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『テレビの嘘を見破る』
(今野勉、新潮選書:2004、10、20、
初刷、11、15・3刷)
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著者は、テレビ番組制作会社の草分け、テレビマンユニオンの創設者の一人である。帯に書かれた惹句は、
「幻の魚は、なぜ旅の最終日に釣れてしまうのか!?」
そう言えばそうだよな。それがテレビってもんなんだよ。
著者は1993年のNHKのいわゆる「ムスタン事件」以降ずっと、演出とやらせの問題を考えてきたそうだ。(それは著者に限らず、テレビマンなら誰しもそうだと思うが。)
時代と社会の変化によって、いろいろなものに対する「見る目」の基準は常に変化しつつある。昔はよくても今はダメ、というものは数多くある。その時代の変化に対応できない企業が、食品関係でも自動車関係でも金融関係でも出てきて問題となっている。政党もそうだ。考古学会もそうだ。放送局もその例外ではないということの表れが、1993年ごろ(もうちょっと前かもしれない)から出だしたのである。
そういう視点を持って、本書は読みたい。テレビマンは必読。(ウーマンも。)
なお『週刊文春(11月25日号)』の書評で、元ロシア語会議通訳で作家の米原万里さんは、「タイトルにそそられて読んだ」「捏造ややらせの具体例がかなりおもしろい」けれども、活字に比べて桁違いに多くの視聴者に影響を与えるテレビにおいては「最終的には制作者の裁量に委ねて欲しいという著者の願望にも軽々とは肯けない」ということを書いていた。米原さんはNHKの放送用語委員の一人でもある。

★★★★
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