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『政治家の日本語〜
ずらす・ぼかす・かわす』
(都築勉、平凡社新書:2004、8、11)
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「日本語」というタイトルの中の言葉に引かれて購入したが、基本的には日本語の話ではなく、日本政治史における「ことば」の果たした歴史を記したものである。
中に「オーウェル『一九八四』の世界」という項があった。目次でそれを見つけたのも、本書を購入した動機の一つであるのだが。私の大学の卒論がジョージ・オーウェルの『一九八四年』的世界についてだったので、この本とオーウェルには、その後も興味がある、オーウェルが示した「ニュースピーク」については、「平成ことば事情」でも書いたことがあるが、言葉が政治状況を形成していることの、一つの表れでもあろう。巻末の「読者ガイド〜参考文献にかえて」でも、著者は「言葉がいかに政治的支配の武器たりうるかは、ジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』新庄哲夫訳(ハヤカワ文庫・一九七二年)が、圧倒的な迫力で描き尽くしている。」と書いている。
池田勇人首相には伊藤昌哉、田中角栄首相には早坂茂三という、ともに新聞記者出身の「名スピーチ・ライター」がいたが、小泉純一郎にはそれがいないことも、「ワンフレーズ・ポリティクス」と言われる原因ではないか。政治もテレビと同じく「チームワーク」なのだなあと思った。また、著者は「ボキャ貧」と呼ばれたあの小渕総理は、意外にも「知的だ」とほめている。読んでみると「そうなのかもなア」と思わせる。でもこの本は、内容が堅いだけに、決して読みやすくはない・・・。

★★★
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