◆ことばの話235「巨乳と豊乳」

先日、見るとはなしにY新聞のテレビ欄を見ていると、某局の深夜番組が目に留まりました。その日の内容は

「21世紀は 巨乳美少女」

というものでした。・・・見るとはなしに見てたんですってば。

そして、何の気なしにA新聞のテレビ欄に目を移して、おやっ?と思いました。

同じ番組なのに、そこには

「21世紀は豊乳美少女」

とあるではないですか!(ちなみに他の3誌は番組タイトルだけしか載せていませんでした。)

わかりますか、「巨乳」と「豊乳」です。違う人が出てくるんでしょうか。(いやいやそんなはずはない。)

これは一体どういうことなのだろう?テレビ局側が、新聞によってごくごく微妙にニュアンスを変えて出稿しているのだろうか?いや、そんな手間のかかる事を、望んでする訳がない。そうすると、考えられるのは、

【1】 A新聞が「巨乳」という表現を避け、「豊乳」という表現にした。
  (あるいは、するようにテレビ局サイドに指示した)
【2】 Y新聞が「豊乳」という表現を避け、「巨乳」という表現にした。
  (あるいは、するようにテレビ局サイドに指示した)


のいずれかだと思うのです。

ただ、「巨乳」という言葉は既に人口に膾炙し、誰もが知っていますが(もちろん口にするかどうかは別にして・・・いやあのそういう意味ではなくその言葉を言うかどうか使うかどうかと言う意味ですってば!)「豊乳」という言葉は、どうでしょうか、あまり見慣れない、聞きなれない言葉だとは思いませんか?大体、なんと読むのでしょう?「ホウニュウ」?「ユタカチチ」?まあたぶん「ホウニュウ」だと思いますが。「巨乳」は「キョニュウ」ですしね。・・・こうやってカタカナで「読み」を書いているとだんだん恥ずかしくなってきました。

こういうことは専門家に聞こう、ということで、読売テレビの広報部で聞いたところ、



「それは、新聞によって使えない言葉というのが決まっているんですよ。例えば"謎"という漢字を使っても良い新聞社とだめな新聞社があるとか、最後に"!"をつけてはいけない社があるとか。たぶんこれもA社は"巨乳"は使えなかったんでしょうね。」



結論!


新聞によって、同じ言葉を別の言葉に置きかえることは、ままあり、実に細かいところにまで気を配っているのだなあ、という事です。えっ、なに?そんな重箱の隅を突っつくようなお前の方が、よっぽど細かいって?ま、おっしゃる通りです。なんせ、性分でして・・・。

2001/1/25

(追記)

「oyaggi」
という「おやじ」の生態を表した本が出ました。(小学館・2002・10・10)その中におやじ用語の基礎知識」というコーナーがあって、そこに、

「ボイン」

という言葉が載っていました。もう、これを聞いたら月亭可朝さんを思い出しますが。さらにそこには、

「今では、D・Eカップを『巨乳』、さらにF・Gカップ&それ以上を『爆乳』とか『超乳』というのが一般的」

と書いてありました。「巨乳」と「爆乳」、ちゃんと基準があったのですね。知らなかった・・・・。

2002/9/30

(追記2)
2004年7月19日、ザッピングの途中に、見るとはなしに見ていたテレビで(京都テレビの番組『ウチくる!?』)で、女優の檀ふみが、一緒に出演していた田島陽子センセイのことをさして、
「先生は、豊乳(ホーニュー)でらっしゃるから」
と。番組のホスト役の飯島愛と中山秀ちゃん、それに当の田島陽子さんが、檀ふみの口からそんな言葉が「こぼれた」ことに驚いて、
「ホーニュー!?」
と言うと、檀さん、今度は、
「え、もっと?巨乳?」
と。そこから考えると檀ふみさんの頭の中では、
「豊乳<巨乳」
なのでしょうか?いやいや、それより「巨乳」はともかく「豊乳」という言葉を檀ふみが知っていた上に、口に出して使える(それもテレビで)というところに、驚きを感じてしまったのでした。まあでも、「火宅の人」の娘さんですからねえ。

2004/7/27


◆ことばの話234「営業前」

先日、(1月11日)大阪中央郵便局に3人組みの外国人と見られる強盗が入ると言う事件がありました。その時のニュースで

「営業時間前の犯行でした。」

というフレーズがありました。ここでちょっと疑問が・・・。果たして郵便局は「営業」しているのでしょうか?民間のお店なら「営業中」「営業前」はわかるんですけど。

日本テレビは「日テレ営業中」というキャッチフレーズで売り出してますが、あれも本来はテレビ局は「営業中」と言わないのにあえて持って来たところに、目新しさがあったのだと思います。

では、「営業」ではなく何と言うか?「始業」はどうでしょうか?学校などはこれでもOKのような気がしますね。しかしこれだと、郵便局側が中心になってしまって、お客様の立場に立っていないような感じがします。

同じことは市役所などにも当てはまりますよね。市役所が「営業中」はなんかヘン。市役所の中の喫茶店が「営業中」ならわかりますが。

うーん、意外と難しい問題になってしまいました。よーし、こうなったら、直接郵便局に行ってみよう!と、大阪中央郵便局に出かけました。そして、広い受付窓口周辺をキョロキョロと見回していると、警備員に捕まってしまい・・・・ということもなく、あっさりと、その言葉は見つかりました。

「お取扱い時間」

そうか、そうすると「取り扱い時間前」ということになるのかな。あと「受付窓口」というぐらいですから、「受付時間前」というのも"あり"かな。

ほかにも「こっちのほうが良い!!」と言う方は、メールくださいね。メールは24時間「お取り扱い中」です。

P.S. 残念ながら犯人はいまだに捕まっていません。

2001/1/24


◆ことばの話233「ボディ・シャンプー」

冬になるとお肌がかさついてきませんか?なんて書くと、まるで化粧品の宣伝のようですが、今年はなぜか、私も肌がかさつくようになって(年の所為か)、ハンドクリームなるものを買ってしまいました。それも尿素20%入りとかいうものを。

それでもおさまらずに、「あわあわ製造機」を購入しました。これは、ボタンを押すと機械から微細な"せっけんの泡"が出てきて、これで体を洗うと水分が失われずにお肌がかさつかないという代物です。効果はともかく、泡がいっぱい出てくるのは結構楽しいものです。

さてその機械の説明書を読んでいると、"中に液体の「ボディ・シャンプー」を入れてスイッチを入れる"と書いてあります。我が家では固形の石けんを使っていて、液体石けんはなかったので、さっそく「ボディ・シャンプー」を買いに近くのス−パー行きました。そこで、ハタと困りました。スーパーの棚には



「ボディ・シャンプー」と「ボディ・ソープ」



が並んでいるのです。

待てよ、体を洗うのだから「ボディ・ソープ」を買うべきかな、でも説明書には確か「ボディ・シャンプー」って書いてあったぞ。・・・悩みました。結局、説明書に書いてあった「ボディ・シャンプー」を買って帰ったのですが。家で、妻に



「"ボディ・シャンプー"と"ボディ・ソープ"があって、シャンプーの方を買ってきたんだけど、良かったかな?」



と言うと、ひとこと



「おんなじよ。」



「現代用語の基礎知識」をひいてみると、「ボディ・シャンプー」のみ載っていて、「シャワー用の液体石けん」とありました。そうか、「シャワー用」という用途にポイントがあったのかな?ちなみに広辞苑にはどちらも載っていません。



そこで、メーカーのS社に電話して聞いたところ、対応に出た女性が、



「ソープは体を洗うためのもので、シャンプーは頭髪を洗うためのものでございます。」

「・・・・」




いや、それは分かっているんですが、「シャンプー」と「ソープ」の違いではなく、ボディ・ソープ」と「ボディ・シャンプー」の違いを教えて欲しいんですけど。



「少々お待ちください・・・あっ、同じでございます。」



やはり同じでしたか。

念のため、K社にも聞いたところ、最初は



「同じですね。厳密な定義というものは、ないと思います。当社の製品でも、"ボディ・シャンプー"と"ボディ・ソープ"の両方ありますね。」



と言っていたんですが、その後、もう一度調べて電話をくれました。それによると、



「業界で厳密な定義というものはないのですが、一応当社では材料の成分で分けているようで、せっけんベースのアルカリ性のものは"ボディ・ソープ"、成分が弱酸性のものを"ボディ・シャンプー"としているようです。そして、両方を合わせての総称として"全身洗浄剤"と日本語で呼んでおります。」



なるほど、成分の違いですか。よく分かりました、K社広報のKさん。ありがとうございました。しかし"全身洗浄剤は日本語"って言ってますけど、おそらく「ボディ・ソープ」「ボディ・シャンプー」も"和製英語=日本語"ではないのですかねえ。また、調べておかなきゃ。

2001/1/24


◆ことばの話232「来るべき大地震」

阪神大震災からまもなく丸6年。「ニューススクランブル」では今週、震災関連の特集を放送しています。このところ関西でもいつ地震が起こってもおかしくない、と言った内容だったんですが、その中でこんなフレーズが出てきました。



「来(きた)るべき大地震」



これを聞いたアナウンス部員が、数人「うん??」。

なんとなく「来(きた)るべき」っていうと、「来て欲しい」と言うニュアンスを感じてしまうからです。

そこで、辞書を引いてみると、

「来るであろう」と言う意味で、例文として「来るべき総選挙に備えて」と言うのが載っていました。これではよく分かりません。

そこで「来(きた)る」と「べき」に分けて辞書を引きました。

「来(きた)る」は「次の」「次に来る」と言う意味。一方の「べき」(原形は「べし」)は、「するべきだ」といった使い方のほかに、「恐らくそうなるであろう」といった意味もあるようです。そうなると、別に「来るべき大地震」でも、それほどおかしくない事になります。

ただ、やはり火事などの人災に備える防災訓練などの場合は、「来るべき火災」という使い方はおかしいのではないでしょうか。「恐らくそうなるであろう」では困りますから。

ただし、自然災害に関しては「恐らくそうなるであろう」という心構えが必要でしょう。

2001/1/11


◆ことばの話231「母児」

今月8日、鳥取県米子市の病院で、産まれたばかりの女の赤ちゃんが連れ去られた事件は、発生から4日目の今日(1月11日)も、まだ赤ちゃんは見つかっていません。

病院の新生児室から赤ちゃんが連れ去られる事件は、これまでにもたびたび起こっていますが、関西の病院の対策はどうなのか?

そういった特集を、今日の「ニューススクランブル」で放送しました。その中で、母親 が赤ちゃんと一緒の部屋にいるやり方について、インタビューに応じた病院の婦長さんが、



「ぼじ同室方式」



と答えていました。ところが、そのことに触れた原稿には



「母子同室方式」



という文字がありました。この文字どおりなら「ぼじ」ではなく「ぼし」のはず。

「母子(ぼし)」と言うべきところを、、「自転車」を「じでんしゃ」、「体育大会」を「たいいくだいかい」と濁る大阪人ぽく、「ぼじ」と言ってしまったんでしょうか?

早速、取材した記者を通じて病院に確認してもらいました。すると、



「小児科では"ぼじ(母児)"と言い、産婦人科では"ぼし(母子)"と言います。」



という答えでした。

ホー、「母児(ぼじ)」ねえ。初めて聞いたことばです。辞書にも載っていません。

メモしときましょ。

それにつけても、早く女の子が無事に見つかって欲しいと、切に願います。

2001/1/11

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