ヘッダー Space 『半自叙伝 無名作家の日記 ほか四篇』
(菊池 寛、岩波文庫:2008、1、1)
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文藝春秋社を創設した菊池 寛の半自叙伝。現代仮名遣いに直してあるので読みやすかった。作家として世に出ようと、若くして考えていながら、なかなか出られないことへの煩悶などが読み取れて、ある意味「青春の書」とも言える。『週刊文春』の坪内祐三さんのコラムでの紹介を読んで、買って読む気になったが、よく考えたら『週刊文春』は菊池 寛が創設した会社の出版物だった・・・。
昭和3年の記述で、「今から20〜30年前の8円だから、現在の40〜50円に当たるのだろうが、8円だけでは家族6、7人、暮らせない。」などと具体的なものの値段などが書いてあるので、当時の物価を知る上で役に立つのではないかと思いました。
意味がよくわからないこともいくつかあったので、注釈をつけて欲しかった。たとえば「文壇のスワン・ソング」「matter Of factな人間であった」「千代紙映画」など。
また、「中学を出て上京した明治41年4月8日は大雪が降った年として、今でも多くの人に記憶されている年である。」などは、歴史として「明治41年の東京では、4月に大雪が降ったんだ」と感慨が深かった。(それほどでもないか。)
勉強になったことも、多々あった。「マイナス=万引き」「深川言葉=一つの音の下に、それと同じ段のカ行なり、ナ行なりの音を加えて話をする寸法で、『お前』と云うのを、『オコマカエケ』と云うの類」←これ、知ってるけど「深川言葉」と言うとは知らなかった。「ミソジニスト=女嫌い」。ふーん。
大変勉強になりました!


★★★★

(2008、3、9読了)

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