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『アスベスト禍〜国家的不作為のツケ』
(粟野仁雄、集英社新書:2006、1、22)
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BSEも怖いがアスベストも怖い。改めてそう感じた。
アスベストの問題は、もうとっくの昔に決着が付いていたと思っていたら、実はそうではなかった。しかも、その恐さを知っていた国や業界。ノン・アスベストと表示しても「ノン」=「0」ではないという表示は、以前の「ノン・アルコールビール」に通じるものが。なんでこんなにしてまでごまかすんだろう。自分のときだけ過ぎればいいや、と思って商売してきたのだろうか。責任・・・というか、そのツケはお客さんがあとで受けるのに。あまりにも無責任と言わざるを得ない。軍艦や戦車もアスベストの塊。だって、砲火から守る耐熱のものの多くには、アスベストが使われているんだから。高層ビルの高速エレベーターにもアスベストは使われているという。また、かつては大型車やワンボックスカーのブレーキにはアスベストが使われていたが、スウェーデンのボルボは完全にノンアスベストの代替品を使っていたとか。しかも驚くべきことに、その代替品は日本が輸出していたというのだ・・・・日本人は死んでもいいのか?
しかも、一番驚いたのは、損害保険会社。1980年代半ばから90年代にかけて、アスベスト被害を免責事由にすることを、企業向けの損害賠償保険の契約の約款にこっそりと盛り込んでいたのだという。なぜその危険性や被害の広がりを、その時点で社会にアピールしてくれなかったのか。もちろんこれは我々マスコミが気づくべきことだった、という反省もあるのだが・・・。
元・共同通信記者の著者は、こう記している。
「アスベストの問題は、向こう五○年間は確実に続くもので、水俣病と薬害エイズをあわせた以上の問題に発展します。アメリカは日本より一五年ほど早く患者数のピークを迎えていますが、保障費用は八兆円以上にもなるといわれる。」

★★★★
(2006、3、2読了)
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