ヘッダー Space『闘う楽しむマンション管理』
(水澤潤、文春新書:2008、9、20)
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私もマンションの管理組合の理事を都合4年やったことがあるが、まったくのボランティアで、しかも精神的負担は大きい。最初のマンションは中古だったので、理事の順番が回ってきてやったのだが、たまっているはずの大規模補修工事用の費用が、全然足りなかった。理由は、阪神大震災での補修費に、大規模補修工事用の費用を流用したため。一時金を集めることなく補修は出来たので、住民側としては「よかった」と思っていたが、その分、大規模補修費用が不足していた。
そもそも大規模補修にいくらカネがかかるのか?10年ほど前の前回補修工事の資料を探すが、なんと残っていない!これはダメだ!と長期補修工事の計画を立ち上げるとともに、1年交代だった理事を原則2年で半数改選にし、管理費の値上げまでを決定した。
新しいマンションに移った時も「最初が肝心!」と理事に立候補して、管理会社と戦いながら協力した。出来ればこんなことに時間を割きたくないが、これは他人(ひと)事ではなく、自分の資産であるマンションを守る行為なのだという意識でやった。
一戸建てならおそらく誰もがやるであろうことを、マンションなどの集合住宅だと、なぜかそういう意識がなくなり、「誰かがやってくれるだろう」と他人(ひと)任せになる。マンション住まいの人が増えたことで、何事も面倒なことは「他人任せ」になる傾向が加速したのかもしれない。
あれ?本の話が出てこないな。この著者のマンションは「寒冷地のリゾートマンション」という、ある意味「特殊」な物件なので、都市に「住居」として住むものにとっては、ちょっと身近には感じられない面もあるが、集合住宅に住む者の共通の悩みは、ここでも噴出していて、読み物としてはおもしろかった。また、
「現実の人間の社会には、必ず一定の割合で、罪の意識のカケラも持ち合わせていない人間が混ざっている。他人が担ぐおみこしにタダ乗りすることを、まるで頭がいいことの証明だと勘違いしているような連中」
という記述にも大きく「うんうん!」とうなずいてしまった。

★★★

(2008、10、13読了)
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