ヘッダー Space『ほんまにオレはアホやろか』
(水木しげる、新潮文庫:2002、8、1)
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ドイツにワールドカップ取材に行った帰りの飛行機の中(10時間45分のフライト)で読み終えた3冊の本の中の1冊。
呉 智英の『現代マンガの全体像』などを読んで、水木しげるがいかにおもしろい人物であるか、こちらの好奇心をくすぐられたので、この本を購入。4年前に出ていたので、普通の書店では見つけにくいかも。でもまた、いつもの上田玉芳堂に依頼したところ、すぐに配達してくれました。
水木が、実は宝塚の大ファンであるという意外な一面や、戦争中に南方へ行き左手を失ったが、軍隊当時、南方で「土人」(ママ)たちと仲良くなったとか、紙芝居を描いていた時代の師匠の一人が、武良 茂(むら・しげる=本名)だと言っているのに、住所を、
「神戸の新開地の近くの水木通りです」
と告げたことを受けて、「水木」が苗字だと思ったのか、
「水木さん、水木さん」
と言うので、仕方がなくそれがペンネームになったとか、おもしろいエピソードが満載!
『アフリカのピグミー(ママ)たちは「急ぐことは、死につながり、ゆるやかに進むことは、生を豊かにする」と、信じているらしいが、全くその通りだ。自然は人間を、せきたてるようには作っていない。』
などというくだりは、昨今の「スローライフ」そのものである。わざわざ「スローライフ」なんてカタカナを使わなくても水木さんはそれを実践していたのだなあ。
なお「土人」という言葉に関して水木さんは、
『「土人」という言葉だって、ぼくには、大自然の中の人、土の人、という感じがして、「土人」という言葉は捨てがたい。むしろ、尊敬すべき言葉だと思っている。』
と述べている。南方で、戦争の中で「青春」を過ごし、そこで出会った「土人」の生活の中に、本当に人間らしい自然の生活を見出した水木さんならではの言葉であろう。

★★★★
(2006、6、14読了)
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