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『ぼくの翻訳人生』
(工藤幸雄、中公新書:2004、12、20)
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翻訳家のエッセイの本はわりと好きで、手にとっておもしろそうなら買って読みます。米原万里さんなんか、必ず読みます。やはり「ことば」「日本語」に対して深い造詣があり、日々格闘してらっしゃるだけに、「翻訳の際にも大切なのは日本語である」というのが、皆さん共通して書かれていることですね。
この工藤さん、お名前は存じなかったのですが、ポーランド語、ロシア語などの長老らしい。難しい本は読んでいないので、こちらは存じ上げなかったと。で、なぜ手に取ったか、というと、実は本編よりも巻末に付録のように付いている(付録にしては充実している)「うるさすぎる言葉談義」がおもしろかったから。2段組みで、たっぷり47ページもある!(本編は2段組ではない。)著者の工藤さんはこちらを書きたかったのではないか。
工藤さんは、文章を読んでいると60代後半ぐらいかと思ったが、なんのなんの1925年、大正14年の生まれで今年80歳。長老ですね。そうすると、この際だから元気なうちに、もう思いのたけをぶつけたということでしょうか。なかなか迫力があります。
たとえば「変形日本語」では「小泉さんの靖国騒ぎ(2001年8月)で『靖国神社を参拝する』と何度も流したNHKにあきれた」と、「を」の使い方がおかしいということを指摘されていますが、これって、私が「平成ことば事情」に書いたものとおんなじです。なんか、感覚は私と通じるところがあるなあ、と。落語に出てくる大家さんとかご隠居さんのような味わいがありますな。いいですよ、なかなか。

★★★★
(2005、1、3読了)
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