◆ことばの話525「"ににんぐみ"と"ふたりぐみ"」

よく視聴者の方からも聞かれるし、アナウンサー仲間でも問題になるのが、

「二人組み」

の読み方です。「ににんぐみ」か「ふたりぐみ」か。普通の会話の中では、間違いなく「ふたりぐみ」ですが、ニュースの中では「ににんぐみ」という読みをする局と「ふたりぐみ」と読む局に分かれています。ちなみに読売テレビの系列は「ににんぐみ」でやっています。そのあたりの花者「ことばの話148"二人組み"」に書いてあります。

今回は、この「ににんぐみ」と「ふたりぐみ」というふうに読みが割れていることによって、特に一般社会ではあまりなじみのない「ににんぐみ」が放送で使われることによって、意味の分化が始まっているのではないか、という話です。

つまり、一般の人にとって、「ににんぐみ」という言葉を聞くのは、ラジオ・テレビのニュースでのみ。しかもそのニュースは大抵、「強盗」などの犯人です。ですから中には、

「"ににんぐみ"は悪いことをした人の時に使い、そうでないときは"ふたりぐみ"を使う」

というふうな使い分けの意識が芽生え始めているのではないか?ということです。

先日、若いスタッフのそういった声を耳にして、確かにそういったことは起こっているかもしれないと思いました。私自身もニュース以外の日常生活で「ににんぐみ」を使うことはありませんし、ニュースに出てくる「ににんぐみ」は、確かに銀行や郵便局やコンビニに押し入ったり、ひったくりばかりしています。「三人組」だと「仲良し」だったりすることもあって、必ずしも銀行に押し入ったり悪いことばかりしてはいないのですけど。「仲良し三人組」がやるのはせいぜい「いたずら」くらいですね。

今後もそういった意味合いの定着に"努力"していくのか?それとも無色透明の「ににんぐみ」にするための努力を何か行うのか?その中には、「ふたりぐみ」を全面的に放送でも使うことで、悪いイメージを払拭し、「ににんぐみ」の「ににん」は伝統的なものにのみ使うような方向にいくのか?どうなるんでしょうね。注目です。

2001/12/27



◆ことばの話524「酸素ボンベ」

朝、出社したら、早朝番組「あさイチ!」担当のWアナが怒っています。理由を聞いていると、映画「グラン・ブルー」のモデルにもなったダイバーのジャック・マイヨールさんが自宅で自殺したというニュースに関してでした。

「今朝、そのニュースを読んだんですけど、こっちはちゃんと“エアタンクを使わない、いわゆる”素潜り“で初めて100メートルを越えたジャック・マイヨール氏が・・・・”と読んだのに、“ズームイン!!SUPER”では“酸素ボンベを使わない・・・”って言ったんですよ。ええかげんにして欲しいわ。」

「ん?それはどう違うの?」

ダイビングに酸素ボンベなんか使わないですよ。潜った時に、酸素は毒性を持つので、絶対、酸素なんか使わないんです。ダイビングに使うのは、酸素と窒素の混合されたもの、つまり“空気”です。」

「そう言われれば、酸素ボンベは、病院で使ったり登山の時にちっちゃなボンベを使ったりはあるけど、ダイビングは使わないね。」

「ダイビングしてる人は、普通エアタンクのことを略して“タンク”って言いますけどね。ヨーロッパ系の人は“シリンダー”と言うこともあるみたいですけど、酸素ボンベなんて絶対に使わないし言わないですよ。一体なんですか、ボンベって。」

そうだなあ、ボンベって、何語だろう。考えたこともなかった。で、辞書(新明解国語辞典)を引いてみました。すると、そこにはきっちり「ドイツ語」と書いてあるではありませんか。ドイツ語から日本語に入ってきた外来語はたくさんありますが、この「ボンベ」はおそらく医学関係の用語として入ってきたのでしょう。意味は、
「高圧の気体などを入れる、円筒形・鉄製の容器。耐圧容器。」
また、本来のドイツ語のスペルを見てみると、
Bombe(ドイツ語)
とあります。ボンベ。待てよ、これとよく似た綴り、響きの言葉があったぞ。
bomb(英語)
爆弾。英語ですが。爆弾も鉄製の容器に入っていますよね。何か共通点があるのかもしれません。ついでに手元にあるスペイン語辞典を引いてみました。
bomba(スペイン語)
ポンプ。爆弾。砲弾。ランプの火屋(ほや)。
「ポンプ」という意味が出て来ました。砲弾は、「ボンベ」に似てますね。やっぱりドイツ語の辞書を引かなくちゃ。ということで引いてみると、
Bombe(ドイツ語)
 爆弾。 強力なシュート
とあって、「酸素ボンベ」のような「ボンベ」の意味は載っていません。やっぱり、「ボンベ」と「ボム(爆弾)」は関係あったんだ。
でも、肝心の「高圧の気体を入れる容器」という意味は載っていません。
逆に和独辞典で「ボンベ」を引いてみても、載っていません。「酸素ボンベ」は載っていました。「酸素ボンベ」はドイツ語で、
Sauerstofflasche(ドイツ語)
でした。このうち、
Sauerstoff
は、「酸素」の意味ですから、「ボンベ」にあたるのは、
Flasche
ですね。これは、「容器」の意味のようです。ドイツ特派員を経験したことのある会社の先輩に頼んで、ドイツ人の知り合いに見いてもらいましたが、やはり「酸素ボンベ」のことをドイツ語で言う時には、「ボンベ」という単語は使わないそうです。そうすると、酸素ボンベの「ボンベ」がドイツ語から入ってきたというのも、少し怪しくなります。
インターネットでいろいろ調べてみると、どうもフランス語に
bombe(eの上にアクサン)
という形容詞があって、意味は「凸型の、張り出した、丸くなった、ふっくらした」というふうなものだそうです。
また、これは英語にもあるんですが、そういった形をした氷菓(アイスクリームをメロン形などにした氷菓子)を、
bombe(英語)
「ボンベ」と言うそうです。お菓子とか料理はフランス語から入って来たと見て良いでしょう。
このあたりから考えると、まずは、その膨らんだ形から、容器のことを「ボンベ」と呼んでいて、その後そこに爆薬を入れたものを「爆弾」(bomb)と呼ぶようになり、次第に「ばくだん」の意味が主流になっていったのではないか?というふうに考えられます。

ところで、「エアタンク」のことは「ボンベ」とは呼ばないと言うことに関しては、インターネットで見ていたら、
「海洋科学技術センターの職員は、“ボンベ”と言っていた。」
という記述があったので、当の「海洋科学技術センター」に電話で聞いてみました。すると、
「ええ、うちでは“タンク”ではなく“ボンベ”と言ってますね。意味は同じです。
大体、レジャーでのダイビングの方は“タンク”と言うようですが、工業用に潜る人達は、“ボンベ”と呼んでいるようです。我々の場合は必ずしも背中に背負うとは限らずに、海上の船にボンベをおいて、そこからエアーを送り込むこともありますし。なぜ違うかはわかりませんが。」

という答えをいただきました。
また、「ボンベ」と言って思い浮かべるのは「ガス・ボンベ」。そこでガスボンベを扱っている岩谷産業さんにも電話で聞いてみました。
「よく家の裏口なんかに置いてある、家庭用のプロパンガスが入った容器は“シリンダー”と呼んでいますね。家でお鍋をする時のものは、皆さんご存知の“カセット・ボンベ”です。“カセット”は“持ち運びの出来る小箱”という意味です。
“ボンベ”は“容器”という意味ですよ。英語でもそういう意味があります。もちろん、“爆弾”という意味もありますが、もともとは“容器”という意味が初めではないですか。」
ということでした。
また、最初に問題提起をしたWアナも、
「そういう語源を求める学問は“エチモロジー”(etymology)と言って、たくさん本も出ていますから調べてみたら?」
と言いながら、インターネットを駆使して、こんな資料を見つけてくれました。
「フランス語のbombeは、イタリア語のbombaから派生したもので、おそらくギリシャ語の擬音語であるbombosから来たラテン語のbombusがその起源であろう」
というものです。(原文は英語で、それを私がカンで翻訳したので、間違ってるかもしれません。)
日本語で言うと「ブーン」という擬音語になるんでしょうかね。

この件に関して、NHK放送文化研究所の塩田雄大さんにメールで教えを請うたところ、すぐに返事が来ました。
塩田さんの「私見」では、日本における「ボンベ」の意味は、
爆弾→シリンダー→エアタンク
というふうに変わったのではないか、ということでした。その根拠として、古沢典男・石綿敏雄(1979)「外来語の起源」(角川書店)の「ボンベ」の項に、

「官許独和辞典」(明治6年=1873年) 砲碌玉(ほうろくだま)
「国民百科大辞典」(昭和9年=1934年) 鉄製の容器

という説明が見られるとしているそうです。(伝聞の伝聞)
「砲碌玉」は「戦国時代の水軍が使用した焼夷爆弾的爆弾」(日本国語大辞典)だそうですから、ここから考えると、「ボンベ」は明治の頃、最初は「爆弾」の意味で入ってきて、その後、60年の間に「鉄製の容器」の意味に転化したと考えられるというのです。

この順序は私が考えていたのとは逆ですが、私の考えは、なんの根拠もないものですから、塩田さんの推理の方が、説得力がありますね。
ということでなんとなく「ボンベ」の起源も見えてきたような気がします。いや、かえって謎は深まったというべきでしょうか。

それはさておき、「酸素ボンベ」か「エアタンク」か?という問題について、屁理屈を言えば、「エアタンク」であれ「酸素ボンベ」であれ「使わない」と言っているのであれば、「素潜り」には間違いないかなぁとも、ちょっと思いました。もちろんミスリードしやすいし、そもそも根本的な理解が間違っているのは、確かですね。
最後に、ジャックマイヨールさんのご冥福をお祈りします。
2001/12/26

(追記)

今朝コンビニに寄ったら、消火器のような真っ赤な缶の炭酸飲料が目に付きました。その缶には、
「炭酸ボンベ」
と書かれていました。「うまさバクハツ」「レッドガラナ 炭酸飲料」とも。なんだか本当に「ボンベ」のような感じの缶で、丸い「気圧メーター」のような絵も描かれています。
思わず買って飲んでみました。浅田飴のような味がしました。
2006/2/16

(追記2)

マンガ雑誌『ビッグコミック』の6月25日号に連載中の「ゴルゴ13」(さいとうたかを)のテーマは「ドナウ・ライン迷路」。ゴルゴ13が川に潜って逃げるのですが、その際にドイツの警察の司令官が「ダイバーだっ!直ちに水中に入って逮捕しろっ!!」と無線で指示したのを聞いて、ゴルゴ13の動きに詳しいスイスの警察官が、こう言います。
「よせっ、奴は空気ボンベを手にしていない!」
「なまじダイバーが潜れば、直ちに逆襲され、ボンベを奪われるぞ!」
ここでは正しく「空気ボンベ」と使われています、「酸素ボンベ」ではなく。さすがゴルゴ13です。                       
2006/7/13


◆ことばの話523「毎日新聞の終戦記念日の写真」

今年も残すところあとわずか。21世紀幕開けの年は、「テロ」「戦争」で始まってしまいました。それが始まる前に、少し戦争の「匂い」が漂ったのは、8月。終戦記念日に小泉総理が靖国神社に参拝するかどうかを巡って、国論が割れました。

「靖国神社参拝する」なのか「靖国神社参拝する」なのか、「に」と「を」を巡って私はいろいろ調べていく中で、ここ20数年の読売新聞での、8月15日、日本武道館における戦没者慰霊祭の写真に微妙な変化が現れていたことに気づきました。(平成ことば事情406「"に"と"を"」)

その調査によると、読売新聞では1978年から1988年まで、この記事に付いていた写真は、必ず、「日本武道館のステージ正面を、日の丸込みの昭和天皇の後ろ姿のロング(遠景)で撮った写真」が使われていたのですが、1989年以降は、左斜め前や右斜め前などの、日の丸が入り込まない位置から撮られた写真が使われていたのです。

そこで、ほかの新聞も調べてみようと思ったのですが、なかなかそんな暇がなくって・・・。

先日近くの図書館に行った所、たまたま毎日新聞の縮刷版がありましたので、ちょっと調べて見ました。以下はその結果です。

1980年 正面・日の丸(昭和天皇)

1981年 正面・日の丸(昭和天皇)

1982年 右斜め・日の丸なし(皇太子ご夫妻)

1983年 正面・日の丸(昭和天皇)

1984年 正面・日の丸(昭和天皇)

1985年 正面・日の丸(昭和天皇)

1986年 正面・日の丸(昭和天皇)

1987年 正面・日の丸(昭和天皇)

1988年 左斜め・日の丸なし(昭和天皇)

1989年 左斜め・日の丸なし(天皇皇后両陛下)

1990年 左斜め・日の丸なし( 〃 )

1991年 左斜め・日の丸なし( 〃 )

1992年 左斜め・日の丸なし( 〃 )※1

1993年 左斜め・日の丸なし(細川首相)

1994年 左斜め・日の丸なし(村山首相)

1995年 正面・日の丸(天皇皇后両陛下)※2

1996年 左斜め・日の丸なし(橋本首相)

1997年 左斜め・日の丸(橋本首相)

1998年 左斜め・日の丸なし(小渕首相)

1999年 会場内の参列者・日の丸なし

2000年 左斜め・日の丸なし(森首相)

2001年 靖国神社参拝賛成派の集会&反対派のプラカード

※ 1 大きい写真は会場に入る遺族の様子。両陛下の写真はかなり小さい。

※ 2 見出しは「国策誤り、侵略」初めて明言。戦後50年、日本の責任踏み込む。村山首相が談話発表

というような結果でした。

読売新聞の場合は、1978年から1988年まで、つまり昭和天皇の間は、ずーっと

「正面・日の丸」

だったのに、「平成」に入ってからは、日の丸がなくなり、天皇皇后両陛下がお二人で映った写真を使うようになり、ことに1993年は、記事そのものがなかったりしました。1994年には、初めて、皇族でない「首相(村山総理)」のコメントを読む様子を写真で取り上げました。自民党ではない総理大臣です。1998年には、武道館内部の写真も使わないということもありました。結局、日の丸は1988年を最後に出てきません。

毎日はどうかと言うと、1982年に当時の皇太子ご夫妻(現・天皇皇后両陛下)の写真を使った時には、日の丸がありませんでした。そして、1987年までは

「正面・日の丸」

という、読売と同じ写真だったのですが、読売より1年早く、1988年には、日の丸がなくなりました。

そして、その後日の丸が出てきたのは、1995年と1997年の2回。1995年は終戦から50年という節目の年でしたから、天皇皇后両陛下と日の丸を「込み」の写真にしています。

そこから考えると、やはりそれまでの「昭和天皇と日の丸」という写真は「戦争責任」ということと「日の丸」と言うものの持っていた過去を明示することによって、何かを表そうという意思が、当初はあったのではないでしょうか。そして、第二次世界大戦の直接の当事者ではない今の天皇の代(平成)になってからは、「日の丸とは直接結び付けない」ということを写真の上でも表し、「霊を弔うと共に、平和を考える集会」的なイメージを全面に押し出そうとしたのではないでしょうか。

やはり、戦争(第二次世界大戦)に関連する行事の時に「日の丸とツーショット」にすると言うことは、何か意味を持たせていると考えるのが普通でしょう。ただそれが何十年も続いたことによって、訴える意味あいが薄くなってしまったということではないでしょうか。毎日は、6回で5人の首相(橋本総理のみ2回)を写真に載せることで、国民の代表としての総理大臣(天皇ではなく)を前に押し出そうとしています。

しかしそんな中で注目は、1997年の橋本総理大臣でしょう。前の年(1996年)には、日の丸なしで映っている橋本総理、翌1997年には「日の丸と一緒に映っている」のです。これは、毎日新聞が橋本総理をどのように見ていたか、橋本総理の心境・立場の変化を毎日新聞が表わそうとしたことの証拠ではないでしょうか。

なお、朝日、産経の両紙についても、今後調べたいと思っています。

2001/12/25




◆ことばの話522「振る舞われました」

12月に入ると、京都のお寺ではいろんな「イベント」が行われます。その一つに12月初旬に千本釈迦堂で行われる「大根だき」があります。大きな釜でたかれた、味のよく「しゅんだ」大根を食べると「中風封じ」になると言われています。

この「大根だき」、むかしは「だいこだき」とニュースで言っていたのですが、最近は普通に「だいこんだき」ということが多くなりました。

今年はニュースの前に千本釈迦堂に電話で、

「どっちなんでしょうか?」

と確認したところ、

「どちらでもよい」

とのことでしたので、由緒正しい(?)「だいこだき」で読みました。

それはさておき、最初この原稿には

「参拝者に、あつあつの大根が振る舞われました。」

と書いてあったのですが、よく話を聞いてみると、なんと

「1杯1000円、お金を取る」

と言うではありませんか。それでは「振る舞っている」のではなく「販売している」のではないでしょうか。でも「販売していました。」では、お寺の行事としての「ありがたみ」が消えてしまいそうだし。

「振舞う」を辞書で引いてみるといくつか意味があるんですが、この場合当てはまるのは

「もてなす。馳走する。」(広辞苑)

「来客を、酒・食事などで、もてなす」(新明解国語辞典)

「もてなす。馳走する。接待する。」(日本国語大辞典)

とあり、どれも「タダ」とは書いていませんが、そういうニュアンスはありますよね。念のため、日本国語大辞典で「馳走」「もてなし」も引いてみましょう。

「馳走」=「(用意のためにかけまわる意から)心をこめたもてなし。特に、食事のもてなしをすること。饗応すること。あるじもうけ。接待。また、そのためのおいしい食物。りっぱな料理。ごちそう。」

「もてなし」=「饗応。ごちそう。」

うーん、どこにも「タダで」「お金を取らずに」とは明記されていません。心を込めて食事を用意すれば、お金を取っても「もてなし」になるのか?

そう言えば、ホテルなどで、「心を込めたおもてなし」なんて宣伝も、あったような気がするぞ。そうすると、「振る舞う」のも必ずしも「タダで」ということではないのかな?けど、相手から金を取って「接待する」なんてのは聞いたことがないので、やっぱり、金を取った場合には「振る舞う」を使わない方が良いのではないかと思うのですが。

結局この原稿では、「振る舞っていました」のくだりをカットしました。

それから約2週間たった今日(12月22日)、今度は京都府舞鶴市の妙法寺というお寺で、今度は「冬至に食べると風邪をひかない」と言われる、「カボチャ」が入ったぜんざいが「振る舞われました」というニュースが出てきました。

ぜんざいにカボチャ・・・ちょっと想像を絶する味ではないかと思いますが、風邪ひかないのなら、ちょっとお味見くらいはしてもいいかな。

おっと、カボチャ入りぜんざいに気を取られましたが、「振る舞われました」の話です。

これはデスクに聞くと「無料」ということで、安心して「振る舞われました」と読みました。

いずれにせよ、「振る舞い酒だ!」と言われて、あとでお金を請求されたら、なんかイヤな気分になりますよね。本人が納得していたら良いですけど。

これからお正月になると、「ま、ま、ま・・・」とすすめられて飲んだら、「ハイ、1000円」とかいったケース出てくるかな?「お金はいいよ」と言われても安心はできません。

「タダより高いものはない」と言いますし。

2001/12/23




◆ことばの話521「和チック」

日ごろ、皆さんを相手に言葉を使う最前線として働くアナウンサー。NHKならずとも、「言葉の規範性」が求められる部分は多く、ヘンな言葉使いをすると、視聴者センターに電話やファックスで、視聴者の皆さんからお叱りの声を頂くこともあります。

でも、ふだんの生活の場では、結構ヘンな日本語、使ってしまったりしますよね。新しい言葉を作ったりして・・・。先日、そんな「現場」に居合わせました。

後輩のHアナ、Yアナとともに昼食を摂りに行った時のこと。Yアナがナレーション録音の仕事をした時のことを話し始めました。

「原稿の中に"宴会"って書いてあったんで、立食パーティーのようなものを想像していたんですけど、VTRを見たら、全然違って、とっても"ワチック"な宴会だったんです。」

?なんだって?私は聞き逃しませんよ。なんですか、"ワチック"って?

「え?まあその"和風の"ってことですけど。"和チック"。言いません?」

言いませんよ、そんな"チック"。放送で使うなよ。けど、"作る"ねえ、"チック"をつけて新しい言葉を。

それを受けて、Hアナ。

「自動的に"和チック"だったら、"オート和チック"・・・なんちゃって・・・。」

・・・みなさーん、いましたよ、こんなところに"ナンチャッテおじさん"がぁ!!

まあいいか、年末だし。ちょっと、なごんだし。

平和な時間は貴いものです。

そういえば、東京ガス研究所が行ったアンケートの結果が、昨日(12月21日)の朝日新聞の朝刊に載っていましたね。最近の20代の若者は、洋風のホテルよりも和風旅館の方が、贅沢な感じがするので泊りたい、という人が多いというものでした。

意外と"和チック"という言葉、使われていたりして・・・。そんなアホな・・・と思いつつ、いつものようにGoogleでインターネット検索をしてみると、

おお!

52件も出てきたではないですか!Yアナが作った言葉ではなかったのか・・・。

どんな使われ方をしているかと思ったら、

和チックなオリジナルイラスト 和チックなTシャツ
和チックな風呂敷 和チックな部屋
和チックウエディング 和チックなのれん
和チックスタイル 和チックな髪型
和チックチキンボウルスープ 和チックな家具
和チックな漆塗り 和チックな世界観
和チックなフロア 和チックなサイバースペース
この「和チック」には、

【1】和洋両方ある内の「和」をさす意味での「和チック」と、

【2】和風のものを強調する意味での「和チック」の2種類がありますね。

ちなみに反対語は、当然「洋チック」。これは検索したら8件しかありませんでした。

「洋チックな手巻き寿司」「洋チックな絵」とかが出てました。

「洋風」「和風」という言葉がちゃんとあるのになあ。"遊び心"なんでしょうかね。そう言えば「おとめチック」という言葉もあったな。やはり新しい言葉は女性が作っていくのかもしれません。「和チック」検索の最後にこんなものまで出てきました。

田村正和チック

・・・これは"和チック"かどうか、判断に苦しむところですな。でも検索エンジンでは

引っかかってしまうんだよなあ、しょうがないか、ムフフフフ・・・。(田村正和風に)

2001/12/22


(追記)

「オート和チック」は1件も見つかりませんでした。

2001/12/23

(追記2)
2月10日の朝日新聞ネット記事を見ていたら、バレンタイン商戦に関して、
「今年は和チョコに力」
という見出しがありました。
「和チョコ」
って・・・なんと言うかその・・・じゃあ、そうじゃないのは「洋チョコ」?Google検索しましょう。(2月12日)
「和チョコ」=10万3000件
「洋チョコ」=38万5000件
あるもんだなあ・・・。
2007/2/12
(追記3)

2007年6月17日、会社の食堂でお昼ご飯を食べながらテレビを見ていたら、「ナイナイサイズ」の再放送をしていました。その中で、「プリンの食べ比べ」をしていたナインティナインの岡村隆史さんが、泡盛を使ったプリンを食べていました。食べた感想として出てきた言葉が、
「泡盛チック」
でした。あるのかいな、そんな言葉。Google検索したら(6月17日)、
「泡盛チック」=1810件
お、結構あるじゃない。その中には、この「ナイナイサイズ」のプリン食べ比べに関する記述もありました。2006年の12月6日の書き込みだから、最初の放送はその頃だったのでしょう。それによると、プリンの食べ比べは、
「岡村杯、プリン選手権」
という名前だったようです。
2007/6/17
(追記4)

2009年3月4日の産経新聞に、大阪のリッツカールトンホテルにある日本料理レストランがリニューアルオープンしたという記事が。その見出しは、
「“和モダン調”に刷新」
「和モダン」
という言葉もあるようですね。Google検索ですと(4月7日)、
「和モダン」=546000
「和モダン調」=  885
でした。なんでも、
「和モダンならぁめん店」
なるものもあるそうですぞ!それってつまり、「和風ラーメン」ってことですよね。どっちがおいしそうかなあ・・・。
2009/4/7

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