◆ことばの話215「一本締め」

今日(12月29日)で、東京証券取引所も、今年の取り引きを収める「大納会」。

お昼の「ニュースダッシュ」でそのニュースをやってました。

その際に、みんなが「イヨーオ!」とやっていたのがご存知「三本締め」



「シャンシャンシャン、シャンシャンシャン、シャンシャンシャン、シャン」



を3回繰り返すものです。

大阪証券取引所はそれに対して、以前はたしか「万歳三唱」だったと思いますが。

ところで、最近「一本締め」というのもよく行われます。これは、

「イヨーオ、シャン!」

と1回だけ手を打って終わるというもの・・・・と思っている人がほとんどではないかと思います。が、しかし!本当はこの「イヨーオ、シャン!」という"1回だけの手打ち"は、「一丁締め」と言うそうです。

「じゃあ、本当の"一本締め"ってどんなんやねん?」

と思われるでしょうが、こちらは、

「シャンシャンシャン、シャンシャンシャン、シャンシャンシャン、シャン!」



という、ひとつながりを1回だけ行うのが、本当の「一本締め」なのです。

ちなみに、あと3回「シャン」をしてしまうと応援団でおなじみの「三三七拍子」になります。

大阪では、またこれとは別に「大阪締め」というのもあります。これは



「うーちまひょ、チョンチョン、もひとつせー、チョーンチョン、祝おて三度、チョチョンガ、チョン!」



というものですが、この最後の「チョチョンガ、チョン」が難しい。決まって「チョンチョンチョン」というリズムで3回手を打ってしまう人がいて、なかなかうまく揃わないものです。事前に2,3回、練習する必要がある"手締め"です。

ということで20世紀もそろそろお開き。最後は"一本締め"で。皆さんご一緒に!



「いよーお!!・・・・」

2000/12/29


◆ことばの話214「世紀またぎ」

いよいよ20世紀もあと2日、押しつまってきました。

年末から年始にかけて、いわゆる「年越し」の行事がありますが、今年はちょっと事情が違います。

この2000年12月31日午後11時59分から、2001年1月1日午前0時1分にかけては、足掛け「2世紀」つまり「年越し」ならぬ「世紀越し」です。某国営?放送の番組で「世紀を超えて」というのもありましたが。

この「世紀越し」のことを、テレビ業界では「世紀またぎ」といった表現をしているようです。

もともと、たとえば番組が午後6時30分より前にはじまっていて、6時半の時点でコマーシャルに入らないで、番組を続けて6時半のラインを超えることを「(6時)30分またぎ」と言った使い方はしていました。時刻の見えないラインをまたいで超える訳です。また、「CMまたぎ」というのもあります。これは10分くらいの特集の間にCMを挟んで、同じ特集の続きをやるというものです。

この言い方が、「20世紀と21世紀」という大きな時間の変化の境目でもどうやら使われているようです。

そもそも「足掛け」で足をかけるんですから、その状態は「またいでいる状態」。だから、「世紀またぎ」もそういう意味ではおかしくないんでしょうが、なんか、ちょっと・・・ねえ。

そうすると、今年の大晦日から来年のお正月にかけて、クマを取りに行く猟師さんは、

「世紀またぎマタギ」

ですかね・・・いないよね、そんなひと。失礼しました。

2000/12/29

(追記)

新年最初のニューススクランブルで女性のUキャスターが原稿を手にこう言ってきました。



「あのー、ここの“世紀またぎ”って言う表現、それまでにも何度も出てくるし、女性なんで、できたら避けたいんですけど・・・。」



女性はこの「世紀またぎ」という表現は、はしたないって感じるようですね。

そのわりには、2000年12月31日から2001年1月1日にかけての夜中に、Tホテル行われた結婚式のことを「二つのセイキが繋がる結婚式」という表現をしていましたが。

ところで「七五調の謎を解く」(坂野信彦・大修館書店)という本を読んでいると、



「高度千メートルの空より来て卵食ひをり鋼色の飛行士」(塚本邦雄)



という短歌を紹介して、これを「五七五七七」に分けると、



「高度千メー / トルの空より / 来て卵 / 食ひをり鋼 / 色の飛行士」



となり、これは表現と形式の不一致からくるもので、和歌関係の用語で、「句またがり(「またぎ」)または「句割れ」とよんできていると書いてありました。

和歌(短歌)でも「またぎ」という表現をするんですね。じゃあ、そんなに下品というわけでもないのかな?

2001/1/5


◆ことばの話213「ぼったくり」

今年(2000年)11月から東京都で「ぼったくり防止条例」なるものが施行されました。「ぼったくり」とは「客に法外な料金を請求する風俗店や飲食店のこと、あるいはそういう商法」のことを意味しますが、このことばはなぜか「大阪的」なにおいがします。

東京語では「ぶったくり」と言うのがありますが、こちらはあまり耳にしません。辞書などによると「ぼったくり」は「ぼる」十「たくる」がくっついて出来た言葉だと書いてあり、また「ぼる」は「暴利を取る」と言う意味で、1918年の米騒動の時に出来た言葉だそうです。

全国でも初めての、東京都のこの条例に違反すると、「6か月以下の懲役か50万円以下の罰金」で悪質な店には「最長8ヵ月の営業停止を命令できる」と規定されていて、従わない場合は「1年以下の懲役か100万円以下の罰金」が課せられます。(10月5日付・読売新聞)

「ぼったくり」の動詞形である「ぼったくる」は、牧村史陽編「大阪ことば事典」にも載っています。用例としては「やらずぼったくり」が載っています。

大阪弁ぽいこの「ぼったくり」を取り締まる条例が、大阪ではなく東京で最初に制定されたということは、一体どういうことを意味しているのでしょうか?「ぼったくり」が大阪から進出して行って、それを嫌う東京人がそれを取り締まる・・・ということなのでしょうか?なんてことを考えているうちに「ぼったくり」ということばは更に進化を遂げたようで、新聞の見出しに、

「プチぼった」

ということばが登場しました。本文を読むと、正式(?)には「プチぼったくり」と言い、ぼったくり条例に引っ掛からない程度の「5万円以下ぐらいのぼったくりのこと」を、そう呼ぶんだそうです。

「プチ」なんてつくと「プチトマト」みたいでかわいいですね。きっとこの名づけ親は、東京の人なんでしょうね。

でも名前に騙されてはいけません。5万円以下でも「ぼったくり」に変わりはありません。

どうぞ皆さん、ご注意を!!

2000/12/29


◆ことばの話212「クリはくだもの?」

2000年は、皮をむいて売られているいわゆる「むき栗」が大ヒットしましたが、その「クリ」に関する話です。(本当は秋に書くつもりだったのにこんなに年末になってしまいました。)

とある秋の日、植村なおみアナウンサーからこんな質問を受けました。



「"クリ"って、果実なんですか?くだものなんですか?」



そう言われると、クリはくだもの屋さんで売ってますけど、"くだもの"って感じでもないし、かといって"果実か?"って言われると、ジューシーさに欠けるような気がするし・・・まさか"野菜"ってことは?などと考えていたのですが、とりあえず辞書を引いてみました。すると、果実は次の2種類に分かれていたのです。

果実= 【1】乾果
  【2】液果

つまり、【2】の「液果」というのが、ミカンやブドウなどいわゆる"くだもの"と呼ばれるもので、"クリ"はどうやら【1】の「乾果」というのにあたるようです。そういう意味では"クリ"は"果実"なんですね。イメージが違うけど。

ちなみに、くだもの(果物)とは、「草木の果実で食用となるもののこと」。

このほか、初めて聞いた言葉で「果菜(かさい)」というのもあって、これは「ナス・キュウリ・マクワウリのように果実を食用とする野菜のこと」だそうです。なるほど。

ついでに「野菜」も引いてみると、

「生食または調理して、主に副食用とする草本作物の総称。葉菜あるいは葉茎菜、果菜、根菜(これは聞いたことがある)、花菜に大別。芋類、豆類は普通含めない。青物。」

とありました。なるほど、なるほど。

おわかりいただけましたか?

2000/12/29


◆ことばの話211「不具合」

2000年はいろいろな企業の製品に異常が見つかった年でしたが、その事情を発表する時に、

「当社の○○という商品に不具合が生じ・・・」

という発言、あるいは新聞記事を聞いたり見たりしたことはありませんか?

この「不具合」ということばは、妥当な表現ではありません。一切の虚飾を取り去って言うと「欠陥」ということです。欠陥を認めたくないと言うメーカー側の気持ちがこういうふうなことばとなって表れたのでしょうか?

辞書(広辞苑)を引くと、



不具合=(製品などの)具合がよくないこと。また、その個所。多く、製造者の側から「欠陥」の語を避けていう。



と、まさに思ったとおりのことが書かれているではありませんか!

確かに「欠陥」というより「不具合」と言った方が、「もともとこちらの責任ではないのですが、なにか調子が悪くてうまくいかないんですよねー」というような、ぼんやりとした、責任の所在が分からない感じがします。一方、「欠陥」というと「その責任は一体どこにあるんだあ!」と、「最後まで追及するぞ!!」という気持ちがふつふつと沸き上がって来そうです。しかし、医療関係のメーカーだと「けっかんがイヤだ」などと言っていられません。

冗談はさておき、21世紀は「欠陥」も「不具合」もない製品を、世の中に送り出して下さいね。(おっ!?今日はなんか、やさしいなあ。)

2000/12/29

(追記)

21世紀を迎えてもあいかわらず「不具合」は登場しているようです。1月19日付けの産経新聞・夕刊に

「トンネルの不具合 監視員置き徐行」

という見出しのベタ記事が載っていました。Sアナが「いくらなんでも“トンネルに不具合”というのは、具合が悪いでしょう。」と切り抜いて持って来てくれました。

はっきり「欠陥」と言いましょう。それに「不具合」が使えるのせいぜい「自動車」の大きさまで、という気がするのですが、いかが?

2001/1/23