◆ことばの話5「グローブとグラブ」

野球中継を見ていた視聴者の方から電話がかかってきました。

「今、アナウンサーはグローブと言っていたが、最近はグラブというのではないか!?」

野球担当のアナウンサーに聞いてみると、「確かに最近はグラブと言う」とのこと。

念のため辞書などを調べてみると「広辞苑」(第5版)と「日本語大辞典」は「グローブ」を見出しにして「グラブ」の欄には「グローブを見よ」と書いてありました。

少し古い(1978年版)の「新明解国語辞典」(第2版)には「グローブ」の項に「グラブの文字読み」とありました。また、日本新聞協会が発行している「新聞用語集」によると「グローブ、グラブ」両方載っていました。

外来語の表記に関しては1991年、海部内閣の時に出された内閣告示「外来語の表記」が一応の基準になりますが、これでは、「グローブ、グラブなど表記が揺れているものに関しては、どちらが良いとは定めない」となっています。つまり、どちらでも良いのですが、去年春に13年ぶりに改定された「NHK発音アクセント辞典」には「グラブ」しか採用していません。表記(書き言葉)は両方許されているものの、放送のことば(話し言葉)としては、「グラブ」に統一されつつあるのが現状と言えるでしょう。

しかし、いまだにボクシングで選手が手にはめるのは「(ボクシング)グローブ」であって、決して「(ボクシング)グラブ」ではありません。(スポーツ用品の「ミズノ」に電話で確認しました。)

いずれにせよ、外国語をカタカナにすること自体、ある程度無理があることで、絶対的に正しいものなどありえないのだなあと、改めて感じました。

1999/7/26


(追記)

うわあ、これって1999年7月にこのサイトを始めて5つ目のコラムなんだけど、いつ書いたか、日付がないぞ!
でも、とりあえずそれ以来およそ7年ぶりに「追記」です。
先月、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)日本代表の世界一!に触発されてか、小学3年生の息子が、
「グローブ買って!」
と再三、せがんできました。小学校に入る前におじいちゃんに買ってもらった赤いグローブが、もう小さくなってしまった、というのです。
グローブって何千円もしますから、小学生にとっては高嶺の花。高額・耐久消費財ですから、おいそれと買ってやっては子どものためにもよくない。
しかし、本当は「息子の最初のグローブ」は私が買ってやろうと密かに思っていたのに、おじいちゃんに先を越されて悔しかったこととがあったのと、息子の「いま、野球をしたい」というこの気持ちに応えてやらないと、その情熱が失せてしまうかもしれないという2つの気持ちから、
「よし、買ったる!!」
と、スポーツ用品店に行きました。並んでいるグローブを見ると・・・小学生にはもったいないぐらい、エエ値段です。しかし安物のエエ加減なものを買っては、あとで損をすると思い、一番皮が柔らかそうなものを購入しました。6000数百円。で、当然キャッチボールの相手には私が指名されるわけですから、私(わたし)用の、大人のグローブが必要になります。私も選んでいると息子が、
「お父さんも買うん!?」
「そりゃそうやろ、一人でキャッチボールはできへんやろ」
「素手でええやん!」
「アホか、素手やと、痛いやんか!」
という掛け合いがありました。こっちはそんなに立派なものでなくてもいいんだけど、いざ買うとなると、納得のいくコスト・パフォーマンスの高いものをと選んで、決めました。8700円。C級のボール500円を2個買うと、万札がヒラヒラ飛んで行きました・・・。
でも、よく考えたら、私が自分用のグローブを買ったのは、小学6年のお正月にお年玉で買った時以来、数えてみると32年ぶりの出来事だったのです!そう考えると、感無量。あの時は、カラー・グローブがはやり始めた頃で、茶色と黒の混じった渋めのグローブを買った覚えがあります。当時で5000円ぐらいしたかな。お年玉で奮発して買いました。一体どこに行ったのだろうか、あのグローブは・・・。
思い起こせば、私が最初に手にしたグローブは、小学1年生の時にサンタクロースにもらった(!)少年用の外野手用グローブ。当時は「SSK」とか「美津濃」とかのグローブをみんなが持っていたので、そういうのが欲しかったのですが、サンタさんがくれたのはローマ字の筆記体で、
「Rawligs」
とかなんとか、小学1年生には絶対に読めない文字が書かれていて、ちょっとガッカリしたものでした。その後「Rawligs」は、長嶋茂雄も使っていた「舶来の上等なグラブ」だと知ったのは、たぶん大学生になってからだったと思います。「ネコに小判」ならぬ、「小学生にローリングス」でした。
男ばかり三人兄弟だったこともあって、当時はSSKのピッチャー用グローブ、キャッチャー用ミットも買い足してもらって、我が家にはグローブが(ミットも入れて)3つあったのでした。それが引越しやら何やらの間に、捨てられてしまったのかなあ。
でもまた新しく2つのグローブが我が家に仲間入りしました。恐らく、小学生の間ぐらいしか、
「お父さん、キャッチボールして!」
なんて言われないでしょうから、あと3、4年の間だけですね、我が家で「フィールドオブ・ドリーム」が楽しめるのは。今のうちにできるだけ、子どもとキャッチボールをしておこうかなと思いました。これがプロ野球人気の回復に、何年か後には役立つかもしれないな、と信じつつ。(でも、本当はちょっと面倒くさいんですけどね。)
うーん、こう書いてくると、やっぱり「グラブ」じゃなくて「グローブ」の方が、愛着があるなあ・・・・。
2006/4/17


◆ことばの話4「最後になぜ「。」がついているのか」

7月から始まった水曜ヨル10時からの明石家さんま主演のドラマ「甘い生活。」

以前からこのタイトルの最後になぜ「。」がついているのかが気になってました。

最近では人気グループ「モーニング娘。」が、グループ名に「。」がついていて話題になりましたから、その真似をしたのかな?それとも、以前、他局が「人間失格」というドラマをやろうとしたら、太宰治の遺族からクレームがついたので「人間」と「失格」の間に「・」を入れて「人間・失格」としたことがありましたが、「甘い生活」もフェリーニの映画と同じタイトルなので、その辺を気遣って「。」をつけたのかな、などと思っていましたが、本当の理由はわかりません。

そこで、広報部の藤本さんに頼んで、日本テレビの担当者に聞いてもらいました。

翌日、返ってきた答えは考えていた二つの案のどちらでもなく、「甘い生活がずっと続くわけではなく、いつかは終わるよ、という意味」なんだそうです。

ふーん、なるほど。確かに、「モーニング娘。」もいつかは終わるだろうし・・・。

とりあえず、私の希望は「経済不況。」といったところでしょうか。

1999/7/22


◆ことばの話3「夏休みに入りました。」


今日7月19日は、各地の小中高等学校で一学期の終業式が行われました。

いよいよ夏休み!と言う訳ですが、ここで質問。「夏休みは何日から始まるのか?」
  1. 19日の終業式が終わった直後から
  2. 20日の海の記念日から
  3. 21日の水曜日から

なぜこんな事を言うかと言うと、今日のお昼のニュースで「今日終業式が行われ、いよいよ夏休みが始まりました。」という原稿が読まれたからです。これについて「今日は終業式で夏休みは明日からだから、いよいよ夏休みが始まります、の方が正しいのではないか」という意見が出ました。そこで、大阪府教育委員会に電話で聞いてみました。

すると、「学校管理運営規則によると、大阪府では7月21日から8月31日までが夏休み。だから正式には7月21日からが夏休みなのだが、実質20日も祝日で休みなので、20日からともいえる。」とのこと。「19日の終業式が終わればもう夏休みではないのですか?」という質問には「いえ、20日からですねえ。」と答えてくれました。

その回答を持って報道デスクにいったところ、「子供の気持ちとしては、終業式が終われば夏休み。うちはそれで行きましょう」との答えが。過去、4年間の終業式の原稿11件を調べてみますと、「○○(夏・冬・春)休みが始まりました。」が6回、「終業式が行われました。」が5回で、「○○休みが始まります。」という原稿は1回もありませんでした。

ということで、冒頭のクイズの正解は、法的には3番、実質的には2番。けれども、読売テレビの報道の原稿では1番と言うことになります。

1999/7/19


◆ことばの話2「のほう」


ファミリーレストランなどでよく聞くことば「お皿のほうを下げさせていただきます。」

「お会計はレジのほうでお願いします。」「お水のほうはよろしいですか?」

あなたは何も感じませんか?この文章の中にある「のほう」。なくても意味は十分通じます。ニューススクランブルの中で不定期でお送りしている「シリーズ・平成ことば事情」で、先日この「のほう」を取り上げました。

なぜ「のほう」と言ってしまうのか?言語学者の話によると、「のほう」をつけることで丁寧なことばになったと思っているのでは・・・とのこと。別に「絶対使ってはいけないことば」ではないんですが、乱用は避けたいことばです。

この放送が終わってしばらくして、会社の近くで昼食を食べていたら、付け合わせのキャベツの中に小さな虫の死骸が入っていました。店の人に言うと、すぐに店長が飛んできて「あのぉ・・虫のほうが入っていたそうで・・・」「のほう」はやめろっちゅうに!

1999/7/14


◆ことばの話1「超永久保存版」

報道フロアの机の上においてあった1冊の雑誌。

「HANAKO WEST新定番のお店462軒」という大きなタイトルの横に書いてある文字に目が止まった。「超永久保存版」!

「永久保存版」というのは見たことがあるが、「超永久」というのは初めて見た。永久を超えるというのは、一体どういうことなのか?何万年くらい保存すればいいのか?

早速、編集部に電話して聞いてみたところ、編集長が丁寧に教えてくれた。

「この雑誌は月刊誌なので、寿命は1か月と考えています。普通、この業界では永久保存版というと1年を想定しています。だから、超永久保存版は、1年以上・・ということですね。ええ、普通に使ってますよ。」とのこと。

「永久」はたったの1年なんだ・・・。雑誌よりも刹那的に、1分・1秒で番組を作っている放送業界に籍を置く者として、「超」考えさせられるコトバでした。

1999/4/15
(追記)

おお、なんと10年ぶりの更新です!現在、2009年3月24日。これを書いたのは20世紀だったのね。いまは21世紀。タイムマシンに乗っているような感じです。
それはさておき「永久」の話。
女優の藤原紀香さんとお笑い芸人の陣内智則さんが離婚届を提出して受理されていたことがわかりました。
2人は、おととし2007年2月に神戸の生田神社で結婚式を挙げ、4月に婚姻届を提出、5月に神戸のホテルで披露宴を行い、その模様は日本テレビ系で全国に中継されました。
その披露宴で話題になったことの一つに、新郎の陣内クンが一生懸命練習をして、決して上手とは言えないけれども心のこもった弾き語りでコブクロの名曲
『♪永遠にともに』
という曲を歌ったことでした。その後しばらく、カラオケや披露宴、でこの曲を歌う人が増えた(?)とも言われました。
で、あれから2年で、あっけなく破局・・・。私が思ったのは、
「永遠って、2年なの?」
ということ。雑誌の世界では「永久保存版」の「永久」が「1年以上」、芸能界では「永遠」が「2年」ということなのでしょうか・・・。
2009/3/24

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