◆ことばの話155「五ば〜ーん、ショート、ヤマダく〜ん」
甲子園の熱戦が続いています、高校野球。その高校野球で以前からずっと不思議に思ってることがあります。それは、ウグイス嬢の選手の呼び出しアナウンスです。お聞きになったこと、ありますよね、こんな具合に。
「五ば〜ん、ショートぉ、ヤマダく〜ん」
この「ヤマダく〜ん」の部分が、微妙にヘンなのです。
共通アクセントなら
「ヤマダくーん(LHHHH)」(Lは低く、Hは高く発音して下さい)
と平板になるのですが、甲子園のウグイス嬢は、
「ヤマダくーん(HHHLL)」
と「くーん」の部分を必ず下げるのです。
阪神の選手紹介アナウンスの時には感じない違和感を覚えるのです。プロ野球のウグイス嬢とは別の人なのかなあ。あれは一体どこのアクセントなのでしょうか?なぜあんな変な訛り方をしてるんでしょうか?
あれに近いしゃべり方をしているのは、デパートのエレベーターガールです。京阪電車の車掌さんも、良く似たしゃべり方をする人がいます。いわゆる一つの「職業訛り」なんでしょうか。不思議だよねー。
今度、調べておきます。
2000/8/16
◆ことばの話154「アクアラング」
言わずもがなのことですが、ビールの美味しい季節です。
そのビールのコマーシャルに出てくるセリフにこんなのがあります。
CMのシチュエーションは、飛行機の中。と言っても旅客機ではなく、なにやら輸送機のような飛行機です。その中で、危険な任務に向かおうとする外国人の男が一人。仲間の女性が「危険よ。」と引き止めようとすると、「スパイに危険はつきものさ。」とクールに言い放ち、何かを背負って、今まさに地上へ飛び降りようとしている彼の背中に向かって、ヒゲの工作員がひとこと、
「でもそれ、アクアラングじゃなくてボトル缶じゃん!!」
当の工作員の男は、背中を振り返って
「ああ!しまった!!」
任務遂行は出来なかったものの、彼は命を失うことなく良かったね、と皆でそのビールのボトル缶で、「チアーズ!」と乾杯してCMは終わっているんですが、私が気になったのは「アクアラング」という部分。というのも「アクアラング」は、日本アクアラングという会社の商品名なんです。
ビール会社のCMの中で、なぜ他の会社(業種は違いますが)の商品名が出てくるのか?というのが私の疑問です。ちなみに、読売テレビなど日本テレビ系列の場合、「アクアラング」のニュースなどでの言い換えは「スキューバ」か「簡易潜水具」とすることになっています。
と、ここまで書いてもう一つ気になることが出てきました。なんで、飛行機から飛び降りようとしているのに、背負っているのは「パラシュート」ではなく、「アクアラング」なんでしょうか?(まあ、実際に背負っているのは、アクアラングではなくビールのボトル缶なんですが。)飛行機からアクアラングをつけて飛び降りるということは、かなり海面近くを低空飛行しているということですかね?そうでなければきっと彼は任務を遂行する前に海面に激突して命を落とすことになるんじゃないでしょうか?
いずれにせよ、とっても謎の多いCMです。皆さんも今度見る時には、注意して見て下さいね。
2000/8/14
◆ことばの話153「それなりに」
牛乳・パン・スポーツドリンク・弁当と来て、今度はトマトジュースです。
キリンビバレッジのトマトジュースの缶に、ハエが入っていたというのです。会社は、その時にその信州の工場で製造した缶入りトマトジュース61万本あまりをすべて回収すると発表しました。
その記者会見に臨んだ、キリンビバレッジの佐室社長の言葉の中に気になる表現がありました。
「設備は、それなりにきっちりしていますし・・・(以下略)」
これは、どうなんでしょうか。
「当社の設備はキッチリとしていて、万全で、ハエなど入り込むスキなどございません」という自信の表れなのか、それとも
「当社の設備は、大体私の知ってる限りは大丈夫なんですけど、知らない部分もあるし、そこはちょっとよくわかりませんけど・・・」
という自信のなさの表われなんでしょうか。
ありうるはずのない、缶ジュースの中にハエが入っていたという事態が発生した後の会見で「それなりに」という言葉が出てくるのは、やはりおかしいと思います。本人にとっては軽い気持ちで、意味はないのかも知れませんが、「それなりに」という言葉の主語は「それ」です。「それ」の「やり方任せ」です。一体「それ」って誰?全責任を追うべき社長は、こういった場面で「それなりに」などという言葉を発してはいけません。謙遜の意味の言葉と取れなくもないですが、謙遜している場合じゃないでしょ。
万が一、キリンビバレッジ側に責任がないということも考えられますが、それにしても「それなりに」は、まずい言葉です。きっと、岸本加世子さんも樹木希林さんも、田中麗奈さんも「それなりに」そう思っているのではないでしょうか。
2000/8/9
◆ことばの話152「2時半ぐらいに、梅田で」
携帯電話の普及が6000万台になったと思ったら、iモードの台数も、1000万台を超えたそうです。かく言う私も、ケータイを今年3月に始めて購入、同時にiモードを愛用しています。便利ですねー。
さて、そのケータイの普及によって変わったものがあります。待ち合わせの方法です。
ケータイのない時代は、たとえば、「2時半に、梅田の紀伊国屋書店の向かって右側の入口の右の壁側」などと、時間と詳しい場所を約束したものです。人の多い梅田など繁華街で待ち合わせする場合などはそうでないと、会えない恐れがあったからです。
しかし、ケータイ時代になってからは、こうなりました。
「2時半頃に、梅田で」
一見、不思議はないのですが、改めて考えてみると、「梅田の、どこで待ち合わせやねん?」と疑問が出ます。
しかし、御心配なく。
「大体近くまで来たら、ケータイにかけて!」
これで繁華街の人込みの中でも、ちゃんと相手に会うことが出来るのです。ただ、地下街が待ち合わせ場所だと、「電波の届かない範囲」なのでちょっと困ります。おそらくケータイ名人の若者達は、地下街には入らないようにしているのではないでしょうか。
(若者の客が減ると困るので、最近は地下街で商売をする人たちも、ケータイの電波が届くようにいろいろと努力をなさっているようですが。)
場所がアバウトになると同時に時間もアバウトになってきます。
少しくらい約束の時間に遅れても、ケータイで連絡して「すみません、ちょっと遅れます。今、淀屋橋まで来てるんであと、7分ぐらいで着きます。」
相手も連絡があれば「あ、淀屋橋か、じゃあ、もうちょっとだけ待てばいいのだな。」と安心します。
「あと7分で着く」というような細かい時間配分ができるなら、最初から7分前に着くように時間配分をすればいいのですが、そこが人間の悲しいところ。計算が出来れば出来るほど、「まだ大丈夫」という気になってしまうものです・・よね。
そんな事を考えていると、スタッフから仕事の電話がかかってきました。
「あのー打ち合わせをですね、2時半頃から、8階の会議室あたりで、やりたいと思うんですけど・・・」
2000/8/9
◆ことばの話151「中肉中背」
先日、視聴者の方からお手紙をいただきました。ニュースの中で気になる表現があったというのです。イギリスの元スチュワーデス(“客室乗務員”と報道しているメディアが多いですが、一応わかりやすく“スチュワーデス”としておきます。)が失そうした事件で、一緒に姿をくらました男性の体格について述べた部分で、「身長175センチの中肉中背だった」という表現に対してです。つまり
「身長175センチは、中背ではないのではないか?」
というのがお手紙の主旨です。
私も、手紙に目を通した報道部長も「いくら最近の若者の体格が良くなったとしても、そりゃそうだよなあ。」と感じたので、「ご指摘の通りです」というお返事を差し上げました。
話は変わって昨日(8月8日)の朝日新聞の夕刊。作家の梁石日(ヤン・ソギル)さんが「君たちに伝えたいこと」という文化欄のコラムに書かれた一文。
「身長183.4センチ、体重100キロ近い父は、当時としては大男でした。」 (下線筆者)
思わず、紙面に突っ込みを入れてしまいました。
「今でも十分、大男やで!!」
この2つの出来事から分かることは、
「大きい・小さいというのは相対的なもので、その人の主観や時代背景などに
よって変わる」ということです。
たとえば、身長180センチあっても、バスケットボール選手としては「小柄」ですし、サッカー選手なら「大型選手」と言われるかもしれません。
しかし、元スチュワーデスと共に行方が分からなくなった男性が、もしデンマークとかスェーデンといった、比較的背の高い人が多い国の人だったとしたら、その国では175センチでも「中背」かもしれません。ところ変われば、常識も変わる。ただその情報を伝える相手が日本人であれば、やはり「中背」は違和感があると言えるでしょう。
近い将来、日本でも「身長175センチと小柄で・・・」なんて表現も当然のように感じられて、「何がおかしいの?」とみんな言うようになるかもしれませんね。
2000/8/9
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