◆ことばの話930「きょうの出来事」

「きょうの出来事」という日本テレビ系の老舗のニュース番組があります。われわれも、アナウンサーとして仕事をしている番組です。昔は、大体夜10時台か11時台に始まって終わっていたのですが、最近は番組開始時間が大変遅くなっていて、土曜日やナイター中継が延長された時などは、開始時刻は日付が変わった翌日の午前1時半とか、もう普通の人はふかあい眠りに落ちている時刻になってしましました。



まあ、読む方のアナウンサーも深い眠りに陥りたいと思いながらも垂れ下がって来る瞼(まぶた)と戦いながらニュースをお伝えしているわけですが、そんなこととは別の問題もあります。「時制」です。事件や事故が起こったのは「きのう」というべきなのか、「きょう」というべきなのか。



一応、番組としては、「きょうの出来事」の中で伝えるニュースの時制は「きょう」で統一することになっています。



つまり11月30日夜の「きょうの出来事」が12月1日午前1時に始まって、11月30日午前11時に起こった事件でも「きょう」と言いますし、「今月」と言うことになっています。



ところが!CSでやっている「NNN24」というニュース番組では、午前0時を越えたら、11月30日に起きた出来事は「きのう」と伝えることになっているのです。なんか、整合性がないなあ。NHKなどでは、番組の途中で午前0時をまたいだ時などは、
「日付が変わって昨日になりました」
とかなんとか言うことがあります。正直ですね。
以前、読売新聞の朝刊を紹介する、



「あすの朝刊」




という番組がありました。これが大体日付が変わった午前1時頃にやることが多く、よく視聴者から、



「もう日付が変わっているのだから、『明日の朝刊』はおかしい!『今日の朝刊』だろうが!」とう苦情が寄せられました。「そうなんだけどさ。しょうがないじゃん、そういう番組のコンセプトなんだから。」と当時は思いましたが、そういった声に応えたのか、しばらくしてその番組のタイトルは、



「ハーイ、朝刊」



というタイトルに変わりました。「ハーイ、朝刊」・・・ガックリ、と思っていたら、しばらくしてその番組は終わってしまいました・・・。



明日だの今日だのということにとらわれていたら、かえって大変なことになるということなのでしょうか???



「きょうの出来事」は大丈夫だろうか。心配になってきた!?



2002/11/26

(追記)

電車の中で、2004年12月16日に発行された「夕刊フジ」を読んでいた時のこと。
平沼拉致議連会長の私設秘書(41歳)が、
「12月13日深夜」
に、東京都港区の中華料理店に入り店員に暴力をふるい逮捕されたとのこと。それで、暴力をふるったのは、
「翌14日午前零時前に」
と書かれていました。これはおそらく、
「13日午後11時55分頃」
のことなんでしょうね。コトが行われている間に日付が変わってくる、「足掛け2日」状態だと言うことのようです。「14日」と書かれているけど「13日」の出来事です。

2005/4/15


◆ことばの話929「ポールのマイド」

元・ビートルズのポール・マッカートニーが来日公演を行ない、話題になりました。大阪公演は何を隠そう、読売テレビの主催です。11月17、18日の2日間で7万人近いファンが大阪ドームに集いました。私は行かなかったんですが、行った友達や弟に聞くと、「大変良かった」とのことです。
そのコンサートで、ポールが、
「マイド!」
「オーキニ!」

を連発していたというのを聞きました。それ以外にも、1回だけですが、
「モウカリマッカ!?」
とも、会場に向かって言ったそうです。
それに応えて、満員の観客は当然、
「ぼちぼちでんなー!」
と答えたのだろうか?と思って17日のコンサートに行ったUアナに聞くと、
「それはなかった」
とのこと。念の為、18日のコンサートに行った弟に聞くと、
「周りの人は言うてたで」
というではないですか!さすが大阪人はやるなあ。ボケとツッコミあっての大阪人ですから。
それにしてもポールったら、そこまで大阪弁を習得してくるなんて・・・東京公演では、何か東京弁でしゃべったんですかね?
大阪でのコンサートの最後にポールは、
「ホナ、サイナラ」
と言ったとか言わないとか・・・。それとも、
「アンタトハ、ヤッテラレンワ」
と言ったのでしょうかね。



2002/11/26


◆ことばの話928「めっきり」

めっきり寒くなってきましたね・・・の「めっきり」が気になってしまいました。
「めっきり」ってどういう時に使うんでしょうか?考えました。



*急激に何かの変化があった場合
*その変化が目に見えて、というか肌に感じて、誰にでも明らかなぐらい激しい時



確かにそういう傾向はありますね。
以前、「○っ△り」という型の言葉について考えましたが、(平成ことば事情281「ぐっすり、どっぷり」をご参照下さい。)この型の小さい「っ」は、強調を表していますから、「っ」を取った形では「めきり」になります。「目」を切るかな。でも「くっきり」は「く」を切るわけではないからな。「めっきり」の「きり」は、「きりっと」「截然と」というイメージを伴うのかもしれませんね。「きっかり」「しっかり」とか「り」の前の「カ行」にはそういうイメージを想起させるものがあるようです。
「めっきり」の後に来る言葉で思いつくのは、
「減る」「衰える」「見えなくなる」「勢いがなくなる」
など、なんか、あまりいいイメージではない言葉が多いように思えますね。
例文としては、



「最近、めっきり白髪が増えて・・・」
「このところ、めっきり体力が落ちて・・・」



というふうに、どちらかというと「マイナス評価の方向に、その変化が起きた場合に」使うのではないでしょうか。マイナスの方向というのは、言うまでもなく「望ましくない出来事」と置き換えることも可能でしょう。



「どうしたの、めっきりやせて・・・」
とは言っても、
「どうしたの、めっきり太って・・・」
とは言わないような気がします。シャレなら別ですが。
でも、とっても太っていて「やせたいやせたい」と思っていた人がダイエットでやせた場合は、「めっきりやせて」というのはプラス方向の評価だな。
と思った瞬間、ほかにも「マイナスでない使用例」を思いつきました。



「あいつ、このところ、めっきり腕を上げたな。」



これはプラスの意味での使用例。



「彼女、秋以降はめっきり姿を見せなくなったね。」
これは、どちらかといえばマイナスだけど、プラマイ・ゼロに近いかな。
うーん、マイナス評価ばかりではないなぁ。でも使われるケースは、最近マイナス方向の方がめっきり増えたと思うのは私だけかしら。この前、「社内で男で『かしら』を使う人は道浦さんとSさんぐらいです」と誰かに言われたな。めっきり落ち込んだな。なにも落ち込む必要はないのだけれど。



2002/11/25
(追記)
飯間浩明さんの「きょうのことばメモ」の2006年2月21日で、「めっきり暑くなる」というタイトルで「めっきり」を取り上げてらっしゃいます。それによると、「めっきり」という副詞は、主な辞書では「目立って変化するさま。」(『岩波国語辞典』第6版)などと説明され、意味の周辺にある語感として「勢いがなくなる方向への変化」という要素があるように思われるが、「増える方向への変化」にも使われる例があることを記してらっしゃいます。
2006/3/10


◆ことばの話927「ハゲ山」

夕方ニュースの直前、Sキャスターから内線電話が。受話器を取ると、
「道浦さん、“ハゲ山”はOKですか!?」
ニュース原稿の中に、「ハゲ山」という言葉が出てくるというのです。「ハゲ」は差別語ではないか、ということです。まあ、差別語ではないけれど、「不快語」ではあるわな。聞いて不快に思う人がいることは確かだけれど、比喩として無生物に使われているものに文句をつけることはないだろうし、一般的にはOKでしょう。「禿山の一夜」という芸術作品もあります。もう消えてしまったかに思えるけど、「お山の杉の子」という童謡もありました。あの歌詞の中に「ハゲ山」が出てきましたね。あの曲は確か昭和16年(1941年)作だったと思います。たしかこの間「ラジオ深夜便」(NHK)でそんな話をしていましたから。
去年(2001年)5月に出した「読売テレビ放送用語ガイドライン」の47ページに私が書いた「実践用語メモ3・チビ、デブ、ハゲについて」のなかで「ハゲ」についても触れています。
『ワイドショーで、青森県鶴田(つるた)町で行われたお年寄りのイベントを紹介しました。それを見ながらキャスターが、
「みなさん、よくハゲてますでしょう?」
と言ったので驚いたのですが、これは「ツル多はげます会」という会の行事で、皆さん、自分のハゲ具合を自慢する会だったということでした。
ハゲている人たちが「ハゲます会」をやっているからといって、部外者が「ハゲてますね」と言うと怒られることもあります。「自信は劣等感の裏返し」というケースもあるからです。放送という不特定多数の人を相手に、勝手に相手の耳や目に言葉が飛び込んでしまうメディアとしては、そのあたりにも配慮をする必要があります。』
しかし、だからといって「ハゲ」や「ハゲ山」は絶対使ってはいけない言葉、というわけでもないのです。
11月22日の読売新聞の「編集手帳」で、東京管内で20年以上連載している「こどもの詩」を紹介していました。名作の一つとして紹介されたのが、栃木県の小学一年生の詩「おとうちゃん大好き」です。
「おとうちゃんは カッコイイなぁ ぼく おとうちゃんに にてるよね 大きくなるると ぼくも おとうちゃんみたいに はげるといいなぁ」(1987年6月掲載)



そうです、カッコイイんです、おとうちゃんは!ハゲてるからこそ。
以上。ハゲマシのメッセージでした。



2002/11/25


◆ことばの話926「にても」

明石家さんまさんの「踊る!さんま御殿」という番組の再放送を土曜日のお昼(11月23日)にやっていました。その番組の最後に、画面上に字幕が出ました。



「ひと言体験談募集中。ホームページにても受付中」



なんだって!?「にても」?ヘンなの。
普通、話し言葉ではまず「にて」を使いません。「で」を使います。だから、
「ホームページで募集中」
で良いのです。それが、もとの形が
「ホームページにて募集集」
とまずやってしまって、「そこでもやってますよ」の強調の「も」をつけたところ、
「にても」
が生まれたのでしょう。なぜ話し言葉では「にて」を使わないか。それは「にて」が書き言葉、文語だからです。絶対使ってはいけないということではありませんが、テレビは、やはり話し言葉をベースとしたメディアなのです。
ところが以前、毎日放送の三好さんに伺ったのですが、「興行」の世界では、「で」は「出」につながり縁起が悪いから使わずに、「にて」を愛用する傾向があるそうなのです。忌み言葉ですね。同じく「○○日から公演」という「から」も「空(から)」に通じて「お客がカラ」を想起するので、「より」を、より好むという話も聞きました。そんなこととは露知らず、「にて」を使ってしまったテレビ屋さんが、それに「も」を付けてしまったのがこの「にても」なのではないでしょうか。
「にても」と聞くと、私はつい「外郎売」のセリフ、
「にてもやいてもくわれぬものは(煮ても焼いても食われぬものは)、五徳、鉄球、金熊童子に・・・」

というのを思い出してしまいます。



2002/11/23

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