◆ことばの話195「ゴルゴルゴル」

あのシドニーオリンピックが終わって、はや2ヵ月が経とうとしています。

随分、旧聞になってしまいましたが、堂々ベスト8に入った、サッカー五輪代表の緒戦の南アフリカ戦。このゴールシーンで、実況の船越アナウンサーが



「ゴール!!ゴルゴルゴルゴルゴ〜ゥル!!!」



と「ゴール」を28回も言ったため、苦情の電話が殺到した、という話。私は「個性が出ていて、良いのでは」と思ったのですが、この放送は日本テレビだけでなく、NHKでも放送されていたため、NHKに対しても電話がたくさん入ったそうです。

確かに、うがいをしているか、雷が鳴っているか、という感じではあります。

そのことを報じた「週刊新潮」の記事を読んで「ふーん」と思いながら、他のページを読んでいた時、私は見つけてしまったのです。船越アナを上回る人が、なんと64年も前にいたということを。

1936年(昭和11年)のベルリン・オリンピックといえば、ナチス・ドイツの国威発揚のための大会というイメージがありますが、そんな中で水泳女子の日本・前畑選手が見事、金メダルを手にしています。この時のラジオ中継でしゃべっていたの、河西三省アナウンサーは、デッドヒートの模様を、こう表現したことで知られています。



「前畑ガンバレ!前畑ガンバレ!ガンバレ、ガンバレ、前畑ガンバレ!!」



なんと、この時「ガンバレ」を38回も言ったというのです。船越アナもビックリ!ですよね。

当時は今と違って、テレビではなく音声だけの「ラジオ」ですから、耳を傾けていた人たちは、

「一体、勝負はどうなっているのか。前畑はリードしているのか、負けているのか」

全く分からなかったのではないでしょうか。(もちろん、実際のところは、何回かは“前畑リード”とか、“あと何メートル”とか言っていたようですが。)

しかも河西アナウンサーは、勝負が決まった後に、

「前畑、勝った!勝った勝った、前畑勝った!!」

を15回言った
そうです。

しかし、この河西アナウンサーの実況は、今では「名実況」として、60年を越えて伝わっています。そうすると、船越アナウンサーの「ゴルゴルゴル」も、60年後には「名実況」として残るかも・・・。「歴史は繰り返す。」といいますから。

それにしても、応援しているチームや選手が勝った放送を聞くのは、気分のいいものだとは思いませんか?

ちなみに、日本テレビ系列のサッカー中継での「ゴォール!!」は、その昔、高校サッカー中継を担当していた日本テレビの舛方アナウンサー(当時)が、「高校サッカーを盛り上げるための演出」として、また「本場サッカーでの熱狂ぶりを日本のファンにも知ってもらうため」に、南米のサッカー中継でよく見られた「ゴール!!」という表現を、担当のアナウンサー全員に義務づけてことから始まっています。そういった歴史もふまえて、サッカー中継を見ると、また、味わいも変わってくるのではないでしょうか。

2000/11/12

(追記)

「百年分を一時間で」という山本夏彦さんの最近でた本(対談集のような感じ)の中で山本さんは、「“前畑ガンバレ!”を河西三省アナウンサーは23回言った。」と話されていました。そうすると、38回はウソ?しかし、同じスポーツについての話の中で山本さんは、「“野球”という言葉は、正岡子規が“ベースボール”を訳したもの」と言っています。しかしこれは間違いで、「野球」は確か中江かなえという人の訳だったと思います。 だから「前畑ガンバレ!23回」も、あんまり信用できない・・・かな?

2000/11/15

(追記2)

「新聞に見る雑学のすすめ」(東京新聞編・東京書籍)330ページに、「“前畑ガンバレ”の放送を文字にすると?」という項目があり、そこに1936年ベルリン・オリンピックでの河西三省アナウンサーによる「女子200メートル平泳ぎ」の実況が文字化されています。スタートからゴールまで、3分25秒。最後のターンからゴールまでの50メートルの実況は、以下の通り。

ターンしました。ただいま、ターンしました。わずかにリード。前畑頑張れ、頑張れ、頑張れ。あと四十、あと四十。前畑リード、前畑リード。ゲネンゲルも出ております。ほんのわずか、ほんのわずか。前畑わずかにリード。前畑頑張れ、頑張れ。あと二十五。わずかにリード、わずかにリード。前畑頑張れ、頑張れ前畑。ゲネンゲルが出ております。危ない、頑張れ、頑張れ、頑張れ、前畑リード、前畑リード、前畑リードしております。前畑頑張れ、前畑頑張れ。リード、リード、あと五メートル、前畑リード、リード、リード、勝った、勝った、勝った、前畑勝った。前畑勝った。前畑勝ちました!前畑勝ちました!前畑優勝です。前畑優勝です。

数えましょうか。

「前畑頑張れ」または「頑張れ前畑」=6回
「頑張れ」(「前畑頑張れ」も含む)=12回
「リード」=14回
「勝った」=7回


ということで、なんと実は「頑張れ」よりも「リード」の方が2回多いということのようです。しかし、客観的な「リード」ということばより、「頑張れ」という主観的な言葉の方が、より人々の心に残ったということでしょうか。
しかもこの数字は、週刊新潮のコラムや山本夏彦氏の数字を大きく下回っています。但しここに掲げたのは「ゴールまで残りあと50メートルでの実況」ですから、それまでのスタートから150メートルで、もっとたくさん「頑張れ」を言っているのかもしれません。「勝った」も、週刊新潮の「15回」の半分以下の7回。これはどうしたことでしょうね。それにしても船越アナウンサーの「ゴール」28回はすごいなあ。でも、もうシドニーオリンピックから1年近く経つんですねえ。早いなあ。

2001/8/15

(追記3)

上の文章化された実況のテープ、読売テレビのレコード室にありました。探してみるもんやね。で、「ガンバレ」「リード」「勝った」「勝ちました」「優勝です」の回数を数えました。これは上と同じで女子200メートル平泳ぎの、残りあと40メートルからの実況しかないので、その範囲内での回数という事になります。

ガンバレ・・・・・21回
リード・・・・・・14回
勝った・・・・・・15回
勝ちました・・・・・5回
優勝です・・・・・・2回


実際に聞いて数えた回数は、「勝った」に関しては「週刊新潮」と同じ15回。「新聞に見る雑学のすすめ」の7回は、間違いですね。「ガンバレ」も結言ってました。

2002/9/4

(追記4)

沢木耕太郎著『オリンピア〜ナチスの森で』(集英社)の中に、ベルリン・オリンピックでの河西三省アナウンサーの実況の様子が載っていました。それによると、当日の河西アナウンサーは体調が悪く、放送直前になっても依然、調子が悪そうだったので、同僚の山本照アナウンサーと現地雇いのアルバイトの2人が河西アナに向かって「河西さんガンバレ」「ガンバレ、ガンバレ」と言って励ましていたのだそうです。それがいつの間にか河西アナに伝染してしまって、河西アナが前畑選手に向かって「ガンバレ、ガンバレ」と言い始めたのだそうです。しかも140メートルまでは「心配でございます、心配でございます」と言っていたのが150メートルを過ぎると「ガンバレ、ガンバレ」の一点張りになったそうです。そしてこの本によると、
『わずか三分余りの放送の中で、河西は「ガンバレ、ガンバレ」を三十八回、「勝った、勝った」を十八回も叫んだ』
とあります。前出の『週刊新潮』によると、
「ガンバレ、ガンバレ」=38回
「勝った、勝った」=15回

ですから、「ガンバレ」の回数は同じです。しかし「勝った、勝った」の回数は、18回と15回で違います。一体どれが本当なのでしょうかねえ・・・。
あ、「新聞に見る雑学のすすめ」の「勝った、勝った」が7回というのは、「勝った勝った」という2回の言葉が7回ということで、そのほかは「勝った」という言葉が15回なのかも。それなら誤差は、1回だけですね。

2004/10/6


◆ことばの話194「デパ地下」

最近、ワイドショーなどでよく目にする言葉に「デパ地下」というのがあります。

字を見れば分かるかと思うんですが、「デパートの地下」の略。もう少し詳しく言うと、「デパートの地下にある食料品売り場」のことです。消費不況で、デパートは全般的に元気がない状態が続いていますが、そんな中唯一活気づいているのが、この「デパ地下」です。不況の中、「大きな物は買えないが、小さな物をコツコツと・・・」てな具合で、少し値段ははっても、美味しくて安全で新鮮な食料品を求めて、みんな「デパ地下」に集まってくるのです。「デパ地下グルメ」なるB級ぽい響きのこの言葉もマニアの間では常識かしているようで・・・。

それはそれで良いことだと思うのですが、この「デパチカ」という言葉の響きが、好きになれません。どうしても「出歯亀(でばがめ)」を彷彿してしまいます。下品な感じ。

「デパートB1物語」(吉田菊次郎著・平凡社新書)という本が去年出た時に、その帯に「デパ地下ファン、必読!」という文句が書かれていて、これが私が「デパ地下」という言葉にであった最初でした。その直後、今から半年ほど前でしょうか、「ニュース・スクランブル」の特集でこの「デパ地下」を取り上げました。

その時に「どうも、“デパ地下”って響きが良くない。省略せずに言ったらどうか。」と担当ディレクターに話したところ、「デパート業界では、こう呼んでいて、もう定着しているので・・・。」という話でした。

そして、最近は「関西ウォーカー」や「ぴあ」のような情報誌の特集にもしょっちゅう出てくる言葉になりました。もともと雑誌の特集の方がテレビより早かったのでしょうね。今年の流行語大賞にも、ノミネートされるかもしれません。

もっとも地下街の面積が日本一という大阪の梅田には、昔から"梅田地下街"というのがありました。略して「ウメチカ」。今は「ホワイティ梅田」という名前に代わって、もうずいぶん経ちますが、伝統として「ウメチカ」→「デパチカ」という良く似た省略形で、良く似た音の響きを持った物が存在したんですよね。

そういう意味ではとっても大阪っぽい言葉ではあるんですが、でもあまり好きになれない言葉なんですよね、「デパ地下」って。

2000/10/27

(追記)

2001年10月の広島で行われた国語学会の懇親会で、秋永一枝早稲田大学名誉教授に「デパ地下って言葉があるんですが、ご存知ですか?」と伺ったところ、顔をしかめて、

「知らないけど、イヤな言葉」

とおっしゃってました。思い出したので記しておきます。

で、今朝(2002年2月7日)の朝日新聞(大阪版)朝刊家庭欄(19面)に

「デパオク変身中」

という見出しが躍りました。

「デパートの地下」が「デパチカ」なら、「デパオク」は「デパート(百貨店)の屋上」というわけ。初めて目にしました。何でも、作るなあ。ちなみに記事の内容としては、

「フットサル(=ミニ・サッカー)・コート」(プランタン銀座)、「イングリッシュガーデン」(大丸心斎橋店)、「観覧車」(松山市・いよてつ百貨店)の3つが紹介されています。

2002/2/7


◆ことばの話193「UFJとUSJ」

今月4日の夕刊各紙に、経済関係のこんなニュースが載りました。



「三和・東海・東洋信託、統合新会社名は"UFJ"」



UFJというのは「ユナイテッド・フィナンシャル・オブ・ジャパン」の略なんだそうですが、この記事を見て一瞬、えっ、ユニバーサルスタジオ(USJ)?なの?と思ったのは私だけではなかったようです。

というのも翌日の読売新聞・朝刊に、こんな記事が載っていたのです。



三和の地元、大阪の経済界では来年春、大阪湾岸にオープンするユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と似て、「紛らわしい」という声もあり、この日、日本銀行大阪支店で行われた記者会見でも話題となった。三和の村尾弘毅副頭取は「(USJとの)相乗効果が出れば」と、したたかな一面を見せていた。



したたかなって・・・。それは、あかんやろ、と思ったのですが、その日の朝日夕刊のトップ(なんで?)記事を見て、さらに驚きました。見出しは、



略称「USJ」やめて〜正式名称「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」



なんとユニバーサル・スタジオジャパンの運営会社「ユー・エス・ジェイ社」が、旅行代理店や鉄道会社などに「テーマパーク名にUSJの略称を使用しないで欲しい」と要請していることが分かった、というニュースです。

ちなみに東京ディズニーランドも「TDLという略称を使わないように」呼びかけているそうですが。



せっかく「相乗効果」をねらったUFJですが、USJ側が「イヤよ」と肘鉄を食らわせたようなタイミングの記事でした。

それにしても最近、アルファベットの略称が、増えすぎだと思いませんか?

2000/10/20
(追記)

「こんな日が 来なけりゃいいなと 思いつつ でももしかして あるとおもろい」

えー、やっちゃいました、毎日新聞。2月24日の朝刊13版に、こんな「おわび」が。

『23日夕刊一面「フェスティバルゲート再生」の記事で、信託銀行3行のうち「USJ」とあるのは「UFJ」の誤りでした。おわびして訂正します。』

・・・やってしまいましたね、毎日さん。でも・・・次、間違えなければ大丈夫だし、誰も「USJ信託銀行」なんてあると思わないから大丈夫ですよ、きっと。ちゃんとおわびと訂正も出したんだし。
毎日新聞はその後も、ちゃんと「訂正」と「おわび」を出し続けています。
3月2日の13版、「訂正」は、
『1日夕刊11面「環状線で会社員指される」の記事で、被害者が「草野達吉さん」とあるのは「草野辰吉さん」の誤りでした。大阪府警東成署が訂正しました。』
警察発表が間違っていたと。だとすると、ほかの新聞も同じだったと思うのですが、訂正記事は見当たりませんでした。見落としたのかもしれませんが。その同じ日の朝刊に「おわび」も載っています。
『1日朝刊29面「高知工大学長人事 橋本知事、任命拒否」の記事で、学長選で過半数となったのが「岡本甫学長」とあるのは「岡村甫学長」の誤りでした。おわびして訂正します。』
こちらのミスは警察発表ではなかったようですが。
いずれにせよ、新聞はすごいなと思うのは、小さな誤植やミスでも、こうやってちゃんとおわびや訂正をきちっと出すということです。この姿勢は放送も見習わないといけないと思います。もちろん、訂正を出さなくても済むようにできるだけキッチリとチェックすることは、言うまでもないのですがね。

2005/3/9

(追記2)

UFJ銀行と東京三菱銀行が一緒になります。その持ち株会社の名前が、
「三菱UFJホールディングスグループ」
となりました。長い名前だな。なんだか、政党も2大政党制に向けて動いていますが、それ以上のスピードで、銀行の淘汰・統合が進んでいるような気がします。それに伴って。バブルの負の遺産である不良債権処理も進んではいるようですが。
平成ことば事情117「フィナンシャル」、同じく1842「東京三菱と三菱東京」もお読みください。

2005/10/20


◆ことばの話192「『ニッポン』か『にほん』か?」

ON対決で盛り上がる(?)日本シリーズ。変則日程でいま、第3戦が終わってダイエーの2勝1敗。

この「日本シリーズ」の「日本」、「ニッポン」なのか、「にほん」なのか?ということが気になりました。

そこで、テレビで注意深く各局の様子をチェックしてみました。それによると、

<にほん>

(日本テレビ)解説の中畑清氏・角田久美子アナ(スポーツMAX)、柴田倫世アナ・男性ナレーター(うるぐす)、長嶋茂雄監督(セリーグ野球中継優勝インタビュー)、小川光明アナ(第1戦実況)、多昌アナ(第2戦実況)、福澤朗アナ(ズームイン!!朝!)、山室寛之・巨人軍球団代表)、鈴木君枝アナ(ズームイン!!朝!)

(TBS)解説の田淵幸一氏(ニュース23)、佐古キャスター(ニュース23)

(NHK)有働由美子アナ(サンデースポーツ)、ナレーションの男性アナ(サタデースポーツ・サンデースポーツ)、阿部渉アナ、堀尾キャスター(ニュース10)

(テレビ朝日)男性ナレーター

(秋田放送)女性アナ(ズームイン!!朝!)



<ニッポン>

(日本テレビ)山下末則アナ(セリーグ野球中継優勝インタビュー)、鷹西美佳アナ、井田由美アナ、長谷川アナ(今日の出来事)、鈴木君枝アナ(ズームイン!!朝!)

(テレビ朝日)角澤アナ(ニュース・ステーション)

(フジテレビ)近藤雄介アナ、女性アナウンサー、解説の田尾氏、関根潤三氏(プロ野球ニュース)

(福岡放送)奥田美香子アナ(ズームイン!!朝!)

(TBS)進藤晶子アナ(ニュース23)



というふうに、バラバラです。同じ局でも番組によって「にほん」だったり「ニッポン」だったりします。

一番徹底して「ニッポン」と言っているのはフジテレビ。社員ではない解説者にまで「ニッポン」というように徹底しています。やはり系列に「ニッポン放送」があるからでしょうか。

逆に「にほん」としか言っていないのがNHK。「大ニッポン帝国」につながる「ニッポン」 を嫌っているのでしょうか?けど、NHKの正式名称である「日本放送協会」は「ニッポン」放送協会なのになあ。と思って、NHK放送文化研究所の深草さんに電話で聞いてみました。すると、

「国号は"ニッポン"にしてます。また"日本(にほん)共産党""日本(ニッポン)社会党"のような固有名詞に関してはそれに従い、"日本(にほん)髪""日本(にほん)海"のように慣用になっているものについてもそれに従いますが、それ以外に関しては、にほん・ニッポンどちらでも良いことにしています。だから"日本シリーズ"は、どちらとも決めていませんねえ。」

という話しでした。

日本テレビ系列では、ずっと「にほん」と言ってきましたが、4年前、巨人がこの前優勝した時に「ニッポンにするように」という通達(?)が来て以来、しばらく「ニッポン・シリーズ」と言っていたのですが、今年はその"しばり"が緩いのか、方針変更したのか、「にほん」と「ニッポン」が混在しています。第2戦の実況を担当した多昌博志アナウンサーは、「日本シリーズ」は「にほん」と言ってましたが、「日本選手権シリーズ」という正式タイトルは「ニッポンせんしゅけんしりーず」と、正式名称と通称で使い分けていたようです。

また、「ズームイン!!朝!」で新聞のニュースを解説している鈴木君枝アナは最初「ニッポン」と読んでいましたが、その1分後には「にほん」と言ってました。それほど意識はしていないんでしょうか?

さっそく日本テレビ(これは、"にほん"テレビ)アナウンス部に電話して、鈴木君枝さんご本人に伺ったところ、鈴木さんは「何年か前に、"ニッポン"と読むようになったと聞いたので、できるだけニッポンと読むようにしていますが、それほど強く意識はしていません。」とのこと。やっぱり。

代わって電話に出てくれた船越雅史アナは「特に決めていません。ただ、コミッショナー事務局に4年前に聞いたところ"ニッポン選手権シリーズだ"という回答を得たので、正式名称を言う時は"ニッポン"選手権シリーズ、通称として言う時は、言いやすい方を使いますが、"ニッポン"と"にほん"だと、"にほんシリーズ"の方が言いやすいと思いますがね。大体、日本の国名も、ニッポンでもにほんでも良いじゃないですか。」という話でした。なるほど、なるほど。ちなみに「日本テレビ」

読売テレビでは一応、その4年前の通達にしたがって「ニッポン」と読むようにしていますが、やはりどうも慣れない感じ。「にほん」の方が自然ですよね。

そんな中、昨日(10月24日)のTBS「ニュース23」の小倉弘子アナは、1回も「日本」を言いませんでした。えっ?どういうふうに表現してたかって?

彼女はすべて「シリーズ」で済ましていました。つまり、

「シリーズ第4戦のみどころは・・・」とか「ここまでシリーズは1勝2敗・・・」

などといった表現方法です。あまり「日本シリーズ、日本シリーズ」と続くと、うっとうしいので「日本」をはずしたのか、それとも「日本はずし」に何か意図があったのか?

どうなんでしょうか。

と、思って良く25日の放送を見ると、今度も「日本」と言いません。「シリーズ」も口にしません。どういったのか?彼女は、

「快勝した第3戦」「そして第4戦は・・・」

という具合に「第○戦」という表現を使い出しました。あくまでも「日本」を口にしないのでしょうか?もう少し、見てみたいと思います。

まあ、それにしても船越アナが言うように国名さえ「ニッポン」でも「にほん」でも良いんですから、どちらが間違い、と言うものではないんですけどね。日本銀行も、銀行の広報は「ニッポンと言って下さい」と言っているようですが、全国に34ある本・支店に電話したところ「にほん銀行です」と言ったところと「ニッポン銀行です」といったところが、ともに17店ずつだった、という話もあるぐらいですから。

ただ、応援する時は「にほん、チャチャチャ」ではなく「ニッポン、チャチャチャ」でないと、ヘンですけどね。

2000/10/26

(追記・業務連絡)

読売テレビ・アナウンス部では、 「日本選手権シリーズ」は「ニッポン」、「日本シリーズ」は「にほん」でも「ニッポン」でもよしとします。 但し、同じ文章の中で、「にほん」と「ニッポン」のが混在しないように注意しましょう。

2000/10/26

(追記)

第4戦で日本テレビ・山下アナウンサーは「にほんシリーズ、ニッポンシリーズ」と言い直していましたよ。

2000/10/26


(追記2)

昨日(10月26日)のTBSニュース23の小倉アナは、これまで一言も「日本」と言わなかったことの"埋め合わせ"でしょうか、これでもか、これでもかと、合計5回も「日本シリーズ」を連発していました。読み方は「ニッポン」でした。ちなみに草野満代アナは「ニッポン」、筑紫哲也さんは「にほん」でした。

2000/10/27

(追記3)

9月15日、甲子園球場で広島にサヨナラ勝ちしてマジックを「1」にした阪神タイガース。インタビューに答えた星野仙一監督は、関西テレビの山田アナウンサーの、
「どんな日本(にっぽん)シリーズにしたいか?」
という質問に対して、
日本(にほん)シリーズは・・・・」
と。つまり質問者は「ニッポン」と聞いたのに、星野監督は「ニホン」と言ったのです。ところが、最後に「ファンへ一言」と言われた時には、
「10月中旬の日本(にっぽん)シリーズは・・・」
と、今度は星野監督、「ニッポン」を使いました。星野監督の中でも「ニホン」と「ニッポン」、揺れているようです。

2003/9/16

(追記4)

9月16日の「すぽると」で、フジテレビの内田恭子アナウンサーは、
「ニッポン・シリーズ」
と言っていました。

2003/9/17

(追記5)

2003年10月6日、日本テレビ「きょうの出来事」のサブキャスターの女子アナが、
「にほんシリーズ」
と言っていました。また、10月9日のNHK19時のニュースの男性アナウンサーは、
「にっぽんシリーズ」
と言っていました 。

2003/10/11

(追記6)

10月19日(日)NHKラジオでの日本シリーズ第2戦、冨坂アナウンサー(と思われるのですが)は、
「ニッポンシリーズ」
と言っていました。
また同じ日、日本テレビの船越アナウンサーは、
「にほんシリーズ」
と言っていました。ダイエーの城島選手がシリーズ2号HRを打った時。また、「うるぐす」の柴田アナウンサーも、
「にほんシリーズ」
と言っていました。

ちなみに、読売テレビ報道と日本テレビの用語班がこの日本シリーズ直前に話し合いまして、
「NNN系列では、原則『にほんシリーズ』とする」
事を決めました。但し「絶対に『ニッポンシリーズ』と言ってはいけない」という訳ではありません。緩い縛りです。

2003/10/22

(追記7)

日本シリーズ第3戦。実況を担当していたABC朝日放送の伊藤史隆アナウンサーは、「にっぽん」
と繰り返し言っていました。

2003/10/23

(追記8)

「NHKでは去年から、『ニッポン・シリーズ』に統一した」
と、NHKの原田さんからメールが来ました。有り難うございます。 そして読売テレビが中継した日本シリーズ第5戦(10月24日)、実況の山本純也アナウンサー
「にほんシリーズ」
と言っていたんですが、なぜか「提供読み」(おそらく日本テレビの、男性アナウンサー)は、なぜか、
「ニッポンシリーズ」 と言っていました。おかしいな。なぜかなあ。「ゆるいシバリ」だからかな。

2003/10/24

(追記9)

日本シリーズ、ホークスの4勝3敗で終了しましたね。タイガース残念!
10月17日朝5時12分のNHKの男性アナは、
「ニホンシリーズ」
と言ったあと、
「ニッポンシリーズ」
と言い直していました。(三宅さんかな?)
同じ時刻、日本テレビの山下美穂子アナウンサーと青山キャスターはともに
「ニッポンシリーズ」

と読んでいました。
10月26日のテレビ朝日系の中継では、
「ニッポンシリーズ」
でした。

2003/10/30

(追記10)

今年(2004年)の日本シリーズは、西武が4勝3敗で中日を破り、12年ぶりに日本一に。10月16日(土曜日)のTBSの放送では、7回表から実況を担当した久野誠アナウンサーが、
「ニッポンシリーズ」
と言い、解説の田淵幸一さんは、
「ニホンシリーズ」
と何度も言っていました。

2004/10/26


◆ことばの話191「家族と家庭」

アナウンス部で私と机が向き合っている、同僚のHアナウンサーが「ウーン」と腕を組んで悩んでいました。「何を考えてるの?」と聞くと、

「いやね、"家族円満"か"家庭円満"かについてなんですけどね。」

と言う。彼曰く

「"家庭円満"は四字熟語として使うけれども、"家族円満"は熟語として使っても良いのかな、ということなんですけど。」

「えー?、"家族円満"でも良いんじゃないの?」

ということで、"家族"と"家庭"について考えることになりました。

"円満"というと、まず思いつくのが"夫婦円満"。これは夫婦の"関係"が円満であると言うこと。それから考えると、家族の間の関係が円満である状態の"家族円満"は良いんじゃないのかな?などと考えながら、

「家族は、親族などのようにいわゆる血の繋がっている人で一緒に住んでいる人たちで、家庭と言うのは場、家族のいる場所なんじゃないの?」

と言うと、

「いや、"家庭"というのは、家族一人一人の人間関係を指すのであって、構成員の一人一人を意味する"家族"とは違うから、その関係が円満という意味での"家庭円満"はあっても"家族円満"はおかしいんじゃないですかね。」というのが彼の弁。

そう言われると、家族と家庭、微妙に意味が違う気がします。

"家族"と一緒に遊園地に行くことはあっても、"家庭"と一緒に遊園地には行かないし、

"家族なんだから協力しよう"とは言っても"家庭なんだから協力しよう"とも言わない。"家庭教師"はあっても"家族教師"はない。"大家族""核家族"はあっても"大家庭""核家庭"はない。そういう流れから言うと"家族団欒"はあっても"家庭団欒"はないような気がします。



辞書も引かずにこんな話をしていても仕方がない。一旦辞書を引いてみました。すると、

「"家族"は家庭を構成する構成委員、"家庭"はその集まり、あるいは家族が生活する場所」と載っていました。

"家庭教師"は、学校ではなく家庭という場所で教える教師だから家庭教師。"大家族"の"大"は"人数が多い"と言う意味なんですね。



結局、"家庭"に単なる場所と言う意味ではなくて、"家族の集まり"という意味があるのならば、"家庭円満"も"家族円満"も使ってよいと思うのですが。



約30分、こんな論議が続きましたが、Hアナは、まだ何だか納得の行かないような表情をしていました。それにしてもこんなにこの言葉にこだわるなんて・・・もしかして"家族"や"家庭"が"円満"ではない状態なの?それならこんなところで論議している場合じゃあないゾ。

2000/10/20

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