◆ことばの話205「新省庁の略称」

いよいよ2001年1月6日から、お役所の名前が変わります。新聞などでさんざん報道されてはいるものの、まだ実感がありませんよね。

ちなみに今までと名前が変わる省庁は、

環境庁→環境省

運輸省・建設省・国土庁・北海道開拓庁→国土交通省

通商産業省→経済産業省

厚生省・労働省→厚生労働省

文部省・科学技術庁→文部科学省

大蔵省→財務省

郵政省・自治省・総務庁→総務省と郵政事業庁

金融再生委員会→金融庁

といったところです。

外務省、法務省、防衛庁、農林水産省、などは名前が変わりません。

と、ここまでワープロを打って気づきました。このワープロソフトでは、「総務省」、「環境省」、「文部科学省」、「国土交通省」を一括変換しようとすると、「そう無性」「間協商」「文部か楽章」「国土項通商」になってしますのです。「総務庁」「環境庁」「文部省」は一回で変換できるのに。なお、「財務省」はアメリカにもあるせいでしょうか、一発変換できます。

さて、問題は新しい省庁名の中で、長い名前の長いところの略称はどうなるのか?ということです。国土交通省は「国交省(こっこうしょう)」、「文部科学省」は「文科省(もんかしょう)」「経済産業省」は 「経産省(けいさんしょう)」になるのでしょうか?なんか、なじめない感じ。「こっこうしょう」って、中国の地名のようでもあります。

省の省略形と同じように、大臣の名前の省略形も、慣れるまでは違和感があるでしょうね。その慣れるまでにかかる期間を、私は1年と見ていますが、いかが?

ちなみに、NNNでは、先日の内閣改造から1月6日まで、それぞれの大臣を「次期○○大臣」というふうな呼び方をしています。省略はまだしていません。略称というのは、長いからやるという理由のほかに、皆に定着しているから略す、という理由もあるんでしょうね。

2000/12/23


◆ことばの話204「モザイク」

今回はことばとは直接関係ないかもしれませんが、表現法として大事な話です。

2年ほど前から気になっていたことに「テレビでのモザイクの使用」がありました。ニュース番組のみならず、娯楽・バラエティ番組で多用されたことも影響しているでしょう。

去年の年末にある番組で「バラエティ番組で一番最初にモザイクを取り入れたのは、クイズ番組の“ヒントでピント”だ」というふうに言ってました。

そのモザイク、報道番組でインタビューに答えたものの顔を出したくない、というふうな時に使っています。逮捕された容疑者の手錠に、容疑者の人権に配慮して、モザイクを入れることもあります。声を、まるでヘリウムガスを吸い込んだ時みたいに変えることがあるのも、みなさんご存知の通りです。

モザイクの歴史を考えると、私は聖書のアダムとイブのいちじくの葉っぱに行き着くのではないか、と考えます。それが、西洋絵画の裸婦像にうつり、近年ではピンク映画、ブルーフィルム(ともに死語でしょう)、また映倫での「ぼかし」になり、ビデオの登場でアダルトビデオでの「モザイク」といいた流れがあるのではないでしょうか。

その「アダルトビデオでのモザイク」のイメージが、ニュースなどにおいて使われるモザイクにも、なんとなく「いかがわしさ」を感じさせているのではないでしょうか?

さて話は少し変わって、先日のニュースで犯罪被害者の遺族達が集まったシンポジウムが取り上げられました。その時たまたま私はニュース勤務だったんですが、そのニュースで記者のインタビューに答えていた参加者のようすに「あれっ?」と思ってのです。

というのも、その女性は声は"ヘリウム声"にした上で、「首から下」しか映っていないにもかかわらず、少しだけ映った「アゴの部分」にモザイクがかかっていたのです。

「それなら最初から、アゴも映らないように撮影しろと、ディレクターがカメラマンに指示持すべきではないか。」そう思いました。よほど特徴的なアゴだったのかもしれません。

しかもその後に出て来た女性は、背後から撮影して、顔は全く映っていないにもかかわらず、モザイクがかかっていたのです。

これは、なにか変だ。



これをきっかけに、私は声と映像に関して、本人と特定させない(できない)ための撮影及びオンエアー絵の露出のさせ方についてちょっと考えました。
(声=音声) (顔=映像) (モザイク)
(録らない・・・・・・・撮らない)  
・ 変える・・・・・・・・ 後ろ姿・・・・・・・・ あり
・ そのまま・・・・・・・ 後ろ姿・・・・・・・・ あり
・ 変える・・・・・・・・ 後ろ姿・・・・・・・・ なし
・ 変える・・・・・・・・ 首から下・・・・・・・ あり
・ そのまま・・・・・・・ 首から下・・・・・・・ あり
・ 変える・・・・・・・・ 首から下・・・・・・・ なし
・ そのまま・・・・・・・ 首から下・・・・・・・ なし
・ 変える・・・・・・・・ 顔・・・・・・・・・・ あり
・ そのまま・・・・・・・ 顔・・・・・・・・・・ あり

以上のように、「カメラ取材には応じるが、身元が特定できるような映り方は嫌だ」という人に対する、音声及び映像上の処理テクニックの段階は考えられるのではないでしょうか。この段階は、下へ行くほど「出てもよい」という意識が強く、上へ行くほど「出たくない」という意識が強くなります。

また、「ぼかし」は、「モザイク」と同じ効果を持つと考えますが、「モザイク」が編集上で後から加工するのに対して、「ぼかし」は撮影の際に相手が“映像上は出たくない”という意志をはっきり示していることをうかがわせます。だから、編集の上での「モザイクの入れ忘れ」といった不測の事態を防ぐことは出来ます。そういった意味で「後ろ姿での撮影」「首から下の撮影」と同じような技法かもしれません。

「放送と人権等権利に関する委員会(BRC)」は今年10月6日、伊予テレビのニュース番組の報道について、「映像の選択やボカシ処理、字幕スーパーの表現が不適切で、松山市の自動車販売業者の社会的評価を傷つけた」として、再発防止に努めるよう、初の「勧告」を出しました。この「勧告」の中でも、安易なモザイク・ぼかしの使用を戒めています。



取材をされる側のこういった「本人の特定できにくさ」の段階について、ふだんディレクターは事前にしっかり意識して取材に取り組む必要があるだろうと考えます。それは結局相手の人権を守ると共に、自分達の身を守ることでもあるのです。自戒の念を込めて。

2000/12/23


◆ことばの話203「戦前」

以前この欄で紹介した「戦前」は、プロ野球中継で「戦前の予想では・・・」という使われ方をしていて、おかしいんじゃないの?という話でした。

今回は「戦前というのは、いつからいつを指すのか?」という問題です。

ふだん、「戦前と戦後」という場合の基準は「第二次世界大戦終戦の1945年8月15日」におかれているようです。つまり、「終戦前」と「終戦後」(あるいは「敗戦前」と「敗戦後」)の「終」の字(「敗」の字)が落ちた形での「戦前・戦後」です。

しかし、「戦前・戦後」の本来の使い方である「戦争前と戦争後」について考えた場合、「1945年8月15日の午前中はまさに戦時中、つまり戦中」であって、「戦前」は「戦争が始まる前」、1941年12月8日より前、そこから1945年8月15日正午までが「戦中(戦時中)」、玉音放送から後が「戦後(戦争後)」という3段階の分け型になるでしょう。

ところがさらに、「太平洋戦争は確かに1941年の真珠湾攻撃で始まったが、それより前に、日中戦争は1937年の"ろ溝橋事件"で始まっているではないか」という疑問も出てきます。

いずれにせよ、戦争が始まった時点で、それより前は「戦前」、そこからは「戦時中」になり、終戦をもって「戦後」が始まります。

ただ、その「戦後」は、次の戦争の開始をもって「戦前」に早変わりするのです。

1956年の経済白書が「もはや戦後ではない」と謳った時には、この言葉は明るい希望に満ちたことばとして受け取られたことでしょうが、いまもしこの言葉が語られるとすれば、それは「新しい戦前」の予感としてなのかもしれません。

20世紀末のこの時期に、こんなことを、ふと、考えました。

2000/12/23

(お詫びと訂正)

アメリカ・ボストン在住の井筒周さんから、「本文の中の、"第二次世界大戦は確かに1941年の真珠湾攻撃で始まったが・・・"のくだりで、第二次世界大戦の始まりは1941年の真珠湾攻撃ではなく、1939年のドイツのポーランド進攻ではないか」というご指摘を頂きました。井筒さんのおっしゃるとおりです。しかし、私が言いたかったのは「日本が参戦した第二次世界大戦、つまり太平洋戦争が始まったのは1941年の真珠湾攻撃」ということだったので、「第二次世界大戦」を「太平洋戦争」に訂正させていただきます。

2001/6/5
(追記)

「戦前」という言葉は、戦後にならなければ確立しない概念である。つまり「時間の流れ」はもちろん、
「前→後」
だが「戦前」という言葉の場合は、成立順序は、
「戦後→戦前」
の順になる。
2007/1/10


◆ことばの話202「12月8日」

よく「最近の若いものは8月15日は何の日か言えても12月8日が何の日か知らない」などと新聞のコラムに書いてあります。

8月15日は第二次世界大戦(太平洋戦争)終戦の日(敗戦の日)、そして12月8日は太平洋戦争開戦・ハワイ真珠湾攻撃の日、です。

その“20世紀最後の”12月の8日金曜日、「あさイチ!」という番組のニュース担当になって、解説員の辛坊さんに「今日は真珠湾攻撃の日ですね!」というとなんと「違うだろ、昨日だよ」という答えが返ってきました。驚いて新聞各紙を見てみると、ちゃんと、「12月8日」になっています。それをもって辛坊さんのところにいくと「・・・アメリカでは12月7日なんだよ」ということでした。なんという負け惜しみ!しかし、ちょっと待てよ、確かに日本時間では12月8日未明に真珠湾を攻撃したのですが、ハワイ時間、アメリカ時間では12月7日になるんですよね。こういった国際的な、歴史的な出来事の日付は、一体どちらの時間がつかわれているんでしょうか、またどちらの時刻を使うべき何でしょうか。

私は、基本的には現地時間を採用すべきではないか、と思います。そうすると、太平洋戦争開戦の日は「12月8日」が間違いで正しくは「12月7日」になってしまう。戦後55年間ずーと日本時間で覚えてきたものが、なぜ今頃変わるのかはちょっと疑問ですねえ。

きっとアメリカでは戦後55年間ずーと「12月7日」だったんでしょうね。

真珠湾攻撃は1回しか行われていないし、それは日本でもアメリカでも、地球上では同じ時間に行われていたんですが(つまり生中継をすれば同じ時刻に見られた。もし、テレビや衛星中継の機械があれば)、日本の時刻とアメリカの時刻は異なるという、当たり前の、皆よく知っていることが、ここではあまり問題にされずにずーと過ごしてきたという訳です。

「そんなの一日ぐらい違っても大したことないじゃないか」とおっしゃる方もいるでしょう。しかし考えてみて下さい、これが12月31日と1月1日だったら、太平洋戦争開戦の「年」が違うことになります。また、今年と来年のように世紀をまたぐ12月31日と1月1日だったら、なんと「世紀」が違うことになってしまいます。

歴史というのは見る面が違うと、同じ出来事の記録まで変わってしまう、そんなひとつの例ではないでしょうか。

2000/12/23


◆ことばの話201「審美歯科医」

「ことば事情200」に続いて「201」も松田聖子ネタで。(見出しをよく見ると大きな大きな「離婚」という文字の下に、小さな小さな「へ」というひらがながくっついてました。)

「ビビビッ2年半で破局」(スポーツ報知)という見出しをつけられた松田聖子の夫の職業が、スポーツ報知によると「審美歯科医」となってました。

この職業名、私は初めて目にしました。「歯科医」や「司会」は知ってるんですけど。

職業別電話番号帳(タウンページ)をひいても「審美歯科医」は載っていません。「歯科医」のところにも「矯正歯科」というのはあっても「審美歯科」というのは載っていなかったのです。もちろん辞書(広辞苑)にも載っていません。

「審美」と聞いて思い浮かぶ言葉は「審美眼(しんびがん)」ぐらい。ところが「審美眼」といっても周囲の女性は、「なんですか?それ?審美顔(がん)って・・・?」てな具合です。(「審美眼」とは無縁のところで暮らしてこられたのでしょうか。)

他のスポーツ紙も見てみると、「歯科医師」(日刊スポーツ)、「歯科技師」(スポニチ)など。「医師」と「技師」は全然資格が違うと思うのですが。

ただ、それぞれ本文の中に「アメリカの大学に審美歯科を勉強しに行ってる」という内容のことが書かれていました。つまりなんでしょうか、審美歯科を勉強していれば、即、「審美歯科医」になるのでしょうか?それは違うでしょう。

いろいろ聞いていると、審美歯科とは、歯のホワイトニングなどを行う、歯医者の美容整形のようなものだそうです。どうやら新しい言葉のようですから、こういう時はこれです!「現代用語の基礎知識2001」をひいてみると・・・ありました、ありました!

医事評論家の小山寿氏は、「美容歯科」の項目で、こう書いています。



「最近は歯科医自身が歯の美容的効果を認識しはじめ、審美性を重視した "審美歯科"あるいは「美容歯科」が流行になっている。」



また、美容研究家の小林照子氏は「歯の美容」の項で、



「審美治療を行う歯科の数も増加している。歯科で行う歯をきれいにする方法としては、歯石やタバコのヤニ、茶渋などを洗浄して落とす、歯の表面に脱色剤を塗って漂白する、エナメル質を削って特殊セラミックを接着剤で貼りつける等がある。」



と記しています。な・る・ほ・どー。つまり、なんですな、「歯の美白」ということかな、「審美歯科」というのは。

なんて事を考えていると、「美白」の女王・鈴木その子さん、肺炎で死亡のニュースが・・・。享年68。「美白」は体に悪いのかなぁ・・・関係はないよね。フジテレビは自宅前から中継までしていました。また、そのニュースの中で

「鈴木さんは、顔色も良く、元気だったということです。」

という原稿を読んでいました(実話)・・・。“顔色も良く”って・・・。

ご冥福をお祈りします。

2000/12/6

(追記)

つい先日、師走のミナミの街を歩いていると、見つけました、「審美診療」の文字。

「一般歯科」もやっている歯医者さんだったようですが、使われているんですね、「審美」。

2000/12/29