◆ことばの話590「ボルヴィック」

平成ことば事情589「ヴィエトナム」の関連で、カタカナ表記について書きます。。



駅の売店で売っていたミネラル・ウォーター「volvic」。それをPRした手書きの紙には、



「ボルヴィックあります」



とありました。おいおい、この場合「ボ」も「ヴィ」も両方「V」だから、それも書くなら



「ヴォルヴィック」



だろう、と思って「volvic」のホームページを開くと、なんとそこにはしっかり



「ボルヴィック」



と書いてあるではありませんか!これは一体どういうことだろうと思って、輸入元の三菱商事の広報に電話してみました。電話に出た広報の女性は、



「え・・・考えたこともありませんでした。関係部署に聞いてみます。いつまでにお返事すればよろしいですか?」



「明日は、私が休みですので、あさってにお返事をいただければ・・・。」



「わかりました。」



ということで翌々日、なかなか、かかって来ないのでこちらからかけてみました。



「あ、まだ営業から返事がないので・・・すみません、すぐに聞いてみますので・・・・。」



で、翌日の朝、電話がかかってきました。



「ずいぶんお待たせして申し訳ないんですが、営業の者もいろいろ聞いたみたいで、親会社にも電話をして確認したようなんですけど、うちも最初から輸入元じゃないのですが、以前からそういう表記をしていたのを引き継いだような形なんで、結局特に理由はないというか、なぜ"ボルヴィック"になっているかはわからないということで・・・。」



と、努力はしていただいたようですが、理由が分からなかったことで、歯切れの悪い返事。申し訳ないなぁと思いつつも、「はあ、そうですか」と調査を打ち切るわけにも行かない。誰かがこの名前を決めたはずなんです。少なくとも、三菱商事がその商品の輸入を決めた時には、この名前の日本語表記に疑問を抱いた人は一人もいなかったということはわかりました。いたとしても問題とは思わなかったということでしょう。



誤解のないように書いておきますと、「volvic」の直訳表記と考えると表記上の問題はありますが、商品名としては何の問題もありません。また、もしかしたら「ヴォルヴィック」とするよりも「ボルヴィック」としたほうが商品訴求力があるという判断がされたのかもしれません。それならそれで全然構わないのですが、一般表記法ではない表記をされる理由を知りたいのです。



日本語表記の問題ですから、誰かが、しかも日本人が、こういうふうに決めたのはまず間違いのないはずなので、



「では、三菱商事さんの前に輸入元だった会社はわかりますか?」



と聞くと、「調べてみます。」というお返事をいただけました。



で、さすがにその後の調べは早かった。しかし・・・結論から言うと、



「ハッキリとした理由はわからない、わからないというより、理由はないという感じでしょうか。おそらく、そういう表記が商品名として見た目も落ち着くし・・・・。」



「それは十分、理由になると思います・・・。」



ということで、結局、輸入元のハッキリした「こういう理由でボルヴィックにした!!」という力強い理由はわからずじまいでした。



まあ、三菱商事さんにも同情します。まさか、こんなことを聞かれるとは思ってもみまかったでしょうから・・・。



でも、知りたいなあ、本当の理由。もしご存知の方がいらっしゃいましたら、是非お教え下さい!!

2002/3/1

(追記)

自動販売機で「ボルヴィック」を売っているのを見つけて、よく見てみると、なんと輸入元が、
「キリンビバレッジ」
になっていました!まあ、そんなに驚くこともないかもしれませんが。一応、ご報告まで。
2006/10/31


◆ことばの話589「ヴィエトナム」

ヴィエトナム、ヴァンクーヴァー、デンヴァー、ペンシルヴェニア・・・



原語に近い書き方と言われる「ヴァ」「ヴェ」を使った表記を時々見かけます。



中には、ベートーベンを



ヴェートーヴェン



などと間違って書いている人も、いるとかいないとか。原語はBeethovenですから本来は



ベートーヴェン



のはずなのですが。ただ、それよりも、



ベトナム、バンクーバー、デンバー、ペンシルバニア・・・



という表記のほうが多いとは思いますが。そんな少数派の原音に忠実だったお役所が、今、ヘンなことで注目を浴び続けている「外務省」です。



しかしその外務省がこういった表記をやめる、という記事を見かけました。その記事が載っていたのは「新聞」だと思っていたのですが、確認したらインターネットiモードの読売新聞の記事でした。2月23日の土曜日です。それによると、



「ヴィエトナム」はベトナムに・・・外務省が国名表記改正



外務省は23日、在外公館の名称や公電などに利用してきた「ヴィエトナム」、「ジョルダン」、「ヴァンクーヴァー」(カナダ)などの海外の国や都市名の表記を、「ベトナム」、「ヨルダン」、「バンクーバー」など一般的な表記に改める方針を固めた。表記の根拠となっている在外公館名称・位置・外務公務員給与法の改正案を今秋にも開かれる臨時国会に提出する考えだ。同省はこれまで、「できるだけ原音に忠実に表現する」(幹部)ため、「ヴィエトナム」など難解な表記を用いてきたが、一般の人からは「分かりにくいし、きざな感じがする」と評判が悪かった。



だそうです。最後のあたり「きざな感じがする」というのは、確かにそうですね。でも原音に忠実というのは、いけないのかなぁ。これも川口外相の「骨太な外務省改革」の一環なんでしょうか?



表記は「ヴィエトナム」でもそのとおり「V」の音を発音している人を、私は聞いたことがありません。もしそのとおり発音したら、確かに「きざな感じ」がするでしょう。



でも、今年の秋の臨時国会に提出ですって?なんだまだ半年以上あるじゃない。本気でやるつもりかどうか、怪しいな。

2002/2/25


P. S

平成ことば事情563「ヴォーリズとボーリズ」も読んでね。



◆ことばの話588「処女航海」

2月24日・日曜日の夕方のニュースで、これまでに日本に寄港した船の中でも最大級の豪華客船「スター・プリンセス」号が大阪港に寄港したという原稿を読みました。それによるとこの船は、あのタイタニックの2倍の総トン数があるそうです。(よくわからないのですが、とにかくデカイ)



そして、今回の航海が、



「初航海」



だと原稿に書いてありました。「ハツコウカイ」。フツウ、これは



「処女航海」



と言わないかい?あ、でも例のジェンダーの問題で、「処女」が使えないのかな?と思ってデスクに聞くと、「やはり"処女"はちょっと引っかかったんで、"初航海"にした。」とのこと。でもそうすると「初公開」とアクセント上も区別がつかないぞ。船の中を大阪で公開するのももちろん始めてなので「初公開」なんですが、航海そのものが「初」ということを言いたいのなら、内容をミスリードしてしまうぞ。



そこで、うーんと二人で考えた挙げ句、本番では、



「初めての航海で」



という文章にしたのですが、「処女」が気になりました。そもそもなぜ「処女航海」と言うのか?ということです。



私の推測では、そもそもこの言葉は外国語で、「航海」とか「船」は女性名詞で、だから「初めて」の場合に「処女」とつけた。それを翻訳した時に「処女航海」となったのではないか。また、ほかにも「処女地」「処女作」など「処女」が形容につくものがありますが、それは外国でもそう言われている場合と、「処女航海」からの類推で日本独自に言うようになったものとがあるのではないか?ということです。



とりあえず、「日本国語大辞典」で「処女」を引きましょう。二番目の意味に注目しました。



二、(語素)他の名詞の上に付けて用いる。欧米語からの翻訳借用語。



【1】受精を行わないことを表す。「処女芽胞」「処女結実」など。



【2】事前の事物で、まだ人が足を踏み入れていないことを表す。「処女地」「処女峰」「処女林」など。



【3】初めての経験であることを表す。最初の。「処女作」「処女航海」など。



やはり、思った通りでした!でも、そう言った言葉が作られた時と今では時代が違うから、「処女〜」が敬遠される傾向にはあるのでしょうね。そもそも、男性作家の「処女作」というのも、意味に矛盾が生じていますもんね。例えばの話。でも「童貞作」とか「童貞航海」とか「童貞地」とかも言いません。もし、そう言われるようになってしまったら・・・考えただけでも恥ずかしくて、穴があったら入りたいくらいです。・・・いや、そんな意味じゃなくて・・・。困ったなあ・・・。



結局、「処女航海」「処女地」「処女作」のような「処女〜」という表現は、絶対使ってはいけないというものではないですが、使用する場合を考えて使ったほうがいいでしょうね。中には「ヴァージニア州」や「ヴァージン・アトランティック航空」のように固有名詞になっているものもありますし。



そういった点から考えると「初めての航海」という文にしたのは、まずまず妥当だったのではないでしょうか。「初航海」と読んでいたら「初後悔」するところでした。



2002/2/24


◆ことばの話587「触わらせる」

また外務省の不祥事です。外務省の34歳のキャリア官僚が、伝言ダイヤルで知り合った15歳の女子中学生にわいせつな行為をしたとして、児童買春禁止法違反の容疑で逮捕されたというニュースを、2月22日の早朝のニュースで読みました。とんでもない話ですが、



その原稿の中に、こういう一節がありました。



「伝言ダイヤルで知り合った15歳の女子中学生に対し、現金1万円を渡して下半身を触わらせるなどのわいせつな行為をしたとして児童買春禁止法違反の疑いで逮捕されました。」



この原稿の「下半身を触わらせるなどのわいせつな行為をした」という部分について、下読みをした時に私はてっきり「下半身を触わるなどのわいせつな行為をした」の間違いだろうと思って原稿に手を入れて変えてしまいました。



あとで、他の番組のニュースなどを聞いていると、どうやら逮捕されたこのキャリア官僚は「(女子中学生の)下半身を触わった」のではなく、「(キャリア官僚自身の)下半身を(女子中学生に)触わらせた」ようなのです。そうすると、最初の原稿が正しくて、私が手を入れた原稿は間違いということになります。



もちろん、ぜーんぶを含めて「わいせつな行為」には違いなくて、そんなことの当事者に女子中学生を巻き込んだコイツが悪いことに変わりはありませんが、行為の対象が「触わった」と「触わらせた」ではまったく正反対になってしまいます。それによって、快感を得ようとした張本人は、どちらにせよ変わらないですが。



この話について白昼堂々、アナウンス部で後輩のHアナと議論していました。しかし彼はさらに別の可能性を述べました。



「もしかしたらこのキャリア官僚は、女子中学生自身に女子中学生の下半身を触わらせて、それを見ていたのかもしれない。」



それだと「触わらせて」という文章が正しいということになると言うのです。ただその場合には「児童買春禁止法」に抵触するのかどうか?と言うので、



「そりゃどっちにせよ、ダメだろう」



という話になったのですけれども。



いずれにせよ、一つの文章でこんなにいろんな解釈ができてしまっては、視聴者に正しい内容が伝わりません。できるだけ誤解のない形で、耳から1回聞いただけで皆なが理解できるようなニュースを心がけたい、と思っています。



2002/2/24


◆ことばの話586「白っぽい車」

銀行強盗などのニュースで、



「犯人は白っぽい車で逃走しました。」



といったようなフレーズが出てきます。



この「白っぽい車」についてなんですが、「白っぽい」というのは「白」ではないですね。白に近いが白ではない色。目撃した人が、夜や夕方だと、色の識別がしっかりできないから「白っぽい車」というのもうなずけます。しかし中には「白昼堂々」というケースでも「白っぽい車」と言われる場合があります。しかも犯人の服装は「黒っぽいジャンパー」だったりします。これはなぜだろうか?と考えました。



すぐに思いついたのは、その「白に近いが白ではない色」の名前が分からないというケースです。最近、そんな色の車、増えていませんか?



ちなみに私の車の色も、はっきり言う自信がありません・・・。



グレーじゃなくて、ベージュのメタリックな感じの白っぽい色・・・という感じ。



車屋さんで聞いてみると



「フラクセン・マイカ・メタリック」



とかなんとかいう名前だそうです。しかし、誰がそんな舌をかみそうな色の名前を、日常的に使うものですか!実はこういったところに「白っぽい車」となる一員があるのではないか?と感じたのでした。



ちなみにこの車種には、「フラクセン・マイカ・メタリック」のほかにも、こんな名前の色の車があるそうです。



※スーパー・ホワイト



※シルバー・メタリック



※シルバー・メタリック・グラファイト



※レッド・マイカ



※ダークグリーン・マイカ



※ダークブルー・マイカ・メタリック



この「マイカ」って何ですか?と聞いたところ、「鉱石」=「雲母」のことで、キラキラした感じの塗装になり、高級感が出るので人気があるそうです。メタリック塗装とどう違うのか聞いたところ、「メタリック」はその名の通り「金属」=「鉄粉」を入れてキラキラさせていたのですが、これだと3年ほどすると「サビ」てきて少し赤茶っぽい色になってしまう。それに対して、「雲母」だと「鉱石」ですからそういったこともなく、美観を保てるんだそうです。今は「メタリック」という名前でも「鉄粉」は使っていないそうです。



そして、今は「白」と一口で言っても10種類ぐらいのバリエーションがあるので、なかなか色の名前を言っただけで、その色を特定するのは難しいとのこと。そりゃそうでしょう。で、「フラクセン・マイカ・メタリック」の「フラクセン」って何ですか?と聞いたところ、



「それは・・・勘弁して下さい、色の名前は覚えても意味までは・・・。」



とのことでした。現場も大変だ。最後はよくわからなかったけど、ものが「マイカ」だけに、「ま、いーか」。

2002/2/28