◆ことばの話790「アイススポット」

残暑お見舞い申し上げます・・・というのがためらわれるほど、急に涼しくなりました。今年は季節の移り変わりが早く、はっきりしているように感じられます。とは言うものの、今日(8月25日)の大阪の予想最高気温は34度。まだまだ昼間は暑い。
で、今回はちょっと涼しく聞こえる、こんな言葉をプレゼント。
「アイススポット」
ってご存知ですか?アイスクリームを売っている場所?氷屋さん?涼しい空気が流れているところ?
ブーッ、違います。正解は7月26日の毎日新聞に載っていました。その記事の冒頭に出てきます。
「携帯電話も鳴らないIT(情報技術)を遮断した『アイススポット』で過ごしたい」
ということで、「アイススポット」の正解は、
「携帯電話やメールなどの電子機器から遮断された空間」
ということでした。
総務省の研究会である「ネットワーク・ヒューマン・インターフェース研究会」という所が発表した調査報告に、この研究会の造語として出て来るのが「アイススポット」です。そもそも、無線LAN(構内情報通信網)が使えることを示す言葉で「ホットスポット」というのがあるそうなのですが、その反対語として作られました。
IT化を進めていく中で、息詰まる人たちがホッと一休みできる空間が、「アイススポット」なのだそうです。ホットできるのにアイスとはこれ如何に?
でも、アナウンス部でただ一人、いまだにケータイを頑なに持たないでいるHアナウンサーなんかは、ずーと「アイススポット」に入ったまま・・・というより、前と同じところにいただけなのに、周囲が「ヒートアイランド」で「ホットスポット」になっちゃって、自分の場所だけ氷河期(「アイスエイジ」はアニメ映画か。)になったようなもので、どうでもいいのだけれど。
この報告書は、総務省のホームページでも見られるそうなので、興味のある方はどうぞ。
でも、そんなの見る人は、「ホットスポット」に生きている人なのでしょうね。どうも矛盾しているような・・・。
ちなみにGoogleで「アイススポット」を検索したら、155件出てきました。また、総務省(つまり旧・郵政省ってことね)のホームページの報道発表資料の7、8月分を見たのですが、なーんかタイトルがわかりにくくて、「アイススポット」の「ア」の字もなくて、それ関連のページを見つけることができませんでした・・・・

2002/8/25


◆ことばの話789「ほくそえむ」

「ほくそえむ」という言葉がニュース原稿に出てきました。ふだんあまり使わない言葉です。
念のため辞書(広辞苑)を引いてみました。

「ほくそえむ(ほくそ笑む)」
物事がうまくいったと密かに笑う。ほくそわらう。


思った通りの意味で安心しましたが、その意味の前に、こんな一文が。

一説に、ホクソは『北臾』で、塞翁(さいおう)の意という」

「北叟(ホクソ)」ってなんじゃ?「塞翁」は「人間万事塞翁が馬」の「塞翁」?ホクソを広辞苑で引いても載っていません。
「塞翁」は、載っていました。

「辺境の砦に住む翁。北の翁。」

あ、それをホクソとも言うのか。「北」は「辺境な地」だったんですね。北方差別や。「叟(そ)」は「翁」という意味か。それにしても、それがなんで「笑む」のかな?
そう言えば、「ウワ」が「バム」から「ウワバミ」という落語がありましたが。その落語のオチは、

熊「へぇー、ウワはバミますかね?」
隠居「バむ。バマないと“ウワバミ”にならねぇ。」

動詞の連用形がそのまま名詞形になる一つの形ですね。
この場合も「ホクソが笑まないと“ホクソエム”にならない」なんて言うんじゃないでしょうね。
「実は、そのとおり」
と、どこかでほくそ笑んでいる人がいたりして。
どなたかご存知の方、ご教示ください!

2002/8/15


◆ことばの話788「学名の差別語」

7月30日の朝日新聞・夕刊の文化面「単眼複眼」というコラムに、こんな記事が載っていました。見出しは、
「地方博物館から好論文集〜差別表記などに切り込む」
というものです。そこでは徳島県内の博物館に勤務する学芸員や関連施設の専門職員の手による論文集「地域に生きる博物館」(教育出版センター)という書物を取り上げています。
その中の論文の一つ「博物館における生物の差別的和名の使用」佐藤陽一氏は、
「日本では動植物に今日の感覚で考えると明らかに問題がある『メクラチビゴミムシ』『メクラガメ』等の名前がつけられているケースが少なくない」と指摘。実際に全国354の博物館や動植物園を対象にアンケートを行ったそうです。それによると、13%の施設が差別的和名の使用の可否を検討したことがあり、「検討の必要性を感じている」と合わせると45%が「検討した方がいい」と考えているそうです。また、実際に名前の「言い換え」をしたり展示中止や展示物の交換を行ったことがある館が47館もあるというのです。
私も以前から、この動植物の差別的和名に関しては気になってはいましたが、現場ではどう考えているのかまで調べたことはありませんでした。
しかしこの記事が朝日新聞にしか載っていないことや、「検討した方がいい」が45%ということは、「検討する必要がない」と考えている専門家が55%、つまり 過半数であるという当たり前の事実に、この記事は触れていないこと、そして展示中止や展示物の交換をした館が、アンケートの対象になった354館のうち47館ということは、率で言うと13%。おや?これは最初に出てきた「検討の必要性を感じている」という施設の割合と全く同じである、ということなどから考えると、
「必ずしも『動植物の差別的和名についての検討する』というムーブメントが大きいとは言えないのではないか」
というふうに見えます。
考える必要はあるとは思いますが、「展示中止」はどうなのかなあ。動植物になんの罪もないのに、その名前故に「展示中止」というのも、なにか「納得が行かない」と、当の動植物は思っているのではないでしょうか。
どうでしょう?

2002/8/21

(追記)

NHK放送文化研究所の塩田雄大さんからご指摘いただきました。

「学名とは『学術研究上、統一的にラテン語(化させた形式)で付けられた動植物名の名称』であって、『メクラガメ』などは『学名』ではなく、『(標準)和名』というのが正式な用法です。」

ありがとうございました。そういう事ですので、タイトルは「学名の差別語」ですが、言いたいのは「(標準)和名の差別語」ということです。よろしくお願いします。

2002/8/29

(追記2)

この話題に関して以前にチェックしていた新聞記事の切り抜きが出てきました。
今年6月27日産経新聞の「チャイム」というコラム。東京・上野動物園で、ジャイアントパンダ、オカピと並ぶ世界三大珍獣の一つ、

「コビトカバ」

の赤ちゃんが誕生したという記事でした。写真も載っていますが、赤ちゃんはともかく、お母さんは大きそうですよ。
動物園の職員のコメントは、

「コビトカバの研究が進むという意味でも朗報だ」


でした。

2002/9/2

(追記3)

『読売テレビ放送用語ガイドライン』(2001・5)にもこの関連の記事が載っていました(72〜73ページ)。
1999年5月15日に毎日放送で放送された「新見分録〜和歌山・南紀の海に生きる人々」の中で串本海中公園センターで、海に住む珍しい魚を紹介する中で、
「イザリウオ」
をスーパーで出してよいかどうかという問い合わせが現場であって、海遊館に問い合わせたところ、
「魚の動作から名づけられたものだから差別的な感じはない。」
とのこと。ほかに言い換えられるような名称もないことからそのまま放送したが、苦情などはなかったということです。
「イザリウオ」は、硬骨魚網アンコウ目イザリウオ科の魚だそうです。

2002/9/12


◆ことばの話787「ロンドン警視庁」

読売新聞校閲部が出した「新聞カタカナ語辞典」(中公新書ラクレ、2002、5、25)を、読んでいます。ようやく「ス」のところまで来ました。先は長いです。

その「ス」のところで、

「スコットランドヤード」

というカタカナ語にぶち当たりました。子供の頃、ホームズものを読んでいた時から、もう「30年来のお付き合い」の言葉です。このカタカナ語辞典に書いてある通り、

「ロンドン警視庁の通称」

ですね。しかし、改めてそれを見て、「おや?」っと思いました。
というのもあのコロンボ警部が所属しているのは「ロサンゼルス市警」だったはず。それならなぜ、日本語の訳語が「ロンドン市警」ではなく「ロンドン警視庁」なのでしょうか? そういう疑問を持ちつつさらに読み進むと、さすが、しっかりその答えが記されているではありませんか。 「訳語の『ロンドン警視庁』というのは首都ロンドンの警察であるため、東京を管轄する警視庁にならってつけたもの」

なーるほどー。やっぱりね。

じゃあ、フランスのパリの警察は「パリ警視庁」、アメリカ・ワシントンの警察は「ワシントン警視庁」、ドイツでは前は「ボン警視庁」と言っていたけど今は「ベルリン警視庁」かな?ニューヨークは首都じゃないから「ニューヨーク市警」か。

スリランカなんかすごいですよ、1984年までは「コロンボ警視庁」だったのに、1985年からは「スリジャワルデネプラ・コッテ警視庁」ですか?コロンボはロス市警だってーのに。いや、そうじゃなくて。

本当にそうなんでしょうか。どこの国でも首都の警察は「○○警視庁」と呼んでいるのでしょうか?

ちょっと調べてみるか。インターネットの検索エンジンGoogleを使いました。その結果は、

ロンドン警視庁・・・1420件

ロンドン市警・・・・・113件

やはり「ロンドン警視庁」が圧倒的に優勢。でも「ロンドン市警」も頑張ってますね。 ほかの首都も見てみましょう。アメリカから。

ワシントン警視庁・・・・0件

ワシントン市警・・・・・238件

おや?これはどうしたことかな??? ワシントンには警視庁はないようです。同じアメリカで、ロスを見ますか。

ロス警視庁(念のため)・・・・・・・0件

ロサンゼルス市警・・・944件

ロス市警・・・・・・2600件

911件ではないようです。ロス市警、さすがにコロンボ警部がいるだけに、よう働いとりまんな。ニューヨークも見ましょか。

ニューヨーク警視庁(念のため)・・・・0件

ニューヨーク市警・・・・・・・・3250件(!!)

さすが(?)かつて「犯罪都市」と言われたニューヨークやねえ。スゴイ・・・。

次はドイツ。ここはボンとベルリンと両方見てみましょう。まず、時節柄、盆から、いや、ボンから。

ボン警視庁・・・・・1件

ボン市警・・・・・・0件

事件が少ないのかな?ボンだから。正月はどうだろうか。続いてベルリン。

ベルリン警視庁・・・・7件

ベルリン市警・・・・13件

首都になって事件が減ったか?次は、フランス。

パリ警視庁・・・・647件

パリ市警・・・・・291件

おお!やはり事件多発、頑張っていますな、警視庁も市警も。大阪府警並みです。

次はイタリア。

ローマ警視庁・・・5件

ローマ市警・・・・19件

あまり捕まえたりしないのではないでしょうか、「自転車泥棒」とかは。ついでにバチカンにも寄ってみるか。

バチカン警視庁・・・0件

バチカン市警・・・・1件

バチカン警察・・・・7件

なるほどなるほど。

そして、カナダ。

トロント警視庁・・・1件

トロント市警・・・・19件

最後にG8の残る一つの国、ロシア。

モスクワ警視庁・・・・0件

モスクワ市警・・・・・95件

警視庁というイメージじゃないのかな、モスクワは。やはりKG used B(元KGB)

私の好きなスペインも。

マドリード警視庁・・・・0件

マドリード市警・・・・95件

マドリッド警視庁・・・・0件

マドリッド市警・・・・・3件

ついでにバルセロナも。

バルセロナ警視庁・・・・0件

バルセロナ市警・・・・・2件

スペインに警視庁はありません。逢坂剛さんの作品でまた確認してみます。 お隣の国・韓国は?

韓国警視庁・・・・3件

ソウル警視庁・・・・6件

ソウル市警・・・・211件

フーム、そうか。オーストラリアはどうかな?

キャンベラ警視庁・・・・0件

キャンベラ市警・・・・・1件

事件少ないのかな?シドニーは?

シドニー警視庁・・・・・0件

シドニー市警・・・・・・3件

やっぱり事件少ないんだ。 では、シャレで出てきたスリランカ。

コロンボ警視庁・・・・0件

コロンボ市警・・・・・0件

スリジャヤワルデネプラ・コッテ警視庁・・・・0件

スリジャヤワルデネプラ・コッテ市警・・・・・0件

・・・・でしょうね。 そして、本家「警視庁」はと言うと・・・・。

警視庁・・・12万4000件

市警・・・・・1万5200件

東京警視庁・・・・843件

東京市警・・・・・・20件

という結果でした。

必ずしもその国の首都の警察を「○○警視庁」と読んでいるわけではないけれども、主だった国の「首都警察」は、「○○警視庁」と呼ばれていることが多そうです。(もちろん日本での話ですが。)

まとめると、ネット上で「首都警察」を「○○警視庁」と呼んでいる国は、(日本を別として)

イギリス(ロンドン警視庁)=92,6%(1420件)

フランス(パリ警視庁)=69,0%(647件)

ドイツ(ベルリン警視庁)=35,0%(7件):ボン警視庁=100%(1件)

イタリア(ローマ警視庁)=20,8%(5件)

カナダ(トロント警視庁)=5,0%(1件)

韓国(韓国警視庁、ソウル警視庁)=4,1%(9件)

一方、「警視庁」と呼んでいない国(呼ばない率100%)は、

アメリカ(ワシントン市警)=238件

バチカン市国(バチカン市警、バチカン警察)=8件

ロシア(モスクワ市警)=95件

スペイン(マドリード市警、マドリッド市警)=98件

オーストラリア(キャンベラ市警)=1件

というふうな結果になったわけです。

これで見る限り、首都警察を「○○警視庁」と呼ぶ習慣がほぼ定着している(50%以上)のは、「ロンドン警視庁」と「パリ警視庁」だけと言っていいでしょう。

さすが、ホームズとルパンの国。その翻訳本が古くから出ていたことも関連があるんでしょうね。でもなぜ「ワシントン警視庁」とは言わないんでしょうねえ。

2002/8/14
(追記)

「ボーン・アイデンティティ」というスパイものの映画のDVDを借りてきて見ました。その中に出てきたパリの警察の呼び方(日本語字幕)は、
「パリ警察」
でした。
2004/1/14


◆ことばの話786「センコーを手向け・・・」

お盆です。 ご先祖様や亡くなくなった方の霊を弔う季節です。

ちょうど、そんな時期に日航ジャンボ機墜落事故は起きました。1985年8月12日。あれから丸17年が経ちました。

その関連のニュースで、Uキャスターが、

「遺族は、線香を手向けて犠牲者の冥福を祈りました。」

というニュース原稿を読んでいました。

それを耳にした私は「ん????」と耳を疑いました。彼女は「線香」のことを、

「センコー(LHHL)」(Lは低く、Hは高く読む)

というアクセントで読んでいたのです。

え??「先公」を手向ける???そりゃいかんやろ。恩師にそんなことしちゃ失礼極まりない。・・・不謹慎ながら、想像してしまいました。

「線香」という意味ならば、

「センコー(HLLL)」

というアクセントで読んでもらわないとご先祖様に申し訳が立たないですだ。

なんでそうなっちゃうかなあ。

アクセントがちょっと違うだけで、エライ事になる、という話でした。

以後、こんな事がないように気をつけるそうです。

2002/8/12
(追記)

久しぶりにこの発音を聞きました。
2007年12月3日、長野県で火事があり4人が亡くなった事故の中継で、テレビ朝日系列の長野県の放送局の、おそらく記者の方だと思うのですが男性のリポーターが、火災の原因について報告していました。
実はこの家は前の日におじいさんが亡くなり、その通夜で、夜通しろうそくの火を絶やさないようにしていたようなのですが、どうやらそれが火災の原因ではないか、という話でした。その中でリポーターは、
「線香の火やロウソクの火が、火事の原因となったのではないかと見て」
と言っていたのですが、その「線香」のアクセントが、
「センコウ(LHHL)」
で、「先公」と同じでした。長野方言のアクセントでは「線香=先公」なのでしょうか?
2007/12/3