◆ことばの話90「113センチ」

2月も、もう下旬。春の兆しが、時々感じられる気がしますが、それにしても寒い。

近畿各地でも雪が積もっています。

その雪の深さ=積雪量の表わし方について、坂アナウンサーから質問を受けました。



「1メートル以上積もった時、113センチですかね?それとも1メートル13センチですかね?」



もちろんどちらも正解なのですが、坂アナウンサーが言っているのは「どちらが、一般の視聴者が聞いた時に分かりやすいか」と言うことなのです。

気象情報やニュースではこれまで「113センチ」というふうにセンチだけで表わしています。琵琶湖の水位も「マイナス103センチ」と言っています。

しかし、普段の生活では、長さを表わすには「1メートル13センチ」と言いますよね。

また身長は「1メートル70センチ」とも言いますが、「170センチ」と言う事の方が多いのではないでしょうか。

ここから考えると、「長さ」と「高さ(深さ)」で使い方が分かれているような気がします。つまり、「長さ」には「○メートル○○センチ」、「高さ(深さ)には○○○センチ」を使うのではないでしょうか。ただ「○○センチ」の方が「気象学術用語」っぽく感じますね。建築関係の設計図面などは「ミリ」を使うそうですし、細かい単位の方が専門家らしいのかな?

もちろん2メートル以上になると、高さ(深さ)でも(「センチ」だけの使用はしなくて)「メートル」も併用するような気がしますが。建物の高さとか、棒高跳びのバーの高さ

とか。1メートルから2メートル(100センチから200センチ)の間が一番難しそう。

ところで「1メートル13センチ」というより「113センチ」と言った方が、大きく感じますよね。

これと同じようなことは、「タウリン1000ミリグラム配合!」というコマーシャルでも感じます。あれは、「タウリン1グラム配合」といっても内容は同じだけれど、

「1000ミリグラム」の方が、効きそうな感じがするでしょ?

結局は、各々が持つ感覚に委ねられることになると思うのですが。

あなたは「1メートル13センチ派」ですか?それとも「113センチ派」?

2000/2/25


◆ことばの話89「税抜き794円」

ある朝、歩道脇の電柱に立てかけられた一枚の看板に、目が引きつけられました。

“恋のからさわぎ・ワクワクスペシャル”

という文字の下に、あやしい格好をしたお姉さんがやさしく微笑んだ写真があります。

世の男性が、夜にお酒を飲みに行くお店の宣伝のようです。

お姉さんお写真の下に、料金が書いてありました。

“最初の30分、税抜き794円!”

・・・あまりこの手の店は行ったことがないので分からないのですが、これは安すぎるのではないでしょうか?しかも、800円とか1000円とかぴったりの額ではなくて、あまりに中途半端な794円という端数のある金額。

そうか、税抜きと書いてあるので、税込みにすると、きっとぴったりの金額になるのかな?と思って、794円に消費税5%を乗せて計算しました。

すると・・・・834円。思いっきり、中途半端です。

ここで、はたと気付きました。

「そうか、これは警告文なのだ。794円を語呂合わせで読むと

“泣くよ”そして、税込みの値段の834円は、

“破産よ”あるいは“ヤーサンよ”ではないか!」

この料金は最初の30分とありますが、30分以上店にいることなど、きっとできない

システムになっているのでしょう。

うーん、それにしてもこれだけ親切に警告してくれている店も他にないのではないでしょうか。なかなか遊び心のあるお店ですね。しかしこのお店に行く勇気は、私にはありません。

2000/2/25


◆ことばの話88「口ごたえ」

ある日のお昼前、おもちゃの兵隊の行進曲のメロディーに乗せてかわいいお人形さんが出てくる、某局の某料理番組を見ていた時のこと。

女性の料理の先生が、こう言いました。



「このほうが、“口ごたえ”があって・・・」



えっ!

料理がしゃべるんでっか!?

思わず、画面に向かって突っ込みを入れました。



「それも言うなら、“歯ごたえ”とちゃうんか?」




・・・“口ごたえ”したのは、料理ではなく、テレビを見ていた私でしたとさ。

お・し・まい。

2000/2/23

(追記)

念のため辞書を引いてみましたが、「口ごたえ」にそういう意味(歯ごたえと同じような意味)はありませんでした。

また、口に入れた時の感触を表わす言葉としては、「口あたり」「口ざわり」がありました。「口ざわり」は、あまり耳にしたことはありませんが。

2000/2/23


◆ことばの話87「毛利さんの日本語」

スペースシャトル・エンデバーで12日間の宇宙飛行を終えた毛利衛さんが無事、地球に帰還しました。

ところで、その毛利さんが宇宙から、小渕首相と中継でしゃべっていた時の言葉使いが、気になりました。



「リンゴを 皮が 宇宙でむくとどうなるか、・・・」

「これは 初めての 世界の 実験ですから・・・」

ともに、しゃべっている途中に「皮が」「世界の」というコトバを挿入したことで、変な文章になっています。この二つの言葉を取ってしまえば

「リンゴを 宇宙でむくと、どうなるか・・・」

「これは 初めての 実験ですから・・・」


となり、別におかしくないですよね。初めはそういうつもりだった毛利さん、途中で「あっ、これも言っとかなくちゃ、正確でないな」と科学者らしく思ったんでしょう。

しかし、結果として日本語としてはおかしなことになってしまいました。

もし、正しく二つの言葉を入れるなら



「リンゴの皮を宇宙でむくとどうなるか・・・」

「これは世界で初めての実験ですから・・・」




となるはずです。

宇宙空間の無重力が、脳の言語野に与える影響についても、一緒に研究してきてもらったら良かったんですが・・・。

2000/2/23


◆ことばの話86「EコマースとIT」

このところよく目にする言葉に「Eコマース」があります。日本語では「電子商取引」。

去年の年末に「1999年に流行ったローマ字は小文字のi」とこのコラムで書きましたが、そういう意味では、2000年になって2ヶ月、今流行っているのは、「E」ですかね。

すっかりおなじみになった「E-mail」も「E」が入ってますしね。(もっとも「e-mail」と「e」が小文字で書かれることの方が多いように感じますが。発音する時は単なる「メール」です。)

しかし、この「Eコマース」という言葉を耳にするたびに、関西人としては、



「いてこます」

「なにしてこます」




というふうな関西弁に聞こえてしまうのですけど。

これは関西人特有の現象でしょうか?それとも私だけ?

・・・困ったことです。

もうひとつ、よく目にするローマ字が「IT」の二文字。

日経新聞なんかは、今日も一面の見出しにバーンと出ています。「I T革命」なんてコトバも、経済誌はもちろんのこと週刊誌にもよく出てきますよね。その割には浸透していないように思うのですが。

「I T」が何の略かと言うと、「Information Technology」の略。日本語では「情報技術」です。別に「I T」なんて言わなくても「インフォメーション・テクノロジー」とそのまま言うか、「情報技術」と言った方が、よくわかると思うのは、私だけでしょうか。

少し前に、CI=Corporate Identity(企業の自己同一性?でしたっけ。要は会社のロゴマークや名前を変えたりしたヤツですよね。)というのが流行りましたが、それと似ているような気がします。そう言えば、「I D野球」というのもありました。

ともにこの言葉を使うとカッコよく聞こえますし、「よくわからないが、新しい、良いことらしい」というイメージで相手を煙に巻くことができる便利なコトバ、と言えるでしょう。何の前置きもなく、ローマ字の頭文字を並べた、こういったコトバを連発する輩には要注意、とだけ、言っておきましょう。

2000/2/18

(追記)

一橋大学の学生20数人が、ケータイメールを使ってカンニングをしたことが発覚しました。その試験(授業)の講座名は、なんと「eコマース総論」。まさに「eコマース」のテクニックを使って自らの利益を得ようとしたのでしょうが、汚いやり方は、ビジネス上も×なのは、言うまでもありませんね。一橋大の先輩の石原慎太郎や田中康夫の感想を聞きたいところです。

2000/12/10

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