◆ことばの話745「新喜多」

読売テレビは、大阪市中央区城見2−2−33にあります。寝屋川という川を挟んで向かい側は「新喜多」という地名。



先日そこで、男の子の遺体が川に浮かんでいるのが発見されました。そのニュースで後輩のWアナウンサーは、この地名を



「しんきた」




と読んでしまいました。でも本当はこう書いて、



「しぎた」




と読むのです。その後すぐ訂正を入れましたが、会社のすぐ近くだけにちょっと恥ずかしかった・・・。



ところで、この地名の由来が、川のすぐ側にある小さな看板に記されているのを見つけました。それによると、このあたりは昔、新田として開発されたところで、その開発にあたったのが、



鴻池屋 新十郎




鴻池屋 喜八




今木屋 多兵衛




という3人だったことから、3人の名前の頭文字?を一字ずつ取って、



「新喜多新田」




と名づけたのだそうです。ただ、それを「しぎた」と呼んだのか、「しんきた」と呼んだのかに付いては、その看板には書いていませんでした。



しかし、地名というのは調べてみると、意外な由来があるものなのですね。ある意味では、結構安易に名づけられているのだな、という気がしました。一つ、賢くなりました。



2002/7/25


◆ことばの話744「元少年」

日本中を震撼させたあの神戸小学生連続殺傷事件。「酒鬼薔薇」と名乗った少年Aは少年院で更正中です。犯行当時の1997年には中学三年生で14歳でしたが、あれから5年あまり経って20歳になりました。



本来、20歳になったら「少年院」は退院させられるのですが、彼に関しては神戸家裁が「今後なお2年半の少年院での収容を継続すべきだ」との決定を下しました。



そうすると、マスコミでの彼の表記に少し変化が出てきました。犯行当時は紛れもなく「少年」だったのですが、「20歳=成人」になったことによって、年齢上現在は「少年ではない」状態になったのです。そのため「少年」を指すのに各新聞はどう表記しているのか、7月13日付・朝刊をチェックしてみました。



(読売)男性



(朝日)男性



(毎日)男性



(産経)元少年




日経は13日にこの記事は載っていませんでした。



でも「男性」はわかるとして、産経の「元少年」は、違和感がなきにしももあらず。言わんとするところはよく分かるんですけどね。


わが読売テレビは、どう記述したか?そのまま「少年」で放送していました。(7月12日)なぜかというと・・・チェックミスでした。今後は「男性」で行くことにしたそうです。



こういった、「事件などを起こした当時と現在で“呼び名”が変わった場合にどうするか?」ということは、これ以外にもあります。たとえば最近では「看護師」。今年3月1日以前は、女性の看護師は「看護婦」と呼んでいたわけですが、最近は各マスコミが「看護師」を使うようになった中で、事件当時に「看護婦」だった人をどう呼ぶかで頭を悩ませることがあります。


また、省庁の名前も去年の1月6日から変わりましたが、それ以前の出来事に関して、毎回毎回「当時の厚生省」という呼び方をするのも、結構、面倒なことですね。



しかし新しい名称というのも「慣れ」の問題ですから、慣れてしまえば違和感を覚えなくなってしまうのでしょうね。


2002/7/18


◆ことばの話743「ハイジ」

「ズームイン!!SUPER」の8時前頃に、近畿各地のパン屋さんを紹介するコーナーがあります。今朝(7月18日)も国木田かっぱさんが、阪急・相川駅近くのお店から生中継していました。いろんなおいしそうなパンを紹介していたのですが、その中に真っ白い小麦の粉がパウダーのようにかかった白いパンがありました。中身は激辛カレーなんですが、このパンの名前は、



「ハイジの激辛カレーパン」



というのですが、かっぱさんとやりとりをしていたNアナウンサーは、「ハイジ」という名前を知っていました。なんで白いパンを「ハイジ」と言うのか?彼女に聞いてみると、



「いえ、私は、白いパンの名前が“ハイジ”と言うのが多いのは知っていましたが、なぜそう呼ぶかは知りません。」




という答えでした。インターネットの検索エンジンgoogleで「ハイジ、パン」をキーワードで検索してみると、8500件も引っかかりました。さらにキーワードを「白、由来」と増やして絞って検索すると、それでも231件もありました。その中からいくつか見てみると、やはりアニメ「アルプスの少女ハイジ」が起源のようですね。



その中でハイジの友達ペーターのおばあさんの大好物が「白いパン」で、それをハイジが大切にとっておいた、ということがあったようなのですが、決定的な答えは見つかりませんでした。



アナウンス部アルバイトの女性Iさんに聞いてみたところ、



「私の知っている奈良のパン屋さんでは、白いパンで中に生クリームが入ったパンが『ハイジ』、中にチョコレートクリームが入ったパンは『クララ』という名前で売っています。」
とのこと。今度、パン屋さんで聞いてみようと思います。



由来をご存知の方、お知らせください、是非!



2002/7/18


(追記)



その後いろんな方から「白くて柔らかいパンを"ハイジのパン"という」というのを聞きました。今日、自宅近くの生協のパン屋さんでも、



「ハイジのパン」
という名前で売っていました。



中学時代の友人から「ホームぺージ、見たよ」とメールが来ました。彼によると、きっと白いパンを「ハイジ」と名づけたのは、われわれと同世代の人ではないか、ということでした。そして彼が小さい頃に読んだハイジの物語を引用させてもらうと・・・・・



「叔母によっておじいさんのところから無理矢理クララのところに連れてこられたハイジは、そこで生まれて初めて白いパンを見たのでした。ハイジがいつも食べていたパンは、漂白していない小麦で作ったパンで、表面が黒く固いものばかりだったのに、そのパンは表面が白く、皮もやわらかいものでした。ハイジは『ペーターのおばあさん』が『最近、歯が弱ってきてパンが食べられない』といつも言っていたのを思い出し、出された白いパンを食べずに、いつかおばあさんに食べさせてあげようと取っておいたのでした。結局、パンは固くなり、ハイジは泣いてしまうのですが、その話を聞いたクララのお父さんは、いつか『ペーターのおばあさん』にやわらかい白いパンを届けるとハイジと約束したのでした」




ということです。で、彼はやわらかい白いパンを見ると、「ハイジ」を思い出してしまうそうです。私はあんまりそういうのは覚えていないのですが。そうだったのか。



あのパンは「HOKUOU」というパン屋さんが10年以上前に売り出した頃から、好物ではあったのですがね。



2002/8/4




(追記2)



2003年1月5日、新年初出勤の朝、朝飯のパンを買おうとJR天王寺駅構内のパン屋さんに入ったところ、
「アルプスの白いパン」
という名前のついたパンを見つけました。そこにはやはり「アルプスの少女ハイジ」に出てくるフワフワの白いパンという例の話が、小さなかわいい文字で書いてありました。
白いフワフワのパンを「ハイジ」と命名したのは誰かは分かりませんが、語源はこれで確定のようですね。



2003/1/14


◆ことばの話742「リストラ対応商品」

景気は上向いたとか政府は言ってますが。どうなんでしょうね。
温度計のメモリは確かに上向いています。昨日(7月24日)なんて、神戸は37,7度ですよ!!



昨日発表された警察庁の「自殺者の統計」によると、自殺した人は全国で4年連続して3万人を越えたとか。交通事故の死者が1万人行くかどうかというのに、その3倍もの人がみずから命を絶っているんです。しかも生活苦が理由と思われる人が6800人余。ハァー・・・。



会社からの帰り道の、駅へつながる通路で、カバンを並べて売っている50代と思しき男性がいました。商品のカバンは、あまり上等には見えません。いわゆる「バッタ屋」のような感じなのですが、そのカバンの間に手書きで置かれたダンボールの紙の文字に目を引きつけられました。そこには、こう書いてあったのです。



「リストラ対応商品」




これは、どういう意味なのでしょうか?



普通に考えると、以下のようなことが考えられます。


  1. リストラされて再就職する時、面接などに持って行くのに対応したカバン
  2. リストラされたカバン会社から、「給料の代わりだ」と言って渡された商品のカバン
  3. このカバンを持っていれば、リストラなどされないという優れもののカバン
  4. その他


さあ、答えを書きなさい、って、一体全体これはなんの意味があるんでしょうね?



もっと丁寧に書いてよね。



答えは、このカバンを売っている、貧相なめがねをかけたおじさんに聞けばわかるのですが・・・・こわくて聞けない。



実を言うと、このカバン屋さんをここで見るのは2回目なのですが、前回よりも商品の数は確実に減っているのです。・・・売れたのかな、リストラ対応商品・・・・。



2002/7/25


◆ことばの話741「水菓子」

皆さんは「水菓子」というと、どういったものを思い浮かべますか?



水ようかん、ゼリーなどを思い浮かべた方、「ブーッ」!不正解です。



本来「水菓子」というのは「果物」のことを指したのです。しかし、今は先ほどあげたような、水分を含んだ涼しげな和菓子を指して「水菓子」ということも多くなってきているようなのです。



その証拠?に、「新明解国語辞典」(三省堂)で「水菓子」を引くと、



「『果物』の意の老人語」




とあるではないですか!「老人語」ですよ。結構、この言葉を使っている人はショックでしょうね。「広辞苑」(岩波書店)はそっけなくひとこと「果物」としていますが、いまや「同義語」と言えないのではないか、と言うよりも同じような頻度では使われていないことは確かです。



先日、ワールドカップ観戦で大分の別府に行った時に、たまたま、目に付いた和菓子屋さんの店先ではためいている「のぼり」の文字が、



「水菓子まつり」




でした。店内に入ってみると、果物を使ったゼリーのような和菓子をさして「水菓子」と呼んでいるようです。



「旬菓・水菓子祭り」
として販売されていたのは、「アロエヨーグルト羹」「トマト羹」「メロン羹」「ピーチ羹」「くず桜」「水まんじゅう」「小豆とうふ」「抹茶とうふ」「わらびもち」でした。



ちょっと珍しい「トマト羹」を買って食べてみると、中に丸ごと入っているプチ・トマトはおいしかったのですが、ちょっと甘ったるかったかな。200円。



お店の人に聞いてみると、特に違和感なく、羊羹やわらびもちのような種類のお菓子を「水菓子」と呼んでいるようでした。



ちなみに、我が家の近くの生協では、同じような菓子を置いたコーナーに、



「半生菓子」

というふうに書いてありました。



2002/7/18

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