◆ことばの話125「結婚しませんか」

3か月ほど前の事です。当時2歳5か月の息子が、テレビのコマーシャルを見ていた時、安達祐実が映った途端、

「ケッコンしませんかって言うで。」

と言ったのです。

その頃、このCM(ベル・クラシックという結婚関連の企業のCM)は確かに頻繁に流れていて、

安達祐実が一人で生のオレンジジュースを、果実を絞って作ろうとして、それをちょっと飲んで、小声で「にがっ・・・。」と言ったあと、小さくため息を吐き、冒頭の「結婚しませんか」というセリフを言うのです。

それにしても2歳の子供が、そのCMの頭の部分を見ただけ、最後のセリフを覚えてしまい言い当てるなんて・・・うちの子って、天才!と思ったのではなく、いかにテレビの影響が、特に、頻繁・集中的に流されるCMの影響が大きいかということに改めて思い至ったのです。

今、息子が気に入っていて物まねをするCMは、引っ越しのサカイの例のCM「サカイー、ヤスイー、仕事きっちり」というものと、「油とちゃうちゃう、コブラとちゃうちゃう、かぶらとちゃうちゃう、モグラとちゃうちゃう」という山瀬まみガッパが出てくる金鳥リキッドのCMです。ともに、メロディと言うかリズムがついているのが特徴です。

昨日、久々に安達祐実の「結婚しませんか」CMを、昼食時に目にしたので、「そう言えば・・・」と思い出しながら書きました。

ジューン・ブライドの季節が近づいているのですね。

奄美地方は昨日、梅雨入りしました。

2000/5/24

(追記)

わ、5年半ぶりの追記だ。「とき」は流れたんだなぁ・・・ということで、安達祐実さん、結婚しちゃいました。お笑いコンビ「スピードワゴン」の井戸田潤さんと。2005年9月に婚姻届を出し、11月12日に結婚式を挙げたとのことです。どうぞお二人、お幸せに!ところで、「ベル・クラシック」は、二人の結婚に関して、何か関係があったのだろうか?

2005/11/19
(追記2)

家に帰って、小学2年生になった息子に、この話をしたところ、
「今、一番印象に残っているのは、♪コーイケ君のポテトチップス、コーイケ君のポテトチップス、コーイケ君のポテトチップスって、言うヤツ!」
と、のたまいました。それを聞いた妻が、
「そのポテトチップスって、どこのだっけ?ナルミヤ?」
・・・だーかーらー、「コイケ君の」って言ってるじゃない!「コイケヤ」だろ!!
コマーシャル、印象に残っても、内容が伝わっていないかも・・・。
2005/11/21

※3年前に「追記2」を書いてUPするのを忘れていました・・・。
2008/11/13

(追記3)

6年ぶりの追記。
もうそれほど興味がなかったのか、特に触れませんでしたが、安達祐実さん、2009年の1月8日に離婚しました・・・。結婚期間は3年と2か月でした。離婚してからもう2年5か月近く経ちますが、今頃思い出したので、追記しておきます。
2011/5/30


◆ことばの話124「首相の動向」

あまり、読まないかもしれませんが、新聞の2面か3面の下の方に1段だけの小さな記事が載っているのをご存知でしょうか?首相の一日の動向を事細かに記したものです。

○時△分××ホテル、日経連会長と会食、○時○分△△会館、◇県議会議長陳情・・・などなど。本当に分刻みのハード・スケジュールで、総理大臣も大変だなあ、体力勝負だなあと思ってしまいます。

その記事で、先週の土曜日(5月20日)森首相が大阪に来ていた時の動きを初めて知りました。

午前10時17分羽田空港。18分皇太子ご夫妻ら。45分天皇・皇后両陛下訪欧の見送り。

なるほど、天皇皇后両陛下のヨーロッパご訪問の見送りも仕事の一つなのだな。大変だ。

午後1時9分関西空港着。2時8分大阪市中央区のツイン21MIDタワー。

おっ、読売テレビのすぐ近くまで来ていたのか。

タワー内のHクリニックで歯の治療。3時52分大阪市北区堂島浜のクラブ関西。都市再生推進懇談会であいさつ・・・

ちょっと待った!12年前に「たんつぼ」よばわりした大阪にわざわざ来て、歯医者に行くとはどういうこと?忙中閑有りなのか?それとも急に歯が痛くなって、近くの歯医者の飛び込んだってこと?かかりつけの歯医者は、東京か地元の金沢にあるんじゃないの?なんで大阪の歯医者?しかも移動時間を差し引いても、1時間半はこのHクリニックで過ごしています。

ここでハタと思い出しました。このHクリニックの先生が、以前選挙に出た事を。

フーン、なんともきな臭い。衆院選投票日と言われる6月25日まで、あと1ヶ月。

歯の治療の影に、なにやら臭いますな・・・考え過ぎかな。

けどこんなことを考えるだけでも、新聞って結構楽しめますよね。

ちなみにこのあと森首相は、歯も良くなったようで、中央区高麗橋の「吉兆」で、関経連のメンバーと中山建設大臣、それに太田房江・大阪府知事らと共に夕食を召し上がったあと、淡路島の花博会場のホテルへと移動して、長い一日は終了しています。

総理大臣という公人の動向は、このように“情報公開”されている(?)のです。

2000/5/23


◆ことばの話123「圧敗」

大相撲夏場所は、魁皇の初優勝で幕を閉じましたが、13日目の結果の新聞(毎日新聞)を見ていて、「あれっ!?」と思いました。横綱・貴乃花が大関・千代大海に寄り倒しで敗れて2敗目を喫し、優勝戦線から離脱したのです。その見出しが

「貴花、圧敗」

本文の中では「完敗」となっているのですが、見出しは「圧敗」です。

「圧勝」は聞いた事がありますが、「圧敗」は初めて目にしました。「あっぱい」と読むので性根?辞書をひいても出ていません。意味は「圧倒的に敗れた」ということでしょうが、相手が圧勝した時に、負けた方を主語にするとこうなるのでしょうか?

サーチエンジンの「インフォシーク」で「圧敗」を検索すると、なんと167件も出てきました。タイトルをざっと見てみると、競馬やプロレスに関するサイトが多いようです。

「寄り倒し」という決め手だったので「圧」という字を使いたかったのかもしれませんが、口に出して呼んでみると、あまり響きの良くないコトバです。

今後、どういった分野で使われるのか注目したいと思いますが、6月に予定されている、衆議院選挙で、出てきたりして・・・。

2000/5/23


◆ことばの話122「大手銀行」

東京都で導入された外形標準課税を、大阪府でも導入したらどうかということで、いま、大阪府議会でその是非についての論議が行われています。そんな中で、昨日(5月22日)、大阪銀行協会会長の室町・三和銀行頭取が議会で意見を述べました。

それに関するニュースで、外形標準課税は「大手銀行」に課せられるもの、という説明がありました。

この「大手銀行」のアクセントについて、「おおてぎんこう(HLLLHHH)」なのか「おおてぎんこう(LHHHLLL)」なのか、アナウンサーの中で話題になりました。

意味を考えると「大手の銀行」なので、二つに区切った最初の読み方の方が適切で、あとのコンパウンドした読み方だと「住友銀行」や「さくら銀行」のように固有名詞っぽく聞こえてしまうのではないか、というのが私の主張ですが、実際は、二つ目のコンパウンドした読み方をする人が多いようです。

意味の上から分けると言っても、たとえば「中小の企業」の意味である「中小企業」は、「ちゅうしょう・きぎょう(HLLL・HLL)」(Hは高く、Lは低く発音します)とはならずにコンパウンドして「ちゅうしょう・きぎょう(LHHH・HLL)」となっているのが現実ですし。

同じように問題になったアクセントでは、例の西鉄バスの乗っ取り事件で出てきた「九州自動車道」のアクセント。「きゅうしゅう・じどうしゃどう(HLLL・LHHHLL)とするのか「きゅうしゅうじどうしゃどう(LHHH・HHHHLL)」と一息にコンパウンドさせるのか、と言う問題。アナウンス部内では、聞いたアナウンサー全員が、最初の「きゅうしゅう・じどうしゃどう(HLLL・LHHHLL)」でしたが、当日の東京の局のアナウンサー(ニュース・ステーションの渡辺真理キャスターとNHKの22時のニュースの堀尾キャスター)は、後ろの方の、コンパウンドさせた「きゅうしゅうじどうしゃどう(LHHHHHHHLL)」と読んでいました。

これに関連しては、「阪神高速道路公団」もあります。「阪神」で切って、「はんしん・こうそくどうろこうだん(HLLL・LHHHHHHHLLL)」なのか、一気にコンパウンドして「はんしんこうそくどうろこうだん(LHHH・HHHH・HHHHLLL)なのか、はたまた「阪神高速」で切って「はんしんこうそく・どうろこうだん(LHHH・HLLL・LHHHLLL)」なのか。はっきり言ってバラバラになっていると思います。

こういった問題は、「道路交通法違反」「殺人未遂」といった法律関係の言葉でも見られます。「複合語のコンパウンド」は、複合する二つの語の結びつきがどれぐらい強いかによって、コンパウンドするかしないかが決まりますが、「結びつきの度合い」は、その言葉を使う人にとっての使用頻度によって決定されます。つまり、統一的な基準は、あってないようなものです。それだからこそ、難しいんですよね。

2000/5/23


◆ことばの話121「W=ダブル」

毎日新聞「校閲インサイド」というコラムがあります。

そこに「なぜ、ダブルベッドをWベッド、ダブルヘッダーをWヘッダー、ダブル・チャンスをWチャンスというふうな書き方をするのか?ダブルはDOUBLEであり、略するのであれば“W”ではなく“D”ではないか?」という読者からの疑問が記されていました。校閲担当記者も「うーん」とうなってしまい「どなたか、ご存知の方は教えて下さい。」と結んでありました。

よし、調べてやろうじゃないかと、福井大学の岡島昭浩助教授が主催するインターネットの掲示板「ことば会議室」にその疑問を書き込みました。

すると、いろんな方から回答が寄せられました。

「Wはもともと、ダブル・ユーでUが二つ重なった形。そのダブルと言う意味をWに重ねあわせたのではないか?」とか「“ジーンズ(=ジーパン)”も“JEANS”なのに“Gパン”というではないか。“ホワイト・シャツ(White Shirts)”も“ワイシャツ”になってさらに“Yシャツ”になっている。それと同じでは?」と言った意見もありました。

(ただしGパンはGIパンツの略から来たと言う説もあるとのこと。)

そして岡島先生は、参考文献として読売新聞社から出版されている「東京ことば」という本を紹介して下さいました。なんと、その本は既に1年ほど前に読んでいたのに、「W」の部分はまったくノーチェックでした。

その「東京ことば」によると、「Wる(だぶる)」というふうな使い方は、なんと昭和初期に、あのノーベル文学賞作家・若き日の川端康成が、初めて手を染めた映画のシナリオの中で使っているそうです。また「ダブる」という日本語は、「角川外来語辞典」によると明治時代からあるそうです。漫才コンビには「Wけんじ」や「Wコント」という名前もあります。

インターネットで「W」「ダブル」を検索した所、1987年のアメリカ映画で、邦題が「W/ダブル」(発売元・東北新社)というのも見つかりました。聞いた事もない映画だけど。

国立国語研究所の研究員の尾崎さんという方にもメールで問い合わせてみました。すると、「日本人の耳にはWのダブリューがダブルと聞こえたのではないか。」ということでした。

また、知り合いのイギリス人、アメリカ人、中国人にも聞いてみましたが、「(Wチャンスのような)そんな表記の使い方はしない」ということでしたから、おそらく日本固有の使い方なんでしょう。

結局、結論は出なかったのですが、やはり国立国語研究所の尾崎さんが言うように、日本人には「W」の「ダブル・ユー」=「ダブリュー」の「リュー」という拗音を含んだ音が耳慣れなかったので、「ル」に置き換わってしまい、その結果「DOUBLE」=「ダブル」と音の上でイコールになってしまった。そこで、「DOUBLE」=「ダブル」の意味の所に、逆もまた真なりと言うことで「W」を置いてしまい、結果として「ダブル・チャンス」=「Wチャンス」という表記が出てきたのではないか、という推測までにとどまっています。

「ダブる」という外来語から派生した動詞もまた、興味のある所です。

2000/5/23
(追記)

2007年11月15日に徳島で開かれた新聞用語懇談会秋季合同総会で、大分合同新聞の委員から、
「『W』と書いて『ダブル』と読ませるやり方は、是か非か?」
という質問が出たので、会議の後で、
「以前、それについては書いたことがある」
とお話をしました。
それからちょっと「W=ダブル」の使用例について気をつけていたら、いくつか見つけました。パナソニック(松下電器)のテレビ、『ビエラ』の「携帯電話ワンセグ」のCMで、
「Wオープン」
と表記されていて「ダブルオープン」と言っていました。なんだか2段階に開くみたいです。また、『週刊文春』で連載されている村上由佳さんの小説のタイトルが、
「W/F」
と書いて、
「ダブル・ファンタジー」
とルビ?が振られています。これについてもお知らせしました。
大分合同新聞としては「W」ではなく「ダブル」でいこうと考えているとのことでした。
2007/11/29

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