◆ことばの話・祝!100「気になるコトバたち2」

この「ことばの話」もおかげさまで100回目を迎えることが出来ました。

去年(1999年)の7月から約8ヶ月で100回と言うことは、4日に1回ぐらいのペースで書いていることになりますね。

今回は、このところ気になるコトバを集めてみました。



* 「問題を質しました。」

先日、読売テレビのアナウンサー試験がありましたが、その中で出てきたこの「質しました」という漢字を読めた学生さんは1300人中10人もいませんでした。みんな「しっしました」と読んでいました。正しくはもちろん「ただしました」ですが。確かに、学生生活の中で「質す」ことなんかないものなぁと思っていたら、「今日の出来事」のサブキャスターの男性アナウンサーも「しっしました」と読んでいました。



* 「超マヨラー妻」

なんでもマヨネーズで味付けしてしまうマヨネーズ好きの奥さんの話題。

シャネルが好きな人を「シャネラー」、飯島直子さんにあこがれて飯島さんのような格好をする人を「ナオラー」などは聞いたことがありますが、「マヨラー」は初耳です。

「度を過ぎて熱中する(好きな)対象物○○の最初の二文字」プラス「ラー」で

「○○ラー」となって、「○○がとっても好きな人」という意味になるようですね。



* 「持ち運びできる小型パソコン」

NHKのニュースで最初聞いた時、「うん?それはもしかして、ノート型パソコンのことかな?」と思い、数秒後に「ノートパソコンやがな!」と思い当たりました。言いかえることでよけい分かり難くなっている例だと思います。



* 「英文の文章で書かれ・・・」

それも言うなら「英語の文章で書かれ・・・」もしくは、もっとすっきり「英文で書かれ・・・」でしょうね、やっぱり。



* 「ソフト店に強盗」

15年前なら、これは「ソフトクリームを売る店」に強盗が入ったことを表わしていたでしょうが、現在は言うまでもなく、「ゲームソフトやコンピューターソフトを販売する店」のことです。



* 「たまみが、かざれば・・・」

国会での扇千景さんの発言です。・・・切る所を間違えましたね。もちろんこれは「たま、みがかざれば」が正解です。同じ文章でも切る所が違うと、こんなに印象が違うんですね。勉強になりました。



* 「故・鶴岡一人さんが亡くなられました」

オープン戦の中継の中で。それでは2度死んでしまうことになります。

「007は2度死ぬ」という映画はありましたが。



* 「大豊や広沢といった“つよ打者”が・・・」

別のオープン戦中継で。もちろん「強打者」と書いて「きょうだしゃ」。

言うまでもありません。思い込んでたんでしょうね、生まれてからずっと。

・・・「つよだしゃ」。



今回はこんなところです。

2000/3/13


◆ことばの話99「クオリティ・バンク」

昼食を、京橋界隈で摂った後、ぶらりと入った喫茶店。

その2階の窓から目に入った看板の文字が「クオリティ・バンク」。

実際は、英語で「QUARITY BANK」だったんですが。

次々と銀行が破綻している昨今、宣伝文句に「クオリティ」を謳う銀行があって当然、と思ってよく見ると、そのあとにまだ字が続いていました、「森田屋」と。つまり、



「クオリティ・バンク森田屋」



「信金バンク」と言うのは聞いたことがあるが、「クオリティ・バンク森田屋」は初耳、いやいや初目目(はつめめ?)です。

しばらく考えて分かりました。「そうか、質屋なんだ!」

なるほど、「質」を英訳すると、「クオリティ」。これぞ直訳!です。

質屋と言うと、大阪では「ひち」と書かれた看板が定番だったんですが、国際化の波はここんなところまで来ているんですかねえ!?

昔は「一六銀行」とも呼ばれた「質屋」も時代とともに変わってきているようです。

2000/3/10

(追記)

ふと、思いついたのですが、「質屋」だけに「シチー(質)・バンク」という愛称もいいかもしれませんね。

2000/4/26


◆ことばの話98「誠に残念ですが・・・」

またまた病院の不祥事です。今度は大阪赤十字病院。

前立腺ガンで入院していた63歳の男性患者に、通常の8倍もの抗がん剤を点滴して、

副作用でこの男性を死亡させたと言うのです。

主治医が研修医で、他の抗がん剤と種類を間違えて8倍もの量を点滴するよう看護婦に指示したのが原因で、さらに病院側は「故意に死亡させたのではないので、警察には届け出なかった」というのです。なにか言わんや、です。

しかも、コトがバレて開かれた記者会見で、院長と思しき責任者のコトバは「誠に残念ですが・・・」でした。

これはいかんのじゃないか!

まず、「誠に申し訳ございません。」と謝罪の言葉があるべきではないでしょうか。

「誠に残念ですが・・・」と言うコトバは第三者が言うコトバです。当事者が言うべきコトバではありません。当事者がまず行うべきは、この場合間違いなく「謝罪」です。それ以外にありえません。

「誠に残念ですが・・・」と言ってる間は、また同じ事を繰り返すと思います。

そしてまた、同じセリフを繰り返すのでしょう、

「誠に残念ですが・・・(またやってしまいました)。」

2000/3/10


◆ことばの話97「いいかもしんな〜い」

有馬の温泉K閣のコマーシャルに出てくる若い女の子が、温泉に浸かりながらつぶやくコトバが、この「いいかもしんな〜い」です。

「おのれは、自分にとっていいかどうかもわからへんのか!?」と、腹立たしく感じるのは私だけでしょうか?

このコトバの後半部分が省略された形の「嬉しいかも・・・」というのも聞いたことがあります。彼女は、デパートの割引券をもらった際にこう漏らしたのですが、これも「嬉しいかどうかもわからんのかっ!?」と喝を入れたくなります。

しかし、本人曰く「そのデパートにはあまり行かないので、もし行って割引券を使えれば嬉しいが、もし行かなくて使わなければ、別に嬉しくない。行くか行かないかは今の時点では分からないので、“嬉しさも中くらいなり・・・”という表現になった」

うーん、そうか、確かにそうかもしれないが、それは心のうちに収めておくべきじゃないのかな?割引券をあげた本人の前で、そういう本音を言うのはどうかなあ。

そういえば去年、自動車のコマーシャルで「こするカモ・・・」というのがありましたが、

この「カモ」は正しい使い方なので、まあいいのではないかと思います。

と、思っていたら今日(3月7日)、大阪市営地下鉄の駅に張ってあった、整列乗車を促すポスターに「みんなが並ぶと気持ちいいカモ」というセリフが。

不確実性の時代、「カモ」がはやるの「カモ」しれませんね。

2000/3/7


◆ことばの話96「字消し」

「大阪ほんわかテレビ」に出演している森たけしアナウンサー。私の1年先輩なんですが、取材先でこんなことがあったと、話してくれました。



「プラスティック消しゴムで、青いカバーのついた“レーダー(Radar)”ってやつ、

あるじゃない。あそこの会社は、大阪の都島区にあるんだね。昨日取材に行ってきたんだけど、全国シェアのかなりの部分を占めているらしいよ。

ところで、あそこの会社じゃ、“消しゴム”って言わないんだね。

“字消し”っていうんだよ。“プラスティック字消し”。

材料がゴムじゃなくてプラスティックだから、消しゴムじゃないんだってさ。けど、だれも“字消し”なんて言わへんわなァ。聞いたことない。」




なるほど、筋が通っています。ゴムでできてないんですから。

まあ、靴しか入ってなくても「下駄箱」、ボールペンやシャープペンしか入ってなくても「筆箱」てな例もありますが。

東京出身の森さんが聞いたことがないと言う“字消し”、私は昔、聞いた覚えがありました。また、京都出身の小城アナウンス部長も「言うた、言うた」と言ってました。

大阪弁かな?とおもって、牧村史陽編「大阪ことば事典」を引いてみると、ありました、ありました。「字消し」・・・字消しゴム。ゴムケシ。と載ってました。

“ゴムケシ”も聞いたことあるなあ。

これもきっと「気付かない大阪弁」の一つなんでしょうね。

今日は“字消し”、覚えて帰って下さいよ。

2000/2/29

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