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『旅行者の朝食』
(米原万里、文春文庫:2004、10、10)
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相変わらず米原万里はおもしろい。この本はこれまでに書いたエッセイの中で「食べること」「食べ物」について書いたものをまとめたものだが、そのアレンジがなかなか良い。
米原万里のエッセイのテクニックは、異文化(主にロシアや東ヨーロッパ)との豊富な経験の中からおもしろい話を紹介して、後半の残り3分の1くらいのところで、突然「起承転結」で言うと「転」にあたるような、まったく違う視点から、今のおもしろい話を取り上げて、「笑ってばかりいるけど、これって実はよその人(国)の話ではなくて、自分(の国)の話ではないか、と現実に引き戻すというもの。しかし、言うは易く、行なうは難し。普通はなかなかこんなに見事に話を展開していけない。スパイスとして下ネタも、所々振りかけてある。シモネッタやガセネッタが、時々登場するのである。そのあたりは、「女性でありながら男性的」と言えるのではないか。
「メメメメメメメッソーもない」
という表現などは、読売テレビ解説委員で、わが先輩の辛坊治郎の文章テクにも似ている。と言うか、こちらが本家か。年上だし。
この本は、まず後ろの東海林さだおによる「解説」を本屋で立ち読みすることをオススメする。すると「トルコ蜜飴」や「ロシアのヘンテコな缶詰」を食べてみたくて仕方がない、読んでみたくて仕方がなくなること請け合いである。これがたったの467円+税ですよ、お客さん!
なお念のため言っておくが、電車の中で読むことはオススメしない。

★★★★
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