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『ヨーロッパとイスラーム
〜共生は可能か〜』
(内藤正典、岩波新書:2004、8、20)
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21世紀幕開きと同時に起きた9・11同時多発テロ。21世紀のキーワードの一つは、間違いなく「イスラム」である。ということで、日本人にとっても縁遠い(といっていいであろう)「イスラム」「アラブ」について書かれた本がたくさん出ている。その中でこの本をとった理由は、本の帯のフレーズ、
「スカーフは原理主義のシンボルなのか?」
というキャッチフレーズであった。平成ことば事情1563「ヘジャブ」で書いた、ヨーロッパでのイスラム教徒のスカーフ(=ヘジャブ)を禁止する法律についての答えがこの本の中にあると思って購読したのである。
それによると「なぜスカーフを被るのか?」の答えは、イスラムの女性にとって「髪の毛を他人に見せるのは、自分の恥部を見せるようなもの」「髪は性的なシンボルの一つ」だから。それを禁止してしまうことは、実は「大変暴力的なものである」ことを記している。そして、なぜそういった暴力的なことを行なうのか?という”加害者側”の心理として、実は「異質な文化が進入することへの恐怖」が原因であるとも記している。それによって無理しても統一性を強めようとして排他的な民族主義が生み出されるのであって、価値の多様性、多文化の共生を認めないと、全体主義になってしまうとしている。
なかなか難しい問題だが、これはなにもヨーロッパに限ったことではない。我々日本人にも同じ心理が潜んでいることを自覚する必要があるのではないだろうか。

★★★★
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