◆ことばの話275「新省庁の略称・その3」

省庁改編からはや3ヶ月半。その後の新省庁の略称の経過は既に書いたと思っていたのですが、まだ書いていなかったようです。その間、早稲田大学非常勤講師の飯間浩明氏と、この新省庁の略称について、2月16日から1ヶ月以上にわたってメールのやりとりをしました。その内容の概略をここに記しましょう。

(2月16日)

日経データバンクで1月6日から2月15日までの各新聞をキーワード検索した結果。

<厚労省>33件=読24(初出1月6日)、朝8(1月20日)、毎1(1月25日)

<文科省>14件=読9(初出1月10日)、朝2(2月2日)、毎3(1月25日)

<経産省>8件=読8(初出1月16日)

<国交省>1件=朝1(初出1月31日夕刊)

日経新聞と産経新聞は省略形使わず。


そしてこの2月16日夕刊に「扇国交相」の略称あり。

(2月22日)

朝日新聞に清原政忠という記者が、新しく5文字になった役所の略称について書いています。そこには「2月中旬から一部の新聞が"国交省"を使い出した」とありますが、実際は、ご自分の朝日新聞が1月下旬から使っていたんですね。(1月31日の記事は外部の人が書いた原稿ですが。)清原さんは、最後に「肝心なのは名称よりも実態」と締めくくっています。

(3月4日)

フジテレビの「サザエさん」でこんなやりとりが・・・。

カツオ「姉さん、おこずかいのことで頼みたいことがあるんだけど・・・。」

サザエ「それは財務省に言ってちょうだい」

カツオ「ボクらのお弁当のことだけどね・・・」

波平 「食べ物のことは厚生労働省にかけあってくれ」

ワカメ「母さん、たまにはパン買いたいから、おこづかい上げて」

舟 「それなら財務省だわよ」

カツオ「予算を取るまでがタイヘンだ!」


おそらく原作の漫画では「大蔵省」「厚生省」「大蔵省」と長谷川町子さんは書いてらっしゃったと思うんですが、2001年3月に放送するにあたって、その部分を変えたのでしょう。細かいことをなさいますなあ。

(3月5日)

iモードの読売新聞ニュースで

"「脱ダム」長野に「補助金返して」国土省検討"


という見出しが。「旧・建設省」のことを「国交省」ではなくて「国土省」と記したのを見たのは初めて。「旧・建設省」ではなくて「旧・国土庁」だとしても、この表記は、おもしろいですね。

(3月13日)

「先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議」の名称が「先進7カ国財務相中央銀行総裁会議」に。毎日新聞「読めば読むほど〜校閲インサイド」にそういう記事が。

(3月15日)

大阪外国語大学の小矢野哲夫教授のホームページ「むささびとびのしんの身辺雑記」に、「2月3日の毎日新聞朝刊には"文部科学大臣"の略称を"文相"と出ていた」と載っていました。ちなみに特命大臣の科学技術担当大臣の笹川尭(たかし)氏は「笹川科技相」と出ていたそうです。「文科相」と「科技相」の違いって、難しいですね。

(3月23日)

「週刊文春」に連載のエッセイ「ショッピングの女王」(中村うさぎ)の、サブタイトルが"我が家の「大蔵大臣」"でした。「財務大臣」ではありませんでした。「サザエさん」の方が、進んでるんですかね。

(3月23日)

2月26日読売新聞・夕刊で、韓国に1月末、「女性省」と言うものができて、女性の韓明淑さんが就任、という記事が。「女性相」は女性に限るんですかね?このお役所の英語での正式名称は「Ministry of equality(性平等省)」だそうです。

日本では官房長官が「女性問題」を担当していますが、以前、女性問題担当の山下官房長官が「女性問題」で辞任したことがありましたが、意味の衝突ですね。(飯間氏)

というところまでが、メールでのやりとり。

その後、今朝(4月26日)の読売新聞・朝刊でも「国交省」が見出しに登場しました。

「国交省 チャイルドシート・アセス 7月にも試験開始 安全性を格付け」

という見出しでした。

そして、小泉新内閣が組閣をしている現在(午後5時半)、毎日新聞・夕刊の見出し

「経済財政相  竹中慶大教授に
文科相  女性の遠山氏」

「文部科学大臣」だけ「文科相」と略称を使い、「経済財政担当大臣」は「経済財政相」と、ほとんど略していません。これが毎日新聞。

そして、朝日新聞・夕刊

経財相に竹中慶大教授
財務 塩川氏  文科 遠山氏」

と「経済財政担当大臣」を「経財相」という略称を、大見出しで用いています。また「文部科学大臣」は「文科」の二文字で表しています。「大臣」にあたる「相」は、「書かなくてもわかる」ということでしょう。大胆です。

産経新聞・夕刊は、

「遠山 文部科学相 竹中 経済財政担当相」

と、まったく省略していません。

読売新聞・夕刊も、省略なし。日経新聞・夕刊も省略なし。

こうしてみますと、毎日と朝日が、略称に積極的かな?という気がします。

「略称定着まで、1年はかかる」と見ていましたが、約3ヶ月〜4ヶ月でもう定着、と見ても良いでしょう、特に朝日新聞と毎日新聞に関しては。

明日の朝刊が、また楽しみです。

2001/4/26

(追記)

ごぶさたです。今日は2002年の2月24日。新しい省庁の略称もすっかり定着しましたね。そんな中で、YOMIURI ON LINEで、読売新聞のサイトニュースを見ていたら、こんな見出しが・・・・

竹中済財相、迅速な公的資金注入の必要性示唆

おお、済財相!!新聞やネットなどの文字媒体は良いよね。これ、音声でどうせいっちゅうねん!「ざいざいしょう」ですか?「いえ、違います!」って電話を切ってしまいそうですよ。あ、それは「ライライケン」か。あんまりいろいろ作らないで欲しいなあ・・・。いっぺん、ホントに「ザイザイショウですか?」って経済財政大臣のいるお役所に電話してみようかしらん。(やってみろ!の声。)

2002/2/24

(追記2)

小泉改造内閣が9月30日に発足しました。留任した上に金融担当大臣を兼任した竹中平蔵・経済財政担当大臣、10月2日の読売新聞のiモードでの見出しに、こんな表記が。
竹中経金相
「ザイザイショウ」から「ケイキンショウ」ですか。やりますな、iモードの見出しは。
良かったねえ、ケイキンショウ。毎日休まずに頑張って・・・・それはカイキンショウ。

2002/10/5

(追記3)

11月22日、毎日放送(MBS)の午後3時前のニュース(14:53)を聞いていると、若い女性アナウンサー(多分、西村アナウンサーだったと思いますが)が、
「国土省・・・国交省は・・・」
と、「国交省」という言葉を読みました。「国土省」と読んで、読み間違えて、「国交省」といい直したのです。これまで「国交省」は新聞では散々目にしてきましたが、テレビのニュースでこの呼び方を耳にしたのは、私はこれが初めてでした。記念すべき日ですね。

2002/11/26


◆ことばの話274「肉汁 2」

平成ことば事情187で書いた「肉汁」の続報です。

「ニクジュー」か「にくじる」か?

伝統的な「ニクジュー」に対して「にくじる」派が最近増えてきていると言う話でした。

これについて実はNHK放送文化研究所が去年(2000年)の11月、全国の2000人を対象にした調査を行っており、その結果が「放送研究と調査2001年3月号」に載っていました。それによると、

「肉汁たっぷりのハンバーグ」

という文章の「肉汁」を

「ニクジュー」と読んだ人は27%、

「にくじる」と読んだ人は71%

で、「にくじる」派が7割を越える圧倒的多数を占めていたのです。やはり・・・。

特に若い年代(20歳代)では「にくじる」派が84%と圧倒的、60歳代でも66%と、「にくじる」派がリードしています。

地域的に見ると、東北・北海道で「にくじる」派が多く、中国・四国・九州では逆に少ないと言う結果が出ているそうです。

私が去年10月に読売テレビ社内25人に行った「ミニ聞き取り調査」でも、

「ニクジュー」が36%(9人)、

「にくじる」が64%(16人)

ですから(調査規模は80分の1ですが)近い結果が出てたんですね。

この結果NHKでは、これまで「ニクジュー」しか認めていなかった読みに、2番目の読みとして「にくじる」を加えました。こうやって言葉もちょっとづつ変わってくるんですね。

ちなみに「肉」は、一見「訓読み」のように思えますが、「音読み」です。「訓」はありません。だから「にくじる」は「音十訓」のいわゆる「重箱読み」なんですね。たとえば「菊」も「音読み」です。けれども「訓」のように感じるので、「汁」も、「音」の「ジュウ」ではなく、「訓」の「しる」を使ってしまうのでしょうね。

2001/4/26


◆ことばの話273「じゃないですか」

「ぼく、家でよくカリフォルニア・ワインを飲むじゃないですか」

「わたしって、お風呂は熱いほうが好きじゃないですか」

「私、小学校の時に運動会で転んで、ひざをけがしたじゃないですか」


・・・・そんなこと、知るかぁ!!

と、大声で怒鳴りたくなることって、あるじゃないですか・・・し、しまった、うつってしまった!

で、この世に氾濫している「じゃないですかぁ」に対して、期せずして同じ週の別の週刊誌で、嫌悪感を表わす文章が載っていました。

まずは「週刊文春」の4月26日号の「清野徹のドッキリTV語録」です。NHK総合「その時歴史が動いた」という番組で、アメリカ映画「風と共に去りぬ」の舞台裏を紹介した時に、コメンテーターとして出演していた映画評論家の渡辺祥子さんのこの発言、

「あの当時の日本人はみんな飢えていたじゃあないですか。だからこの映画に共感したんですよ。」

清野徹さんは「押しつけがましさと自信のなさが同居した、この言葉づかいが、私は嫌いである。確か女子高生あたりから始まった言葉だと思うが、NHKまでも容認する必要は、ないじゃあないですか。」と書いています。

そしてもう一つは「週刊新潮」の、同じく4月26日号、島野功緒(いさお)氏の「すなかぶりザ・テレビ〜連載164〜」。ここでも同じく、「風と共に去りぬ」を扱ったNHKの「その時歴史が動いた」を、見開き2ページにわたって取り上げています。

全体の論調は、非常に興味深かったという感じなのですが、一番最後に、こう記してあります。

「NHKの番組の解説は映画評論家・渡辺祥子(さちこ)。日本公開時のことをよく知らない年代の人選は適切とは思えない。この映画にふさわしいベテラン評論家もいるだろうに。

"・・・じゃないですか" "生きざま"を多用する話し方も気になった。」

締めくくりに書くくらいですから、番組の画竜点睛を欠いたのは彼女の人選にあり、ということでしょうね。

私も実はこの番組は見ました。内容は面白くて、特にあの時代に既に、今のCGのような特殊撮影が使われていたことなどは「へぇー!」と驚いたのですが、その内容と、番組タイトルの「その時歴史が動いた」の関連、「その時」はいつなのか、また「どう歴史が動いたのか」といったことは、わからず終いでした。また、渡辺祥子さん(40歳代前半とお見受けしました)の「じゃないですか」も気になっていました。

清野さんは「女子高生あたりから始まった」と書いていますが、それはどうでしょうか。もう少し年代は上の20歳代が7、8〜10年前から使い始めたと私は思っています。

関西では、さらに語尾がちょっと伸びて

「じゃないですかぁ」

となります。語尾の「かぁ」は、カラスが鳴くような感じに発音するとニュアンスがうまく出ます。もしお気に入りでしたら、一遍、発音してみてください。アホっぽさが表現できます。

2001/4/25


◆ことばの話272「カツを入れる」

「大阪駅にあるホテルに、拳銃を持った男が立てこもっている」というニュースが流れたのは4月の中旬。しかし、警察官が部屋に突入してみれば、モデルガンを持った男が寝ていただけでした。事情聴取に対して男は「だらしない息子に"カツ"を入れるために、これから橋龍を"これ"でヤッテくる、と言ってモデルガンを見せた」と話していたということです。そのモデルガンをホンモノだと思った息子が、警察に連絡して大騒ぎになったわけですが、この"事件"、最初に放送したお昼のニュースでは、

「息子に喝を入れようと思った」

とスーパーが出ました。

「カツを入れる」の「カツ」は、「喝」だったかな?と思って辞書を引くと、「喝」は「一喝する」では使われていますが、「カツを入れる」では使われていません。

「カツを入れる」の「カツ」は「活」でした。

「活(かつ)を入れる」

【1】柔道などの術で、気絶した人の急所をついたりもんだりして、息を吹きかえらせる

【2】活発でないもの、衰弱したものなどに、刺激を与えて元気づける

(「日本国語大辞典・第二版」小学館)


とあります。まさにこの2番目の意味でしょう。

ありゃりゃ、字を間違えたな、と思って夕方のニュースを見ていると、今度は

「息子にカツを入れようと・・・」

と出ました。担当者に、あとで話を聞くと「昼のニュースの後に間違いに気づいて、夕方はカタカナにしました」とのこと。漢字を変えると間違いが目立つけれど、カタカナなら表現法を変えただけに見えるからかな?

そんなことがあった翌日のスポーツ紙を見ていると、今度は

「チームに喝を入れた」

という文字が・・・。スポーツ紙の場合は駄ジャレで漢字を使ったりするので、必ずしも「間違い」とは言いにくいのですが、この場合の「喝」は見出しではなく、リード部分の小さな文字で書かれていたので、これは「喝」と「活」を間違えたのだろうと思います。

「喝!と一喝して、活を入れた」

という文章も可能ですから、イメージとしての「喝」と「活」は近いものがあるのでしょう。ワープロで変換するときに先に出てきたほうの漢字を使ってしまうということも今後多くなるかも知れませんね。

ちょっと「活」を入れておきましょう。

2001/4/25

(追記)

今週月曜日(5月14日)発売の「ビッグコミック・スピリッツ」(2001年5月28日号)というコミック雑誌に連載されている、ご存知「美味しんぼ」の中で主人公の山岡のセリフに、
「病気の根は深いな。鈍りきっている感性に、喝を入れなきゃ。」(207ページ)というのがあり、ここでも「喝を入れなきゃ。」になってました。うーん、「喝を入れる」の根も深いな。「活」を入れなきゃ。

2001/5/16


◆ことばの話271「犬、死亡」

4月5日、大阪市平野区の公園で近所の60歳の女性が散歩させていた犬が、落ちていた即席麺をなめたところ、泡を吹いて死に、それを交番に届け出た女性とおまわりさんも気分が悪くなり、入院するという事件がありました。

これを報じた新聞各紙の見出しが、



読売「公園で異臭、2人入院 即席めんに黄色い粉 直前、なめた犬死ぬ」

朝日「公園に毒物 犬死ぬ 飼い主と警官入院 麺に黄色い粉 平野区」

毎日「公園に毒物?犬死ぬ 飼い主と警官も検査入院 平野区で散歩中」

産経「公園に毒物放置か 乾燥メンに黄色い粉 平野 女性と警官 のどに痛み 犬死亡」

日経「公園に毒カップめん? 犬死亡、2人のどに痛み 大阪・平野区」



となっていました。注目はまず「犬死亡」です。本来「死亡」と言う言葉は「亡くなる」という一種の敬語が入っていますから、人間様にしか使われなかったものです。そのために、読売・朝日・毎日は「犬死ぬ」になっていると思うのですが、産経・日経は「犬死亡」でした。

読売テレビのニュースでは、途中で気づき、「犬死亡」から「犬急死」にスーパーを変えました。「犬急死」もなんか変な感じですが、「犬死ぬ」は「死ぬ」が漢語ではないので、どうも納まりが悪いみたいです。

また、犬が何をなめたのか?については、各社微妙に表現が違います。

「即席めん」(読売)、「麺」(朝日)、「乾めん」(毎日)、「乾燥メン」(産経)、「カップめん」(日経)

どれも似たようなものですが、微妙に違います。「即席めん」は必ずしも「カップ」に入っているとは限りませんしね。「乾めん」が必ずしも「即席めん」でないのと同じように。

また「めん」の表記も「めん」「メン」「麺」と、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」が勢揃いです。おもしろいですね。(事件は面白がってはいられないのですが。)

それだけ表記が一定していないということを表しているとともに、表記の多様性・自由度が大きいことも示していると言えるでしょう。

2001/4/24

(追記)

NHK放送文化研究所が出している「放送研究と調査」(1998年7月号)に「(パンダが)死亡しました」という用法についての調査結果が載っていました。

そこには、最近の辞書には「死亡」は「人間の死」に限定しているものが増えていると書いてあり、実際に、「上野動物園のパンダが死亡しました」と言う表現がおかしいか、おかしくないかという質問を行ったそうです。その結果は、

おかしい・・・44%

おかしくない・・・45%

どちらともいえない・・・8%

わからない・・・3%


というもの。また、珍しい動物について、NHKで実際のニュースで使われた「死亡する・死ぬ」の出現回数は、

パンダ コアラ ラッコ トキ
死亡する
死ぬ 26 14 22


だそうです。そして、それほど珍しくない動物については、

  イヌ ネコ 霊長類
死亡する 11 10 18
死ぬ 17


ということです。これによると、パンダなどの珍しい動物の場合よりも「死亡する」がよく使われているではないですか!その理由については、

「イヌ・ネコがニュースに登場するのは、その動物が死んだかどうかという事実そのものよりも、それに関連して別のこと(事件・事故など)を主題にしている場合がほとんどだと考えられ、その点で、パンダなどのように単に生死を伝える場合とは異なる。事件・事故を扱うニュースでは、イヌ・ネコの"死"それ自体は主なトピックではないため、そこに気を配ることが少ない。その結果ふだん人間の"死"を報道する場合と同じように"死亡する"と言う表現をするのではないだろうか。また霊長類の場合は人間と似ているために"死亡する"が比較的多く用いられるのではないか。」

ちょっと長い引用になってしまいましたが、わかったような、わからないような。

いずれにせよ「死亡する」は書き言葉であって、話し言葉の中では、動物に対して用いることはなずない、と言って良いでしょう。これはNHKの方と意見が一致しています。

2001/4/24
(追記2)

2003年10月9日の日本テレビ「ニュースプラス1」で、藤井貴彦アナウンサーが読んだ原稿は次のようになっていました。
「東京の郊外でネコの遺体が相次いで見つかっています。」
そして、VTRに登場した丸岡いずみ記者の顔出しリポートの冒頭部分は、
「ネコが死亡していたのは、」
でした。ずいぶん丁寧だこと 。
2003/10/11

(追記3)

2004年10月14日の朝刊各紙に、大阪府の南の端・岬町にある遊園地「みさき公園」で飼育していたホッキョクグマの「シロ」が10月12日に死んだという記事が出ていました。推定34歳で、国内最高齢だったということです。ホッキョクグマの寿命は20年から25年といわれていて、人間の年齢に換算すると「シロ」は90歳ぐらいだったとか。死因は「老衰による多臓器不全」と見られるそうです。なお、これまでの国内最高齢は、東京の上野動物園で1993年に死んだ「雪男」(たぶん、ユキオでしょう。ユキオトコではないと思う)の推定36歳で、「シロ」はこれに次ぐ2位だそうです。各紙の表現は、
『ホッキョクグマ「シロ」(推定34歳)が12日死亡した。』(読売)
『ホッキョクグマ「シロ」が死亡した。』(産経)(見出しでは「”大往生”」と)
『国内で現存するシロクマの中で最高齢だったシロ(雌、推定34歳)が12日、多臓器不全で死んだ。』(毎日)
『ホッキョクグマ「シロ」が十二日死んだと公表した。』(日経)
『ホッキョクグマ「シロ」が12日に死んだと公表した。』(スポーツ報知)(見出しでは「最高齢ホッキョクグマ死亡」)
<朝日新聞は記事見つからず。>

ということで、読売、産経とスポーツ報知の見出しが「死亡」としていました。
2004/10/14

(追記4)

2003年10月9日の「ニュースプラス1」で、藤井貴彦アナウンサーが、
「東京の郊外でネコの遺体が相次いで見つかっています。」
と読んでました。「ネコ」に「遺体」は使わないよ、藤井君。そう思っていたら、今度は丸岡いずみ記者が、
「ネコが死亡していたのは・・・」
と、ネコは「死亡」って言わないんだよ、丸岡さん。
その「ニュースプラス1」も今はなく、「ニュースリアルタイム」に衣替えしています。
2006/10/31

(追記5)

2007年2月7日の朝、大阪府摂津市の公園で、スズメやハトなどが死んでいるのが見つかり、落ちていた青い粉末がかかっていたゴハンを食べたイヌも死にました。
これについての2月7日夕刊各紙の表現は以下のようなものでした。

  (見出し) (本文)
(読売) 「イヌやネコ毒物死?」 「ハト8羽、スズメ8羽が死んでいるのを」
(朝日) 「コメ食べた動物死ぬ」 「スズメ8羽とハト8羽が死んでいるのを発見」
(毎日) 「毒入り米?ハト死ぬ」 「計16羽のハトやスズメが死んでいるのを」
(産経) 「ハトやスズメ 大量の死骸」 「ハトやスズメの死骸(しがい)が」
(日経) 「公園に毒?鳥など大量死」 「猫やハトなどが多数死んでいるのが見つかった」

ということで、各紙「死ぬ」「死んでいる」「死」として「死亡」は使っていませんでした。産経が「表外字」の「骸」を使って「死骸」としていました。
読売テレビの『ニューススクランブル』でも、字幕スーパーでは「死骸」をルビつきで使いました。
NHKは「死がい」と、「骸」を使わずに「交ぜ書き」にしていました。
テレビ朝日は、最初のスーパーでは、
「イヌ、トリ、ネコ、次々と・・・」
と、「死」の文字を使わない表現でしたが、VTRが始まってからの本記部分では、
「公園でトリが大量死」
としていました。
2007/2/7
(追記6)

東京・上野動物園のジャイアントパンダ「リンリン」が、2008年4月30日午前2時ごろ、死んでいるのが見つかりました。人間で言えば70歳に相当するそうです。これを報じた各紙30日の夕刊の表現は、
(見出し)               (本文)
(読売)リンリン昇天         死んだ
(朝日)リンリン天国へ       死亡した、死亡、死去
(毎日)リンリン死ぬ         死んだ、息を引き取った
(産経)“70歳”リンリン死ぬ    死んでいるのが見つかった
(日経)パンダ「リンリン」天国へ  死んだ
(夕刊フジ)リンリン死ぬ      死亡した
(※
51日付・30日発行)

と、朝日新聞だけが「死亡」あるいは「死去」という言葉を使っていました。朝日の題字の下の欄には、
「リンリンが30日、死んだ」
「死亡」は使わずに表現していたのですが・・・。
2008/4/30
(追記7)

リンリンが死んだ記事、5月1日のスポーツ紙各紙にも出ていました。

(見出し) (本文)
(サンスポ) リンリン大往生死んだ
(スポーツ報知)「リンリン」死ぬ 死んだ
(デイリー)リンリン死す死んだ
(スポニチ)「リンリン」天国へ死んだ

ということで、「死亡」「亡くなる」を使ったところは1社もありませんでした。一般紙も荘ですが、「死ぬ」を見出しに出すのはなんとなく収まりが悪いためか、かと言って「死亡」が使えないために、
「大往生」「天国へ」「昇天」
という表現を使った社が多かったのではないかなあと感じました。
もっとも上野動物園の園長さんは、テレビの会見で、
「亡くなりました」
と言っていましたが・・・しかも新聞記事では、
「冥福を祈る」
と答えていたそうです。お仕事柄、人並み以上に愛着を持って接していたからでしょう、扱いは人間並みです。
2008/5/1
(追記8)

大阪・岬町の「みさき公園」で飼育されていたキリンの「空(くう)」(オス・6歳)が死んだという記事が、2008年5月13日各紙朝刊に載っていました。その表記を見比べてみると、

(見出し) (本文)
(読売) キリンの「空」天国へ病死したと発表。死んだ。
(朝日)「空」早すぎるお別れ  死んだ。
(毎日)人気のキリン「空」死ぬ死んだ。
(産経)キリン「空」天国へ死んだ。
(日経) 記事なし  

ということで、各紙本文では「死んだ」を使っていましたが、見出しでは「天国へ」「早すぎるお別れ」「死ぬ」と三様に分かれました。思うに、「死亡」は人間にしか使えないが、だからと言って「死ぬ」は、見出しに使うとあまりにも「ざんない」感じ(=いたたまれない、味気ない)なので、「死ぬ」も「死亡」も使わない表現を各社、考えたのではないでしょうか。それが「天国へ」「早すぎるお別れ」になったのではないかと思います。ちなみにキリンの「6歳」というのは、人間では23歳ぐらいに相当するそうですから、たしかに「早すぎるお別れ」ですね。こないだのパンダの「リンリン」の時も、見出しは、
「リンリン昇天」(読売)、「リンリン天国へ」(朝日)、「パンダ『リンリン』天国へ」(日経)、「リンリン大往生」(サンスポ)、「『リンリン』天国へ」(サンスポ)と、「死ぬ」という表現を使わない傾向がありましたから、今後、こういう表現が増えるのではないでしょうか。
2008/5/13
(追記9)

2008年10月16日の各紙に、白浜アドベンチャーワールドのパンダ「梅梅(メイメイ)」が死んだ記事が出ていました。その見出しは、
(朝日)子だくさんパンダ天国へ
(読売)メイメイ天国へ
(日経)(見出しなし)
(毎日)最多出産「梅梅」死ぬ
(産経)梅梅母ちゃんさようなら!白浜の多産パンダ死ぬ

で、毎日・産経は「死ぬ」でしたが、朝日・読売は「天国へ」という表現を使っていました。
2008/10/20
(追記10)
1年ぶりの追記です!
2009年11月2日の日経新聞に、
「ニシゴリラ『ゴン』昇天」
という見出しが。「昇天」です、ゴリラ。京都市動物園で飼育していた雄のニシゴリラ「ゴン」が11月1日午前に「死んだ」と発表されたそうです。推定38歳、人間では60歳ぐらい。2004年に繁殖のため、札幌市の丸山動物園から来園したのだそうです。
2009/11/2
(追記11)
続くときは、続きます。たった2日ぶりの追記。
2009年11月4日の産経新聞に、
「子豚約千頭焼け死ぬ」
という小さな見出しの記事が。茨城県行方市次木の「中村畜産」豚舎から出火して、1棟3000平方メートルが全焼し、子豚約1000頭が焼け死んだとのこと。「美明豚」という銘柄の豚だそうです。おいしそう・・・いや、かわいそうです、焼き豚、いや、焼け豚・・・。
2009/11/4
(追記12)
さらに!2009年11月13日の日経新聞・夕刊には、
「イトマキエイ 輸送中に死ぬ」
という見出し。大阪市港区の水族館「海遊館」は13日、高知県土佐清水市の研究所から輸送中だった雄のイトマキエイが「死んだ」と発表したそうです。海遊館では去年6月から「雌」のイトマキエイを展示中。大型魚類の輸送には大きなスペースが必要で困難とされているそうで、もしこの「雄」が海遊館に展示されれば、
「世界初のペア展示」
になるところだったそうです。残念ですね・・・・。
2009/11/17
(追記13)

2009年12月18日の毎日新聞朝刊に、
「30歳アヤメ 大往生」
という見出しが。名古屋の東山動物園「カリフォルニア・アシカ」の「アヤメ(雌)」国内最高齢の30歳で死んだという記事でした。人間で言えば100歳くらいだそうで、ここは「天国へ」ではなく、見出しに「大往生」を使ったのですね。
2009/12/18

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