◆ことばの話355「パール・ハーバー」

話題の映画「パール・ハーバー」。反日のプロパガンダ映画という声もありますが、ディズニーの作る恋愛大作という声もあります。

その試写会のチケット(ハガキ)を手に入れました。来週の月曜日(6月25日)、見に行くつもりです。

招待ハガキの裏面には、主演のベン・アフレックが女性の額に接吻している下で、黒煙を上げる戦艦が描かれています。

そしてそこには、こんな文章が書かれています。



「"さようなら"は言わない、必ず戻るから・・・。

〜1941年・現地時間12月7日午前6時、ハワイ諸島―海と空の青が一瞬にして真紅に染まったその日、ただ愛だけが、若者たちに残された最後の楽園だった・・・。」




おお!やはり!「平成ことば事情202」の「12月8日」で書いた、ハワイ真珠湾攻撃の日付は、ハワイ現地時間ではやはり12月7日であった!(あたり前か)

ヘンなことに感激した道浦でした。

内容については、実際に映画を見てから続きを書きますね。(→「平成ことば事情359パール・ハーバー2」をご覧ください。)

2001/6/23


◆ことばの話354「詳しい出火原因」

火事などのニュースの常套句に、



「警察と消防で、詳しい出火原因を調べています。」



というのがあります。これに対して、



「"詳しい出火原因を調べています"ではなくて"出火原因を詳しく調べています"ではないか」



という意見を耳にしました。

言われてみればそうですね。今まで気にしたことがありませんでした。

そうしたら今日(6月23日)のニュースでこんな原稿が出てきました。



「詳しい動機について追及していく方針です。」



「おっ、これはちょうどこの前指摘のあった常套句だ」と思い、文章をもう一度吟味し、デスクとも相談して、次のように文章を直しました。



「動機などについて、さらに追及していく方針です。」



今後、常套句に関しても、意味をよく考えて読んでいきたいなと思います。

2001/6/23


◆ことばの話353「感動した!!」

旧聞に属しますが・・・。

おそらく今年年末の、というか21世紀最初の「流行語大賞」にもノミネートされるんじゃないでしょうか。

大相撲夏場所で優勝した横綱・貴乃花に表彰式で総理大臣杯を手渡す際に、小泉総理が絶叫した言葉、



「感動したっ!!」



理屈じゃないんだ、感動したんだよ、感性だよ!と力強く訴えました。

過去に、大相撲の表彰式で人気があったのは、チェコスロバキア杯でしたっけ、表彰状を、たどたどしい日本語で方言も交えて読んでいた方。お名前は忘れました。あれ以来じゃないですか、これだけ盛り上がったのは。(その後、チェコスロバキアはチェコとスロバキアという二つの国になりましたしね。)内閣成立からまもなく2ヶ月経ちますが、小泉人気はまったく衰えるところを知りません。

6月24日に投票が行われた東京都議会議員選挙でも、小泉人気で自民が圧勝しました。 この人気を持ってすれば、この「感動したっ!!」的な「小泉語録」はさらに人気を増すものと思われます。ただ、スポーツ観戦に関しては、理屈抜きに「感動」して良いと思うのですが、政治を「感動」だけで進めて行っていいかというと、若干、疑問が残ります。

あまりにも前内閣の人気が低く、素人目から見ても(というより素人目から見たら)まったく頼りにならない総理だっただけに、よけいにこの小泉さんの歯切れの良さは、評価を上げることでしょう。

ただ、やはり「歯切れの良さ」だけで全部を評価するのではなく、あくまで「中身で評価」する姿勢を忘れてはならないのではないでしょうか。

くどくど書いてしまって、すみません。歯切れ悪いなあ・・・。



歯切れ悪さにもう一つ。

平成ことば事情183「感動をありがとう」で書いたように、現代の日本人は「感動」を求めているみたいなんです。日々、手軽に手に入る「感動」を。そういった現代人の気性に、小泉総理はピッタリなんでしょうねえ・・・。

おお、もうすぐ、名古屋場所が始まるぞ。また、感動するかな?

2001/6/29

(追記)

名古屋場所は、貴乃花は、ヒザのケガで休場でした。

*******************************

また先日、小泉総理の長男が芸能界入りを表明。おととい、それが発表されてから初めてマスコミの前に姿を表したという記事がスポーツ紙に掲載されました。その見出しは、

「緊張した!!」

でした。
2001/8/9


◆ことばの話352「充てん豆腐」

食中毒の季節、その関連の取材を箕面の生活協同組合(coopコープ)で行ないました。

牛乳や魚、肉などを見て回った後、豆腐をみていると、「消費期限」と書かれた豆腐と「賞味期限」と書かれた豆腐がありました。

コープの方に聞いてみると、



「従来のように作ってパックした豆腐は、生物(なまもの)で持ちが余りしないので"消費期限"、つまり5日以内の日付がついています。一方、こちらの"充てん豆腐"は真空に近くて日持ちが良いので、"賞味期限"として、やや長めの日付がついていますね。」



ホホウ、「消費期限」と「賞味期限」は違うんだ。知らなかった。

それよりも知らなかったのは、「充てん豆腐」という名前。一体なんですか?



「作り方が違うんですよ。パックに豆乳を流し込んで、その後ににがりを"充てん"するから、まあパックの中でお豆腐ができる訳です。だから、空気がほとんど入り込まないので、日持ちがするんです。こちらなんかは、LL牛乳、つまりロングライフ牛乳のように、容器の内側がアルミになっていて密封性が高いので、ホラ8か月くらい日持ちがしますよ。海外に持っていったりもできるんですよ。この豆腐は森永が作ってるんですが、森永さんはLL牛乳の技術を持っているので、こんな豆腐が作れるんですね。」

「いつごろから作られているんですか?」

「もう、2、30年前からじゃないですか。」




いやぁ、きっと知らないけれど食べてたんだろうな、「充てん豆腐」。

ついでだから、「とうふ」か「どうふ」か、濁るか濁らないかについても聞いてみました。



「充てん"とうふ"です。濁りません。」



「絹ごし豆腐」は結合の度合いが強いので、「どうふ」と濁りますが、2,30年経ってもまだ「充てんとうふ」は、濁らないみたいです。

皆さんも今度スーパーでお豆腐を買う時には、表示に注意してみて下さいね。

(「充填豆腐」と「填(てん)」を漢字で書いてあるのもあります。)

2001/6/22


◆ことばの話351「未払い」

まだ支払っていない、ということを「未払い」といいますが、さてこの言葉の中の「払い」は、「はらい」でしょうか、「ばらい」でしょうか?いわゆる「連濁」をするかどうか、という問題です。

正解を先に言うと、「みはらい」。連濁しません。

「未払い」は「未」十「払い」という二つの言葉が複合してできていますが、この二つの言葉の結合の度合いが未だ強くない、発音上は、完全に一つの言葉になりきっていない、ということなのでしょうか。

「払い」ということばが後についた複合語を、「逆引き広辞苑」で調べてみたところ、あるわあるわ、全部で112語もありました。それを「払い」の発音別に3通りに分けてみました。【1】「はらい」【2】「ばらい」【3】「ぱらい」です。書き出してみましょう。



【1】 はらい・・・支払い、参加支払い、櫛払い、封鎖払い、虫払い、移転支払い、煤払い、枝払い、遅(ち)払い、打ち払い、土払い、蜂払い、蟹払い、魔払い、未払い、耳払い、露払い、眉払い、垢離(こり)払い、塵(ちり)払い、埃(ほこり)払い、追い払い、杖払い、過払い、采払い、蝿払い、灰吹き払い、厄払い、毛払い、受け払い、取り払い

(以上31語)



【2】 ばらい・・・足払い、呈示払い、即時払い、一時払い、出世払い、手形払い、内払い、道払い、分割払い、入札払い、月末払い、手払い、片手払い、後(あと)払い、人払い、江戸払い、宿払い、砂払い、国払い、根払い、不払い、追い払い、使い払い、塩払い、厄介払い、銘々払い、向う払い、道祖土(さいとう)払い、八方払い、洛中払い、引き替え払い、証券引換払い、繰替え払い、大払い、三十日(みそか)払い、二日払い、中払い、定期払い、日付後定期払い、一覧後定期払い、先払い、四季払い、咳払い、敲(たた)き払い、月払い、有る時払い、二季払い、暑気払い、方薬払い、着払い、参着払い、掛払い、後(ご)払い、腰抜払い、えずこ払い、床(とこ)払い、座(ざ)払い、当座払い、牢払い、一覧払い、誓文払い、年払い、持参人払い、延べ払い、悪魔払い、蔵払い、蚕屋(こや)払い、村払い、利払い、所払い、庭払い、玄関払い、概算払い、陣払い、門前払い、所持人払い、阿房払い

(以上77語)



【3】っぱらい・・・掻っ払い、尻(しっ)払い、すっ払い、酔っ払い

(以上4語)




ということで、圧倒的に多いのは【2】の「ばらい」と濁る(連濁する)言葉で77語(68.7%)です。2番目が、【1】の濁らない「はらい」で31語(27.7%)。そして一番少ないのが、促音便になる「っぱらい」で、たったの4語(3.6%)です。

濁らない【1】の「はらい」の言葉を見ていると、必ずしも結合の度合いが緩いとは思えません(支払い、露払いなど。)が、濁ると明らかにおかしくなります。そうかと思うと、「濁ってもいいかな」と思える言葉もあります。必ずしも何かの法則があるとは思えません。

「未払い」に関して言うと、お金の支払いに関する言葉は、他に結構濁っているものも、たくさんあります。そのあたりから考察するに、将来的には「みばらい」と「みはらい」の両方五分五分で使われるようになるのではないでしょうか。

上の112語を見てみても、例えば「内払い」は、「はらい」と「ばらい」の両方の読み方があります。こういった形に、「未払い」はなるのではないでしょうか。

2001/6/22

(追記)
この原稿を、入社二年目の清水アナウンサーに見せたところ、
「ほー!これは便利ですねー!」
確かに。調べたのは、君ではなく、私ですから。そして、
「へー“やくはらい”なんですか。“やくばらい”と濁ると思っていました!」
と言いながらNHKアクセント辞典を引き、
「あれえー、アクセント辞典は“やくばらい”と濁ったのしか載っていませんよ。」
どれどれ、あ、ほんとだ。
広辞苑と日本国語大辞典は「やくはらい」しか載っていません。
どっちなのかな。揺れているのかな。アクセント辞典を出しているNHK放送文化研究所に聞いてみなくちゃ。

2002/7/10


(追記2)
これまでに未払いが明らかになっていた3閣僚に続いて、福田官房長官など4閣僚、それにその責任を追及していた民主党の菅代表まで、国民年金の保険料金を払っていなかったことが、2004年4月28日明らかになりました。その「未払い」の読み方、多くの記者やキャスター・アナウンサーまでが、
「ミバライ」
と濁って読んでいます。私が「ミハライ」と読むと「あさイチ!」のNプロデューサーが、ツッツッと寄ってきて、
「『未払い』って、濁って読んでる人が多いけど、どっちが正しいの?」
と聞いてきました。そこで、この回の「平成ことば事情」を見せると、納得していました。
その後、Sアナウンサーが、
「これまであまり聞かなかった『未払い』という言葉ですけど、これだけ『ミバライ』と濁って読む人が多いと、濁る方が定着するかもしれませんねえ。国民の関心も高いし・・・。」
とため息。さらに、
「本来、年金の保険料は『払う』ではなく『納める』のですから、『未払い』ではなく『未納』の方が正しいと思うんですけどねえ・・・。」
とも
「あ、それって『消費税値上げ』が間違いで、正確には『消費税率引き上げ』が正しいってのと同じだね。」
という話がありました。
それにしても、たとえ不注意にせよ、ちゃんとしていない人たちが、国民には「キッチリ払いなさい、保険料も引き上げます」なんて、とんでもない話ですよね。どの口がそんなことを言えるのでしょうか。

2004/4/29