ヘッダー Space『南極1号伝説〜ダッチワイフからラブドールまで…特殊用途愛玩人形の戦後史』
(高月靖、、バジリコ:2008、4、26)
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意欲的な作品。タイトルにつられて購入。写真を見て、昔の空気人形のようなダッチワイフではなく、シリコン製で精密な「人間と見まごうばかり」の「ラブドール」と呼ばれるものになっていることん知った。この本、4月に購入してパラパラ見ただけでほうっておいた。それをまた読み出したのは、先週、ある事件の記事を読んでから。静岡県の伊豆で、女性の死体が見つかった・・・かと思ったら、実はまことに精巧な“人形”=「ラブドール」だったというB級事件。60歳の男性が「廃棄物処理法違反」で書類送検されたのだが、なぜこんなことを?というあたりの事情が泣かせる。
新聞(スポーツ新聞)によると、この男性、数年前に妻を亡くしてから一人暮らし。寂しさを紛らわせるために「ラブドール」を購入したが、元来、心臓が悪かったために息子と同居することになった。その際に息子から「これは何だ!?」と言われないために、ラブドールを捨てることを決意。寝袋に入れて運び出したのだが、元来、心臓が悪いので、あまり遠くまでは捨てに行けず、近くの別荘地の山林の脇に捨てたところ、散歩に来た59歳の女性が、寝袋から髪の毛がはみ出しているその物体を発見。警察に通報したところ「死体遺棄事件」として捜査が始まってしまった・・・・検視官が来る頃には、捜査官はもう、うすうす事態に気づいていたが、既にマスコミに「死体遺棄事件」として広報してしまったあとだったので・・・というようないろんな「オトナの事情」があったようである。
この本を読んで分かったのは、シリコン製(正しくはシリコーン製、とこの本にはちゃんとと書いてあるが)の人形は、シリコンの比重が「1、1」と水より重いため、人形自体が相当重いこと。また、裂けやすいことなど、見た目からは分からないことも書かれている。(また、身体障害者などの「性」にも、こういったラブドール業界は関連しているという話も出てきた。)そうだったのか、お父さん。そんな重いものを運んで、心臓悪いのに・・・。事件の概要が、よりリアルに迫ってきた一冊といえよう。

★★★★

(2008、9、21読了)
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