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『若者殺しの時代』
(堀井憲一郎、講談社現代新書:
2006、4、20)
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『週刊文春』で連載している「堀井のずんずん調査」から抜粋・加筆したような本。文春は毎週読んでいるが、このコラムはおもしろそうな時だけ読んでいる。文体がちょっとねえー・・・。軽過ぎてどうもなあ。ボケといて自分で突っ込むのが、もうひとつなじめない。しかし、この本ではその文体は影を潜めているので、読みやすい。
堀井氏は、この20年余りの世の流れの中でポイントとなった年と出来事として、1983年のクリスマス、1989年の一杯のかけそば、1987年のディズニーランド、1991年のラブストーリー(テレビのトレンディードラマ)、1999年のノストラダムス(の大予言)を挙げている。ほぼ同時代を過ごしてきた私としては、共感できる部分も多い。
堀井氏は、新幹線「のぞみ」が「新横浜駅」に停車するようになってきたことを、データを基に分析し、
「新横浜駅が突出したのは、横浜市だけがとびぬけて発展したということではない。東京が、横浜エリアまで広がっただけだ。東京の膨張の結果だ。盆地と小さい平野を細い街道で結んでいる関西エリアとはちがい、関東エリアは大きな平野に広がった同一地域である。東京と周辺エリアの明確な境界ラインがない。東京が膨張しようとすれば、どこまでもできる。東京は簡単に周辺を吸収できるのだ。新横浜駅停車の増加は、東京が広がっていく過程である。」
と書いている。なるほど、関西は大阪・京都・神戸が三都として成り立ち、決して大阪に飲み込まれないのに対して、東京周辺の都市は東京に自ら進んで飲み込まれていくのには、
そういった「地理的条件の差」があったのか!これは、言われて見れば当たり前だが、「発見」であると思う。
また、1968年の学生運動で何かを破壊できなかったベビーブーマーたち、つまり「団塊の世代」は、今ゆっくりと何かを破壊しようとしているのではないかと堀井氏は言う。いや、その「数の論理」を持ってして、意図しないまま、じんわりとそういう方向に進んでいるのかもしれない。この「緩慢な破壊」とは、この本のタイトルの「若者殺し」ということになるのだが。

★★★
(2006、4、23読了)
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