ヘッダー Space『沖縄の方言札〜さまよえる沖縄言葉
(ウチナーグチ)をめぐる論考』
(井谷泰彦、ボーダーインク:
2006、5、16)
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新聞の書評欄で見て、すぐにいつもの上田玉芳堂に注文。あとで出版社の住所を見たら沖縄でした。著者は1955年京都府生まれで、現在、明治大学大学院に社会人入学している(ご本人いわく)“パート研究者”。しかしパートだからと言って、“正社員”の研究者に劣るわけではないという自負は、全体からも読み取れる。
「方言札」というのは、沖縄など地方で標準語を普及させる際に、方言を使った罰として「わたしは方言を使いました」などと書かれた札を首からぶら下げられたものと認識していた。大変屈辱的なものであり、人権意識が高まった現在では、まず考えられないようなものである。
しかし著者は、沖縄における方言札は、標準語普及のために新たに考え出されて学校で行なわれたというものではなく、それ以前からムラの青年組織などで行なわれていた「罰札」のルールに、「方言を使わないこと」を加えただけであるということを、この論文で示している。そう、論文なんです、これ。2004年3月に早稲田大学に提出した修士論文がベースになっているんです。だから文章が硬くて読むのがちょっとつらい。かと思うと、( )の中に著者の心情のようなものが頻繁に顔を出す。読み物として書き直していただくと、もっとおもしろく読めたのではないかなあ・・・と希望するものであります。
でも「方言札」の使用が、本土サイドから強制されたものではないという視点、また沖縄の中でも離島の地域の言葉と、"沖縄の標準語"である"首里言葉"にも格差意識があるということ、それと本土のヤマトンチューの「標準語」との間、というふうに、言葉の違いがあり、画一的に「沖縄言葉」対「標準語」という構図を描くのは誤りである、というのは「なるほど」と思わされました。

★★★
(2006、7、30読了)
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