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『安心のファシズム
〜支配されたがる人びと〜』
(斎藤貴男、岩波新書:2004、7、21)
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かなり硬派の本。大学の卒論が「ファシズム研究」だった私にとっては興味深い本だが、結構、難しいですよ。
特に興味を引いたのは第二章「自動改札機と携帯電話」、第四章「監視カメラの心理学」。
「携帯電話を持つのは、他人に縛られているようでイヤ」という人は、まだ私の周りに少しいるが、それよりも何よりも、携帯電話は個人情報の宝庫で、ケータイの番号を知られるだけで、いろんな個人情報がわかってしまうかもしれないということが、便利さの陰に隠れていることが思い出された。
また、今月号の雑誌『世界』でも「監視カメラの増加とプライバシーについて」の対談が載っていたが、それとタイミングを合わせたのか、同じ岩波から出ているこの本でも「監視カメラ」を「防犯カメラ」と言い換えることで、その目的が犯罪の防止だけしかないと思わせつつ、実は公権力や組織の監視下に個人のプライバシーが野ざらしになっている可能性について言及している。ふだん「当たり前」になっていると気づかなくなる。鈍感になるが、まさに、
「ファシズムはそよ風とともにやってくる」
のである。

★★★★
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