◆ことばの話240「寝違い」

野球のキャンプもたけなわ、そろそろオープン戦も始まろうとしている今日このごろ。

そんな中、今朝(2月23日)の日刊スポーツにこんな見出しが・・・。



「チョン・ミンテ、また寝違い」



巨人のチョン・ミンテ投手が2度目の"寝違い"で首を痛め、紅白戦を欠場したというのです。

この"寝違い"という言葉、「えっ?"寝違え"じゃないの?」と思い、他紙を見ましたら、デイリー・スポーツ報知・読売が"寝違え"。日刊だけが"寝違い"。



私は本来"寝違え"ではないかと思うのですが。というのも、動詞で言うと"寝違(ちが)える"。その語幹部分をとって名詞化したものが"寝違え"だと思うからです。"寝違い"を動詞化出来ますか?"寝違いる"とは言わないでしょう?

ところが、アナウンス部で女性2人に「"寝違い"って言う?」と聞いたところ、なんと
「言いますよ。」

とのこと。フーム、普段の会話では言うのかなあ。それとも関西方言?

確かに「え」と「い」、耳で聞いたらあまり違いがないように聞こえますし、「違い」という言葉はよく聞いていろんな言葉にくっつくけど(例・聞き違い、間違い、勘違いなどなど)、「違え」というのはあまり耳にしないから、「寝」十「違い」という言葉を作ってしまったのでしょうか?



辞書を引いてみると、「広辞苑」では「寝違え」しか載っていませんでした。「新明解」も見出しは両方ありませんでしたが、動詞で載っていたのは「寝違える」。その中に書いてあった言葉は「寝違え」でした。

「大阪ことば事典」で大阪弁として載っているか調べましたが、ありませんでした。そのかわり「ね」のページに載っていたのは、「ねちこい」ということば。確かに、こんな細かいところをネチネチ調べるのは「ねちこい」かもしれませんね。いつから、こうなっちゃったんだろうか。

2001/2/23

◆ことばの話239「地車部屋」

大阪府阪南市で、お祭りで使う「山車(だし)」を保管する建物から、ピストル4丁と実弾134発が見つかったというニュースをお昼のニュースで読みました。

その原稿には、問題の建物を「地車部屋」と書かれていて、「じぐるまべや」とルビが振ってありました。「地車」を「だんじり」と読むことは知っていましたが、「じぐるま」と読むケースもあることも知っていましたので、ルビを信じて「じぐるまべや」と読みました、「なんか、相撲部屋のようやなあ。」と軽口を叩きながら。

ところが、放送が終わってから、阪南市に住む先輩などが「あれは"だんじりごや"と言うのではないか?」と聞いてきたのです。

えっ?やっぱり「だんじり」だったの?

その先輩によると、「阪南市は"やぐらべや"と言い、"やぐら"は車輪が二つ、岸和田市は"だんじりごや"と言い、車輪は四つ。」だそうです。

さっそく大阪府警クラブに問い合わせると、

「警察発表は"じぐるまべや"で、看板にも"地車部屋"と書かれていた」

とのこと。もう一度警察に「じぐるまべや」で良いのか確認してもらうことにしました。

それと共に、在阪各テレビ局の報道部に電話して「おたくは、どういうふうにしましたか?」と聞いてみました。(NHKはちょうどニュースを見られたので電話しませんでしたが。)

それによると、

NHK 「やぐらごや」
MBS 「だんじりごや」
ABC (昼のニュースで放送していないが、このあと放送する原稿では)
「やぐらごや」又は「だんじりごや」
KTV (昼は放送していないが)
  「だんじりごや」又は「だんじりべや」

ということになりました。

MBSは「地元では"じぐるま"と言うそうですが、関西では一般的には"だんじり"のほうが通りが良いので、わかりやすい"だんじり"にしました」とのこと。

その後、大阪府警察クラブから電話があって、

「阪南市の地元では"だんじりごや"と言うが、祭で引っ張るのは"やぐら"と言い、"だんじり"とは言わない。ほんとに地元の人は"じぐるまべや"と言っている。」

とのこと。・・・何が一番正しいのやら。混迷はさらに深まったような気がします。

2001/2/9

◆ことばの話238「竣工式」

関西人待望のUSJ・ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが、3月31日の開業を前に、施設などが完成し、昨日(1月25日)記念式典が行われました。各新聞の夕刊にそのニュースが載っていたのですが、その「式」の名前が、バラバラなのです。



(読売)完工式

(朝日)完成式

(毎日)記念式典

(産経)完成式

(日経)竣工(しゅんこう)式・・・*ルビつき




朝日と産経が「完成式」で同じ言葉を使っている(!?)以外は、みんなバラバラ。「広辞苑」で「竣工」をひくと「工事が完成すること。落成。」と簡単に出ていますが、ゼネコンに勤める妻に聞いてみたところ「普通、工事が完了して建物などを引き渡す式の事を"竣工式"と言う」そうです。「じゃあ、引き渡しからオープンまでは、何をするの?」と聞くと、「社員教育とかリハーサルとかをするんじゃないの?」とのこと。

閑話休題、この「竣」という字が常用漢字でないため、新聞各社は使いたがらないようです。日本新聞協会が出している「新聞用語集」によると「竣工・竣功」は「落成・完工・完成」に書き換えるように指導しています。「竣」が常用漢字でないためです。

実際にユニバーサルスタジオ側では、なんと呼んでいたのでしょうか?電話で聞いてみました。答えは、

「こちらでの正式名称は"竣工式"です」

とのことでした。

2001/1/26

◆ことばの話237「アジア系外国人」

ことばの話234「営業前」で話をした大阪中央郵便局の強盗事件、犯人のうち二人は、



「アジア系外国人と見られる」



と報道されました。

この場合、日本人に顔立ちや対角が良く似ている(もちろん微妙には違うのでしょうが)中国人、台湾人、韓国・朝鮮人などの「東アジア系外国人」を「アジア系外国人」とは呼びません。それ以外の国の人をひっくるめて「アジア系外国人」と呼んでいるようです。この分類によると、おそらくモンゴル人も「アジア系外国人」ではないのでしょう。

しかし一口に「アジア系外国人」といってもタイ・フィリピン・マレーシア・インドネシア・カンボジア・ラオス・シンガポールなど、いろんな国があるのに、「アジア系外国人」というのは果たして特徴といえるのかどうか、多少疑問が残ります。

また、残る一人の犯人は女性で中南米系。あるテレビ局ではその容貌の特徴について、



「グラマーだったということです。」



と報じていましたが、これは、なんとなく違和感があったなあ。何ででしょうね。「グラマー」って"死語"かと思っていました。最近あまり耳にしない気がします。おそらく警察発表がそういう形だったのでしょうが、なんだかな、という感じです。

2001/1/25

◆ことばの話236「善意銀行」

このところ気になっているのが、各地の有料駐車場の看板です。なぜそんなものに?と思われるでしょうが、その看板に書かれている、もし無断で駐車した場合の罰金について書かれた文章に注目しているのです。

例えば、我が家の近くの大阪府枚方市ではこんな文章が書かれていました。



「無断駐車は3万円いただきます」

「発見次第レッカー車で移動の上、罰金(レッカー使用料)を申し受けます」




こういったパターンが基本ですね。このほか、



「向かい側の駐車場は当方の駐車場ではありません。見つけ次第レッカー移動します。(但し、費用は当店では負担いたしかねます。)」



と、よその駐車場の分までレッカー移動するものや、



「Mドナルド ご来場客専用駐車場・上記以外の不法駐車をされる方については1時間につき10000円の駐車料金を頂きます。又は当方において車を除去いたします。」



1時間につき1万円!?しかも「車を除去」。まるで放射能のようです。

大阪大学近くのある駐車場には



「部外者の"通り抜け" "この敷地内への車の進入・回転・溝ぶたの上の走行"及び"駐輪"を堅く禁止する。発見の際は本人・保護者に罰金一万円と、その他自転車の処分に要する費用・実費を請求する。違反者の苦情は一切受け付けません。管理人」



これは主に自転車に対してでしょうが、"断固たる宣言"をしているところもあります。



さて、こういった無断駐車に対する「罰金」には地域差があるのだろうか?と言う疑問をかねてより持っていました。以前は大体「1万円」と相場が決まっていた、と私は思っていたのですが、このところ3万円が多いような気がします。最高で5万円といったところ。この金額については、本当に取るつもりなのだろうか、法律的に大丈夫なのだろうか、等の疑問がありますが、そういった点から考えるとこの金額は「無断駐車に対する抑止力」と考える事が出来ます。つまり、

「無断駐車をしようとする人がその金額を見て"この金額だと、きっと取るだろうし、取られると嫌だなあ、大変だなあ"と思う金額」

なのです。例えば「罰金100億円」のようにあまりにもその金額が大きすぎると、だれも本気にしません。「100万円」でもだめでしょう。特に大阪人は300円のお釣りのことを、

「はい、お釣り。300万円」

てなことを口にしますし、

「2円置くんとちゃうで、2億円やで。」

というギャグ(確か、トミーズ)もありますので、この百万円単位・億円単位の数字は、ギャグとしてしか、受け取られないでしょう。

これまではその"本気にする金額"が「1万円」だったのですが、やはり物価上昇や所得の増加に伴ってその金額が上がってきたのでしょう。今は「3万円」ぐらいでせめぎあっているのではないでしょうか。

当初、その「抑止力の金額」が地域によって、地価に連動するような形で違うのかな、と思ったのですが、それはなさそうです。

以前、札幌で見た看板は

「無断駐車をした車は、タイヤの空気を抜いた上、レッカーで移動します」

というのがありました。これも「抑止力」の一つでしょう。いいのかな、抜いちゃって。

先日、熊本に行った時には、

「無断駐車の車は、ナンバー(プレート)をはずします」

というのがありましたが、これも「抑止力」なんでしょうか?何の意味があるのかな?「身元は割れてるよ」という脅しでしょうか?

このほかにも、熊本ではちょっと変わったものを見つけました。「罰金を取りますよ」という表現は、たいていの場合

「罰金○万円、申し受けます」

なのですが、そこの地主は

「金5万円、申し付けます。

まるで、お奉行様のようです。また、その罰金の使い道について

善意銀行に寄付いたします。」

と書いてある看板が2件ありました。これは、

「罰金を取るけど、私は悪くないもんね。そのお金だって、自分のために使うんじゃなくって、世のため人のために使うんだもんね。」

というふうな「自己弁護」ぽいものを感じませんか?

それにしても「善意銀行」ってなんじゃ、そりゃ?そんなものがあるのかなあと思って、インターネットで調べてみると、なんと400件以上も出てきました。実は、各自治体の「社会福祉協議会」などで高齢者や障害者福祉、母子父子家庭などに役立てるために寄付・募金を募っている組織を「善意銀行」というのだそうです。一人暮らしのお年寄りに年賀状を出したり、母子父子家庭の子ども達のためにハイキングやもちつき大会を開いたりしてるんですって。また、直接お金を送る以外に、使用済みの切手やテレホンカード、ベルマークや物品の寄付などを受け付けているところもあるようです、インターネットによると。知らなかったなあ。思わぬ"副産物"で物知りになってしまいました。

しかし、「そういうことに役立つなら、罰金払ってもいいなあ」と思って無断駐車してしまうような人が出てきたら・・・元も子もないような気がしますが。

2001/1/24

(追記)

熊本に行ったのは去年(2000年)の11月の事でしたが、この時聞いた熊本方言の話。

熊本の少し年配の人たちは、「急げ!」という意味で「もだえろ!」と言うそうです。だから、「急がんか!」は「もだえんか!」・・・急にそんなことを言われても、と戸惑ってモジモジするなんてことも、あるそうですよ。

このほか、

「とっとっと?」「すーすーす?」

という言葉もあるそうです。これは「取ってるよ」「(風が通って)スースーする?」という意味だそうです。そう言えば大阪でも、

「ちゃうちゃうちゃうちゃうちゃうんちゃうん?」

というのがありましたね。これはもちろん、「違う違う、チャウチャウ(犬の種類)と違うんと違う?」という意味です。おわかりですよね?

2001/1/25