ヘッダー Space
『死者に語る〜弔辞の社会学』
(副田義也、ちくま新書:2003、12、10)
トップページ
過去掲載分
ヘッダー

Space
この本も夏休み中、台湾に行く飛行機の中で読んだ。飛行機の中で「死者」とか「弔辞」なんて本を読むのは、なんだか縁起が悪いような気もしたが、まあ、関係ないや!と読んだ。読みかけだったし。
著者の副田(そえだ)義也氏は、筑波大学名誉教授で現在、金城学院大学・現代文化学部教授だそうで、専門は社会学。
この本で取り上げられた弔辞は、政治家の弔辞として、中曽根康弘から故・岸信介へのものと、江田三郎から故・浅沼稲治郎へのもの、社葬における弔辞として、松下電器産業の谷井昭雄から故・松下幸之助へのもの、キリスト教知識人代表として、元東京大学総長の南原繁の弔辞、そして最後に文学者の弔辞として、近代文学同人から故・原民喜への弔辞。
副田は、まずはじめに、弔辞にはいくつかの形式があると規定している。一つは会葬参列者に向けて述べる弔辞、もう一つは故人に向かって語りかける形の弔辞、そしてこの折衷型の弔辞である。このうち故人に向かって語りかける形の弔辞は、実はキリスト教においては許されないというのだ。つまりキリスト教は一神教であり、礼拝の対象は神・エホバのみであって、死者の棺や写真に向かって語りかけるというような、神以外の事物を礼拝することになり、厳しく禁止されているというのである。
そういう意味で、副田が一番注目したのは、キリスト教信者である南原繁の弔辞であろう。キリスト教者としての立場を守りながら、日本人である南原がどのような弔辞を読んだのか。また、中曽根と江田の弔辞の差異についての記述も興味深い。
以前、元・日本テレビアナウンサーの福留功男さんの『葬らん!』という本(ホームランに引っかけたタイトル)があったが、購入したものの、まだ読んでいない。買ったのは10年ほど前だと思うけど、この本も弔辞に関するものかな。この機会に読んでみようかな、と思った。

★★★
Space

Copyright (C) YOMIURI TELECASTING CORPORATION. All rights reserved