ヘッダー Space『座右の山本夏彦』
(嶋中 労、中公新書ラクレ:
2007、11、10)
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山本夏彦ファンってどのくらいいるのだろう?あまり若い人では、いないのだろうな。私も若い時には「なんや、このおっさん、不親切な文章書きやがって」と思っていた。ところがある時期から文章の味わいがわかるようになってきたら、これがおもしろい。おそらく木工社の若い人(女性)相手の対談(?)をまとめた文春新書を読んだあたりからだと思う。そうこうしているうちに「死んだ人」を自認していた本人は本当に死んでしまった。
しかし後に残された「言葉」は、人を魅了してやまない。その魅力に取り付かれ、「座右」の言葉としている著者は、そういった言葉の中から珠玉のものを編んだというわけだ。
改めて読むと、確かに以前読んだことがある言葉どもであるが改めて「なるほどなあ」「山本夏彦らしいな」と思わされた。帯に書かれた言葉を上げてみると、
「まねてまねてまねせよ」
「未熟な子供のなぜは なぜではない」
「男が助平なら女も助平に決まっている」
「理解はだから能力じゃない、願望なんだ」
私が選んだ金言をいくつかあげると、
「教育の普及は、浮薄の普及」
「ありていに言うと、私は民主主義という語が大きらいで、口に出して言うことも書くことも避けている。」
「話しあいという言葉を、私はきらいだというよりむしろ憎んでいる」
そのままストレートに受け取らないで下さい、ウラのウラの、そのまたウラの意味を取らないと、バカにされますよ。理性ある普通の人はこんなことを言わないでしょ。夏彦は「理性ある普通じゃない人=天才」だったのです。超エリート主義のようにも思えます。凡人がわかろうとしたり、マネをしたりするとヤケドを負います。
「私たちが何を考え何を言っても、古人を出ることはできない」
この本は夏彦、「没後5年特別企画」なんだそうです。


★★★★

(2007、11、22読了)

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