◆ことばの話40「雅子さま、懐妊の兆候」
けさ(12、10)は、ビッグニュースが飛び込んできました。
「雅子さま、懐妊の兆候・近く詳細な検査」だというのです。朝日新聞のスクープ、一面トップの大見出しです。東京では昨日、号外が出たようです。
しかし、この朝日新聞の見出しには、違和感を覚えました。
なにか、ヘンです。
見出しの「雅子さま」を「トキ」に置き換えてもそのまま通用するような文体です。
ここで、ハタと気付きました。
「ご」がない!
そうです、「懐妊」の前に、普通なら「ご」をつけて「ご懐妊」というのではないでしょうか。その前が「雅子さま」と尊敬の「さま」が付いているのですから、「懐妊」にも「ご」をつけてしかるべきでしょう。まだ「雅子妃、懐妊の兆候」なら、漢語調ですっきりとしていて、それほど違和感はなかったかもしれませんが、「さま」と平仮名の尊称が付いて話し言葉調なのに「が」が付かないのは、やはりおかしい気がします。
その後の各テレビ局のワイドショーを見ていると、コメントはもちろん、字幕テロップも「ご懐妊」となってました。
あまりに過剰な敬語はうっとうしさを感じる事もありますが、今回は「ご」をつけるべきだったと思いますが、いかが?
1999/12/10
その後、新聞各紙の見出しを調べてみると、「懐妊」が朝日・毎日・日経の3紙、「ご懐妊」が読売・産経の2紙でした。
周囲の人といろいろ話をしてみると、「"懐妊"は受け身なので"ご"はつかなくて良いが、"出産"は能動的な行為なので、"ご出産"とする方が良い」だの、「下血にも"ご"がつかなかったので医学的な用語には"ご"はつかないのではないか」といった意見がありました。
テレビのニュースでは、わが読売テレビ・日本テレビ系列では、「ご」がつかない「懐妊」でした。「放送で使う言葉」という冊子を調べてみると、「過剰な敬語を避けるため、ワン・センテンスに敬語は一つ」と書いてありました。恐らくこの考え方に基づいて「懐妊」に「ご」はつけなかったのではないかと思われます。
三省堂の「新明解国語辞典」には「懐妊・・・妊娠の漢語的表現」と載っていました。
当分どちらを使うか迷いそうです。
1999/12/13
◆ことばの話39「味度」
先日、スーパーで買い物をしていた時、みかんが山積みされているのを見かけました。
子供の頃は、指先が黄色くなるまでいくつもいくつも食べていたみかんですが、最近は「皮を剥くのが面倒くさい」という理由で、あまり食べなくなっています。
子供の頃を思い出しながら、ふと、そのみかんの山を見るとは無しに見ていると、かごの前に「味度7度」「味度8度」などと書かれた上が置いてありました。
この「味度」と言う言葉、初めて見ました。「みど」と読むのでしょうか、それとも「あじど」と読むのでしょうか。広辞苑には、どちらも載っていません。
意味は「甘さの度合い」だと思うのですが、それなら「甘度」の方が的確じゃないのかなあと思いながらも、そのまま、みかんの山を離れてしまいました。
今度、スーパーの人に聞いてみたいと思っています。
1999/12/2
◆ことばの話38「トコロジおじさん」
先日、うちのチャンネルで「笑ってコラえて」(火曜・午後7時)という番組を、見るとはなしに見ていると、スタッフが日本全国をデジタルカメラ片手に渡り歩いて行くコーナーをやってました。その日は、瀬戸内海の小島・小豆島の池田町を訪れていたのですが、その中でスタッフが、通りすがりの町民に対して、番組のメイン司会者の名前を出して「所ジョージさんって知ってますか?」と聞いたのです。もちろん全国区の有名タレントですから、「知ってますよ」という答えが返ってくると思いきや、その人は「えっ?トコロジおじさん?」と聞き返すではありませんか!
原因は、スタッフが「所ジョージさん」と言った時のアクセントが「ところじょーじさん(LHHHLLLL)」というふうに「ころじょ」の部分を高く、他の部分を低く発音する、つまりコンパウンドして中高で発音されたため、小豆島のこの町民にとっては「トコロジおじさん」ときこえたのです。L(LOW)の部分を低く、H(HIGH)の部分を高く、実際に声に出して見るとよくわかります。
普通、「所ジョージさん」と言う場合は「ところじょーじさん(HLLHLLLL)」と、姓と名前の初めの音である「と」と「じょ」の部分が高くなる、頭高の発音になるのですが、よく使われる言葉に関してはコンパウンドが起きる事があります。スタッフにとっては「所ジョージさん」という言葉は、人の「姓と名前」ではなく、「一つの単語」だったのかも知れませんね。
1999/12/10
◆ことばの話37「あくまでも、スケルトン」
皆さん、今日は恥ずかしい話をしなければなりません。
(しなければならないこともないんだけど。)
・・・「思い込み」って、誰にでもありますよね。
私の場合、大学生になるまで思い込んでいたものの一つに「あくまでも」があります。
「あくまでも、方針を変えない」などと言われると、「そうか、心を鬼にしても、いや悪魔にしても方針は変えないんだな」と思っていたのです。
それが、
「飽くまでも」
だと知った時には、かなりショックを受けました。
つい最近まで、「ちょっと、おかしなあ」と感じながらも思い込んでいたものもあります。
「スケルトン」です。近頃良く耳にしますよね、スケルトンの時計とか、スケルトンのバッグとか。外側が透明で、中が見えるようになっているデザインの事です。その理解は合ってると言えば合ってたのですが。私は「スケルトン」のことをこう思っていたんです・・・。
「透けるとん」
・・・だって、意味だって合ってるし、見た目が透けてるんだもの!
本当は「ガイコツ、骨格」という意味なんですってね。えっ!?みんな知ってたの?
いやだなあ、隠してるなんて・・・もっと早く教えてよ!
1999/12/2
◆ことばの話36「文字列」
以前、パソコン関係で新しく日本語になった言葉として「文字化け」をあげましたが、
なんと去年11月に出た「広辞苑」第5版に、既に「文字化け」がちゃんと載っていました。辞書をひきもしないで「新しい言葉」と決めつけていた自分が恥ずかしい・・・。
いや、こういった失敗を踏まえつつ人間成長していくんです!と自分で自分を励ましつつ、「それなら、これでどうだ!」と取り上げるのが今回の「文字列」です。
これは、メールマガジンを紹介する「まぐまぐ」というメールの中で、次のように使われていました。
「日頃の生活の中で起きた面白い出来事を、短い文字列にギュッと凝集して送って下さい」
普通この「文字列」にあたる表現は「文章」だと、私は思うのです。まだこの「文字列」という言葉は「広辞苑」(第5版)には載っていません。確かめました。
「文章」というと文字そのものよりも、(文章の)中身に重点が置かれている気がしますが、「文字列」というと、内容よりも記号としての文字の単なる配列、と言った感じを受けます。パソコンで打ち出されるものは文章ではなく、単なる文字の並び・記号なのでしょうか。逆に言うと、文字列で表わされる文字は、字面ではなく内容そのものの方が重要だという考え方かもしれません。
また、「文章」を書くには約束事やテクニックが必要なため、練習・訓練が不可欠ですが、
文字を並べて内容を伝えるだけの「文字列」ならば、そういった約束事はないのかもしれません。ただ、キーボードに慣れるのに、幾ばくかの時間を費やす必要がありますが。
1999/12/2
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