◆ことばの話615「お得意様番号」

この怒り、書かいでおくものか。。。



飛行機の予約を取ろうと思いました。そこで、航空会社のインターネットのホームページを開いたのですが、暗証番号を打ち込まなくては予約できません。その暗証番号を忘れてしまいました。というよりもこの航空会社の航空券をインターネットでとるのは初めてなので、暗証番号が何番か、はなから知らなかった・・・というのが本当の話です。そこで、この航空会社のフリーダイヤルに電話しました。自動音声が応答します。その指示に従って作業をしていくと、こんなテープの声が。



「ご本人確認のため、生年月日の下4桁の数字を押してください。」



押・し・ま・し・たと。すると、



「暗証番号は1週間から二週間後に郵送でお届けいたします。ご利用ありがとうございました。」



?!乗りたい飛行機は4日後なのに、間に合うかぁっ!!



そこで、「生の人間」が電話に出てくれる東京の電話番号に電話しました。



「暗証番号がわからないので、教えてください。」



「こちらはクレジットカードのデスクなので、マイレージの会員の暗証番号は、こちらではわからないのです。」



「じゃあ、マイレージのほうの電話番号を教えてください。」



「承知しました。」



またそちらに電話しました。単刀直入、



「暗証番号がわからないので教えてください。」



そうすると、



「暗証番号は電話ではお教えできないことになっているので、郵送でお知らせすることになっているんです。」



「どうしてですか?」



「ご本人と確認できないといけないので・・・。」



「ちょっと待ってください。さっきもう、郵送の分は手続きしたんです。でも乗りたい飛行機は4日後なんです。郵送で1週間後に届いたんで間に合いますか?間に合わないでしょ。それに、さっきの郵送の手続きで本人確認のために必要だったのは、生年月日の下4桁だけだったんですよ。それなら今ここで生年月日言いますから、それで本人確認は出来るでしょ。」



「いえ、でも・・・。」



とゴチャゴチャ言っていましたが、どうしたって道理が通らない。そしてこんなことを言い出した。



「それではお客様の7桁か9桁のお得意様番号をお教えください。」



その7桁か9桁の番号がどれなのかわからない。そもそも、カードを送ってきた台紙には、「お得意様番号」なる文字はどこにも記されていません。数字の羅列も4桁の数字がハイフンで4つつながった、合計16桁の数字しか見当たりません。



「この16桁の番号ですか?」



と聞くと



「それはクレジットカードの番号です。」



だからクレジットカードとマイレージカードを1枚にしたカードはイヤだったんだ。数字だらけでわかりにくいから。唯一、00で始まる9桁の番号があったのでそれを告げると、果たしてそれが「お得意様番号」でした。



もしや・・・と思って、カードの台紙ではなく、カード本体を取り出すと、そこにしっかり「お得意様番号」の文字が。その日本語の上には英語で



「MEMBERSHIP NBR」



の文字が。ちょっと待ったらんかい。つまりこの「お得意様番号」というのは「会員番号」ということかい?会員番号なら会員番号とはっきり言わんかい!「お得意様番号」なぞというから、何か特別な番号かと思ったやないか!!



そもそも、「お得意様」というのは、そちらが勝手にそう考えているだけで、「お客様」の視点に立った呼び方ではないじゃないか。一見丁寧そうだが、実はそっちの見方に立った物言いなのである。それだったら、英語のようにもっとシンプルに「メンバーシップ・ナンバー」でも「メンバーカードナンバー」でも横文字のほうが納得できます。ちなみにもう1社の同じようなカードを見たら、そちらは



「お客様番号」



とありました。こっちのほうがまだ納得できます。全日空やけど。



怒りがふつふつと沸き上がってきたその時、あちらは、



「Eメールのアドレスはお持ちですか?」



「ありますよ。」



「ではそのアドレスをお教えいただければ、暗証番号をメールでお知らせいたしますが。」



はよ、言わんかいな。それを。



さっそくメールアドレスを伝えると、



「では10分後には、暗証番号をメールでお知らせします。」



よしよし。



・・・それから10時間以上たっていますが、いまだに暗証番号は届きません。



ええかげんにせいよ、じゃるじゃるじゃるっ!!!!!!

2002/3/12


(追記)

で、翌日。また、電話しました。別の女性が出ました。



「昨日、Eメールアドレスをそちらに教えたら、10分で暗証番号を送ってくれるって行ってたんですけど、まだ届いてないんですが。」



「そのようなサービスはしておりませんが・・・。こちらのHPを開いていただいて、暗証番号を打ち込んでいただくことになっていますけれど。」



「・・・そんな説明じゃなかったですよ。暗証番号をメールで送るっていうからこちらのアドレスをお教えしたのに。」



「申し分けありません。」



「じゃあ、なんでもいいですから、このHPからマイレージの会員でチケットを予約するにはどうすれば良い教えて下さい。」 「暗証番号をお知りになりたいのでは?」



「あのね、暗証番号なんて知らなくても、とにかくチケットがインターネットで取れればいいんです。3月15日の8時55分伊丹発・羽田行きの102便。そのために暗証番号がどうしても必要ならば知りたいけれども、それが最終目標ではないの!だから、そちらでおたくのHPの操作を指示して教えて下さい。」



「そうですか。で、どの料金のチケットをお望みで?」



「どの料金って、いろいろあるんですか?」



「はあ・・・。」



「じゃあ、一番安いやつ」



「いつのご出発でしょうか?」



「さっき言うたやろ!聞いてなかったのか!・・・3月15日の朝8時55分伊丹発羽田行きの102便です。」



「少々お待ちください。」



ここまで約10分かかっています。電話の前から離れた敵は、5分後に戻ってきました。



「では、一般のところから入って、ご出発日を打ち込んでください。」



「打ち込みました。空席なんかは、どうやって見るの?」



「横のところをクリックしていただいて・・・。」



「・・・ちょっと待ってよ。どこの"横"なの?横って、右と左があるじゃない。そんな説明でわかると思うの?」



「左です。」



「はい、押しました。このあとの画面はどれを開けばいいの?」



「・・・少々お待ちください。」



と、言い捨てて、今度は10分以上、テープの音楽が流れました。トイレにでも行ったのかしら。急なさしこみで。



ようやく戻ってきた敵。



「お待たせしました。」



「長かったですね。トイレにでも行ってたんですか?」



「いえ・・・私あまりパソコンに詳しくないものですから、わかる者に聞きに行っていたんです。」



「ちょっと待ったれや。あなたはそんなこと一言も言わなかったじゃない。大体、その席に座っていて、自分のところのHPの操作もわからないってどういうこと?わからないのに、私に教えようとしていたんですか?なぜすぐにわかる人を呼んで来ない!?10分も私を待たせたんですよ、事前になんの断りもなく。それなら、パソコンをわかる人を呼んできてこちらからお電話いたしますので、とかいくらでも対応はあるでしょう。・・・こういう時は、なんて言うんですか!?」



「・・・申し訳ありませんでした。」



「あなたは、こちらから"こういう時はなんて言うのか?"と言われなければ謝ることも出来ないのですか!もういいです。ちゃんとした人と変わって下さい!!」



「承知しました!」



と言った時の彼女の声の嬉しそうだったこと!



ここまで20分。



で、恐縮したような声で「謝りのベテラン」というか、オペレーターの教官という感じの女性が出てきました。今までの経過を説明した上でもう一度、暗証番号を電話やメールで教えないことの不合理性について、一度はメールで教えると言ったのに、それが行われなかったことの不誠実さについて、またオペレーターの対応の稚拙さ、失礼さの度合い、教育がなっていないこと、マニュアルの不備は直ちに改定すべきであること、このオペレーターはJAL本社の社員なのか、それとも外部委託なのか子会社なのか?お得意様番号という呼び名はそちらの勝手で決めていて顧客の立場に立っていないのですぐに変更するべきだ、など徹底的に意見を述べ、相手の主張と言い分けを聞きました。



相手の言うことをひと言でいうと、「今後、気をつけます」ということでした。



ここまでトータルで40分。そして、



「では、5分以内に私が、お電話で暗証番号をお知らせします。」



と、担当者に言わせて、待っていると、2分後に電話が。



「ミチウラ様の暗証番号は****でございます。」



できるんなら最初からそうせい!



でも、強く文句を言う人には教えて、面倒だからもういいやという人には教えないということの方が問題ではないか?とふと思いましたが、それより、チケットを手に入れることが大切です。



ようやく、2日がかりで突き止めた私の「暗証番号」と「お得意様番号」をHPに打ち込んでいくと、ものの7,8分で飛行機のチケットの予約は完了しました。



もう、この日はほかのことをする気力が萎えてしまいました。



アホらしやの鐘が鳴る。



HPのネタにでもせにゃ、この「理不尽な戦い」は報われない。



ということで、一部始終を記しました。

2002/3/17


◆ことばの話614「ご苦労様でした。」

日経新聞の縮刷版を見ていたら、面白い記事に目がとまりました。記事というよりコラムですが。



1985年(昭和60年)8月15日の夕刊。「あすへの話題」というコラムで、当時の鐘紡会長の伊藤淳二さんが「天皇陛下」というタイトルで書いてらっしゃいます。



「昭和五十一年(1976年)十一月。天皇即位五十周年式典で、戦前・戦中・戦後四十年にわたり、議会政治と国際平和のため、軍閥・官僚・金権政治に対して不屈の信念を持って戦い抜いた三木首相が、陛下の前に進み出た。恭しくお祝詞を述べ『陛下。長い間、まことにご苦労様でございました』と深く頭を下げると、陛下がまた深くうなずかれるお姿が胸を打った。」



ということです。 この一文の中で私が「おや?」と思ったのは、三木首相(当時)が天皇陛下に対して、



「ご苦労様でした」



と言ったということです。よく、「目上に対して『ご苦労様でした』は失礼である」といわれますね。でも首相から天皇へは、1976年時点では特に問題なく使われていたということなんでしょうかね?それが気になりました。



このコラム、後半も面白いので、もう少し引用してみましょう。



「その後、豊明殿で、両陛下のお催しになるお茶会に招待・・・(中略)・・・当日、陛下のお言葉の後に、出席者を代表して高橋清一郎先生がお祝いの言葉を申し上げた。その結びに『陛下。お願いがございます。陛下にはますますご長寿の上、即位百周年をお迎え遊ばしますよう。そして、その時、是非、私をお招き下さいますように。』



九十歳を超えた高橋先生のお願いの言葉に一瞬、シーンと場内がし、やがて陛下がお口を大きくあけて高らかにお笑いになり、次いで皇后様。そして居並ぶ出席者一同の大爆笑となった。美しき限りの和楽の姿があった。」



だそうです。



ものすごい緊張感の中での「和楽の姿」だったでしょうね。高橋清一郎先生というのは、インターネットで調べたところ、自民党新潟県連の会長を務めた衆議院議員の方のようです。県連の会長一覧には、田中角栄、小沢辰男、稲葉修といった方のお名前も。



偉い方の冗談は、我々にとっては笑ってええのやら悪いのやら判断が難しいので、緊張します。



よかった、その場に居合わせなくて。(心配しなくても絶対居合わせないって。)今から26年前の話なんですね。

2002/3/12


◆ことばの話613「休刊日が消えた?」

3月11日・月曜日。月に1回の新聞休刊日のはずでした。しかし、自宅にはいつもと同じように朝刊が配達されました。産経新聞を除いて。



実は2月の休刊日にも、いつもとはちょっと違う形で、朝刊は各お宅に配達されました。その時は、「ソルトレークシティー冬季五輪の特別版」という名目で。



しかし、今回は「なぜ休刊日に朝刊が配達されるか?」という大義名分は、各社ともありません。



そもそもなぜ、休刊日に朝刊が配られるようになったか?というと、原因は産経新聞にあります。産経が首都圏で夕刊を廃止することになったからです。(関西は夕刊はこれまでどおりあります。)首都圏では夕刊の購読率がひどく下がったというのがその理由です。それに伴って、これまで朝刊休刊日の夕刊に載せていた「前日からのニュース」を載せるスペースも、時間的なタイミングもなくなってしまった。それで、夕刊がない分、休刊日をなくして記事を載せようというのが、おそらく産経の考えだと思うのです。だけれども、休刊日にも各戸に朝刊を配達できるかというとこれも難しい。そこで産経は「駅売り分のみ」従来の休刊日にも販売することにしたのです。



しかし、そうすると、ただでさえ、値段が安い産経にお客さん(読者)を取られてしまう!とうことで、各紙は従来の休刊日にも、各戸への配達を行うことになった。そうすると、逆に産経だけが、休刊日には「宅配を行わない」新聞になってしまいました。



でも、今までと宅配の料金は変わらないで、1日、朝刊が増えるのなら、読者にとっては3%ほどの「実質値下げ」になるのでは?逆に考えると、新聞社側は、3%ほどの経費増加になるのでは?また記者の数も、これまでの休刊日は「土日並み」に減らしていたそうですが、それを「平日並み」に増やさなければならない。結構、お金の負担が増えますよね。それを考えると、新聞社としては「休刊日は今までどおり続けたい」と考えていることでしょう。



実際、各新聞社に電話で聞いたところ「4月以降はどうなるかまだ決まっていない」ということです。10年ほど前から、「配達員にしっかり休日を取らせるために」ということで年々増えてきた「新聞休刊日」。少し変化が現れてきたようです。



テレビも「休日」ってないのかな?

2002/3/17
(追記)

4月の休刊日である15日は各紙、以前どおり、「お休み」となりました。産経新聞だけは、駅売りを行いました。



「休刊日」は死語にならずに「復活」しました。そのあたりの事情については、



「放送レポート176号(2002年5月号)」(メディア総合研究所)の特集「新聞業界"仁義なき戦い"〜産経『夕刊廃止・休刊日発行』の波紋〜」で、フリーライターの山口俊明という人が、8ページにわたって詳しく報告しています。関西では、夕刊は廃止とはならないし、そのためスヌーピーを使った問題のCMも流れなかったので、よく分からなかった部分も、それを読んでよくわかりました。



そっれによると、休刊日が3か月ぶりに復活した大きな原因は、宅配を担当する販売店からの悲鳴とも言える苦情だったようですね。それと、これは推測ですが、2か月(2回)にわたって休刊日に新聞を発行したものの、それにかかる手間・ヒマに比べて、思ったほど効果がなかったからではないでしょうか。よくはわかりませんが。5月はどうなるんでしょうね。また注目しましょう。

2002/4/18


◆ことばの話612「鬼軍曹」

夕方の関西ローカルニュース番組「ニューススクランブル」の特集予告を、新聞のテレビ欄に出稿使用とした時のこと。



厳しいコーチのことをさして



「鬼軍曹」



という表現を使ったところ、朝日新聞からダメ出しが出ました。(お?重なっちゃったかな?"出る"という言葉が。)



なぜかというと、何かの比喩の時に「鬼〜」というのは、朝日の規定では出せない(使ってはいけない)んだそうです。



以前、朝日新聞は「巨乳」がダメで、「豊乳」はOKだ、ということを私は書きました。(平成ことば事情236「巨乳と豊乳」)「巨乳」は朝日の基準によると、淫らで品位がない(確かに品位はありませんね)から使わないということなんでしょうが、この「鬼〜」というのはどういう理由なのでしょうか?



推測するに、人間に対して「鬼」という比喩を使うのは、その人に対して失礼である、ということではないのでしょうかね。



少し前になりますが、若者言葉の強調表現で「オニ〜」というのがありましたね。



「オニカワ」なんてえのは、「ものすごくかわいい」という意味だったと思います。「鬼」は本来恐いもの、好ましくないものというイメージを持っている人にとっては、「オニカワ」という言葉は許せなかったことでしょう。



わが読売テレビでは、もう10年くらい前に終わってしまいましたが、全国ネットで「2時のワイドショー」という番組を平日のお昼2時からやっていました。その中の名物コーナーに「究極の鬼ヨメ」シリーズというのがありましたが、当時のテレビ欄には、ちゃんとそのまま乗っていたような気がするのですが。朝日は当時から、「鬼〜」というのは載せてなかったのでしょうかね?



また、図書館通いして、朝日新聞の縮刷版で調べなくてはなりますまい。



「鬼〜」がダメなら、「○○の鬼」も駄目なんだろうか?



その辺も、追跡調査しますね。「調査の鬼」です。良い意味なんだけどな。

2002/3/28


(追記)

訂正します。「鬼軍曹」ではなく、「鬼教官」でした。



そして、実は「あさイチRILAX」という番組が4月からリニューアルされて、あの「2時のワイドショー」の「究極の鬼嫁」コーナーを彷彿させるドラマコーナーが火曜日に登場しているのです。その番組内容の案内で、朝日新聞(4月16日)は、



「鬼嫁」



をラ・テ欄にそのまま載せているではないですか!



ニュースだと駄目だということなのでしょうか?



よくわかりません。

2002/4/18


◆ことばの話611「辻元議員に問いただす」

まあ、なんなんでしょうねこの子達は・・・・・・と、おばあさんなら言ってしまいそうなこのところの国会議員たちのドタバタ劇。



つい2週間前に他の議員の不正をただそうと喚問して「ウソツキ」よばわりしていた人が、実はウソツキだったという、なんとも永田町らしい展開。高槻市の辻元事務所はシャッターが下りたまま。辻元氏の講演会を知らせる看板には、誰だかわからないけれど黒いマジックで「ウソツキ」の文字が。でも、書くならこうこの方が教訓的です。(書いちゃだめなんだけど)



「人を呪わば穴二つ」。



さて、その辻元清美議員が、昨日(3月25日)のTBSニュース23に生出演していました。この時期、自分の主張を聞いてくれるテレビ局にしか出ないというのは、ムネオさんでなくても「いかがなものか」と思いますが、その番組の特集コーナーのタイトルが、



「辻元議員に問いただす」



でした。おれ?これって「に」なのかな?「を」じゃないのかな?と思ったわけです。平成ことば事情406「"に"と"を"」で、この件に関しては書いていますが、要するに「問いただす」という動詞は「問う」と「ただす」という二つの動詞が合わさって出来た複合動詞です。そしてそれぞれの動詞が、その前に伴う助詞に、特性を持っている場合に、どちらの動詞の特性に合致させるか?という問題です。基本的には、後ろの動詞にあわせるのが「筋」だと思うのです。もし「問う」が優先されるとすると、



「辻元議員に問う」



という形、つまり「に」しかないでしょう。「を」が来て「辻元議員を問う」ならば、「辻元議員の、何か(発言、資質など)を問う」の省略形としてしか考えられません。この形は変則です。



それでは「ただす」を優先して、「に」にしてみると、



「辻元議員にただす」



だと、「何を?」という目的語が必要になります。また「を」を使うと、



「辻元議員をただす」



これなら、納まりが良い。しかしこの場合の「ただす」は「姿勢を正す」の「正す」で、「悪いものを正しくする」



というような意味だと思うのですね。



「問いただす」は、「問うて、悪いものを正しくする」というなら、



「辻元議員を問いただす」



と、「を」であるべきでしょう。事実、番組の中では、一度「辻元議員を問いただす」というタテの字幕スーパーが出ました。しかし、モニターの中に映ったコーナータイトル、およびサイドスーパーは「に」でした。



しかし、ここで「ただす」という動詞の意味について辞書を引いてみましょう。



『新明解国語辞典』によると、確かに一つ目の意味として「正す」が載っています。



【1】(なにヲ)まちがって(曲がって)いる点などを直し改め、また、そうなる傾きのあるものを、そうならないように気をつける。



【2】筋道に合っているかどうかをはっきりさせる。(例)「是非を〜」「大義名分を〜」「筋を〜」



とあります。



ここからみると、やはり「〜を」が正しいような気がします。しかしもう少しみてみると、



これとは少し違う(漢字も違う)「ただす」が載っていました。



「糺す」



(だれニなにヲ)本当にそうであるかどうか調べて、事の真偽や事実の有無をはっきりさせる。(例)「もとを糺せば」「罪を糺す(本当に罪を犯したかどうかを調べてみる)」



さらに、もう一つ別の漢字の「ただす」が。



「質す」



(だれニなにヲ)本当にそうであるかどうか(分からない点を)、聞いてはっきりさせる。」(例)「意向(真相・責任)を質す」



この「質す」は、「『糾す』とも書く」とあります。「糾弾」の「糾」です。きっつい漢字です。



世の中には、ようけ「たださなあかん」ことがありそうですな。



それでこのニュース23の場合、意味から考えると、本来なら「質す」を使って、



「辻元議員に糺す」



で良かったのではないかな、と思います。けれどもおそらく「糺す」は常用漢字ではないでしょうから(この漢字は、京都の「糺の森」ぐらいでしか、見たことがありません。)、ひらがなにするしかない。そうすると、「ただす」というひらがなだけでは、いかにも弱い。視聴者にアピールするためには「問う」という言葉を頭にくっつけよう!ということになったのか、ならなかったのか。



これはTBSに「問い」、TBSを「ただす」しか、ありますまい?

2002/3/26


(追記)

「ムネオ→辻元→加藤紘一」



と「不正の連鎖」で政局はめまぐるしく動いていますが、こんなことで、日本はいいのでしょうか・・・・・・。

2002/3/29

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