ヘッダー Space『ホタル帰る
〜特攻隊員の母トメと娘礼子』
(赤羽礼子・石井 宏、
草思社:2001、5、28第1刷・
2006、12、12第33刷)
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5月12日から公開されている映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』は、脚本・製作総指揮が石原慎太郎・東京都知事ということで話題になっているが、この映画の元になっているのが、この本だと言えよう。
映画の主演は、21世紀の裕次郎こと徳重 聡、窪塚洋介、筒井道隆、岸 恵子。監督は新城 卓。4月半ば、大阪・なんばでのこの映画の試写会での、新城監督、徳重さん、窪塚さんの舞台挨拶の司会を私が担当したのだが、それで興味を持ってこの本を読んだ。
たまたま3月末に、映画の舞台ともなった、特攻隊の基地があった鹿児島県の知覧にも行ってきたので、余計に興味が沸いて。
映画そのものは、思いに反して戦争賛美のものではなく、反戦映画だったと思う。同じように、知覧の特攻隊員のその後を描いた映画としては高倉 健・田中裕子主演の「ホタル」があるが、これも明らかに反戦映画であった。
この本のタイトルも映画「ホタル」のタイトルも、若い特攻隊員が、世話になった食堂のおかみさんに「死んだらホタルになって帰ってくるよ」といって旅立って行き、実際にホタルになって帰ってきたという実話による。
主人公は軍指定の食堂「富屋食堂」のおかみ・鳥浜トメ。その娘の赤羽礼子の話を、著者・石井 宏が書き残したもの。あとがきを読むと、鳥浜トメは晩年、マスコミを嫌ったそうだ。終戦後、手のひらを返したように特攻隊員たちを非難し、またその後に持ち上げるような報道をしたことに対して、また取材記者が自分の「台本」に沿った記事を、先入観や独断に基づいて書いたことに不信感を持ち、取材にも応じず、応じても適当にあしらっていたそうである。そんな中で、唯一信頼を寄せていたのが石原慎太郎氏だったという。ふーん。
先入観と言えば、今回の映画の試写会の司会をするにあたって、窪塚洋介さんの映画を何本か見た。『ピンポン』は、漫画を読んでいたので前から見たかったが見逃していた映画で、まあそれはよいのだが、問題は『凶器の桜』。これはちょっとなあ・・・と思って、特に見たいとも思わなかった映画だったのだが、実際見てみると、なんだこれは単に「やくざ映画」の系列ではないか。しかも東映と言えばその伝統があるのだから、特に不思議はないよなあと納得。出演映画のイメージから、窪塚洋介というとなんとなく右翼っぽく感じていたけれど、彼が映画の中で演じ主張している役割は、それほどそんな感じはない。どちらかというと「真面目な」という印象が強い。「超(エキストラ)真面目」になってしまうと、それはそれでコワイのだが。
試写会の舞台あいさつでも、彼は(たまたま)「映画」という「メディア」を通じて、「平和」「人類愛」というような「メッセージ」を発信したいのだという感じが、非常に強く感じられた点が発見でした。徳重さんは、普通のカッコイイ素直な好青年という感じでした。彼は役者の道を頑張ってほしいです。
「特攻」は、今で言う「自爆テロ」である。かつて「特攻」という手段をとった日本人が、イラクで自爆テロを行うイスラム教徒の心情をわからないというのは、特攻の心情もわからないということである。歴史を学んでいないということだ。誰でも、進んで死にたいはずがない。(あの世での、素晴らしい世界を信じ込まされた人以外は。)
この本の話に戻ると、24ページにも及ぶ口絵に載っている数々のモノクロ写真、これを見るだけでも、この本を開く価値があると思う。知覧の特攻平和記念館は、ぜひ一度お訪ねください。

★★★★

(2007、5、4読了)

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