埼。トドヶ崎は「東経142度4分16秒」と書いてあるけど、犬吠埼は書いてないなあ。犬吠埼灯台に電話してみよう。



「すみません、そちらは本州最東端の灯台ですか?」
「いえ、違います。」




なんと!あっさり違うと言われてしましました。



「あのう、インターネットで見ると、そういうふうに書いてあるのもあるんですが・・・。」
「つまり本州最東端ではないんですけど、地球の地軸がずれてる関係で、本州で一番早く日の出が見られる岬ではあるんです。」
「ほほう、そうなんですか。ちなみに東経は何度ですか?」
「ちょっとお待ちください・・・東経は140度52分18,68秒です。」




これでハッキリしましたね。本州最東端の灯台は、さっきNNN24のニュースでやっていたトドヶ崎灯台です。調べてみると、あの映画「喜びも悲しみも幾年月」の舞台になった灯台のようですね。それにしてもインターネットはすごい。
「最○端」にも「日本の」と「本州の」と「本土の」があることも分りました。考えてみればそうか。



<日本の>
最北端=宗谷岬(北海道)
最東端=納沙布岬(北海道)
最西端=与那国島(沖縄県・久部良漁港)
最南端=波照間島(沖縄県・高邦崎)




<本州の>
最北端=大問崎(青森県)
最東端=トドヶ崎(岩手県宮古市)
最西端=毘沙ノは名(山口県下関市)
最南端=潮岬(和歌山県串本町)



<本土の>
最北端=宗谷岬(北海道)※(日本同じ)
最東端=納沙布岬(北海道)※(日本に同じ)
最西端=神埼鼻(長崎県小佐々町)
最南端=佐多岬(鹿児島県)



ふーん、旅行した気分になったなあ。それにしても、もし「最東端」という原稿が出てきたとしたら、僕なら、



「本州でもっとも東にある灯台」



というふうに言い換えて読むと思いますがね。



2002/12/12



(追記)



ホームページにこの項がアップするなり、次々と「最南端と最東端、最北端は違うのではないか?」というご指摘をいただきました。ありがとうございます。インターネットで情報を探したのですが、きっちりとした確認を怠っておりました。皆様からのご指摘によりますと、



日本の「最東端」=南鳥島(マーカス島)
「最南端」=沖ノ鳥島
「最北端」=択捉島



国土地理院のホームページhttp://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/CENTER/center.htmlでもそうなっているとのこと。



また、http://www.mars.dti.ne.jp/~jm1glz/marcus.htmを見ると、南鳥島の碑の写真が、またこちら→http://vldb.gsi.go.jp/cgi/tr_table.pl?410を見ると、沖ノ鳥島が護岸工事で、無理矢理島にして碑を建てられている様子がカラーで見られました。
皆様、ご指摘ありがとうございました。



2002/12/19


◆ことばの話962「ワンフレーズ・ポリティックス」

この長いカタカナですが、12月12日の朝日新聞の見出し、



「首相に『ワンスレーズ政治まずい』電通会長」
というものです。どういうことか記事を読んでみると、11日夜にあった、小泉総理と電通の成田豊会長や俣木盾夫社長らとの会食で、俣木社長が、



「総理のコミュニケーション能力をもう少し発揮して、国民に対してメッセージを発したらどうですか」



と問題提起。成田会長も、



「一言しか言わないみたいに言われるのは、まずいんじゃないですか」



と同調。これに対して小泉総理は、



「ワンフレーズ・ポリティクスと言われるのは心外だ。」
「説明責任を負うのは総理大臣として重要なこと。年明け後にどうするか、いっぺんゆっくり考えてみるかなあ。」




と答えたそうです。なんだ、「ワンフレーズ・ポリティクス」というフレーズを言ったのは、電通の会長ではなく、小泉総理本人だったのですね。確かに、小泉総理というと、



「感動した!」



に代表されるわかりやすさ、簡潔さ、情緒的な印象があり、そのあたりの言葉をさして



「小泉語」



などとも呼ばれ、作家の高村薫さんなども以前から批判しています。政治はもっと複雑なものだと。
簡潔であれば良く分かると言うわけでもありません。同じく12日の読売新聞には、11月23、24日に行われた世論調査の結果として、



「小泉首相が毎日のようにテレビカメラを前にコメントする放送をみて、首相の政策・政治課題についての考え方が分るかどうか聞いたところ、『わからない』とする人が50%で、『わかる』が18%にとどまった」



という結果が出ています。そう言えば、



「言語明瞭、内容不明瞭」



という先輩総理もいましたな。



2002/12/13


◆ことばの話961「視野に入れて」

用語懇談会の席などで、最近よく指摘されるのが、



「○○も視野に入れて、捜査を行なっています。」



といった「視野に入れて」という表現です。言い換えると、
「念頭において」「可能性も考えながら」「計算しながら」
などなど、いろんな表現が可能ですが、割と「視野に入れて」がよく使われるようです。とくにこれが新聞の見出しに来ると、



「殺人罪も視野」
「新党結成も視野」




のように「に入れて」も省略されて、「〜も視野」という型で使われるケースも目にします。
しかし、なんとなくこの言葉、気になると言うか鼻に付くんですよね。
今、新聞協会放送分科会で検討している最中の『新編・放送で気になる言葉』という冊子の中でも「使用には注意したい常套句」の中で「視野に入れて」は、
『「視野に入れて」「〜も視野」「踏まえて」「骨太の」などもあまり使うと鼻に付く。』
と記述されています。



そしてこの「視野に入れる」が一般の人にも少し「ヘン」に映っていることの証拠として、マンガにも登場しました。12月9日(月)発売の「ビッグコミック・スピリッツ」(小学館)に連載されている漫画「カラブキ」(中川いさみ)第58回に「世界の珍しい農業」と題して、



「メジャーリーガーを視野に入れてのイネ刈り」



というキャプションのついた1コマ漫画が載っています。
絵は、腰をかがめたお百姓さんが、田んぼのあぜ道にバットを持って立っている外国人打者(メジャーリーガー)を、顔を上げて見ながらイネ刈りをしている様子が描かれています。つまり「視野に入れて」が、文字どおりの「視野」にメジャーリーガーが入っている、というギャグ。実物を見てもらえると笑えるのですが。
どうもこれから「視野に入れて」という言葉を見ると、このマンガを思い出しそうです。



2002/12/13