ヘッダー Space『累犯障害者〜獄の中の不条理』
(山本譲司、新潮社:2006、9、15)
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著者の山本譲司氏を覚えておいでか?5年前の2001年6月、秘書給与詐取という罪を起こして実刑判決を受けた元・衆議院議員である。彼が「塀の中」で見聞きしたことや、これまでのボランティア活動の中などで知ったこと、それは何度何度も罪を犯して塀の中に戻ってくる「障害者」の存在だった。
冒頭語られるのは、記憶に新しい今年正月のJR下関駅放火事件。厳重建造物放火の容疑で逮捕された男(74)は元受刑者で、しかも過去10回はすべて「放火罪」。彼は軽度の知的障害者だったと言うのだ。1996年に、男が広島で起こした放火事件をめぐっては精神鑑定が行われ「知能指数66、精神遅滞あり」と判断されているという。放火を行なった理由は「刑務所に戻りたかったから」。善悪の判断ができないのだ。服役10回で「福祉」との関係は切れてしまい、社会に舞い戻っても、仕事も住むところもなく、戻るところは「塀の中」しかない、と言うのだ・・・。
また、2001年4月に起きた、レッサーパンダの帽子をかぶった男が女子短大生を刺し殺した事件。この事件の容疑者もまた、「知能指数は49程度で知能は小学3年生レベル。文章を書かせても平仮名ばかり」だったという。続報は途絶えた。
「新聞・テレビの大手メディアは『知的障害者の犯罪』というタブーには触れることができないわけだ。確かにセンシティブな問題だ。容疑者の障害を公表すれば、知的障害者は事件を起こしやすいという、あらぬ誤解と偏見を社会に与えてしまうからだ。」
と山本は記す。
読み進めば読み進むほど、重くのしかかってくる現代社会の、どうしようもない現実に気が重くなった。目をつぶってはいけないが、どうすればいいのか・・・。


★★★★

(2006、11、5読了)

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