◆ことばの話80「早口CM2」

以前「ことばの話33」でご紹介した、トヨタのファンカーゴの早口CM。その第2弾が今、オンエアーされていますね。ようやくビデオに録って、何を言っているのかわかりました。今度は30秒CMです。(短縮版の15秒のもありますが。)

まず、頭に2秒間

“What do you do?”

という文字とナレーションが入った後、

「見つけました、ファンカーゴ。結構広いね、たくさん詰めるね。

これが床下ガッチャンね。こんな所に隠れているのね、リアシート。

何だか気になるファンカーゴってこの名前。

人なら天画5画、つまり包容力のある5人乗り

地画7画だから、曲がったことが嫌いなウォークスルー

総画12画ってことは、大器晩成

約2平米の広々空間

買う、買わない?買ったら有名占い師

黙って座ればピタリと当たる

風水、星占い、四柱推命、タロット占い、おみくじ、あみだ社長に首相に大統領、乗り降り簡単、 ファンカーゴに乗って、みんなの相談のってま〜す

いいよね、どこで何をしても 私の勝手でしょ。」


までを21秒で、307拍叩き込みます。1秒間に換算すると14.3拍入っています。ここまで合計23秒。残りの7秒は、

「君なら何する携帯空間ファン・カー・ゴ!」

「Drive Your Dream ,TOYOTA」


というナレーションが入ります。

試しにやってみましたが、21秒の部分だけ読むのに26秒かかりました。

前回よりも厳しいです。長い分、息が続かないからかな。

本物のCMでは、編集してつないでいるのでしょうが。

しかし今回は、前回ほどインパクトはない気がします。やはり柳の下のドジョウは、そう何匹もいないということかな。

また、最後の「いいよね、どこで何をしても・・・」のフレーズも、以前の私たちの勝手でしょ」という複数形からの勝手でしょ」という単数形になって、より「個人主義」が徹底したような感じがするのですが。以前ほど反感を持たなくて済むのは、やはり慣れでしょうか?

インパクト(刺激)の強いものほど、飽きるのも早い。

これは肝に銘じておく必要があります。

2000/2/15


◆ことばの話79「気になることばたち1」

毎日毎日テレビや新聞に接していると、いろいろ気になる「ことばたち」が出てきます。

ひとつひとつ取り上げて考察を加える時間的余裕が、このところないので、とりあえず気になった表現を、永六輔さんの「大往生」風に書き記してみます。



*司会者「岡崎さんは(宮崎学氏に)接触したことはありますか?」

岡崎氏「いえ、具体的には、ありません。」


(フジテレビ・午前中のワイドショーで、グリコ・森永事件の時効迫るという話題で。)

〜「接触したことがある」というのは、普通は「会ったことがありますか?」というべきでしょう。また、「具体的にはありません」というのは一体どういう事?抽象的には会ったことがあるのでしょうか?



* 「○○に再考を促しました」

(NHKのお昼のニュースで)

〜字を見ると、別に問題はないのですが、音だけで聞くと「最高を促しました」とも聞こえ、F永H源のようです。足の裏の診断をしたりするのでしょうか?



* 「山沿いの多い所では、40センチ・・・」

(NNN24の天気予報で)

〜寒いので雪が降る、という文章なんですが、切る所が違うんです。

本来なら「山沿いの、多い所では40センチの雪が降る」となるべきところを、「山沿いの」と「多い所では」をくっつけて読んじゃうから「山沿いの多い所」となって「山沿いが多い所って、一体どこ?」というふうにおかしくなるのです。「山沿いなど、積雪が多くなる所では」とすれば、まだ救われる気もします。文章もよくないですが、そこを読みのテクニックで・・・と期待するのは、土台無理なのでしょうか。

とりあえず、今回はこんなところで。

2000/2/15


◆ことばの話78「打音検査」

昨年の流行語大賞にこそ選ばれなかった(と思いますが)ものの、間違いなく、よく出てきた言葉の一つに「打音検査」があります。

JR西日本は、トンネルでのコンクリート剥落・落下事故が相次いだことで、コンクリートの劣化の度合いの調査を、大々的に行いました。その際にやっていたのが、コンクリートの壁をハンマーで叩いて、その音の具合で劣化の程度を推定する「打音検査」でした。

最新のハイテクに支えられているはずの新幹線が通過するトンネルの検査が、なんと「ローテク」で行われているのか・・と思われた方も多かったのではないでしょうか。

すっかり慣れてしまったことばですが、良く思い出すと、それまではあまり耳にすることのなかった、専門用語ですよね。広辞苑をひいても、載っていません。

その言葉が、おととい関西国際空港の沖合いで強風のため小型タンカーが転覆、3人が行方不明になっている事故の救助活動を伝えるニュースの中で、また出てきました。

転覆したタンカーの船底をハンマーで叩く「打音検査」をしたところ、中から反応があったというのです。結局、翌日には「中からの反応は、浮遊物が当たった音」と判断されてしまいましたが・・・。

物を叩くことによって安全を確かめるという、原始的でアナログ的・ローテクによる手法が、案外21世紀のハイテク社会において、バーチャルではない本物の実感として、重要な位置を占めるかも、しれませんね。

2000/2/10


◆ことばの話77「キックボード」

東京・原宿で、去年11月、通行中の女性にぶつかってケガをさせた少年(17)が、

昨日(2月9日)道交法違反と重過失傷害の疑いで、書類送検されました。

この少年の乗っていたのが「キックボード」と呼ばれる乗り物。小さな車輪(コマ)が2つ付いたボード(スケートボード)にハンドルがついたもので、片方の足をボードに乗せ、もう片方の足で地面を蹴って進む乗り物です。時速十数キロと結構スピードが出るそうです。

これが遊具なのか、乗り物なのか、また道路交通法に触れるかどうか、検討されていたようですが、結局「ローラースケートと同じ、遊具にあたり、交通の頻繁な道路でローラースケートに類する行為はしてはならないという禁止事項に触れる」と判断されたそうです。

ところで問題は、この「キックボード」が、商品名だということ(アメリカK2社)と、事故を起こした遊具は、キックボードと同じタイプの遊具ではあるが、他の会社のものらしい、ということです。これは先日の新聞用語懇談会で話題にのぼり、「早急に、一般商品名としてどう呼ぶか考えなくては・・・」と言う話になっていました。

昨日の新聞は、ほぼ全紙が「キックボード」を見出しとして出していました。唯一、朝日新聞は、本文の中で「キックボード」と併記で「スティックボードなどと呼ばれる乗り物」と書いていましたが。

放送各社は、微妙な言い換えをしていました。

日本テレビ(2月5日・今日の出来事)では「ハンドル付きボード」、そしてNHK(2月9日・正午のニュース)では「キック・スケーター」でした。

また、共同通信は、一旦「キックボード」で配信した後「キックボードは商品名なので差し替えます」と注釈を付けた上で「ローラーボード」という名前を付けた記事を送ってきました。

新しいものが登場した時は、その名前の表現にも気を使うものです。

2000/2/10

(追記)

2000年3月に、キックボードの業界が「キックスケーター協会」という業界団体が設立されました。

これを受けて、TBSでは一般名詞として「キックスケーター」を採用したそうです。

NHKに先見の明ありというところでしょうか。

また、通販会社の「日本直販」では、テレビCMで同様の商品を「キックスクーター」と名づけて販売しているようです。

もう一つおまけに、25年ほど前に子ども達の間で大流行した、キックボードに良く似た遊具は「ローラースルーGOGO」というもので、こちらは車輪(コマ)が3つ付いていました。販売元は、なんとあのバイクの「ホンダ」だったそうです。ご参考までに。

2000/4/20


◆ことばの話76「歌う不動産王」

今日(2月9日)のワイドショーで、歌手の千昌夫さんが経営する不動産会社が、1034億円もの負債を抱えて事実上倒産したというニュースをやってました。

そのタイトルが

「歌う不動産王、倒産」。

なんとなく、イヤな感じ。

そういえばジャイアンツの桑田投手が不動産関係のトラブルを起こした時の“呼び名”も

「投げる不動産屋」

でした。

それじゃあ、キャッチャーが不動産業を始めると「受ける不動産屋」となり、バッターがやると「打つ不動産屋」、ボクサーがやると「殴る不動産屋」・・・ですかね?

ごっつい、物騒です。

それにしても(不動産屋さんの肩を持つ訳ではありませんが)「不動産屋」に対する偏見が、なんとなく臭うのですが・・・。

それはともかく、この呼称は、異なる二つの職業を手がけている人に対して与えられる(?)もので、その構成は「主に以前から行っている仕事(本業)を簡単な動詞で表わし、そのあとに、問題となっているもう一つの職業(副業)をくっつける」という形です。

しかも、簡単な動詞で表わせる「本業」は、たいてい「肉体労働」です。

もし、水泳選手が不動産業を手がければ「泳ぐ不動産屋」となるでしょうし、

アナウンサーが不動産業をやれば「しゃべる不動産屋」・・・わかりやすいですね。

このほかコメディアンが、マラソンをやれば「走るコメディアン」。

この場合、本業はどっちになるんでしょうか?

「本業」が動詞になるのではなく、動詞にしやすい職業の方が先につくだけなのかもしれません。

ごく普通の会社員が副業をやっても、こういった表現では言い表しにくいでしょうねえ。

「走るサラリーマン」では、遅刻しそうなのかな?とは思っても、マラソンと会社の二股とは思いませんし、

「しゃべるサラリーマン」だと、誰もアナウンサーと他の仕事との掛け持ちとは思いません。局アナもサラリーマンですし。

「泳ぐ地方公務員」・・・いいですよ、別に泳いでも、というふうに、なんかピタッと来ませんよね。

「空飛ぶビジネスマン」ぐらいだと、「ほう、忙しく、世界を股にかけて働いているのだなあ」とは思いますが、「本業と副業」という二つの仕事を表わしてはいません。

あっ、一つ似たような表現があったゾ!

「笑ウセールスマン」

これは、やっぱり違う、かな。

2000/2/9