ヘッダー Space『金田一京介と日本語の近代』
(安田敏朗、平凡社新書:2008、8、12)
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「金田一」と言えば、いまでこそ「金田一少年」とか「金田一耕助」なんて名前がまず挙がって「名探偵」と結びつくかもしれないが、私の子供の頃は、「国語辞典の金田一京助」だった。大人になってから、その大半が「名義貸し」であったことを知るのだが、今も一般的にはそういうイメージを持っているのではないか。
文化勲章受賞者でもあり、その後、親子三代の国語学者の道を歩んだということからも、知名度は抜群である。金田一京助はアイヌ語の研究者でもあった。国語審議会の委員も務めた。
そんな偉大な金田一像が、本当に等身大の実像であるのか?そこに疑問を覚えた著者は、世間が抱く金田一像のベールを、一枚一枚はがしていく。そして現われたものは、現代日本語につながる基礎が、決して完全肯定はできない金田一の流れをそのまま汲んでいるという事実。
後半、標準語選定にかかわる部分を読んでいると、ふだん新聞用語懇談会で似たような活動をしている私には、少し耳が痛かった。しかし、では一体どうやって基準を決めていけばいいのか?という答えは、本書からは読み取れなかった。著者は去年、講談社から『国語審議会』という新書も出している。精力的に書いているなという感じ。私も購入したがまだ読んでいない。「積んどく」になっている間に一年が経ってしまいそうで、怖い。

★★★★

(2008、8、26読了)
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