◆ことばの話620「急いでる強盗」

「金を出せ!急いでるんや!!」

昨日のお昼のニュースで報じられた強盗は、押し入った家の人に対して、こう言ったそうです。

普通は「金を出せ!」しか言わないのに、「急いでるんや!!」とまで言ったこの強盗、普通の強盗以上に急いでいたんでしょうね。

でも、中には、「急いでいない強盗」もいるのでしょうか?

「あのー、今の仕事が済んでからでええから、できたら、金出してくれへんやろか?」

これではもう、強盗とは呼べません。(法律上は強盗でも。)金を借りに来ただけです。もしも、この男の手に包丁が握られていたら・・・強盗になるな?でも、包丁も凶器も持ってなくて

「仕事終わるまで、待ってるさかいに」

とでも言ったら、これは強盗ではなく「恐喝」になる?いや、やはり金をせびりに来ただけになるかもしれません。

言葉一つで、犯罪の種類も変わってしまうのかも知れませんね。

*(注)この文章は、「急いでいる強盗」という言葉の何か、なじまないところについて書きました。法律的には、どうあっても、この場合「強盗」になると思います。念のため。

2002/4/1


◆ことばの話619「最初はグッチでみのもんた」

子どもというのは、本当に遊びの天才だなと思います。次々と新しい遊びをクリエイトするからです。

先日、読売テレビが誇る優秀なドキュメンタリー・ディレクターの一人であるM君が、

「どうでもいいことなんですけど…。」

と言いながら、こんなことを話してくれました。

「この間、町を歩いてたら、小学校の低学年ぐらいの子どもがじゃんけんをやってたんですけど、その時の掛け声が"最初はグッチでみのもんた!"って言ってるんです。なんでこんなとこに"みのもんた"が?と思って、あとで小学生の甥っ子に聞いたところ、その甥っ子もじゃんけんの時に"みのもんたと言う"らしいんです。・・・ええ、どちらも大阪市内で、ですけど。ほんとにそんな言い方が今、全国でじゃんけんの時に使われてるんですかね?」

「みのもんた?知―らーん・・・いや、みのもんたは知ってるけど面識はないし、じゃんけんに使われているかどうかも、知らんなあ。一応、調べておくわ。」

それで、さっそくインターネットで「じゃんけん みのもんた」の二つのキーワード検索したところ、驚きました。結構たくさん出てきたではないですか!ただ、よく内容を見てみると、全部が全部、じゃんけんの掛け声としての「みのもんた」ではないようです。このへんが、キーワード検索の場合の弱点でもあるわけですが。

でも、ありましたよ、じゃんけんの掛け声の「みのもんた」。去年の8月17日に街角で、

「最初はグーでみのもんた!」

という形のじゃんけんを目撃した人がいました。「あいこ」の時には、「みのもんた」の最後の一文字「た」を繰り返して、

「たっ!」「たっ!」「たっ!」

と言うそうです。これは、グループを二つに分けるときに「グッパ」と同じように一部地域で使われている「ウラオモテ」で「あいこ」の時に、最後の文字である「テ」を繰り返して、

「テッ!」「テッ!」「テッ!」

とやるのと似ていますね。

子どもの遊びは日々進化しています。

「むかしこども」の我々が、昔を懐かしんで昔の遊びを伝統的に伝えるのは、おそらく難しいでしょう。でも昔の遊びを、今の子供たちにとって「まったく新しい遊び」として教えることは可能なのではないでしょうか。

もっとも、子供たちは大人から教わるまでもなく、新しい遊びを考え出していくものなのですね。それが「子ども」でしょう。

それにしてもこの「みのもんた」、流行るのかなあ・・・。ちょっとユーウツ。

2002/3/29

(追記)

昨日、保育所に通う6歳の息子と妻の3人でカードゲームをやろうとした時のこと。いつものように、
「最初はグー、ジャンケンポン」
と言いかけたら、息子が、
「違うで!『ぐっちちのみのもんた!』やで!!」
と言うではありませんか。
「そんなん、誰が言い出したん?」
と聞くと、
「こっちゃんと、あーちゃん。」
「どういう時に使うの?」
「あんなー、ドッチボールの外に出る人を決めるとき。」

なるほどね。はやってきましたね、大阪の枚方でも。

2003/10/31

(追記2)

先日(11月下旬)、息子と公園でキャッチボールをしていたら、小学6年生ぐらいの男の子たちが、グループ分けをするのに、掛け声を掛けていました。それは、
『おいもんがっちが、ええねんで!』
というものでした。
「おいもんがっち」=「多い者勝ち」
ですね。小学2年生の息子に聞くと、
『グットッパッ!』
を使っているそうです。シンプルです。ある程度年齢が上がると、言葉のバリエーションが増えるということでしょうかね?でもうちの息子も2年前は「みのもんた」だったんだから、そういうわけでもないよなあ。それはそうと、みのもんたさん、紅白司会です。

2005/12/5


◆ことばの話618「単車」

ふとしたことからまた疑問が浮かんできました。

「単車って、車輪が二つあるのに、なんで"単"車なんだろうか?」

そうなんです、車輪が二つあるのですから、

「双車」

でも、おかしくないのではないでしょうか?もちろん免許などでは「自動二輪」とも言いますが。そう思って調べてみました。例によって『新明解国語辞典』。

「単車」

(サイドカーと違って)一人乗りのオートバイやスクーターの称

「サイドカー」

オートバイのわきにつけた車両。わきに車両をつけたオートバイ

どうも、「サイドカー」というのがポイントのようですね。

インターネットの掲示板「ことば会議室」でこの質問を投げかけたところ、同じような質問と答えを載せたHPを教えられて、見てみました。それによると、

「昔はオートバイには側車(サイドカー)が一緒に付いているものだった。だから側車が付いていない単体のオートバイを、"単車"と呼ぶようになったらしい。」

ということでした。だから「単車」の反対語は「側車付き」で、軍隊時代の言葉でもあるらしいです。

『日本国語大辞典』には

【1】ただ一台の車

【2】鉄道でボギー台車を用いない車両、特に二輪車をいう。

【3】(四輪の自動車に対して)エンジン付きの二輪車。オートバイ。

と載っていて、この3番目の意味の用例としては、

「近距離においては単車を使用することがあり」(『作戦用務令』1939)

というのが載っていました。

身近な言葉でも良く考えると「なぜ?」という言葉は、まだまだいっぱい転がっているんですね。

2002/3/17


◆ことばの話617「ウッタッタウッタッタ」

最近気になるコマーシャルの一つに、中古車売買の会社のCMがあります。

画面には、ステージの上に男性バレリーナが、舞台の左そで(下手)から出てきて、舞台中央から右(上手)へとジャンプや回転を交えて踊り、右端まで行くとクルッと折り返して、今度は舞台左手(下手)に向かって踊っていきます。最後にクルクル回転して、ピタッとポーズを決める。

テレビの音を消して見ていたら、一体何のコマーシャルか?と思います。しかし、この映像に、たぶん漫才師の方(だと思うのです)が、次のようなリズムを表す言葉をナレーションでつけているのです。

ウッタッタ、ウッタッタ、ウッタッタ、クルクルクル、ウッタッタ、ウッタッタ、クルクルクルくるまを、ウッタッタ、ウッタッタ、クルクルクル、クルクルクル車を売るなら、ユーポス。

ぷぷぷぷぷ。思わずにやりと笑ってしまうこのCM。おそらく関西限定だと思いますが、男性バレリーナが3拍子で踊るリズムが、

「ウッ・タッ・タッ」

と聞こえてくるように見えるのですね。そのリズムを示す

「ウッ・タッ・タッ」=「売ったった」

を意味している。擬態語の「ウッ・タッ・タ」と、大阪弁で「売ってやった」という意味の「売ったった」とを掛けて二重の意味を持たせています。

またそのあとの、回転するシーンには、

「クルクルクル」

と、「回転」に対する一番普通の擬態語である「クルクルクル」を使ってナレーションをつけていますが、そこにさりげなく「まを」をつけて

「車を」

という言葉を織り込んでいます。

そして最後には、

「クルクルクルクル車を売るなら、ユーポス」

と、しっかり宣伝しています。そのポーズがまたピタッと決まっているので、おかしくて仕方がありません。やられた!という感じです。素晴らしいアイデアのCMだと思います。

全体に中古車センターのCMにはインパクトが強いものが多いように感じます。

このほか、財津一郎さんが出てきて「ピアノ売ってちょうだい!」という例の「タケモトピアノ」のCMも、訳がわからないけれどインパクトが強い。

共通しているのは、物を「売る」ためのCMではなくて、「買う」「買い取る」ためのコマーシャルだという点です。

おそらく、テレビで流れているCMのほとんどは「商品を売る」ためのCMです。中に会社のイメージ・アップのためのCMというのも少しありますが。

それに対して、視聴者に対して「売って下さい!」ということをアピールする業種というのは、「売ります」CMとは全く違うことを際立たせる必要があります。これが、「買い取り」CMにインパクトが強いものが多いことの理由の一つではないでしょうか。

もう一つの理由は、「中古車買い取り」も「ピアノ買い取り」も、その商売の性格上、地元密着」でないと、輸送費や運搬費などがかかりすぎたら商売が成り立たないので、地元(この場合は、関西)に特化したCMを作るということにあるのではないでしょうか?地元密着であれば、地元の人に受ける言葉(=方言)を使うことも出来ますし、笑いに敏感な関西人受けするCMを作ることにもなるのではないでしょうか?

「笑いに敏感」といえば先日、大阪府立健康科学センターが「笑いでストレスが減る」ということを利用して、落語会を開きました。受講者に落語を聞いてもらう「前と後」のストレスの度合いを、唾液で調べようというユニークなものでした。受講者は30人ぐらいの小さな催しだったにもかかわらず、当日(3月13日)は、テレビカメラ3台、新聞記者のカメラ1台が会場に押しかけて、まるで何か事件でも起きたかのようでした。まあ、そのうちの1台は読売テレビの、私のクルーのカメラだったわけですが。

この会を開いた、福島県出身の大平哲也医師も、

「すごいですねえ。やはり、大阪の人は"笑い"ということに敏感というか貪欲なんですかねえ。」

と驚いていました。そうなんです、敏感で貪欲なんですよ。

2002/3/17


◆ことばの話616「したらへん」

出勤途中の京阪電車を降りようとした際に、ふと耳に入ってきた、おばさんの言葉。



「あの人、結局なんもしたらへんから・・・」



この「したらへん」という関西弁、私が使う時は、誰それのために「してやらない」という意味で使います。



「そんなこと言うんやったら、もうなんも、したらへんで!」



といった具合です。つまり「してやらへん」が詰まって「したらへん」になっているのです。



しかしこのおばさんが使っていた「したらへん」は、どうも



「してはらへん」



という、尊敬語ふうの「はる」が入った言葉が約(つづ)まって「したらへん」に鳴っているようなのです。私は、



「してやらへん」(shiteyarahen→ shitarahen : teya→ ta )



という変化でできた「したらへん」なのですが、電車の中のおばさんは、



「してはらへん」(shiteharahen→shitarahen : teha→ ta )



という変化です。



「てや」→「た」



「ては」→「た」



つまり、「てや」も「ては」も早く言うと(縮まると)、「た」になってしまうと。そうなってしまうと表面上は同じ言葉なのですが、もとが違うから意味は違う。ある意味では、「同音異義語」



ということになるのではないでしょうか。



そんなことを考えながら電車を降りて、歩いているうちに会社に着きました。



川岸の木蓮が、まるでクリーム色の小鳥がたくさん止っているかのように、つぼみを開き始めていました。

2002/3/12


(追記)

これと似ているかどうかわかりませんが、去年(2001年)の12月26日のニュースプラス1で、姫路の事件に関連して、近所の人の話の中で、



「時々、来てやからね」



というのがありました。これの意味は、「時々来てはったからね」と言うことでしょう。播州地域の人はこの「してやからね」と言う言い方をよくするように思います



私が耳にしたおばさんの「してやらへん」も、何かこの「してやからね」と同じような「におい」がする気がするのですが、いかがでしょうか?

2002/3/14