◆ことばの話560「看護師」

去年(2001年)12月6日、衆議院本会議で「改正保健婦助産婦看護婦法」が可決成立したことを受けて、法律が施行される見通しの今年4月から、「看護婦」「准看護婦」「保健婦」という名称が消えます。日本看護協会が性別による違いは統一すべきだという働きかけをした結果によるです。

「男性の看護婦(?)」はこれまで「看護士」と呼ばれていましたが、これからは職業の名称に男女区別なく「看護師」となります。音の上では「看護士」も「看護師」も同じですから、表面上は「看護婦」が消えて「カンゴシ」という音に統一されたような感じでしょうか。同じように「准看護婦」は「准看護師」に、「保健婦」は「保健師」になります。

2月6日現在、それぞれの言葉はインターネット上でどのくらい使われているのでしょうか、調べてみましょう。

検索エンジンGoogleで調べると、

看護師=2520件

看護士=3万2400件

看護婦=約51万件

やはり「看護婦」が一番よく使われています。言葉の「歴史」の差でしょう。でも「看護師」も既に2520件も使われていたのは驚きでした。

また「看護婦」には、ちょっとエッチな系統の使われ方をした表記も見受けられました。「看護士」「看護師」にはそういう使われ方はしていないようです。日本看護協会の主張も、むべなるかな、という感じですね。

あれは何年前になりますか、「保母さん」「保父さん」がやはり同じような理由で「保育士」になりました。当時は「保母さんでいいんじゃないの?」と思っていましたが、現在、息子が通う保育所では、連絡帳などに記されている書き方は、みんな「保育士」です。

「○○くんがカゼをひかないように、保育士も注意していきます」

といった使い方です。ふだん、呼ぶ時は「○○先生」と言う呼び方ですが。

それから考えると、「看護師」「准看護師」「保健師」という呼び名も、意外と早く定着するのではないでしょうか。ただ、「看護婦」もしばらくは残ると思いますけどね。

ちなみに、「助産婦」さんは、この職業に男性がいないために。そのまま「助産婦」で行くそうです。

ニュースもそれに準じるのではないでしょうかね。

2002/2/7


(おまけ)

そういえば、日本テレビ・よみうりテレビ系列で、土曜日の夜に「ナースマン」というドラマをやってますね。ご参考までに、というかちょっと宣伝。

2002/2/20


(追記)

上で、法律は今年4月から施行と書きましたが、今朝(3月1日)の産業経済新聞によると、3月1日から施行だそうです。つまり今日から、法律上は「看護婦」「助産婦」が消えます。新聞の見出しは、

"さようなら看護婦さん 男女統一「看護師」に きょうから名称変更"

です。「あくまでも法律上の話だが、長く親しまれた看護婦さん、助産婦さんといった呼称はなくなることになる。」と書かれていました。

2002/3/1


(追記2)

人事院総裁の中島忠能氏が3月7日、国会に呼ばれて答弁している中で、

「看護婦さん」

と言っていました。「看護師」ではなく。

2002/3/7


(追記3)

自分の娘に薬物を飲ませた殺人未遂の容疑で起訴された奈良の元准看護婦、坂中由紀子被告に対する判決公判が3月15日行われ、懲役3年の判決が言い渡されました。

このニュースを伝えた3月15日夕刊各紙の、坂中被告の肩書きを見てみました。

(読売)准看護婦

(朝日)元准看護師

(毎日)元准看護師

(産経)准看護婦

(日経)准看護師

ということで、読売と産経がこれまでどおり「准看護婦」で、朝日と毎日が、「元」をつけた上で「准看護師」という新しい「師」の形、日経は「元」をつけずに、新しい「准看護師」の「師」ということで、3つに別れましたね。

「元」が付くかどうかというのは、「その職業についているかどうか」か「資格としてあるかどうか」ということかと思いますが、「看護婦」か「看護師」かというと、その辞典の名称を使うのかそれとも今の名称を当てはめるのか、という問題も出てきます。

日本テレビ系列では3月14日に報道デスク・クラスで話し合って、

「准看護師」

で行くことになりました。

2002/3/17


(追記4)

3月15日朝日新聞朝刊の「くらし」欄。学童保育の時間のあと、子供たちはどこへ行けば良いか?という記事の中で、

「九州に住む女性の看護師(31)は」

という文章がありました。これは、これまでだと「看護婦は」で済んでいたものが、「看護師」だけだと、男女どちらかがわからないので、わざわざ「女性の」とつけなくてはならなくなったという一例です。

職業名から男女差をなくしても、その職業を語る上で男女を言った方が良いのであれば、結局「男性の〜」「女性の〜」としないとわかりにくいという問題が残ったような気がします。

2002/3/26


(追記5)

4月3日読売新聞の読者からの投書欄に、新潟市の宝田保光さん(32)という人が投書しています。タイトルは、「男性の視点も助産師に必要」。この宝田さんの職業は、

「看護師」

となっていて、その文章は、

「私は全国でただ一人の男子助産学生だった。看護師になったが、助産師になりたくて新潟大学医療技術短大助産学専攻科で学び、先月卒業した。国家試験に合格した同期の女性達は助産師として職場へ出た。(中略)法律には助産師は"女子"という規定が残された。(中略)男性への門戸開放を強く訴えたい。」

というものでした。

ここでは、専門のその職業の方が「看護師」「助産師」という言葉を使っています。新聞の投稿欄は、投稿者の原稿を重視するでしょうから、改正された法律が施行されてから、わずか1か月で現場ではやはり早くも新しい名称が定着してきているようですね。

2002/4/5


(追記6)

さらに。今朝(4月5日)の読売新聞朝刊で、

「ファイナンシャル・プランナーなど国の資格に〜4職種10日にも」

という見出しが出ていました。これまで民間の資格であった「ファイナンシャル・プランナー」「金融窓口サービス」「レストランサービス」「ガラス用フィルム施工」の4つの職種に関して、国の資格である「技能士」に指定することになったそうです。これまでの「技能士」はこれまで技能系の133職種が指定されていますが、事務系の職種は初めて指定されることになるという記事でした。

ということは「○○士」というのは、基本的に「国指定の技能系の資格」と考えていいのでしょうかね。

今後、「一級アナウンス士」とかできたりして・・・。

2002/4/5


(追記7)

忘れてました。3月8日付の朝日新聞の「くらし」欄。「育児常識にウソ?」というコーナーでは、

「助産婦」

という用語(言葉)が3回出てきました。

「70歳代の助産婦の・・・」

「だが助産婦が『朝6時から3時間おきにきっちりあげなさい。』」

「助産婦は『風呂上がりはさゆをほ乳瓶で飲ませなさい』」

という3回です。いずれも、「年配の助産婦の経験論は、現代では間違っていることもあるので注意」というような主旨のように思えました。

2002/4/5


(追記8)

「追記5」で、4月3日付・読売新聞の投書欄(「気流」)に載った「男性の視点も助産師に必要」という、新潟県の男性看護師・宝田保光さんからの投書をご紹介しましたが、それに対する意見が、今日(4月10日)の「気流」欄に2件、載っていました。

「男性の視点で助産の分野を」(茨城県那珂郡・公務員・橋本明子36歳)

「男性助産師は本当に必要か」(大阪府南河内郡・助産師・佐藤恵理38歳)

最初の「男性の視点で…」という茨城県の橋本さんは「男性より女性がした方が妊産婦にとってはいいと思われる仕事内容があるのも事実だと思います。(中略)こうした点にさえ配慮されれば、男性の視点で助産の分野を切り開くことは、多くの利点を生み出すことにつながると思います。」と、条件付きで「男性助産師、賛成派」。

対する大阪府の佐藤さんは「男性助産師は本当に必要か」というタイトルが示す通り、「反対派」。佐藤さんは、ご自身が「助産師」です。(表記は「助産婦」ではなく「助産師」となっていました。)佐藤さんは「不妊に対する男性側への援助など男性の力は必要だが、それは看護師でもできることであって、助産師の資格や経験が必要とは思えない。(中略)単に資格を平等にということではなく、需要や援助を受ける女性側の意見も聞いて、検討してほしいと思う。」と、現場の「女性助産師」の声を代表するような立場で発言されています。

「助産師」の現場に、実際に男性が入るかどうかは、まだ論議の余地があるようですが、現場での用語の面では、一足早く「助産婦」に変わって「助産師」が認知されつつあるようですね。

2002/4/10


(追記9)

「国境なき医師団(MSF=MedecinsSansFrontieres)」からのニュースレターNO55(2002年4月号)のトップ記事は、「アフガニスタン報告」でした。避難民の数は、難民キャンプのキャパシティーを超えていて、治安の悪化や食糧不足が引き起こされているそうです。地図を見ると、アフガニスタン国内でも、南半分はMSFが活動できますが、カブールやバーミヤン、マザリシャリフといった北半分は、民族同士の戦闘が頻発していて「MSFの活動が不可能な地域」とされています。このリポートの報告者は、

「井上るみ看護婦

でした。「看護師」ではなく「看護婦」です。中に、患者の子どものことを「患児」という言葉も出てきました。

また、今朝(4月11日)の読売新聞・朝刊では、

「一酸化炭素吸入療法、看護婦の77%、おう吐や頭痛」

という記事が出ていました。ここでも「看護師」ではなく「看護婦」です。読売は投書以外はまだ「看護婦」のようです。

2002/4/11


(追記10)

4月11日朝日新聞「助産院の風景【2】」という写真と少し長めのキャプションのような記事が載っていました。【2】というからには、連載なのでしょう、気づきませんでしたが。

そこでは「助産婦」という言葉が使われていました。

また、ついさきほど、元アナウンス部の同僚で現在「ザ・ワイド」のプロデューサーである、結城豊弘くんから電話とファックスで、「医療従事者の名前が変わりました」という、本日(4月12日)付けの日本テレビ審査室・考査部からの「通達」が送られてきました。

それによると、

<新しい表現> <旧表現>
保健師 保健婦・保健士
看護師 看護婦・看護士
准看護師 准看護婦・准看護士
助産師 助産婦
※資格、試験、免許などすべてに適用
しかし、まだ「看護師」という表現は一般に定着していないので、本人はもちろん、タレントや一般の人が「看護婦」「看護婦長(婦長)」などの表現を使っている場合にまで無理に言い換える必要はありません、とも記されています。

また、「解説」として、今回の改正の目的は、

【1】名称の性差の改称

【2】「師」を使う事による。資格の社会的地位向上

【3】「助産」資格の男性への門戸開放の布石

だということです。

前回(2月6日)、検索エンジンGoogleで調べてから2か月が経ちましたので、もう一度調べてみました。

<今回>
(前回)
看護師=
6540件
( 2520件)
看護士=
3万4000件
( 3万2400件)
看護婦=
54万9000件
(約51万0000 件)
ということで、「看護師」の増加率は260%(=2,6倍)にもなっています。ちなみに「看護士」は105%(1、05倍)、「看護婦」は107%(1、07倍)です。急激に「看護師」が増えていますね。

2002/4/12


(追記11)

4月16日、衆議院和歌山2区の補欠選挙が告示。3人が立候補しました。そのうちの1人の候補の職業が、

「病院総婦長」

と、同日の読売新聞・夕刊に載っていました。看護婦長さんはやはり「婦長」なんですね、

「(看護)師長」

とは、言わないようです。今のところ。

2002/4/17


(追記12)

4月18日の日経新聞・朝刊の見出し、

「不整脈で看護師死亡 過重な勤務が原因 奈良地裁判決 公務災害認める」

というもの。

「看護師」

を使っていました。本文の中でも3か所、「看護師」が出てきます。

「町立大淀病院の看護師、山本正子さん」

「1995年9月23日、看護師控え室で仮眠中に・・・・・・」

「病院は看護師を二班に分けて仕事をしていた」

いずれも「看護師」です。最初のは、特に「女性の」とも付いていません。名前で女性とわかるからでしょうか。2番目と3番目は、1995年当時のこと、つまり改正された法律が適用される前のことですから、本来なら「看護婦」と表記されるところだと思いますが、現在の目線で「看護師」となっていました。

2002/4/18


(追記13)

追記12と同じニュース、裁判の地元である奈良の地方紙「奈良新聞」の記事を見てみました。(4月18日付)見出しは、

「大淀病院の看護師」

リード部分は、

「看護師の女性」

となっていて、その後は「看護師」ではなく「女性」を使っていました。(「女性の遺族が」「女性は」「女性の既往症のみ」)また、日経新聞では

「看護師控え室」

となっていた部分が、奈良新聞では、

「看護婦控え室」

と、当時(平成七年=1995年)の呼び名で書いてありました。

2002/4/19


(追記14)

1998年11月川崎市の病院で、女性医師が入院患者に筋弛緩剤を投与し死亡させていた問題で、各紙の記事の中に出てくる「看護婦」「看護師」の使い分けを調べました。

(読売)看護婦(4月22日朝刊)

(産経)看護婦( 同上 )

(朝日)看護師( 同上 )

(毎日)看護師(4月21日朝刊)

(日経) 記述なし

と、読売・産経と、朝日・毎日で分かれました。読売・産経は、問題が起きた時期が1998年11月なので当時の呼称を使ったのか、それともまだ「看護師」を採用していないのかはわかりません。

2002/4/22


(追記15)

4月27日読売新聞大阪版・地域ニュース、漫才の夢路いとし・喜味こいしさんの「聞き書き・浮世はいとし人情こいし50続・漫才今昔」。最終回です。その中で、こいしさんが、

「・・・・・・私らも初めはそうやった。『漫才師や』って言われるんが嫌でね。おのれの職業やのにね。一つランク下げたように言われる。落語師とは言われませんやろ。落語家でっしゃろ。漫才家とは言いまへん。・・・・・・」

という発言が載っていました。「漫才師」。これは「師」が付いてるけど、こんなふうに思われていたのですか。「師」か「士」か。ホントに難しい。
2002/4/27


(追記16)

4月24日の朝日新聞夕刊「あなたの謎??とき隊」というコーナーで、まさにこの問題「なぜ看護婦が看護師に?"師"と"士"の違いは?という京都市の読者・平妙子さん(49)の疑問に答えた記事が載っています。

それによると、国家資格が集中している厚生労働省と国土交通省のHPにのっているのはほとんどが「士」で、「師」は「医師」「薬剤師」など保健分野に集中しているそうです。また「言葉に関する問答集」(文化庁)では「士」と「師」と「司」の違いについて、「一定の資格や職業名付けられた名称で、いずれも読み方が『シ』だから紛らわしい」として取り上げているそうです。一応、そこでは、

「士」=専門の技術・技芸を修めた者。

「師」=一芸に達して教え導く者

「司」=本来の意味『役所』から転じて役に責任を持つ者

となっているそうですが、明確な区別とは言い難い。どれも、意味が重なっている部分があると言うことでしょう。

この記事ではさらに、

『「師」は師匠などの言葉のイメージから尊敬すべき対象かと思っていると、おちゃめな「道化師」にも出くわす』

と書いてあります。また、武庫川女子大学言語文化研究所の佐竹秀雄教授は、

「法律用語は別にして、感じの標記は見慣れちゃった字が勝ち。理屈じゃないんですねえ」と「笑った」そうです。

あー、あー佐竹先生。まあ、そういう所は好きなんですが。

で、この記事を書いた「謎??とき隊」の織井優佳隊長は、こう結んでいます。

『「士」「師」の使い分け基準を明確に示すことはできなかった。平さん、お許し下さい。ただ、日本語表記の奥深さの一端に触れる調査結果は実に勉強になりました。

ともかく、もう一度小学生になったら、今度は漢字の書き取りテストに一喜一憂するのはよそう!』


・・・・・・ギブアップですね。でも、朝日新聞はどういう標記にしているか、とかその基準に付いて、自社の見解も載せるべきではないのかな?織井隊長!

2002/4/26


(追記17)

またまた「看護師」(看護婦)が事件を!

福岡県久留米市内などに住む看護師ら女4人が、4月28日、殺人と詐欺の容疑で福岡県警 に逮捕されました。4月29日の朝日新聞朝刊の見出しは、

「医療用チューブに酒 保険金殺人 関係者『看護師が、なぜ』」

で、各紙の「看護婦」か「看護師」かの標記ですが、

(朝日)看護師

(毎日)元看護師

(読売)元看護婦

(産経)元看護婦

(日経)元看護婦

ということで、「元」をつけていないのは、朝日だけ。

また、「師」は朝日と毎日の2紙、「婦」は読売・産経・日経の3紙ということで、どうやら固まってきたようです。

テレビ各局はまだ調べていませんが、テレビ朝日の正午からのワイドショー(4月30日)のサイドスーパーは、

看護婦保険金殺人〜同時期に2人の夫が・・・白衣の4容疑者」

となっていて、「看護婦」を使っていました。ニュースは見落としました。

読売テレビの土曜朝のバラエティ番組「あさパラ!」では、3月30日の放送で、女のこのなりたい職業ランキングを紹介した中で、

「第3位 看護士」

と出してしまい、複数の視聴者から「"看護師"が正しい」と電話でご指摘を受けました。担当者は「看護ふ(婦)」から「看護し」に変わったところまでは知っていたのでしょうが、ちょっと見落としてしまったのでしょう。すみませんでした。

2002/4/30

(追記18)

8月22日の産経新聞の投書欄に、東京都青梅市の石井俊一さん(33)という看護師の方から「看護は専門職、認識広めたい」という投書が載っていました。これは「談話室」で先日「看護婦を看護師とする名称変更は納得行かない」という意見が載ったことに対する反論です。「談話室」に載った投書は「看護婦は差別用語ではないので、変える必要はない」という趣旨のものだったようで、現場で十年働いているこの石井さんも、看護婦を差別用語と感じたことは一度もないと言います。ただ、看護婦は業務独占の専門職の名称としてはふさわしくないと感じていたそうです。

産経新聞では8月13日から11回にわたって、校閲部長の塩原経央氏「国語に寄せる11の断想」というコラムを連載しましたが、その第8回(8月21日)が「現実を書き換える言葉・『看護師』というイデオロギー」というタイトルでした。ここで塩原氏が述べた内容は、 「『看護師』は『看護婦・看護士』という男女の別を表す言葉を抹殺する意志をその言葉に表出したイデオロギー用語なのである。」 「『看護師』というイデオロギー用語が『看護婦』という日常語に取って代わることの恐ろしさは、単に名前が変わるのではなく、ジェンダーフリーのイデオロギーが現実世界を上書きしてしまうことにある。『看護師』はあっという間に内実を膨らまし、『看護婦』という文化を支えていた文化の内実を書き換えてしまうに違いない。フェミニストは言葉が現実を生み出すことを知っているのだ。」 「看護婦という日常語のぬくみを大切にしたい。『看護師』という言葉の仕掛けが、現実を書き換えてしまうに違いない言葉の威力を思えばこそ、切実にそう思う。」 気づきませんでしたが、確かに「看護婦」から「看護師」への名称変更は、男女の名称の相違=男女同権というふうなジェンダーの視点からですので、その意味では「イデオロギー的用語」なのかもしれません。もう一つは「対医師」という「階級闘争的な視点」も含まれているようです。そういった意味からは「イデオロギー用語」と言うのはその通りかもしれません。そして、医療のもう一方の担い手(?)である「対患者」という視点もこの名称には含まれてくると思います。投書をした石井さんが、 「先日の投書では職業ではなく役割である主婦や、一般的には認められていない娼婦と同列に論じられているこのことからも看護婦は一般的な専門職とは認識されていないことを痛感する」



と書いているように、患者であるわれわれ一般の者の視点にこだわりすぎるのもどうかな、という気もするのですがどうでしょうか。

2002/9/4


(追記19)

北朝鮮に拉致された人の中で5番目の生存者として名前が挙がった「曽我ひとみ」さんの職業は、当時(19歳)「看護婦」だったという報道が9月20日の夕刊で報じられました。その各紙の表記が「看護婦か看護師か」を、坂アナウンサーが調べて教えてくれました。それによると、



<見出し>
(本文)
(読売)
准看護婦
准看護婦
(朝日)
なし
准看護婦
(毎日)
看護婦
准看護婦
(産経)
看護婦
女性看護婦
(日経)
なし
准看護婦
だったということです。ちょっと「んん??」と思ったのは、産経新聞。見出しは「看護婦」なのに本文では「女性看護師」。見出しでも使っているんだから、「看護婦」でよかったんじゃ、ないでしょうか?産経新聞としては。 それから、"当時"というのはもう20年以上前で、その時点では「看護師」という呼び名はなかったのですから、「看護婦」とした方がよいのではないか?という問題もあります。 なかなか結論のでない問題ですね。

2002/9/23


(追記20)

10月4日の読売新聞・朝刊の「論点」で熊本大学医学部の前田浩教授が、 「看護・治験職の教育充実を」
というコラムを書いてらっしゃいました。その中で、
「第一線で働く看護師らは・・・」
「看護師」を使っていました。新聞社の外部の人の原稿ですから、ご本人がそう書かれたのでしょう。「医学の現場では、既にそうなのだな」と感じました。

2002/11/6


(追記21)

11月9日の「恋のから騒ぎ」を見ていたら、出演者の素人の23歳の女性で、この前まで字幕スーパーで「看護婦」と出ていた人が「看護師」になっていました。バラエティー番組でも「看護師」を使い出したのだな、と思いました。
それと朝、電車の中で、隣の人が読んでいたスポーツ新聞の見出しに、
「橋口師」
という文字が踊っていました。エリザベス女王杯の競馬の記事。「橋口師」というのは「調教師」の名前でした。こういう使い方もされるのですね。「師」は。

2002/11/10


(追記22)

「国境なき医師団」からのニューズレターが届きました。今年で活動を始めてからちょうど10年になるそうです。今年4月に(追記9)で書いた「国境なき医師団」のレターでは、「看護婦」という言葉が使われていたのですが、今回届いたレターでは、
「看護師」「助産師」
が使われていました。
(助産師・渡辺知=わたなべ・とも)
徐々に浸透しているようですね、この「看護師」「助産師」。
2002/12/2


(追記23)

2003年1月6日の読売新聞「論点」で放送タレントの永六輔さんが「日本が元気になるために」と題して書いていました。日本が元気になるためには「読み書き算盤」を取り戻そう!元気の「気」の字は「氣」でなくてはならない、と書いています。つまり元気を出すには「米」がポイントだと。
まあ、それはいいとして、その中に看護師に触れた個所があります。
「医療の世界で明るいニュースが飛び込んできた。看護婦さんが大学病院の副院長になったのである。僕は長い間、ドクターとナースは主従ではなく、仲間であるべきだと訴えてきたので、この人事は、日本中の看護師を元気づけたことと思う(看護師という言い方も、女性は看護婦、男性は看護士でいいのではないかと思う。)」
という意見を表明しています。ちなみにその看護婦さんが副院長になった病院というのは、名古屋大学病院で、看護婦出身の副院長は大原洋子さんだそうです。

2003/1/14
(追記24)

NHKでこの2月に新しく始まるドラマ「赤ちゃんをさがせ」は、助産婦さんが主人公のようです。その番組宣伝を見ていたら、ここでNHKは「助産婦」ではなく「助産師」を使っていました。「看護師」に比べると使われる機会が少ない「助産師」ですが、今回のドラマで少し広がるかもしれません。 そして、2月12日の産経新聞の連載コラム「三たび国語断想」で、校閲部長の塩原経央さんが、この「平成ことば事情」の「看護師」のことを取り上げてくださいました。今朝、新聞を見てビックリしました。塩原さんが以前「看護師」について書かれたコラムをこの項で紹介したので、それを紹介するということもあったのかもしれませんが。

2003/2/12

(追記25)

2005年10月19日の産経新聞に、
「あこがれの帽子に 看護婦の決意新た」
という見出しで、大阪府高槻市の大阪医科大学附属看護専門学校で行われた戴帽式の記事が出ていました。ここでは、
「看護婦」
が使われていました。そして本文では、
「看護学生八十三人は、あこがれのナースキャップを付け、誓いを新たにしていた。」
とあります。「ナースキャップ」をかぶるのですから、これは女性に限るのでしょう。だから「看護婦」と限定しているのでしょうね。

2005/10/20
(追記26)

『ズームイン!!SUPER』が、『ズームイン!!朝!』の開始から数えて満30年を迎えました。今週はそのメモリアル・ウイークになっているのですが、3月4日の放送で、福沢朗アナウンサーが担当していたときのこと、「2001年11月」、つまり「9・11」から2か月の時期にアフガニスタンへ行った島根県の“看護婦”伊藤明子さんを紹介していました。その時の放送では「看護師」ではありませんでした。
フーンと思ってみていたのですが、いまこの文章(本記)を読み返してみると、「2001年12月6日」の衆議院本会議で「改正保健婦助産婦看護婦法」が成立したことを受けて、「2002年3月から」法律が施行されたのですね。それから7年。「看護婦」は遠くなりにけり、です。

2009/3/5



◆ことばの話559「ペイトリオッツ」

アメリカ最大のスポーツの祭典、スーパーボールが先日行われ、ボストンのチーム、ニューイングランド・ペイトリオッツが、セントルイス・ラムズを、試合終了直前のフィールドゴールで振り切って、初優勝を果たしたのは皆さんご存知でしょう。



その優勝したペイトリオッツ、「愛国者」という意味ですが、日本ではこの単語、



「パトリオット」



のほうが耳慣れているのではないでしょうか。「パトリオット・ミサイル」とか、ハリソンフォード主演の映画「パトリオット・ゲーム」とか。もちろん「ペイトリオッツ」と「パトリオット」は同じ言葉です。「ペオトリオッツ」の最後が「ツ」になっているのは複数形だからでしょうが。



英語に詳しい脇浜アナウンサーに聞くと、すぐにインターネットの英和辞書を開いて、パソコンで発音を聞かせてくれました。その発音は、誰が聞いても



「ペイトリオッ」



と聞こえました。発音記号を見てみると、最少は「ペイトリオッツ」、二つ目に「パトリオット」が載っていますが、主流派「ペイトリオッツ」のようです。



こういった外来語をどうカタカナ化するか、ということですが、「耳」を優先すれば「ペイトリオッツ」、「目」を重視すれば「パトリオット」だと思います。



例えば日本にローマ字を持ち込んだのは「ヘボン」さんですが、女優は「ヘップバーン」あるいは「ヘプバーン」。「ヘボン」は「耳」から、「ヘップバーン」は「目」で取り入れた外国語だと思います。



「目」で取り入れた外来語をそのままカタカナ発音したって、外国人に通じるわけないですよね。まだ「耳」から入った外来語をカタカナ発音したほうが、通じやすいのではないでしょうか。



「目」か「耳」か?



その昔、外国人に初めて遭遇した日本人が、会話をするために作った単語帳は、「耳」から入ったものをカタカナで文字として定着させたものでした。



これからの時代、「言語に忠実」というのであれば、「耳」を重視したほうが良いのではないかな、と考えます。



2002/2/7


◆ことばの話558「早引き・早引け」

「学校を早引きした」



というのが私の語感の中にある「早引き」なんです。しかし、国語辞典を引いてみると、載っているのは「早引け」なんです。「き」ではなく「け」。しかも本来は「早退け」という表示。表外訓に「退(ひ)く」というのがないので、「引く」で代用させているうちに、定着してしまったのでしょう。



思うにもともとの言葉の違いがあるのではないでしょうか?



つまり「早引き」は、早く「引く」で「早引き」「早引け」は早く「引ける」。「引く」と「引ける」の違いがあるのではないでしょうか?



どちらかと言うと、現在は「早引き」のほうがよく使われていて、「早引け」は、新明解のいうところの「老人語」に入るのではないか、と感じているのですが、このことを日本新聞協会の用語懇談会・放送分科会で話したところ、



「"早引き"も"早引け"も古い言い方で、今は言わないのではないか。今は"早退(そうたい)"というのではないか?」



という意見が出ました。



さうか、「早退」があったか。



でも中学・高校では「早退」かもしれないけど、小学校ではまだ「早引き」ではないのかなあ。つまり「早退」が相対的に新しいのではなくて、年齢によって使い分けが行われているのではないだろうか、と思うわけです。どうでしょうか?



国語辞典と言っても「日本国語大辞典」を引いてなかったので、引いてみました。



そうすると、「早引き(早退き)」「早引け(早退け)」両方載っていました。ただ、意味を見てみると「早引き」の方には「早引けと同じ」としか載っていなかったので、やはり本来は「早引け」なんでしょうか。意味はそれしか載っていませんでしたが、用例は両方に載っていました。



まず「早引け」ですが、用例としては、正宗白鳥の「何処へ」(1908)、有島武郎「或る女」(1919)が、また「早引き」は薄田泣菫「茶話」(1915―30)谷崎潤一郎「卍」(1928―30)が載っています。年代はほぼ同じくらいですが、少し「早引け」のほうが古い・・・かと思ってよく見てみると、なんと1801年の例が載っているではないですか!



島崎金次郎宛大田南畝書簡―享和元年(1801)7月中旬か、とあって、



「其後今日迄照りつづき、暑気強候得共、日々早出早引、昼九ツ時頃帰候へども」



とありました。しかしこれでは「早引」が「はやびき」なのか「はやびけ」なのかわからないな。



在のこれらの言葉のつかわれ方はどうなのか?例によってGoogleでインターネット上を検索してみました。結果は次の通り。



(早引き) 2740件



(早引け) 1710件



(早退き) 56件



(早退け) 137件



(早退)6万2900件



ほお。使われているのが多い方から言うと、



「早退」「早引き」「早引け」「早退け」「早退き」



の順です。やはり大人の年代が使う漢語の「早退」が圧倒的に多いですね。



そして、「早引き」「早引け」対決は、やはり「早引き」に軍配が上がりました。よしよし。一方「早退き」「早退け」対決は、逆に「早退け」に軍配が。これはそもそも古い表記の「退」を使っているところから、新しい「はやびき」という語ではなく「はやびけ」を使う人が多いのではないかと思われます。



今後は状況に応じて「早退」と「早引き」または「早引け」を使うことになるんでしょうね。では今日はこの辺で「早引き」します、ね。



2002/2/7


(追記)

今週月曜日(2月4日)発売の漫画雑誌「週刊ビッグコミック・スピリッツ」に連載されている野球マンガ「青空」(原秀則)の最終話「やさしき故郷へ」の中での、野球から帰ってくる途中の小学生と思しき息子が、路上で父に出会った時の会話。



息子「どしたの、父ちゃん・・・もう仕事終ったの?」



父「今日は早退けさせてもらったんだよ・・・。」



父は30歳代と思われますが、「早退け」を使っているところから、結構、昔気質のように感じられます。



また「ことば事情240寝違い」も、今回のとちょっと関係あるかな。



このほか、2月2日の読売新聞スポーツ欄(19面)にこんな見出しが。



「ストライクゾーン見直し、横浜置いてきぼり



新しいストライクゾーンの説明に来るはずのセ・リーグの審判が、横浜ベイスターズにだけ、キャンプ初日に来なかったという話ですが、「置いてきぼり」か「置いてけぼり」か、「き」か「け」かの問題ですね。

2002/2/7


◆ことばの話557「ショかジョか」

「道浦さん、保養所の所は"ショ"ですかね、"ジョ"ですかね?」



ナレーション録音をしている後輩のOアナウンサーから内線電話がかかってきました。



「うーん、どちらでも間違いではないんだけど・・・」



と答える私の手元には、強い味方が、。一昨年(2000年)秋、大阪外国語大学外国語学部の丸山佳代さんという学生さん(当時)が、インターネット上で、この「ショ」か「ジョ」かという問題について、アンケートを取っていたのです。この呼びかけに答えたのは、



北海道から沖縄までの1207人。



そこで調べた言葉は、「配達所」「研究所」「停留所」「診療所」「出張所」「造船所」「案内所」「職業安定所」「保健所」「印刷所」「保育所」「拘置所」「派出所」「集配所」「撮影所」の15語。



結果の全体の傾向としては、愛知・岐阜を境としてそれより東の地域では「ジョ」と濁る傾向が強く、富山・石川・福井・滋賀・三重から西の地域は「ショ」と濁らない傾向が強いことがわかっています。中でも栃木県は、もうほとんど全部「濁る」傾向にあります。例外は、東においては秋田県(=あまり濁らない)、西においては鹿児島県(やや濁る)というところでしょうか。



秋田県が、西の地域と同じ傾向をもっているのは、私は密かに「北前船の影響ではないか」と思ってるんですが、どうでしょう?。



15語のうち、「撮影所」「停留所」「造船所」は全国的に濁る傾向に、また「保育所」「拘置所」は全国的に濁らない傾向にあるようです。



西日本=「ショ」、東日本=「ジョ」という違いがよく出たのは、「案内所」「出張所」「診療所」「研究所」「保健所」といった言葉でした。



先日(2月1日)の新聞協会用語懇談会・放送分科会でこの話題が出た時に、関西テレビの岡本アナウンサーが、「うちは、こんなのがあるよ」と言って見せてくれたのが、フジテレビ系列の用語ハンドブック。そこには「ショとジョの読み方」に関するマニュアルがありました。ご紹介すると、



〜「ショ」と読むもの〜



安置所、安定所、一時預かり所、営業所、御旅所、海難審判所、鑑別所、管理所、救護所、



区役所、刑務所、検疫所、更衣所、工事所、拘置所、港務所、碁会所、裁判所、市役所、



事務所、宗務所、商工会議所、信号所、託児所、駐在所、登記所、伝習所、取次所、



発電所、販売所、奉行所、変電所、保護観察所、補導所



〜「ジョ」と読むもの〜



案内所、売りさばき所、演奏所、学問所、観測所、休憩所、救難所、教習所、公文所、



訓練所、研究所、研修所、検定所、検問所、講習所、興信所、撮影所、試験所、収容所、



宿泊所、授産所、出張所、紹介所、診察所、精算所、製鉄所、製錬所、洗面所、送信所、



造船所、相談所、操練所、測候所、待避所、脱衣所、中継所、通信所、停留所、鉄工所、



取引所、派出所、発行所、引換所、放送所、(保育所)、保健所、保養所、療養所、



連絡所、景品交換所



となっています。しかし、私の感覚で言うと、「派出所」は「ハシュツショ」だし「保育所」は「ホイクショ」しかないんですが。個人差、地域差というものが大きいでしょうね。



「ジョ」でも「ショ」ーがないのもありますが。



みなさんの言語感覚では、どうでショか?

2002/2/14


(追記)

北朝鮮の貨客船「マンギョンボン(万景峰)号」の、7か月ぶりの入港を控えた新潟西港の様子を伝えた、2003年8月24日の日本テレビ系のニュースで、地元・テレビ新潟のアナウンサーは、「検問所」
「けんもんショ」
と、濁らずに伝えていました。

2003/9/1

(追記2)

日本テレビの杉上佐智枝アナウンサー(1978年、東京生まれ)は、9月30日の朝4時台の「NNN24」の中の北海道・苫小牧の石油タンク火災のニュースで、「精油所」を、
「せいゆショ」
と濁らずに読んでいました。やはり東の人は濁らないのでしょう。

2003/10/2

(追記3)

2004年2月15日、「第一回全日本大学女子駅伝競争」の中継をしていたテレビ東京のアナウンサーは、「中継所」を全員、
「中継ジョ」
と濁っていました。そういう申し合わせだったのでしょう。途中、男性アナウンサーが、「関西学院大学」を「かんさいがくいんだいがく」と言っていたのはいただけませんでした。また「京都産業大学」を「京産大」とするのはいいでしょうが、「キョウサン大学」と言っていたのもおかしいなあ。ガクがあるところをみせようとしたのでしょうか。
話はそれますが、埼玉で行われたこの駅伝、対抗2車線、つまり向かい合わせで1車線ずつしかない道路で行われていたのですが、よく埼玉県警が許可したものだと。駅伝の勝負より、向き合いの車線で、車が数珠つなぎで大渋滞している狭い道路の方が気になってしまいました。

2004/2/15

(追記4)

政府公報のコマーシャルで、児童虐待防止を訴えるものを放送していました。その中で、「児童相談所」のことを、
「児童相談ショ」
と濁らずに男性ナレーターは読んでいました。たしかにこれは濁らないような気がします。

2004/2/15


(追記5)

今頃こんな記述を見つけました。『NHKことばのハンドブック』の87ページに「『所』の付く語」の読みについて書いてありました。

◎「〜ショ」という発音だけを認める語
刑務所、工事所、拘置所、港務所、碁会所、裁判所、事務所、市役所、社務所、
宗務所、商工会議所、駐在所、登記所

◎「〜ジョ」という発音だけを認める語
試験所、授産所、出張所、紹介所、洗面所、送信所、放送所

◎「〜ショ」「〜ジョ」の2通りの発音を認める語
安置所、安定所、案内所、印刷所、売りさばき所、営業所、観測所、管理所、
休憩所、訓練所、検疫所、研究所、研修所、検定所、講習所、作業所、撮影所、
宿泊所、信号所、診療所、製材所、制作所、精算書、製鉄所、精米所、造船所、
相談所、測候所、託児所、中断所、通信所、手洗い所、手形交換所、鉄工所、
取次所、取引所、農業改良普及所、派出所、発着所、発行所、発電所、販売所、
避難所、引替所、変電所、保育所、保健所、保護観察所、補導所、療養所、連絡所


2004/3/12

(追記6)

毎日放送の古川圭子アナウンサーは、4月2日のお昼のニュースで、「料金所」を、

「リョーキンショ」

と、濁らずに読んでいました。彼女、関西出身だからね。
また、3月30日の「ズームイン!SUPER」に出演の佐々淳行さんは「児童相談所」は、「そうだんじょ」と濁ったのですが、単なる「相談所」は「そうだんしょ」と濁りませんでした。一人の中でも濁ったり濁らなかったりするんですね。

2004/4/2

(追記7)

去年(2003年)の8月31日、日本テレビの山本真純アナウンサーは、

「パナウエーブ研究所(ショ)」

と濁らずに読んでいました。また、同じく福井放送のアナウンサーも「ショ」と濁らずに読んでいた、というメモが出てきました。

2004/4/30


(追記8)

5月4日の深夜(実質5日の午前1時)のNHK「ラジオ深夜便」のニュースで、男性の佐藤アナウンサー(東京出身の佐藤敏彦アナウンサーでしょうか?)は、
「児童相談所(ジョ)」
と濁って読んでいました。同じニュースで出てきた「裁判所」は、もちろん「ショ」と濁りませんでした。


2004/5/5


(追記9)

5月10日、うちの横須賀アナウンサーは、
「保健所(ジョ)」
と読んでいました。


2005/7/30


(追記10)

10月20日のお昼のニュースで、
「児童相談所」
と言う言葉が出てきました。これをうち(読売テレビ)の大田良平アナウンサーは、
「ジョ」
と読み、テレ朝の山口アナウンサーも、
「ジョ」
と読んでいましたが、NHKのアナウンサーは、
「ショ」
と読んでいました。ご報告まで。


2005/11/6


(追記11)

NHKラジオ第一放送の2005年11月29日午前10時のニュースで、伊藤雄彦アナウンサー「精油所」を、
「ジョ」
と読んでいました。


2006/1/12

(追記12)

去年(2005年)の11月24日、テレビを見ていたら、
「再春館製薬所」
のCMをやっていました。この「所」の読み方ですが、
「セイヤクショ」
と濁りませんでした。この場合は、固有名詞でしょうけどね。


2006/1/13

(追記13)

11月15日、紀宮さま(黒田清子さん)のご結婚に際して、勤務先だった、
「山階(やましな)鳥類研究所」
がよく出てきましたが、その「所」の読み方は、NHKの武田アナウンサーは、
「ショ」
と濁りませんでした。紀宮さまご結婚中継テレビ・ラジオ共通のアナウンサーも、やはり
「ショ」

と言っていました。(現在、去年のメモを整理中です。)


2006/1/13

(追記14)
2007年7月16日、午前10時13分、「新潟中越沖地震」が起きました。被災された方には心からお見舞い申し上げます。
そのニュースで、塩崎官房長官「原子力発電所」を、
「発電ジョ」
濁って発音していましたが、普通は「発電所」は濁らずに、
「発電ショ」
と言いますがねえ。『NHKことばのハンドブック』では、「発電所」は「ショ・ジョ」両方認める、となっていますが、フジテレビのハンドブックでは「ショ」と読むことになっています。
2007/7/17


◆ことばの話556「キャリアグラス」

保育園に子供を送る車の中でふと耳にしたNHKのラジオ。眼鏡の話をしていました。
ゲストは老眼鏡業界(そんな業界があるのですかね。眼鏡業界で良いのかな。)の人のようです。その人の話によると最近、業界筋では「老眼鏡」のことを、
「キャリアグラス」
と呼ぶようにしているそうです。「老眼鏡」の「老」の字が嫌われているみたいですね。確かに40代くらいからいわゆる「老眼」になる人も多いようですし(知り合いにもいます)、40歳過ぎくらいで「老」の字がつくものを身につけると、急に老け込んでしまう気がして、あまりいい気はしませんよね。そこで、
「老いたのではなく、キャリアを積んだ人がかける眼鏡なのだ!」
という気持ちがこの「キャリアグラス」の中には、込められているようです。
言葉の言い換えって、なんか無理をしている感じのものが多いように感じるのですが、この「キャリアグラス」なんぞは、そんな中ではまだ語感が良いほうじゃないかな、と感じました。「サングラス」みたいな感じで。でも、横文字にしてしまうところはちょっとなあ。
インターネットで検索をしてみると、どうやら去年の10月に、この「キャリアグラス」という名前は、名前を公募するキャンペーンで決まったようなのです。業界の中心になっている(らしい)HOYAに電話でそのあたりの事情を伺いました。
が、本社に「キャリアグラスの件で・・・」と聞くと受付の女性が「それでしたら、こちらにお電話下さい。」と教えてくれた番号に電話をかけると、出てきた男性の受け答えがどうもトンチンカン。「老眼鏡のキャリアグラスの件なんですが・・・」と言うと、「あっ、こちらはクリスタルガラスの方なので、眼鏡のほうにおかけ下さい」と言って教えてくれた番号は、さっきかけた番号でした・・・。苦笑しながら、その番号にかけると「広報の番号をお教えします」。広報にかけると、「それでしたら、担当者の番号をお教えします。」。その番号にかけると、「あいにく担当者は、今日は出払っています。」
この「老眼鏡」のイメージアップ・キャンペーンを担当した係の男性とは、翌日(2月7日)電話でお話をすることができましたが、向こうが言うには
「ファックスでお送りしますので、いつまでにお返事すればいいですか?」。
その場で話してくれれば、おそらく5分で済む話なの・・・と思いつつも、まあ、急がないと言えば急がないので、「来週中にいただければ・・・」と答えたのですが、週があけてもなかなか返事が届きません。
そして2月13日水曜日の昼下がり、ようやく待ちに待ったファックスが届きました!
それによると、このキャンペーンはHOYAの遠近両用眼鏡レンズの発売記念イベントとして去年秋、「老眼鏡」の持つマイナスイメージを払拭することを目指してネーミングの募集が行われたものです。主催はHOYA(株)ビジョンケアカンパニーですが、業界団体の日本眼鏡関連団体協議会の同意を得て広く業界内での浸透を目指しているとのことで、ネーミングの応募総数は、ハガキとインターネットで4万0749通。10月24日には東京ビッグサイトで、ネーミングの発表式もやったそうです。
その応募の中から「キャリアグラス」という名称を選考した理由は、
「人生で積み重ねたキャリアをさらに重ねていくことを前向きにとらえ、男女の区別なく自然に親しみを込めて使用できるメガネ」
ということだそうです。
また、この「キャリアグラス」という名称の浸透度については、
「いまだ、使用期間が浅いせいか、一般の方々に浸透してきたとは言えない状況です」
と素直に状況を認めています。そうでしょうね、まず社内から始められたら・・・とも思いますし。でも、悪くない名前だと思いますので、私も折りに触れて、
「老眼鏡のことを最近、キャリアグラスと言うようになったらしいよ。」
と、使ってみようかな。あ、でも私はまだ「キャリアグラス」そのものは不要なんですけどね。
2002/2/13
(追記)

これを書いてから4年。またワールドカップの年です。それはさておき、「老眼鏡」の言い換えに関して、昔読んだ本を読み返していて、見つけました。
「デスクグラス」
1985年に東京のメガネ店が一般募集してこういう名前に決まった、という記述を『新ことばのくずかご』(見坊豪紀)の113ページに見つけました。
Google検索(7月3日)では、
「デスクグラス」=7件
しかし、机の上に敷くガラス板のことをどうも「デスクグラス」と呼ぶみたいで・・・・20年以上経って「デスクグラス」はまったく定着しなかったようですねえ・・・。一方、
「キャリアグラス」=261件
でした。これも定着したとは言いがたいようで・・・。
ところで、前にこの原稿を書いてから4年が経ちましたが、4年前には、
『私はまだ「キャリアグラス」そのものは不要なんですけどね。』
と書いていたのですが、最近、暗いところで文字を読む時には、ちょっとピントが合いにくくなってきました・・・45歳の夏。
2006/7/3