◆ことばの話685「ガラ空き」

ゴールデンウィークもあっと言う間に終わってしまいました。去年よりも人出は少なかったようですか、どこかにお出かけになりましたか?



さて、そのUターンラッシュなどに関して、坂アナウンサーがホームぺージに、



「電車がガラ空きで」



と書いていたのですが、この「ガラ空き」、なんと読めば良いのでしょうか?



私は前後の文脈がなければ「ガラあき」だと思うのですが、書いた本人の坂アナウンサーは「ガラすきのつもりで書きました」と言っていました。



そこで前後の文章なしに、「ガラ空き」と書いた紙を持って、社内で20人に「なんて読むと思う?」と聞いて回りました。その結果は以下の通り。



ガラあき=17人(85%)



ガラすき= 3人(15%)



という結果が出ました。



「ガラあき」派の方が多かったのです。



「日本国語大辞典」には「ガラあき」「ガラすき」両方載っていましたが、



「ガラあき」→「がら明き」



「ガラすき」→「がら空き」



で見出しは載っていました。



そもそも「空く」は「透く」に通じるのではないかと思うのですが。つまり、透けて見えるぐらい密度が疎である状態を「すく」と言うのではないでしょうか?



さて、それでは「ガラあき」と「ガラすき」の意味上の違いはどうなのか?



思うに、「ガラあき」はスペース・空間が空いている状態を指し、たとえば、



「ゴール前がガラあきだ」



「下駄箱がガラあきだ」



「本棚がガラあきだ」



といったような使われ方をするのではないでしょうか。



それに対して「ガラすき」は、本来はたくさんいる(ある)べき人や物の数的な量が少ないことをさし、たとえば、



「映画館がガラすきだった」



「電車はガラすきだ」



「高速道路はガラすきだ」



というふうに使い分けられるのではないでしょうか。



そこで話を最初の坂アナウンサーの用例に戻すと、彼は道路の状態をさして「ガラ空き」を使ったのですから、意味の上からは「ガラすき」と読むのが妥当だという結論にたどり着きます。



元の動詞の「空く」も、「あく」なのか「すく」なのか、難しいですね。



坂アナウンサーを含む皆さんにお願い。



これからはルビを振って下さい。



2002/5/9


◆ことばの話684「期待したいですね」

大相撲夏場所が、以前に比べると本当にひっそりと開かれています。いや、以前と同じように開いているのですが、現状を考えるとやはり若貴全盛時は「ブーム」だったのだなと感じざるをえません。サッカーもそうなってしまわないようにして欲しいものですが。



さてその大相撲の放送を、5月15日、車の中でNHKラジオで聞いていました。もう、その日の取り組みをすべて終わって、放送も「締め」に入る午後6時前。アナウンサーが解説者に向かってこういう言葉を発したのです。



「明日は"結びの一番"を期待したいですね。」



なんかヘンな感じがしました。あなたが期待なんかしなくても結びの一番は必ず行われる訳だし。



普通「〜したい」と言う場合は、自分の希望を表明する訳だから、「そうですか、どうぞおやりください」と、自由にしてもらって良いのですが、この場合さらに「したいですね」と「ですね」が付いたことでちょっと様相が変わってきているようなのです。相手に「期待したい」自分の気持ちをちょっと押し付けているような感じがするのです。まだ



「結びの一番に期待しましょう」



なら、自然な感じがするのですが。しかも



「結びの一番期待したいですね」



なら違和感も大きくないだろうに、



「結びの一番期待したいですね」



使っているのもヘンな感じです。



「結びに、力のこもった大一番期待したいですね」



なら、許せる気がするのですが。



今後はその辺りの表現にも、もっと気を配ることを、期待したいですね。



2002/5/18


◆ことばの話683「飲茶」

アナウンス部で後輩のYアナウンサーとSアナウンサーと話していると、「飲茶」の話になりました。そして、その時にYアナウンサーが、



「飲茶のアクセントって、頭高アクセントの"ヤムチャ(HLL)"でいいんですかねえ。」



と言ったのです。それを聞いたSアナウンサーは、



「そりゃあ、"ヤムチャ(HLL)"でしょう。」



と言うではありませんか!私は、若い二人にだまされているのかと思って、耳を疑いました。ヤムチャ(HLL)!?ムチャゆうたら、あかんわ。



「飲茶」は、中高アクセントの「ヤムチャ(LHL)」か、せいぜい平板アクセントの「ヤムチャ(LHH)」でしょう。それしかありません。ところが、そう言うと二人は、



「ヤムチャ(LHH)?平板アクセントなんて、おかしいですよお」



とまで言ってのけるではありませんか!



しかもその理由として、



「だって、ドラゴンボールに出てきたキャラクターは"ヤムチャ(HLL)"でしたよ。」



と言うのです。



それでわかりました。マンガ「ドラゴンボール」がはやったのは、約10年前。その時期に子供時代を過ごした人たち(現在の20代半ばくらい)の中には、本物の「飲茶」を知る前に、ドラゴンボールの登場人物である「ヤムチャ」を知ってしまった人達がいて、その人たちは「ヤムチャ(HLL)」と頭高アクセントだと思っているのではないか?ということです。



それを裏付けるように、その後26歳の男性ディレクターと21歳の女性ディレクターにも同じ質問をしたところ、二人とも



「ヤムチャ(HLL)です」



と頭高アクセントで答えたのです。しかも二人とも「ドラゴンボールは読んでいたか?」という質問に、「はい」と答えたのです。



中には、「ドラゴンボール」を熱心に読んでいても、その後「飲茶」を体験して、



「そうか、ドラゴンボールの"ヤムチャ(HLL)"というのは人名だからそういうアクセントになっていて、本当の"飲茶"は、中高か平板アクセントなんだな」



と理解した者もいることでしょうが、人名の「ヤムチャ(HLL)」を先に知ってしまったばかりに、そのアクセントのほうが正しいと思い込んでいる人も少なからずいるのです。



昔、バラの花の香りをかいで「石鹸のにおいがする!」と言った女のこの話を聞いたことがありますが、それにちょっと似た話かもしれませんね。



2002/5/14




(追記)



サーンフランシスコの、チャイナータウンのヤ・ム・チャ!



という、所ジョージさんがやっていた「ミスタードーナッツ」のコマーシャルの「ヤ・ム・チャ」が「飲茶」のアクセントの平板化に与えた影響は大きいのではないか?という意見を、後輩のHアナウンサーにもらいました。



その1週間後です、ミスタードーナッツ(親会社はダスキン)が、中国で作っていた肉まんに、日本では認められていない添加物を使っていたのに、それを販売した上、事実を隠蔽しようとして6300万円を払っていた事件が発覚したのは。



「いいことないぞー、ミスタードーナッツ!」



「フリーダイヤル、110番、110番!」



きんさん・ぎんさんも、あの世で悲しんでおられることでしょう。



2002/5/23


◆ことばの話682「ゴン・秋田」

ワールドカップまであと2週間を切りました。



17日、ついにその日本代表のメンバー23人が発表されました。肝心のトルシエ監督は、大会初戦で当たるベルギーの国際試合を敵情視察するために、発表の場は欠席でしたが。



この中で、"ニュース"と言えるのは、



*中村俊輔選手がはずれたこと



*中山選手、秋田選手が入ったこと



*波戸選手、久保選手、名波選手、高原選手がはずれたこと



といったところでしょうか。中村俊輔選手や波戸、久保、高原の各選手はまだ若いので、次のドイツ大会(2006年)出場のチャンスもあるでしょうから、まあ、しょうがないかな、という気もします。本山選手も次は出るのではないでしょうか。



さて、その代表に選出された選手の名前を伝えた、今日(5月18日)午前のNNN24のニュースで、女性キャスターがこんなふうに原稿を読んでいました。



「ゴン・秋田もメンバー入りです」



え?ゴンは「中山」じゃなかったのか?いつから「ゴン秋田」に改名したんだ?それとも、中山以外にも「ゴン」という愛称の選手がいたの?「ゴン中山」の兄弟?そんな選手一帯どこにいたんだ???



果てしなく想像は膨らんでいきます。



しかし、いつかは現実に戻らなくてはなりません。



そうなんです、彼女が伝えたかったのは「ゴン(中山選手)と秋田選手」の二人が選ばれた、ということだったのです。



それならば、「ゴン秋田」と続けて読んじゃぁ、ダメだよ。「ゴン」と「秋田」は区切って読まなきゃ。その力量がないのなら、最初から、



「ゴンと秋田も」



「ゴン中山と秋田選手も」



というようにわかりやすい文章にすべきでしょ。



記者にその能力がないなら、キャスターがそれをするべきですよ。



ちょっとビックリさせられたので、厳しめに書いてみました。(byトシ道浦)



2002/5/18


◆ことばの話681「柳家小さん」

初の人間国宝の落語家、柳家小さんが、5月16日、亡くなりました。87歳でした。



落語協会最高顧問。上手でしたよね。おもしろかった。



でも、若い人は知らないみたいです、小さんを。



カメラマン助手の20代半ばの男性は、



「それ、誰ですか?」



朝の番組を一緒にやっている、やはり20代半ばの男性アナと女性アナは、



「コマーシャルは知ってますけど・・・。」



その、味噌汁のコマーシャル、ワイドショーの中の追悼のコーナーで放送していましたが、昭和49年(1974年)から昭和53年(1978年)頃のようですね、放送していたのは。彼らはかろうじて生まれてはいるけれでも、1歳か2歳。そりゃ、しょうがないか、と思いました。男性アナは、寄席はおろか、テレビで落語を見たこと聞いたことはない、と言いきりました。落語で知っているのは「饅頭こわい」だけだそうです・・・・・・。



また、アナウンス部・アルバイトの20代前半の女性は、



「柳家小さん?"やなぎや・こ"っていう名前ですか?」



ガックシ。落語が衰退する訳だ・・・・・・。



「"やなぎや・こさん"まで名前だよ!敬称をつけると、柳家小さんさん!ほら、"アグネス・チャンちゃん"みたいなものだよ。初めて人間国宝になった落語家だよ。」



「そうなんですか。」



ふと、いたずら心が芽生えました。彼女に、



「人間国宝の人は、亡くなったあと防腐処理をされて、国立博物館で展示されるんだよ。」



というと、目を大きく見開いて、



「本当ですか!?」



と驚いていました。



小さん師匠のご冥福を心からお祈りします。



2002/5/17




(追記)



英字新聞「Daily Yomiuri」を読んでいたら、小さんさんの記事が出ていました。ほとんど日本語の新聞とないようは同じようでしたが、「落語家」が「storytelar」、「人間国宝」「living national treasure」となっていました。「生きている国の宝」かあ。



2002/5/17