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『日本音楽の再発見』
(團伊玖磨+小泉文夫、
講談社現代新書:1976、10、20初版、
1981、4、24五版)
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農耕民族の日本人が使う日本語のリズムは2拍子であり、3拍子のリズムはなじまない。3拍子は騎馬民族である。そのようなことを聞いたのは随分前のことであるが、この本には、既に30年近く前にそのことが書かれていた。團さんも小泉さんも今はこの世にない。
この本の中で、以前私が疑問を呈した「歌詞とメロディ(音階)」の関係について、小泉さんのこういった発言があった。
小泉「さきほどの『カゼ』の抑揚のばあい、東京の人は『カゼ(※LH)』と下から入りますけれども、音声学的には『カゼ』は平らなほうのことばですから『カゼ(HL)』と上から入っても言葉の意味が分からなくてはなりません。しかし『花が』というときにはどうしてもナからガへ下がらなくてはいけなくて、『鼻が』は平らでも上がってもいいというような、いくつかの統計が出ています。日本語についてそういう研究業績は現にあるのですから、作曲家になる前に基礎学科としてそういうことを学校で教えておくというシステムもぜひほしいものです。」(※この本では、高く発音するところには傍点が振ってありましたが、ここでは低い方はL、高い方はHにしました。)
とのこと。「花」に関しては以前、作曲家・多田武彦さんの曲の中で、「花をくわえて」という歌詞の音が、最初「はなを(LHH)」だったのに、ある時期から「はなを(LHL)」に変更されたのはなぜかという疑問を呈したことがあり、当の多田先生から電話がかかってきたことがありました。総合芸術としての音楽と、話し言葉の日本語のアクセントは、必ずしも一致しないというお話でした(と思う)が、やはりできれば、話し言葉のアクセントと一致した方が、総合芸術としての音楽の完成度も上がる、ということでしょうか。


★★★
2005、6、22読了
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