◆ことばの話665「十三里」

入社2年目の後輩アナウンサーが、大きな饅頭を食べてのコメントで、

「あ、中には"クリ"と"イチゴ"が入ってる!」

この「クリ」はもちろん「栗」です。アクセントは「LH」という尾高アクセント

しかし大阪は堺市出身の彼は、「HL」と頭高アクセントで発音していました。

そのリポートを一緒に見ていたHアナウンサーと、そこから、「クリ」の話になりました。

「そう言えば、"九里(くり)よりうまい十三里"というのがありましたよね、あれは"さつまいも"のことでしたっけ。」

「そうだったっけな。あの場合は『栗』だけど、『九里(HL)』のアクセントを用いるから、頭高アクセントになるよね。」

「それにしても、なんで突然"十三里"が出てくるんでしょうか?」

「なんか、あったんだけどなあ。忘れたな。よし、こういう時はインターネット!」

いつものようにGoogleで検索です。

あっという間に「秋の味覚"サツマイモ"『栗より美味い十三里(半)』の語源諸説」というHPにたどり着き、ナゾが解明されてしまいました。すごいなあ。「語源諸説」というくらいなので、いくつか説はあるようです。そのHPによると、

【1】 クリ(九里)より(四里)うまい十三里=9十4=13という説

【2】 サツマイモ(甘藷)は、江戸時代から埼玉の川越の名物。庶民の間で「九里四里うまい十三里」と呼ばれたが、それはお江戸日本橋と川越の距離が十三里だったから。

【3】 焼き芋を十三里、売り歩いたから。

などの説があるようです。

また、サツマイモは「クリ(栗=九里)に近い味」ということで、

「八里半」

とも呼ばれていたようです。「クリに近い味」=「八里半」では、クリの味を超えることは出来ませんが、「十三里」に至っては「クリよりうまい」のですから、クリの味を上回ったということでしょう。さらに、「八里半」時代の「シッポ(=「半」)」が残って

「十三里半」

なんて言い方も出たのではないか?ということでした。

話は大きくそれてしまいましたが、動物の「クマ(熊)」も「LH」という尾高アクセントだったのに、最近は「HL」という頭高アクセントが主流になっていることを考えると、もしかしたら、「クリ」も「HL」という頭高アクセントになる、かも・・・・・・ありえへん、ありえへん。

2002/4/18

(追記)

あまり関係ありませんが、「数字つながり」ということで、Hアナウンサーがこんな話を。

『十三屋』って知ってますか?"とみや"と読むんですけど。櫛を扱う店です。

『櫛=くし=九四』というふうに数字に置き換えた時に、『九=苦』『四=死』に通じて縁起が悪い、忌み言葉だということで、九と四を足したら十三、そこで和が同じで『苦・死』とならない『十三』と書いて『とみや』=『富家』という訳で、めでたしめでたし。」

なーるーほーどー。知りませんでした。

2002/4/18

(追記2)

2003年4月5日の日経新聞土曜版「せいかつミステリー」に『「十三里」のぬくもり』というタイトルのエッセイが載っていました。著者編集委員の足立則夫さん。

「○やき 十三里」(サツマイモの丸焼き、の意)

という看板を見たことから看板のぬくもり、遊び心に付いて書いてあります。

2003/6/13



◆ことばの話664「統合失調症とビューティフル・マインド」

4月9日の日経新聞・夕刊「心の健康学」というコラムで、慶応義塾大学保健管理センター教授の大野裕さんが、アカデミー賞4部門を受賞した映画、

「ビューティフル・マインド」

が公開されたことについて書いていました。「こころの健康」とこの映画が、どうつながるのかな?と思って読み進んでいくと、この映画の主人公・世界的な数学者ジョン・ナッシュ博士は、統合失調症(いわゆる精神分裂病)に苦しみながら、ノーベル賞を受賞するまでになるという内容なんだそうです。それで、日本での公開では映画の前に、精神障害者の家族の会や、国内外の精神科医の学会、国会議員の有志が参加した、統合失調症の患者さんを暖かく見守って欲しいという内容のメッセージ広告を映画館で流しているんだそうです。

映画そのものも評判が良いこともさることながら、そのメッセージを見たくて、久々に映画館に足を運びました。

で、ちゃんとメッセージが1度だけ流れてました。

しかしそこでは「統合失調症」という言葉は使われず、また映画の字幕の中でも「精神病」という言葉は出てきましたが、「統合失調症」という言葉は出てきませんでした。(「スキゾフレニア」という言葉は出てきました。)

この「統合失調症」という名前は、2002年1月20日付の朝日新聞によると、去年(2001年)から「精神分裂病」の病名変更を検討していた、日本精神神経学会が、

【1】原語(ラテン語)の読み方をカタカナ表記した「スキゾフレニア」

【2】疾病の概念と診断の確立に功績のあった人名にちなんだ、 「クレペリン・ブロイラー症候群」

【3】原語を翻訳し直した「統合失調症(統合失調反応)」

の3つに絞り込んでいたもので、今年8月に横浜市で開かれる世界精神医学会の12回大会までに新病名を正式に決定する考え、だそうです。

すでにこの表現を先取りして載せた新聞もチラホラありました。

旧病名の「精神分裂病」には偏見の色が付きすぎています。しかしこの病気は現在では薬でかなりコントロールできるようになって来ていて、患者は社会復帰できるようになっていることなどから、病名の変更が図られたわけです。

そのあたりについては、日経新聞の翌週(4月16日)の「こころの健康学」に記されています。「統合失調症」は100人に1人は、一生のうちに一度はかかるといわれている病気なんだそうです。

映画の中で、ラッセル・クロウ演じる数学者ジョン・ナッシュ博士の病気が進むと幻覚が彼を苦しめます。

その様子を見ていると、脳の一部が病気になると、あんなふうに幻覚が見えるとしたら、

実は今私に見えているものも本当は存在しなくて、自分の脳があるように見せているだけ?とも思います。しかし逆に考えると、

自分では見えなくても、そこにある(存在する)ものは、やはりある、存在する

わけで、それはよく言われる、

「自分が死ねばその瞬間世界も消える」式の「われ思うゆえにわれあり」とはまったく逆の「われ、思わなくてもわれあり」ということが、物質的な真実ではないだろうか?"幻想"としての社会主義や民主主義と、現実(リアル)を区別するものは、頭(脳)ではなくハートではないだろうか?

などといったことも考えさせてくれました。

最後のノーベル賞授章式で、ナッシュは、彼を支えてくれた、ジェニファー・コネリー演じる妻に対してこんなセリフを言います。

「きみがいて、わたしがある。」

クーッ、泣かせますねえ、って。ちょっと待てよ。これはあの、チャーリー浜さんの

「君たちがいて、僕がいる」

と同じじゃないか! 泣かされたのか、笑わさせられたのか。とにかく、考えさせられた、なかなか良い映画でした。一度、ご覧下さい。

2002/4/19


◆ことばの話663「ウイドア」

「未亡人」

という言葉は、最近は女性差別であるとして、あまり使われなくなってきました。え?なんで?と思わなくもないですが、漢字の意味を考えると、

「いまだ亡くならない人」

ですから、「それはちょっとなぁ」という感じですよね。さらに、

「旦那が死んだのに、まだ生きてる」

とまで言うと、「なんて男性主導の勝手な名称なんだろう」と思います。音の響きは、悪くないとは思いますが。「びぼう(美貌)」とも似てますし。

そこで、同じ意味でも英語で言えば大丈夫とばかり、「ウイドウ」という言葉も耳にします。

「ゴルフ・ウイドウ」

(ご主人が1人でゴルフに行ってしまって、一人残された奥さん)

「マージャン・ウイドウ」

(ご主人がマージャンに行ってしまって、一人残された奥さん)

「パチンコ・ウイドウ」

(ご主人がパチンコに行ってしまって、一人残された奥さん)

といった感じ。オペレットのタイトルにも「メリー・ウイドウ」(レハール)というのがありますね。私、これは好きで何度も見に行っています。

我が家は4年に一度、私がワールドカップを見に1人で海外に行ってしまうので、ワールドカップ開催の年だけは、さしずめ「ワールドカップ・ウイドウ」でしょうか。

そのワールドカップに関する、今日(4月19日)の朝日新聞の記事の中にも「ウイドウ」が出てきました。「なにわでキック3つの国」と題して、大阪でワールドカップを戦う国を紹介しているのですが、今日はイングランドを取り上げています。そこに登場するのは、イングランド育ちのアリソン・ビールさん(31)。1993年に来日して、1年前から英国の国際交流機関ブリティッシュ・カウンシル大阪センター(大阪市北区)に勤めてらっしゃいます。彼女いわく、

「イングランドの女性は、サッカーの試合となると、我を忘れることが珍しくありません。」

そして、記事はこう続けています。

「ゴルフウイドーならぬフットボールウイドア(ウイドーの男性名詞)という言葉もあり、性別や世代は関係ない。」

すごいサッカー熱ですね。

それにしても、「ウイドア」という言葉は初めて聞きました。英和辞典を引いてみると、 「ウイドウ(widow)」の項に、たしかに載っていました。

「widower」(ウイドア)

「widow」「er」を付けたものですね。意味は「男やもめ」と載っていました。

ワールドカップが始まると、イングランドではそんな「ウイドア」が増えることでしょう。 いや、ちょっと待てよ。ダンナさんもサッカー好きに決まってるから、夫婦一緒にサッカー観戦に行くのではないかな?それだと夫婦仲良く・・・・・・だから、「ウイドウ」にも「ウイドア」にも、ならずにすむのかもしれないぞ。

そのへんはどうなんでしょうかね?

2002/4/19


◆ことばの話662「ノンパラ」

雑誌「AERA」の2002年4月15日号のトップ記事が

「泣くのも一人 ノンパラ失業」

というタイトルでした。この「ノンパラ」ってなんやろう?防虫剤のような名前だな、と思って本文を読んでみると、ちゃんと意味が書いてありました。

それによると、

「親にパラサイトせず1人で暮らす、30代の働くシングル女性の総称」

だそうです。「パラサイト」もここ数年の新語なのに、いつのまにこんな新しい言葉が・・・・・・と思っていたら、ちゃんとこの言葉を使うった人も紹介しています。この言葉の生みの親は、同名の著書もある博報堂生活総合研究所の山本貴代主任研究員(37)だそうです。そもそも「パラサイト・シングル」という流行語は、東京学芸大学の山田昌弘教授が名づけたもの。それに対峙する関係として、この「ノンパラ」が出てきたものと考えられます。しかし、「パラサイト」は問題だと言われていましたが、それと逆の「ノンパラ」は、何も問題がないはずでは?とも思いますが、ひとたび「リストラ」にあって職を失った場合には、「女性」という立場が男性のノンパラサイト(一人暮らし)とは違う問題を生み出しているようです。

ここで山本さんがあげている「ノンパラ失業」の問題点は、

【1】 収入がないのに支出が一定(住民税や国民健康保険、家賃など)

【2】仕事が支えであったので、失業によって自分の価値がどこにあるかわからなくなった

【3】親に心配させまいとして、なかなか失業を言い出せない

【4】もし次の仕事が見つかっても「またリストラされるのでは・・・」と思うと、無理して目いっぱい働いてしまい、「勤続疲労」から体を壊しがち。

といったようなことがあるそうです。

ここには、4年前に辛いリストラ体験をした「ナオミさん(35)=仮名」が登場していて、彼女の体験が切々と綴られています。

この「AERA」記事のことを、U村なおみアナウンサー(35)にしたところ、

「やなかんじ!」

と言われてしまいました。(当然か。)

女性が社会に出て男性と同じように働くことが、これだけ当たり前になってきても、まだまだそれに見合った社会のしくみは出来ていないのだなと、改めて感じました。

でも、親元で生活していない独身男性は、なぜ「ノンパラ」と呼ばれないのかな。なぜ女性だけなんだろう?うーん、「AERA」のターゲットが、もう数年前から「働く女性」になっているからかな。そういう意味では、「AERA」は「女性誌」なんですよ。知ってました?

2002/4/18


◆ことばの話661「光年期」

机の上を整理していたら、ちょっと前の新聞の切り抜きが出てきました。多分、一昨年(2000年)のもの。10月16日の読売新聞の切り抜きです。記事のタイトルは、

「力みなくなり"光年期"」

写真に映っているのは、作家の落合恵子さん(当時55歳)。彼女は48歳の時、体中にじんましん、かゆみが出て、多くの医師を巡ったそうです。

「更年期障害じゃないの?」

と友人からは言われたのですが、結局その原因は「胆汁の流れが悪くなっていたこと」だったのです。そしてその2,3年後に本当の更年期障害と言える症状が出てきたそうです。

「更年期になった、特にキャリアを積んだ女性は、自分が弱いと思われたくなくて症状を隠してしまうが、私は更年期のおかげで不自然な力みがなくなり、強い・元気といった若さのイメージから開放されて気分がいい」と落合さんは語っています。弱いところも含めて全部「私」と認めることも大事だと。

そして落合さんは、「更年期」ではなく

「光年期」

「幸年期」

と呼んでいるそうです。

「老眼鏡」を「キャリアグラス」と呼ぶようになった話を以前書きましたが(平成ことば事情556「キャリアグラス」)、この「光年期」「幸年期」も、私は「いいな」と思います。「更年期」も「光年期」も「幸年期」も全部言葉に出せば「コウネンキ」ですが、同じコトバでも、ちょっと文字を変えてみると、前向きに受け入れられるのではないでしょうかね。

しかし、この記事を見つけてから1年半、「光年期」は、まだそれほど広がっていないようです。インターネットでGoogle検索したところ、「光年期」は16件しかありませんでした。どれも落合恵子さんの「メノポーズ(更年期)革命」という本を読んでの感想として出てきています。

一方、「幸年期」は81件もありました。それも病院などの医療機関のホームページで使われているようです。「更年期」は「幸年期」への道を歩んでいるようですね。

とは言え、本家の「更年期」は、11万5000件!まだまだ、道は険しいようです。

最近は、男性にも「更年期障害がある」という記事を見かけました。

「コウネンキ」は、女性の問題だけではないのですゾ、男性諸氏!

2002/4/18

(追記)

そうなんです、男にも更年期障害、あるんです!昨日(2004年2月12日)の読売新聞朝刊に、
「男性にもある更年期障害 専門外来 心身すっきり」
「効果てきめんホルモン投与」

という記事が出ていました。それによると関西医科大学付属病院では2002年から「男性更年期専門外来」を設けているそうです。2002年9月から2003年11月までに受診した人は約200人。中心は50から60歳代だそうです。担当の松田公志医師は、
「ストレスが増えると男性ホルモンが減少する。ホルモンが減るとストレスへの耐久力が低下する・・・悪循環です。」
と話し、
「(更年期を)否定的にとらえず、生き方や家族関係を改めるきっかけにしてほしい」 とアドバイスしていました。

2004/2/13